去る6月15日に、郡山市の野菜直売所及び直売所に農作物の販売委託をしていた生産者の方々9名
が、東京電力に対して、風評被害による損害等について、いっせいに損害賠償請求を行いました。当日、
東京電力側は、補償相談室の紫藤部長のほか、郡山補償相談センターの職員等計4名が出席しました。
まず、当弁護団の久保木弁護士が、今回の請求の趣旨説明を行いました。それから、被害者を代表して
直売所の大塚社長が、東京電力の紫藤部長に全員の請求書を手渡しました。その後、生産者・直売所の
方がそれぞれ東京電力に対して、放射性物質による深刻な被害の実態や除染の難しさ等を訴えました。
直売所の大塚社長は、「『環境にやさしい』『健康にいい』をコンセプトに直売所を運営してきた。その直
売所で、放射性物質が検出された農作物を誰が買いたいと思うか。また、そのような直売所で誰が働きた
いと思うか。」と訴えかけました。生産者・直売所の皆さんの訴えは、まさに被害を受けた当事者ならではの
ものであり、会場は静まりかえっていました。
最後に、当弁護団から東京電力に対して、
①今回の原発事故を招いたことについて、不法行為責任を認めた上、真摯に謝罪すること
②請求人らが農地等につき除染費用の見積もりを出した場合、事前に支払うこと
③加害者として、請求人らが農業に従事する現地に赴き、原発事故の深刻な影響を確認すること
④原発、特に東京電力管内の柏崎刈羽原発を再稼働しないと確約すること
⑤請求人らの完全賠償の要求に対し誠実に対応し、継続的な交渉に応じること
の5つの要請を行いました。当日の交渉によって、東京電力は、各被害者の方の農地等の現地視察を行う
こと、7月に再度交渉の場を持つことを約束しました。
当日は、NHKや福島テレビの取材も入り、夕方のニュースで放映されました。郡山は放射線の空間線
量が高いにもかかわらず、避難区域等に指定されておらず、被害の実態はあまり知られていません。しか
し、今回のいっせい請求によって、その被害実態が少しでも認識されたのではないでしょうか。
今回のいっせい請求は、直売所・生産者の方々が一致団結して東京電力に請求したことに意義がありま
す。個人で損害賠償請求をした場合、東京電力は、自身の賠償基準をたてに、賠償額を低額に抑えるべ
く交渉に臨んできます。領収証等の裏付資料がないだけで、賠償に応じないことも珍しくありません。また、
被害の実態を世間に知ってもらうことも困難です。しかしながら、今回のように集団で請求すれば、被害者
同士が証拠を補うことも可能になりますし、世間に被害の実態を訴えることも可能になります。
原発事故による被害は現在も継続しており、その事実を風化させるわけにはいきません。そのために
は、みんなの力を結集して大きな力にしていくことが大切です。『みんなして』、東京電力に、国に、原状回
復・完全賠償を要求していきましょう!
(弁護士 樋谷賢一)