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第37回公害被害者総行動~公害としての原発事故~(その1) 環境回復を求める集団訴訟(
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※題字「みんなして」は、大塚利明さん(郡山市,直売所経営)の筆によるものです。
【 最 近 の 動 き 】
東電や国の動向
弁護団の取り組み
6月01日
6月09日
6月11日
6月20日
6月21日
7月01日
ADR、郡山から都内に避難
した母子に東電基準と同額
の和解案提示
東電、元緊急時避難準備区域
の賠償支払いを延長へ
政府、避難区域内の不動産の
賠償基準示す
東電が事故調査報告書を
公表
原子力基本法の目的に「安全
保障」を追加
政府、福島再生の基本方針を
提示
6月05日
~06日
6月15日
6月15日
6月22日
6月24日
~25日
6月25日
6月27日
第37回全国公害被害者
総行動(東京)
郡山の事業者・農家の方々の
東電に対する一斉請求
(郡山市)
神奈川の商工業者向け説明
会(横浜)
相馬の漁協組合員・東電交渉
(福島市)
沖縄の避難者向け相談会・
説明会(那覇市)
弁護団会議(東京)
責任論チーム会議(東京)
第37回公害被害者総行動~公害としての原発事故~(その1)
環境回復を求める集団訴訟(仮称「うつくしまを返せ!訴訟」)
の構想について
弁護士 渡邊 純
私たち「生業を返せ、地域を返せ!福島原発被害弁護団」では,現在,他の原発事故被害弁護
団と共同で,福島原発事故で汚染された環境の回復を求める集団訴訟を構想しています。
1 なぜ,環境回復を求める集団訴訟なのか?
⑴ お金で済む問題ではない。
原発事故の被害は,簡単にお金で償えるようなものではありません。子どもに将来健康影
響が出ないかという心配,農地が汚染されて安心して作物が作れない苦悩,住み慣れたふ
るさとを追い出され生きがいや人々との絆を奪われた苦痛…。
被害者が失ったものは,決してお金で解決できる問題ではありません。
⑵ 福島原発事故は,公害問題である。
原発事故は,広い範囲の環境に放射性物質という有害物質をまき散らしたのですから,こ
の事故による被害は公害事件です。公害事件である以上,賠償だけではなく,汚染された環
境から放射性物質を取り除くなど,環境の回復を行うことによる被害救済が図られなくてはな
りません。国は,除染特措法などを成立させていますが,国が自ら除染などを行うのは一定
の地域に限られており,あとは自治体や地域住民にお任せという対応です。
⑶ 賠償請求だけでは,被害者の分断が生じる。共通の願いを正面から掲げよう。
賠償は,あくまで,個人や個々の事業者が蒙った損害をお金で償わせるというものです
が,避難したかどうかなど,個々の事情によって,被害の現れ方は様々ですから,個々の賠
償額は異なります。個別の被害について,個別に立証し,個別の賠償額を定めることは,手
間と時間のかかる作業になってしまいます。しかも,個々の賠償額やその公平さをめぐって,
被害者の間の分断を招く結果になります。国の定めた賠償の目安(「中間指針」など)は,地
域や業種,被害の種類などによって細かく細分化されていますが,これは,結果として,被害
者の分断を現実に生じさせています。
しかし,住んでいる地域が汚染されてしまったことは,全ての被害者に共通する被害であ
り,「元のきれいな地域に戻してほしい」ということは,全ての被害者の共通の願いです。みん
なの共通の要求,願いを正面から掲げてこそ,みんなが団結して,最後まで被害に立ち向か
うことができるのではないでしょうか。
2 具体的な構想
今,弁護団では,原発事故の全ての被害者が裁判を起こせるようにするため,法律論などの
