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■在日米軍の問題点
八木隆次 (フォーラム平和・人権・環境)


1.在日米軍の概要
(1)在日米軍兵士
 在日米軍のホームページによれば、日本に駐留している米軍人の数は約50,000人です(内訳は陸軍2,000人、空軍13,000人、海軍19,000人、海兵隊16,000人)。日米間には、在日米軍兵士の数を定めた取り決めはありません。米国は独自の判断で、兵士の数を増やし、また減らすことができます。
 2006年5月1日、日米両国政府はワシントンD.Cで日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、在日米軍再編についての合意文書「再編実施のためのロードマップ」を発表しました。このロードマップには、沖縄に駐留する海兵隊について、①2014年までに海兵隊員8,000人と家族9,000人をグアムに移転する、②移転のためにグアムに建設する新基地・隊舎・家族住宅などの総費用107.2億ドルのうち、60.9億ドルを日本が負担する――などが盛り込まれました。09年2月17日には、オバマ新政権の下で国務長官に就任したヒラリー・クリントン氏が来日し、中曽根弘文外務と会談して「海兵隊グアム移転協定」に署名しました。
 しかし、協定の承認に関する国会審議のなかで、社民党や民主党の追及により、政府は、海兵隊の削減は「実数」ではなく「定数」であることを認めました。つまり米側が海兵隊の「定数」を1万8,000人から1万人にすることであり、実数で何人削減されるのかは不明なのです。

(2)在日米軍施設
 日本政府が米軍に提供している施設は85か所(本土52か所、沖縄33か所)で、面積は309k㎡(本土80k㎡、沖縄229k㎡)です。またこれ以外にも米軍は、自衛隊が保有する施設のうち、49施設を使用することができます。
 日米安保条約や日米地位協定などの規定によって、日本は米国に無償で基地を提供しています。本土にある米軍基地の多くは、終戦前は旧日本軍の基地として使用されていた土地であり、現在でも日本政府の財産です。そのため土地の賃貸料は必要ありません。
 一方で沖縄にある米軍基地の多くは、米軍統治時代に米軍が住民から収用したものであり、地権者が存在します。そこで日本政府は米軍基地の地権者(軍用地主)に、土地の賃貸料を払っています。「沖縄タイムス」の記事(06年1月10日)によれば、米軍基地に土地を提供している軍用地主は約33,000人で、03年度の地料は770億円とのことです。

(3)思いやり予算
 日米政府間の取り決めでは、米軍の駐留経費は米国の負担です。ところが78年以降、日本政府は駐留経費の一部を負担するようになりました。これが「思いやり予算」です。08年度の「思いやり予算」は2,083億円です。78年から08年までの総額は5兆3,710億円にのぼります。「思いやり予算」は、基地内従業員の給与、基地の光熱水費、隊舎や家族住宅の建設費などに使われています。

2.在日米軍部隊の特色
(1)空母と海兵隊の海外展開地

①海軍・・・唯一の空母の海外母港
 米海軍は1973年以来、横須賀基地に航空母艦を配備しています。横須賀基地は、米海軍が保有する唯一の空母の海外母港です。現在は、原子力空母ジョージ・ワシントンが配備されています。米海軍は10隻の原子力空母を保有していますが、海外に母港があるのはジョージ・ワシントン1隻です。また第7艦隊に所属するイージス艦9隻も、横須賀基地を母港にしています。イージス艦のうち5隻は、SM-3ミサイルを搭載したミサイル防衛対応艦船です。この他、佐世保基地には、海兵隊が上陸作戦に使用する揚陸艦4隻が配備されています。

②海兵隊・・・第3海兵遠征軍の展開
 沖縄県には、第3海兵遠征軍の司令部と傘下の実戦部隊が配備されています。米海兵隊は3つの遠征軍を保有していますが、海外に展開しているのは第3海兵遠征軍だけです。沖縄県にある北部訓練場は、海兵隊が保有する唯一のジャングル戦闘訓練場であり、米本土から派遣された海兵隊部隊が訓練を行っています。また岩国基地には、海兵隊の戦闘機部隊が配備されています。

③空軍・・・アジア太平洋地域全域に展開
 在日米空軍は、横田基地、嘉手納基地、三沢基地の3つの航空基地を保有しています。横田基地は、アジア太平洋地域の空輸の中心として活用されています。嘉手納基地には、F-15戦闘機隊が2個配備されています。また韓国の烏山基地や米本土から、頻繁に空軍機が飛来して訓練を行っています。最近では北朝鮮のミサイル発射実験や核開発を監視するために、RC135U偵察機、RC135W電子偵察機、RC135大気収集機など、特殊な任務を帯びた航空機が飛来しています。07年以降は、F-22戦闘機の一時配備がたびたび行われています。三沢基地にはF-16戦闘機隊が2個配備されています。

