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ロックオン、って安易に呼ばないで

 中国人民解放軍海軍のフリゲートが、海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制レーダーを照射したとされる件と、ロシア空軍の戦闘機が、北海道礼文島付近の領空を侵犯した件。相次いで起きたので不安がっている人、怒っている人も多いかと思います。


 しかし、結論から先に言うと、これは完全な「心理戦」であり「宣伝戦略」なので、戦争への足音が聞こえる、などと煽ったり深刻に悩む心配はありません。


 中国のケースは多分、人民解放軍海軍が勝手に行った「挑発行為」か「強行偵察」に似た行為で、ひょっとすると、ロシア空軍もそうかもしれません。

 

 まずは、相手を特定しておきます。


 中国の件は、人民解放軍海軍東海艦隊所属の江衛二型(053H3型)の2,250tフリゲート。東海艦隊は6艦持っています。

 このタイプの艦は元々近海を哨戒する防衛型のフリゲートで、小さい艦体に武装と各種装備を満載したため、少々トップヘビー(艦の重心が上にあり過ぎ。転覆の可能性が増える)と言われています。スピードもそんなに速くありませんが、人民解放軍海軍では比較的新しい型で、日本の護衛艦とも肩を並べて戦える力はあります。

 また、人民解放軍海軍東海艦隊とは、3つある人民解放軍艦隊の内、「中央」を担当する海軍部隊で、沖縄周辺は彼らの担当範囲となります。浙江省の寧波に司令部があり、もしも台湾に「何かが」起きたらこの部隊が活動することになります。

 尖閣周辺ももちろん彼らの「庭」と考えていて、それでこの行動になったものと思われますね。


 ちなみに、「フリゲート」とは「駆逐艦」より小型で主に船舶護衛や沿岸防衛などの任に就く艦船のことで、日本語に当たる言葉はありません。中国では「護衛艦」と呼んでいるようです。フリゲートはその言葉だけで艦船を表すのでフリゲート「艦」と呼ぶのは重複に当たりますのでご注意を。

 また、私が「中国海軍」と彼らを呼ばないのは、人民解放軍という組織は正確には「中国軍」ではないからです。そう、人民解放軍とは国家の軍ではなく、中国共産党の軍なのですから。


 気を付けなくてはいけないのは、中国という国家は、経済が自由主義国家に近い状態となった今も変わらず社会・共産主義国であり、共産主義国家は例外なく共産党(他の名前の場合もある)が支配(彼らは指導とか主導とか言いますが)する国のことであり、政府は党の下に位置する、と言う事です。


 中華人民共和国という国には「国防部」という、日本で言うなら防衛省がありますが、この国防部は人民解放軍に対して指揮権などはありません。彼らは徴兵とか兵器の調達とか対外的な「顔」の役目をする、いわば「総務部」で、人民解放軍の指揮は「中国共産党中央軍事委員会」が行うのです。

 名前の通り、国家でななく共産党です。この違いは名目上でなないと言う事をよく知っておかなくてはなりません。国民の意思、つまり彼ら言うところの「人民」の意思とは関係なく、共産党という「利権集団」の意思で軍が動きます。


 一例を上げると、六四天安門事件(1989年)で人民解放軍は学生や民主化を求めて集まった人々を弾圧しましたが、この時、解放軍に出動命令を下したのが共産党の首脳部で、政府を代表する者たちも当然メンバーですが、当時その頂点にいたのは長老の鄧小平(トウショウヘイ)。彼は当時一切の公職には就いていなかったのに事実上共産党のトップに君臨していたため、人民解放軍へ命令することが出来たのです。


 また、中央軍事委員会のメンバーは現在、主席(委員長)の習近平氏以外全員「制服組」であることも気を付けねばならない部分です。以前は副主席も政治家でしたが、今回の「権力移動」でこうなりました。もちろん制服を着ているとは言え、軍の上層にいる軍人たちは政治家と化しているものなのですけれど……

 軍人の中に「政治家」が一人。今後、果たして習近平氏は彼ら軍人をコントロール出来るのでしょうか?「シビリアン・コントロール」という点から今後、気を付けて見て行きたいものです。


 さて、今回の射撃管制レーダー照射という行為。またも煽るバカなマスコミ(全てじゃないですよ一部!それに両方の国の)は「ロックオン」だの「宣戦布告に等しい」だのハシャイでいますが、全然違います。