研究をしています。同時に,この裁判だけで,被害者の被害が全て解決できるものではありま
せんから,個々の皆さんの深刻な被害の賠償については,この裁判とは別個に請求することの
妨げにならないよう工夫したいと思っています。たとえて言えば,集団訴訟は,みんなが乗り込
める乗り合いバスです。みんなで乗り合いバスに乗って,共通の目的地(環境回復と,回復がな
されるまでの最低限の共通賠償)に行き,そこから,個々の目的地(個々の求める賠償)に,
個々の交通手段で向かうというように考えていただければ,分かりやすいかと思います。
具体的な方法などが固まり次第,皆さんにお知らせします。
No.5 発行2012年6月
発行人:「生業を返せ、
地域を返せ!」福島原発
事故被害弁護団
TEL:03-3379-6770
2012年6月5日と6日にかけて、第37回公害被害者総行動が行われた。
公害被害者総行動とは、全国の公害被害者が大同団結して環境大臣交渉をはじめ各省庁
との交渉を通じて、この国の公害、環境行政を正し、公害、薬害被害者の救済を目指す大
運動である。1976年以来毎年必ず行われる伝統あるたたかいだ。
本年度の公害被害者総行動は、何と言っても、昨年の福島第一原発事故を受けて、原発
被害者との連帯、連携をおおきく掲げた力強いたたかいを目指した点が極めて特徴的だっ
たといえよう。
(弁護士 舩尾遼)
公害被害者総行動とは
裏面につづく・・・

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第37回公害被害者総行動~公害としての原発事故~(その2)
環境大臣交渉に参加したのでご報告する。
各地の公害被害者と弁護士が20名ほど参加され、環境省側は、横光副大臣・南川事務
次官をはじめとした事務方が出席していた。
弁護団からは、渡邊純弁護士と事故直後に自死された農家の息子さん(Aさん)が出席
し、発言された。Aさんの訴えは、代々土作りにこだわってきた農家の跡継ぎとして、福
島で再び安心でおいしい作物を作ることができるよう環境の完全回復を求めるという心に
響くものだった。以下に、発言の一部を紹介する。
「農家にとって、田んぼ、畑を耕すなと言われたら、それは職場を奪われたのと同じで
す。父の死は、国民としての訴えの死だと思っています。」
「自分たちで作った作物ですら、出荷してもいいのか、自分たちで食べて安全なのか、い
まだに迷う日々が続いています。」
「これほどの事態を引き起こしたにもかかわらず、なぜ原発の再稼働を考えるのか。結局
は、福島原発事故は、他人事なのでしょうか? もし、貴方の街がこうなったらどうしま
すか? 私たち百姓にとって、土や環境は、命の次に大事なものです。放射能で汚された
環境を元に戻してほしい。それだけが私たちの願いです。」
Aさんの訴えは、福島の農家が抱える問題と、環境省が取り組むべき課題を明確にした
のではないかと思う。
(弁護士 中瀬奈都子)
6月5日に行われた総決起集会では、原発被害者の方たちの発言がおおきな拍手をも
って迎えられた。特に、福島県須賀川市で農業を営む被害者の「私たち百姓にとって、
土や環境は、命の次に大事なものです。放射能で汚された環境を元に戻してほしい、そ
れだけが私たちの願いです。」という発言は総決起集会に参加した全国の公害被害者の共
感を得たことだろう。
東京電力という大企業が営利のために推し進めた各地での原発建造、また、国が温暖
化防止の名の下に大企業の利益のために推し進めたエネルギー政策としての原発政策。
このような状況の中で今回の事故が起こり、福島の土壌は放射能に汚染された。今回の
原発事故は東京電力と国が営利活動としての原発政策を推し進めた結果起こった史上最
大の公害に他ならない。
●もとの福島を返せ!
