82歳の女性。激しい運動をしていないのに息苦しくなるようになり、8月に間質性肺炎・肺線維症と診断されました。肺活量は2年前の約半分になりました。酸素吸入はずっと必要でしょうか。日常生活でどんなことに気を付けたらよいですか。(岩手県・A)



【答える人】 吾妻安良太(あづまあらた)さん 日本医科大学教授(呼吸器内科)=東京都文京区

Question 間質性肺炎とは。

Answer 肺は、気管支の末端にある小さな袋「肺胞」から毛細血管に酸素を取り込み、二酸化炭素をはき出して呼吸しています。間質性肺炎は肺胞の壁に炎症ができます。気管支や肺胞内にできる通常の肺炎とは異なります。炎症を起こした肺胞の壁が厚く硬くなる「線維化」を起こした状態を肺線維症と言います。

Question 症状は。

Answer 酸素が取り込まれにくくなるため、息切れや乾いたせきが出るようになります。肺活量も落ちます。悪化すると呼吸不全を起こすことがあります。

Question 原因は。

Answer たばこや粉じん、薬剤、膠原病(こうげんびょう)、ウイルスなどさまざまです。原因がわからない場合が最も多く、「特発性間質性肺炎」と呼びます。これは難病対策で医療費助成の対象になっています。その中で最も多いのが「特発性肺線維症」です。

Question 治療法は。

Answer 特発性肺線維症にはこれまで、ステロイドホルモン剤や免疫抑制剤で炎症を抑えるのが一般的でした。しかし、これらでは肺胞の壁の線維化は抑えられません。線維化の進行を遅らせる薬には「ピルフェニドン」や「ニンテダニブ」があります。

Question 日常生活で気を付けることは。

Answer 風邪をひくと、呼吸困難を引き起こすことがあるので注意が必要です。酸素吸入はむやみに続けると肺胞を壊す恐れがあります。血中酸素飽和度を定期的に測定し、90%を下回る数値になったら吸入するように心がけましょう。血中酸素飽和度は市販の機器に指先を置くだけで簡単に測ることができます。

■■■■■■早期発見・治療が重要

 原因のわからない「特発性間質性肺炎」の中で最も多いタイプの「特発性肺線維症」は根治するのが難しい病気です。

 厚生労働省の資料によると、診断確定後の平均生存期間は2・5~5年。特発性肺線維症の治療にあたっている日本医科大学の吾妻安良太(あ・ら・た)教授(呼吸器内科)によると、肺胞の壁の線維化を抑える薬を服用すれば、服用していないときと比べ、肺活量の落ち込みを半分に減らせるとの報告もあるそうです。

かつては肺の炎症を抑えるなど対症療法が中心でした。線維化を抑える薬は日本では2008年に承認され、昨年にも別の薬が承認されました。どちらも完治できるわけではないですが、早い段階で治療を始めれば、進行を抑えられる期間も長くなる可能性があります。

吾妻教授は「早期の発見・治療が大切」と話しています。


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