 ロックオン、とは本来「照準に目標を捕える」ことで、現代では射撃管制装置の「目標自動追尾装置」によって敵を捕捉「し続ける」ことを言います。

 今回の射撃管制レーダーはその目標自動追尾装置とリンクして使いはしますが、射撃をする前に「目標の位置、形状と速度などのデータを得るため」に射撃管制レーダーを照射することがあります。もちろんそんなことをすれば、「私はあなたを狙っています」と敵に知られる(相手側、もちろん自分も敵からのレーダー照射を探知する装置を持っている)訳ですから、実戦になれば射撃管制レーダー照射は攻撃寸前の行為で、すぐさまミサイルや砲弾が飛んで来ることにはなります。

 「ロックオン」という言葉は映画やアニメでもさんざん使用されるため、一般用語化しています。ですからこの言葉を聞くと「ホールドアップ」に近い状況を想像してしまう人も多いかと思うのです。


 でも、今、中国と日本は戦闘状態ではありません。もちろん自衛隊からすれば、レーダー照射されればこれで「開戦」かも、と緊張し身構えるのは当然です。油断禁物です。けれど今回の護衛艦「ゆうだち」はベテラン(インド洋給油作戦やソマリア海賊対策で「鳴らした」艦です)らしく慌てず騒がず「優雅」に回避した様子です。今も緊張の現場を哨戒していると言いますし、ご立派。


 この「戦闘状態」での射撃管制レーダー照射のことを「ロックオン」と呼ぶべきで、撃つつもりのない威嚇の照射まで「ロックオンだ」と騒ぐのは(軍人さんが身内で皮肉に呼ぶ以外)煽り行為にしかなりません。しかも中国は日本が怒って「ポカ」(後述)をすることを期待しています。

 「売り言葉に買い言葉」となれば、嗤うのは中国。気を付けて欲しいものです。


 では、なぜ彼らは挑発行為を繰り返すのか。

 これは「党の威信」と「軍の威信」が危機に晒され、その後には「アラブの春」の恐怖があるからです。


 今、中国は経済の「民主化」が進んだ結果、貧富の差という共産主義ではあり得ないはずの状況が発生しました。自由主義国家では競争は自由で、結局は個人の能力や運が決め手というケースが多いものですが、この共産主義国家の経済自由化はかなり偏ったものとなりがちです。


 一部の者が甘い汁を吸う、よくある図式がそれで、これに「利権集団」である共産党や人民解放軍が「乗っかって」いる。共産党幹部は、昔は汚職で儲けましたが、今は息の掛かった私企業で儲けています。これが軍にまで及ぶのが中国式で、人民解放軍はたくさんの企業を持っていて、これが膨大な利益を生んでいます。

 こんなおいしい話を彼らが放棄するはずもなく、それはお得意の「世襲」によって受け継がれ、更に拡大し、「利権集団」の縦の繋がりと「持ちつ持たれつ」の関係はまるで戦国大名の主従関係のようです。


 もちろん貧富の差の拡大は「貧」にランクされる人々の恨みを買います。自由主義国家とは違い不公平そのもの、生まれた地域や階層で差別される状態ではなかなか「富」の仲間入りは適いません。

 その「貧」の数が少なければ恐れるに足らず、と言ったところですが、中国の人口は13億4千万以上。このうち「富」に当たる人は何人いるのか。また「貧」に当たる人は?


 イタリアの統計学者、コッラド・ジニが考案した「ジニ係数」というものがあります。難しい話や計算方法は省きますが、この係数は0から1で示され1に近いほど所得の格差が大きいとされます。ジニ係数では0.1から0.2を格差のない世界、0.3から0.4を格差のある世界、0.5前後が格差が大きく社会が不安な世界、0.5から0.6が格差が限度を超え不満が爆発寸前、0.6から0.7は暴動がいつ発生してもおかしくない、0.7を越えたら革命が起きる、などとされています。


 一般的に0.5が危険度のボーダーで、これを越えたらその国は貧富の差に抗議する暴動が多発する危険な国とのレッテルが張られます。

 世界銀行の統計では中国の貧困人口は4億7千4百万人(2009年)。当時の人口が13億3千万程度なので、3人に1人以上が「貧」になり、このジニ係数が0.469とされました。当時の日本は格差が目立つ最悪の時期でしたが、ジニ係数は0.36程度。


 貧富の差は無くなりつつある、と中国共産党は言いますが、それは都市部の話。農村部は益々都市部と格差が拡大し、「貧」の人々が多くなり、都市部に恨みを持つに至っていると思われます。