しかし、東京電力、国は原発の再稼働を目指している。史上最大の公害を引き起こし、
土地を、地域を、故郷を汚染し、破壊した反省は東京電力、国に見られない。人の生活、
命をなんだと思っているのだろうか。今までの公害に対する国の対応からも、座して待
つだけでは決して福島はもとに戻らない。
今回の公害被害者総行動を皮切りに、全国の公害被害者と連帯して、東京電力、国の
責任を追及するたたかいを継続しなければならない。もとの福島を返せ!との要求のも
とに最後までたたかう決意を新たにさせられた集会であった。 (弁護士 舩尾遼)
総決起集会
環境大臣交渉
東電交渉では、遠路福島から駆けつけた被害者のみなさんが、早期、かつ充実した解決を要
求した。「失ったものが大きすぎる」「一時帰宅したら自宅の茶の間が腐っていた」「半分でいい
から肥料の賠償を」また、それぞれの被害の実相が生々しく語られた。弁護団から沖縄や広島
への避難者団体に説明に来るかと問うと、賠償に関しては説明に来ると返答。もっとも、東電
の出席者は交渉権限のない担当者であったため、交渉の場には責任ある回答ができる者を出席
させるように要求した。
(弁護士 山添拓)
東電交渉
6.15 いっせい請求
去る6月15日に、郡山市の野菜直売所及び直売所に農作物の販売委託をしていた生産者の方々9名
が、東京電力に対して、風評被害による損害等について、いっせいに損害賠償請求を行いました。当日、
東京電力側は、補償相談室の紫藤部長のほか、郡山補償相談センターの職員等計4名が出席しました。
まず、当弁護団の久保木弁護士が、今回の請求の趣旨説明を行いました。それから、被害者を代表して
直売所の大塚社長が、東京電力の紫藤部長に全員の請求書を手渡しました。その後、生産者・直売所の
方がそれぞれ東京電力に対して、放射性物質による深刻な被害の実態や除染の難しさ等を訴えました。
直売所の大塚社長は、「『環境にやさしい』『健康にいい』をコンセプトに直売所を運営してきた。その直
売所で、放射性物質が検出された農作物を誰が買いたいと思うか。また、そのような直売所で誰が働きた
いと思うか。」と訴えかけました。生産者・直売所の皆さんの訴えは、まさに被害を受けた当事者ならではの
ものであり、会場は静まりかえっていました。
最後に、当弁護団から東京電力に対して、
①今回の原発事故を招いたことについて、不法行為責任を認めた上、真摯に謝罪すること
②請求人らが農地等につき除染費用の見積もりを出した場合、事前に支払うこと
③加害者として、請求人らが農業に従事する現地に赴き、原発事故の深刻な影響を確認すること
④原発、特に東京電力管内の柏崎刈羽原発を再稼働しないと確約すること
⑤請求人らの完全賠償の要求に対し誠実に対応し、継続的な交渉に応じること
の5つの要請を行いました。当日の交渉によって、東京電力は、各被害者の方の農地等の現地視察を行う
こと、7月に再度交渉の場を持つことを約束しました。
当日は、NHKや福島テレビの取材も入り、夕方のニュースで放映されました。郡山は放射線の空間線
量が高いにもかかわらず、避難区域等に指定されておらず、被害の実態はあまり知られていません。しか
し、今回のいっせい請求によって、その被害実態が少しでも認識されたのではないでしょうか。
今回のいっせい請求は、直売所・生産者の方々が一致団結して東京電力に請求したことに意義がありま
す。個人で損害賠償請求をした場合、東京電力は、自身の賠償基準をたてに、賠償額を低額に抑えるべ
く交渉に臨んできます。領収証等の裏付資料がないだけで、賠償に応じないことも珍しくありません。また、
被害の実態を世間に知ってもらうことも困難です。しかしながら、今回のように集団で請求すれば、被害者
同士が証拠を補うことも可能になりますし、世間に被害の実態を訴えることも可能になります。
原発事故による被害は現在も継続しており、その事実を風化させるわけにはいきません。そのために
は、みんなの力を結集して大きな力にしていくことが大切です。『みんなして』、東京電力に、国に、原状回
復・完全賠償を要求していきましょう!
(弁護士 樋谷賢一)
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