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よく安倍政権の「暴走」と呼ぶ人に共通なことは、相手側を視野から外していることです。

この場合、中国が相手国になるわけですが、この人たちにかかると、まるで日本側だけがひとりで勝手に煮詰まって、暴走しているようにすら見えます。

おいおい、違うだろうって。日本は仕掛けられたただの受動側にすぎません。どうしていつも日本が「加害者」でなければ、気が済まないのでしょうか。

今回のような、明らかな中国の一方的な侵犯事例に対しても、たちどころに「反省」して、、次元の違う「歴史の反省」まで持ち出しては、国民に説教し始めるのですからまったくたまったもんじゃありません。

初めから中韓に対しては、加害-被害の固定した鋳型からしか見ることができないのです。

このような人たちを、「中国の手先」などと失礼なことを言うつもりはありませんが、中国にとって「都合のいい人たち」であることは確かでしょうね。もっとクールにならないと、国家間摩擦は解決しませんよ。

さて、漁船衝突以外に、もうひとつ日中がレッドゾーン一歩手前だった事件の流れがあります。 

それはちょうど2年前の2013年1月19日におきた、自衛艦「おおなみ」搭載SH-60Kに対する射撃用レーダー照射事件 と、同年1月30日の自衛艦「ゆうだち」に対する射撃管制用レーダー照射事件です。
※詳しくは関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-b878.html  

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この両事件は、尖閣諸島を警戒していた自衛艦とその搭載ヘリに対して,中国海軍艦艇から、突如射撃用レーダーの照射が行われた事件です。 

まず前提知識として、海上保安庁(海保)と海上自衛隊(海自)との根本的な差について押えておきましょう。 

簡単に言えば、海保は海の警察です。一方海自は国際的には海軍として認識されています。 

このような領土問題をめぐる潜在的紛争海域には、まず海保が派遣されて、相手国の漁船や公船の侵犯行為に備えています。 

いきなり海軍同士が殴り合いを始めたら、そのまま本格的戦争に発展する可能性があってシャレになりません。 

ですから、まずはお互いの海保同士が間に入ることで、未然に戦争を防止していこうというのが、大人の知恵なのです。 

ところが、海保を遠巻きにして情報収集に当たっていた海自の艦艇に対して、中国海軍艦艇からレーダー照射を受けるという事件が発生しました。 

え、ただのレーダーじゃん、当たっても安全じゃないの、というのは間違いです。現代の海軍艦艇の射撃はすべてレーダーによる照準に頼っています。 

本当に撃つ気なら、照準した直後の数秒で砲弾が着弾してしてしまいます。 

ですから、レーダー照準は射撃行為同然と見なす、というのが国際的な海軍の常識なのです。その場合、海自の艦艇は撃沈されるか大破して、百数十人の犠牲者を出したたことでしょう。 

そして、日中間は最悪な場合、交戦関係に突入します。 

この行為は「西大西洋海軍シンポジウム」が作った「紳士協定」(CUES・Code for Unalerted  Encounters at Sea)に違反しています。 

紳士協定だからといってな~んだと思ってはいけません。これは事実上の海軍同士の平時のルールを定めたもので、国際法に匹敵すると言われています。 

これがいかにとんでもない危険な戦争挑発行為なのかは、他でもない中国の「同盟国」ロシアの解説を読んでみましょう。 

「もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。
そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る」
(「ボイス・オブ・ロシア」2013年2月8日)

つまり射撃用レーダーを照射して、照準(ロックオン)するという行動は、世界の海軍の常識では「弾丸の入ったライフルを敵に向って照準を合わせること」、すなわち戦闘準備行為そのものなのです。 

つまり、国際社会では戦端を切る行為だと受け取られる行為なのです。 

この危険極まりない中国の行動に対して、安倍政権は、事実関係を精査するや直ちに強い抗議を行い、証拠資料を開示する用意があると公表しました。 

中国は「捏造だ」と言っていたようですが、日本政府が完全に資料を揃えて公表の用意を整えて原則的な対応をしたために、あえなく沈黙しました。 

以後、中国からは、このような行為は絶えてなくなりました。ただし、今度は中国軍機が異常接近などをするようになりましたが(苦笑)。まったく懲りない連中ですなぁ。本気で戦争をしたいのかしら。どうかしています。 

これでこの事件は終わったわけではありませんでした。というのは、事件は思わぬ事実の発見に発展します。 

朝日はこのようなスクープをデジタル版でアップした直後に、なぜかすぐに削除してしまいましたが、この消された記事はこう報じています。 

「政府関係者によると、1月30日に中国軍艦が海上自衛隊護衛艦に火器管制用レーダーを照射したのは尖閣諸島の北西百数十キロの公海上。同月19日に海自ヘリコプターへの照射があったとみられるのも同じ海域。防衛省は今回公表したケース以前にも周辺海域で複数回、自衛隊への中国軍のレーダー照射を把握
 今回の「数分間」(防衛省)より長く照射したケースもあるという。日本政府は「日中関係を悪化させる懸念がある」(政府高官)とこれまで公表を避けてきたが、今回は立て続けにレーダー照射されたため、安倍政権が事態を重く見て公表に踏み切った」 (朝日新聞2013年2月4日デジタル版)
 

つまり、2013年1月のレーダー照射事件の「以前」にも、中国海軍の戦争誘発行為があったということです。  

しかもそれは長時間に及び、複数回あり、それを民主党政権は「日中関係を悪化させる懸念がある」という判断で、もみ消していたということになります。 

したがって、中国政府がなにかにつけて問題とし、反日デモの引き金となった2012年9月11日の尖閣国有化以前から、中国の戦争挑発行為は数年に渡って続けられていたということになります。

この事件をもっと深く知るためには、当時の日本の政治状況を見ておく必要があります。長くなりそうなので、それは次回ということで。

※ 後半は長すぎたのでカットして明日にまわしました。