 もし4億人が貧富の差に怒って暴動を起こしたら。あの「自作自演」の反日暴動など幼稚園のお遊戯会に見えるような、目を覆わんばかりの「悲劇」が起こるでしょう。

 そしてそれが、チベットやウイグルなどの民族主義者などと結び付いて「内戦」状態になったら。共産党は「ソ連共産党」の二の舞となってしまうのです。


 ですから「反日」は「貧」の人たち格好のガス抜き、自分たちに向かう目を逸らすお題目だったのですが、余りに反日を教育し、喧伝したので「貧の人民」がそれを本当に信じ込んでしまった。

 こうなったら、徹底して反日を貫かないと人民から「弱腰」として攻撃されるし、政府への攻撃は当然貧富の差の不満に結びついて「共産党」なんか潰してしまえ、に向かう。


 中国人民だって共産党が力を持ち、うまい汁を吸っていることは知っています。反日だってポーズだということも「富」の階層は分かっている。しかし、「貧」の人たちは日本人なんか見たこともない、見たとしても「富」の人たちと仲良くしている姿しか知りませんから、反日は自然に受けいられたと思われます。


 今後、中国、いや中国共産党、そして人民解放軍はねちっこく「嫌がらせ」を続けるはずです。で、日本がポカをする、または折れるまで続けるでしょう。


 折れる、とは日本が尖閣を「係争地域」と認めること。つまり、尖閣諸島は日本と中国が「領有」を争っているところですよ、と世界に示すことです。日本が「自分のもの」を「他人と争っているもの」と中間まで戻す。これは中国、いや中国共産党の勝利ですから、当然関係は劇的に変化し、向こうは握手をし、「では尖閣を両国で開発しましょう」などと言って来る。その先は、あの日中中間線で行われているガス田開発と同じ結末。いつの間にか、尖閣沖に中国漁船が溢れ、日本の漁船は入り込めなくなるでしょう。


 また、ポカとは日本政府が強硬手段を取って尖閣に職員を上げ建造物を作る、自衛隊を尖閣諸島に常駐させる、中国海洋局調査船を拿捕する、などの行動。これは中国が強硬手段をとり易くする事につながります。そうなれば中国お得意の宣伝戦に持ち込まれ(今もそうですが日本が冷静なので向こうが「悪く」見えている)ますから、世界に正しく「係争地域」と認めることにもなります。


 ここは一つ長期戦を覚悟で挑発を冷静に撥ねつけ続け、国際世論に「日本、中国に苛められてるけど頑張るなあ」と思わせる。特に東南アジア諸国、フィリピン、ベトナム、インドネシアなど中国と南沙、西沙諸島を争う諸国に「勇気」と「同類感」を与えること。

 国際世論がこの「言い掛かり」を「地域を乱す悪しき行動」と認めれば、中国もごり押しを続けるのは困難でしょう。


 海上保安庁や自衛隊、沖縄の人々も大変でしょうが、中国も足元に火が付けばいつまでも出来るものではありません。その足元の火は、案外近いところにある気もするのです。


 なお、防衛省がこの前の射撃管制レーダー照射の「証拠映像」を出すかどうか検討、とありますが、出したところであちらは「CGだ・ねつ造だ」とか言い掛かりを付けるに決まっているので、無駄だと思います。防衛機密は重要です。安易に「挑発」に乗らない方が身のため、とは思うのですがね。


 おっと、ロシアの件まで言及することが出来ませんでした。この「東京急行」と呼ばれた冷戦時代から延々と続く領空侵犯についても、その内にお話ししましょう。


 これに関連して最後に一つ。


 「領海侵犯」と「領空侵犯」は国際的・軍事的に大きな違いがあります。

 「領空侵犯」は国際法上の不法行為で、国際法のルールに従って最後は侵犯機を撃墜することが可能(軍用機に限る)な代物です。

 しかし「領海侵犯」という行為は国際法にはっきりした既定のない行為です。何故なら、他の国籍の艦船が領海に入っても、それが無害なものならば国際慣習上「領海の外へ出ろ」と言って無視されても「撃沈」はやり過ぎと思われるからです。

 では「有害」な侵入とは何か。これは例の「不審船」事件で見ても明らかな様に、相手が攻撃を仕掛けるか仕掛けようとする行為を行った場合、と言えそうです。

 この点からも、尖閣周辺海域での事案は、非常に解決が困難なものだと言う事が言えるでしょう。




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