④陸軍・・・アジア太平洋地域の倉庫
 在日米陸軍には、大規模な戦闘部隊は配備されていません。陸軍が保有する主な施設は、相模総合補給廠です。ここには、米陸軍がアジア太平洋地域で戦闘を行うのに必要な軍需物資が備蓄されています。
 ※沖縄県のキャンプ・トリイに、基地警備の名目で、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)部隊が配備されています。

(2)在日米軍と「極東条項」
 在日米軍の特色は、空母と海兵隊の前方展開基地だということです。03年のイラク侵攻には、横須賀を母港とする空母キティーホークが参戦し、艦載機部隊がバグダッドを空爆しました。同じく横須賀を母港とするイージス艦カウペンスは、イラクに対して巡航ミサイル・トマホークを撃ち込んだ最初の艦船です。第3海兵遠征軍は長期間にわたって、部隊をアフガニスタンやイラクに派遣しました。
 日米安保条約第6条には、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と書かれています。これは在日米軍の活動範囲を、日本と極東に限定するものです。しかし、在日米軍はアフガニスタン侵攻やイラク侵攻で中心的な役割を担っています。在日米軍が日米安保条約を逸脱する行動を行っていることに対して、日本政府は黙認を続けています。

3.在日米軍の問題
(1)多発する米軍関連の事件・事故
 軍人・軍属・家族による事件や事故が多発しています。日本政府の資料によれば、交通事故から性暴力・殺人まで含めた発生件数は、02年・1,944件、03年・2,079件、04年・1866件、05年・1,755件、06年・1,549件――です。
 2008年2月には沖縄県北谷町で、海兵隊兵士が女子中学生に性暴力をふるう事件が発生しました。この事件に対して、3月23日には地域の子ども会や婦人会が呼びかけて、6,000人を超える人々が集まって抗議集会が開かれました。また4月14日・15日の両日には、沖縄県議会議員や市町村長などが上京して、日本政府や米国大使館に対する要請行動を行いました。
 未成年の少女が米軍兵士に性暴力をふるわれたのは、初めてではありません。95年9月に、3人の米兵が12歳の女子小学生を誘拐し性暴力を振るう事件が起きました。米兵はレンタカーを使い、粘着テープで少女の目や口をふさぎ誘拐したのです。沖縄県警は逮捕状をとり、米軍に兵士3人の身柄の引き渡しを求めましたが、米軍は地位協定を理由に拒否しました。地位協定は米軍関係者が事件や事故を起こした場合の裁判権について、公務中であれば米軍にあり、公務外であれば日本側にあると定めています。しかし公務外であっても、容疑者の身柄を米軍側が確保している場合は、日本側への引き渡しは起訴後としていたのです。また事件直後、米太平洋軍のリチャード・マッキー司令官は「レンタカーを借りる金で女を買えた」と発言し、県民の心を逆なでしました。米軍の対応に怒りの声は大きくなり、10月には宜野湾市で、85,000人が参加しての抗議集会が開かれました。
 事件を受け、当時の村山政権は米国政府と交渉し、殺人や女性暴行など凶悪犯罪については、米側が早期の引き渡しに配慮することで合意しました。しかしその後も、事件・事故は減少しませんでした。最近では性暴力以外にも、06年1月に横須賀市で海軍兵士が日本人女性を殺害する事件が、08年4月には横須賀市で海軍兵士がタクシー運転手を殺害する事件が起きています。

