中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動
著者:長谷川 慶太郎
実業之日本社(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp

85歳になった今でも、「大局を読む」シリーズなど、するどい状況分析に基づく政治・経済予測を毎年出している長谷川慶太郎さんの近著。

長谷川さんの情報が正しいのかどうかわからないが、論理の筋道が立っており参考になる。

この本と同じ路線の「2014年、中国は崩壊する」も読んでみた。

こちらは元マイカル法務部でマイカル大連などの出店経験があるという現国会新聞社編集次長の宇田川 敬介さんが書いたものだ。

北京駅の荷物検査場には手りゅう弾を爆発されるための円筒形のコンクリートの箱があったとか、一人っ子政策に反して生まれた戸籍のない人=黒子が車に轢かれても、警官は死体を崖下に投げ落とすのを見た。さらに黒子の遺族は、車の運転手に器物損壊で訴えられたというような話が宇田川さんの本では載っている。

中国人にとってメンツがいかに重要かという宇田川さんの議論はよくわかったが、上記のような話は、いくらなんでもあり得ないのではないかと思う。

2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)
著者:宇田川 敬介
扶桑社(2012-06-01)
販売元:Amazon.co.jp


この本で長谷川さんが予想しているシナリオは次の通りだ。

1.中国ではいままで毛沢東の系譜を継ぐ文革路線の人民解放軍と、胡錦濤・温家宝らが推進する改革開放路線の中国共産党の対立があった。人民解放軍は毛沢東思想を信奉し革命を推し進めるという立場だが、中国共産党は革命を放棄している。

2.人民解放軍の7つある軍区のうち最大の勢力は瀋陽軍区だ。瀋陽軍区には核兵器はないが、ロシアと国境を接しているので5つの機械化軍団のうち4軍団を傘下におき、最強の軍事力を誇っている。

中国の軍区は次の図の通りだ。

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出典:本書4-5ページ

3.2012年に毛沢東派の薄煕来・重慶市共産党書記・党中央政治局員が、収賄と妻の英人ビジネスマン殺人容疑により失脚し、中国共産党トップの9人の政治局常務委員には人民解放軍の代表はいなくなった。薄煕来は、重慶市に行く前は遼寧省省長や大連市長を歴任した瀋陽軍区の出世頭だった。

4.北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)は瀋陽軍区の傀儡で、先日のミサイル発射もすべて瀋陽軍区の命令を受けて金正恩が実施している。北朝鮮の軍事パレードには瀋陽軍区が貸し出した武器が使われている。

5.北朝鮮は3度目の核実験を近いうちに必ず実施する。瀋陽軍区は核兵器を持っていないため、北朝鮮に核兵器を開発させ、それを瀋陽軍区の切り札として北京政府を恫喝したいからだ。

6.北朝鮮が3度目の核実験を行うと、国連はいままでの経済制裁では効果がないとして、武力制裁を決議する可能性が高い。そうすると常任理事国の中国は、武力制裁に同意せざるをえない。

そうなると北朝鮮の実質支配者である瀋陽軍区が北京政府に叛旗を翻し、中国は分裂状態になる。最終的には中国は、7つの軍区に分かれた連邦制になると長谷川さんは予想している。

7.こういった情勢をわかっていないのは日本だけで、米国は中国が分裂状態になることを予想している。その際に北京政府が米国に助けを求めてくる可能性もあるとみて、2011年に第7艦隊の空母を2隻に増やした。それがトモダチ作戦で活躍した空母ロナルド・リーガンだ。



沖縄にオスプレイを配備して海兵隊の機動性を増したのもその戦略の一環である。



昨年の反日デモでは、暴徒が毛沢東の肖像画を掲げているのが目についた。



毛沢東の主導した文化大革命がいかに悲惨なものだったかは、このブログで紹介した「私の紅衛兵時代」で紹介した通りだ。

長谷川さんの見立てが正しいかどうかわからないが、中国が混乱に陥る可能性はあるのではないかと思う。

そのほか参考になった点をいくつか紹介しておく。

★パナソニックは主力のマレーシアのコンプレッサー工場が、中国のメーカーとの競争に負けて閉鎖に追い込まれた。パナソニックの中国のテレビなどの工場も赤字で閉鎖したいが、中国政府が閉鎖を認めないので、操業中止状態にある。

★中国では輸出不調と不動産価格下落のため失業者は1億人いる。銀行が不動産融資を絞ったため、不動産価格は暴落している。不動産価格は2011年末時点で前年比半額以下になったという。

★中国には預金保険制度がないので、銀行はみんな粉飾決算をしている。中国政府は必死に銀行をテコ入れしている。

★高速鉄道網建設は、総延長8万キロの予定が実績は2万キロしか建設できていない。2011年1年間では300キロしか建設できていない。建設資金が滞ったことと、乗客が少ないためだ。2011年7月の浙江省温洲の高速鉄道事故では、あれだけの大事故なのに死者は40名だけだった。乗客が少なかったからだ。

★中国の富裕層の海外移住で一番人気はカナダだ。固定資産と流動資産160万カナダドルを持ち込むと国籍が買える。カナダのマンションを、香港の財界人の李嘉誠は多く開発し、中国人の富裕層に売っているという。

★上海のブランドショップは店員が偽物をつかませるという噂がある。だから中国人は東京に来てブランド物を買うのだ。

★中国の不穏な動きに敏感に反応したミャンマーは中国離れをして、中国のプロジェクトの多くは中止となった。しかし西側の経済進出で活気を呈している。

★韓国の朴正煕大統領は一切蓄財をしない立派な大統領だったという。娘の朴さんが今回大統領になったが、2DKのマンションに住んで質素な生活をしているという。

★米国の陸・海・空軍は米国議会の上院下院の本会議で戦争決議が成立しないと軍事行動をとれないが、海兵隊は例外で大統領の命令で戦闘行動がとれる。

だから朝鮮半島になにか事が起これば、沖縄の海兵隊がオスプレイで飛ぶのだ。沖縄の海兵隊がいなければ、韓国の国防は成立しない。

★尖閣列島は、人民解放軍の南海艦隊が勝手に動いていて、北京政府は後追いで追認している。先軍政治色が強くなっている。

★中国では電圧もコンセントの形状も地域によってバラバラだ。北京と天津を結ぶ高圧電線もない。

★中国の原子炉はいろいろな国の技術のつぎはぎで、安全性には大きな疑問がある。しかし、すでに15基の原子炉が稼働している。

★日本のメタンハイドレードの開発技術はカナダから導入している。カナダのハドソン湾にもメタンハイドレードが大量に埋蔵されており、その開発技術を使っている。

★アメリカ経済の立役者となるシェールガス革命によりロシアの相対的発言力は低下している。プーチンは日本に天然ガスを買ってもらいたいと思っている。

カナダもインドネシアも天然ガスを売りたいので、日本は有利に交渉を進めることができる。

上記のように様々な情報をポンポン紹介している。しかし、真偽のほどは筆者はまだ確かめていない。まずは未確認情報としておいていただきたい。


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