(2)米軍艦船による放射能漏れ事故
 08年7月、日本にもたびたび寄港している原子力潜水艦ヒューストンが、放射能漏れ事故を起こしていたことが判明しました。事故に関する米海軍の「最終報告書」には、閉じられたバルブから放射能を含んだ冷却水が染み出した、放射能が漏れていたのは06年6月から08年7月までの2年間、冷却水に含まれていて放射能はコバルト、漏れた放射能量では人体・海洋生物・環境には影響がない――と記載されました。しかし、放射能漏れを起こしたバルブは船のどの位置のものか、なぜバルブから放射能が漏れたのか、放射能が人体や環境に影響ないという根拠は何か――など肝心なことは書かれていませんでした。
 1964年、原子力潜水艦シードラゴンが佐世保港に寄港しました。米海軍の原子力艦船が日本に寄港したのは、このときが初めてです。放射能漏れなどを危惧する日本に対して、米国は「エードメモワール」を発表し、原子力艦船の安全性を強調しました。また原子力空母の横須賀母港使用に際しては、「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」を日本政府に提出し、米海軍の原子力艦船が放射能漏れを起こすことはあり得ないと断言していました。
 ヒューストンの放射能漏れ事故は、絶対に起きないはずの事故でした。しかし米国からは十分な説明は無く、日本政府も独自の調査は何も行わずに米国の説明を受け入れてしまったのです。
 ヒューストンは放射能漏れの期間中に、長崎県の佐世保基地に5回、神奈川県の横須賀基地に1回、沖縄県のホワイトビーチに5回、寄港していました。これらの基地がある自治体の首長は、日米政府に対する不信感を強めました。

4.在日米軍再編による変化
 日米両国政府は05年以来、在日米軍再編に関する協議を続け、4つの合意文書を発表しました。
 「共同発表」(05年2月19日)では日米の共通の戦略目標を、「日米同盟 未来のための変革と再編」(05年10月29日)では米軍と自衛隊の役割・任務・能力を、「再編実施のための日米のロードマップ」(06年5月1日)では具体的な在日米軍基地の再編を、「同盟の変革:日米の安全保障及び防衛協力の進展」(07年5月1日)では最終的な合意を――それぞれ確認しました。これらの合意によって、在日米軍と自衛隊の関係は大きく変化しました。以下の通りです。
(1)日米の司令部統合
 在日米空軍司令部は横田基地に、航空自衛隊・航空総隊司令部は府中基地にあります。在日米軍再編では、2010年までに航空総隊司令部を横田基地に移転します。同時に、日米共同統合運用調整所を設置して、防空とミサイル防衛に関する調整を行うことになっています。在日米陸軍司令部は、キャンプ座間にあります。在日米軍再編では、陸上自衛隊・中央即応集団司令部をキャンプ座間に移転します。中央即応集団は、海外派兵や戦時の緊急展開の専門部隊として新設されたものです。在日米海軍司令部と海上自衛隊・自衛艦隊司令部は、現在でも横須賀基地に同居しています。在日米軍再編によって、日米の陸・海・空3軍全ての司令部が統合することになります。

(2)米軍による自衛隊基地の使用
 在日米軍再編では、空軍・嘉手納基地、空軍・三沢基地、海兵隊・岩国基地に所属する戦闘機の訓練を、航空自衛隊の千歳基地、百里基地、小松基地、新田原基地、築城基地の5か所に移転することで合意しました。また1997年以来、キャンプ・ハンセンで行われていた海兵隊砲兵連隊の砲撃演習が、矢臼別演習場、王城寺原演習場、東富士演習場、北富士演習場、日出生台演習場に移転して行われています。

(3)米軍による民間港湾の使用
 在日米軍再編の合意以降、顕著になったものに、米軍艦船による民間港湾の使用があります。在日米海軍は、横須賀基地、佐世保基地、ホワイトビーチなど専用の軍港を持っています。1997年に締結した「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)で日本政府は、日本の周辺で戦争が起こった場合に米軍に対して民間港湾や民間空港を提供することを約束しました。そのため米海軍の艦船が民間港湾に入港する事態が増大しました。さらに、在日米軍再編合意以降は06年・28隻、07年・28隻、08年・20隻と増加しています。

(4)新基地建設
 日本政府は、沖縄県にある海兵隊・普天間基地を閉鎖する代わりに、同じ沖縄県内の名護市辺野古に新基地を建設することを米国に約束しました。新たな基地の建設は、1972年の沖縄の本土返還後、初めての事です。
 在日米軍再編の目的は、米国がアフリカ大陸東岸から東北アジアにかけての地域(不安定の弧)で軍事介入を行う場合に、日本全体を出撃基地として使用できるようにすることです。またこの地域での軍事パートナーである自衛隊を、米軍の中に組み込むことです。これまでも日米関係は、米国が上位で日本が下位の不均等な同盟でした。また地位協定によって、在日米軍は治外法権を保持していました。在日米軍再編は、日本と自衛隊を下位のパートナーとして固定し、米国と米軍への一層の従属を強めるものです。日本がアジア太平洋地域の国々と友好な関係を築くためには、米軍基地の縮小・撤去を進める必要があります。


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