[スキージャンプ男子] 日本の誇り 岡部孝信と葛西紀明
日本が誇る2人の大ベテランジャンパーが好調です。
1970年生まれの43歳・岡部孝信選手は、12月14日に行われた国内ジャンプ競技の開幕戦・名寄ピヤシリ大会で、92m・99.5mと2本のジャンプを揃えて優勝しました。
1972年生まれの41歳・葛西紀明選手は、12月15日にドイツ・ティティゼーノイシュタッドで行われた、ジャンプのW杯で3位となり、W杯の最年長表彰台記録を更新しました。
両選手共に、1994年のリレハンメルオリンピックから出場しているというのですから、20年以上に渡って、日本男子スキージャンプ競技を引っ張ってきたということになります。気の遠くなるようなキャリアです。
岡部選手には、リレハンメル五輪の団体銀メダル、長野五輪の団体金メダル、世界選手権団体の3つの銅メダルといった数々の実績があります。
葛西選手にも、リレハンメル五輪の団体銀メダル、世界選手権の2つの団体銀メダル、2つの個人銅メダル、W杯の2回の個人総合3位といった数々の実績があります。
2人とも、日本男子スキージャンプ陣の中心選手として活躍を続けてきたのですが、この2人は競技人生において「厚い壁」にぶつかり、それを克服してきたところが、最も素晴らしい点だと思うのです。
岡部選手について有名なのは、レギュレーションの変更です。身長165cmと小柄な岡部選手の長野五輪の活躍を踏まえてなのかどうかはともかくとして、1988年の長野五輪直後に、スキージャンプのレギュレーション(規格)が大幅に変更されてしまいました。いわゆる「146%ルール」と呼ばれるもので、使うスキーの長さが最大「身長×146%」に制限されるというもので、身長が比較的低い日本人ジャンパーに圧倒的に不利な変更といわれました。
スキー板で風を捉え、より遠くに落下することを競うジャンプ競技では、風に当たる「スキー板の面積」が大きい方が有利ですので、スキー板は長いほうが良いのです。
この変更は、岡部選手に大きな影響を与え、2002年のソルトレークシティ五輪の代表からも外れました。既に30歳を越えていた岡部選手は、引退するのではとも囁かれました。
しかし、2005年~2006年シーズンに岡部選手は見事に復活しました。当時35歳の岡部の復活は、特に海外から「奇跡」と賞賛されました。ジャンプ王国オーストリアの専門誌で岡部特集が組まれたと報じられました。
ジャンプスタイルの根本的な見直しという、30歳を過ぎたトップアスリートにとっては、極めて難しいことに挑戦し、見事に完遂したという事実は、日本の誇りといえるでしょう。
2009年には、W杯で優勝し、自身の持つW杯最年長優勝記録を38歳4ヶ月に伸ばしました。そして、頭書の通り2013年~2014年シーズンの国内初戦で優勝したのです。
岡部選手はソチオリンピック代表を狙っていると思います。スキージャンプ競技における43歳のオリンピック代表!何と素晴らしいことでしょうか。
葛西選手の方は「ジャンプフォームの変遷」に悩まされてきた20年間であったと思います。V字フォームが当たり前になった頃、ジャンパーは前に突っ込むほど良いと言われる時代が続きました。
その時代、葛西選手の飛行フォームでは体の前傾が凄まじく、「ほとんどスキーと一直線」のフォームを実現し、飛距離を延ばしたのです。高い飛行線と言うよりは、前に前にと体を投げ出す低い飛行線が葛西選手の特徴となりました。とても美しいと思いました。
ところがその後、飛行スーツの変更のためか、スキー板の改良のためか、原因は分かりませんが、「あまり突っ込まないほうが良い」という時代がやってきました。このあたりの「スキージャンプ理論」の変遷は、私には分かりませんが、ジャンプ競技には時々、前の理論が正しかったのか疑問に感じられる変更が起こります。
とにもかくにも、葛西選手は時代時代の理論に則って、飛行フォームを変更し続けてきました。現在の葛西選手は、あまり突っ込み過ぎず、お腹の辺りに丸い空気の球が存在するようなフォームです。こうやってフォームを変更し続けながら、常に世界・日本のトップジャンパーの地位を維持し続けてきたのです。もの凄いことだと思います。
頭書の成績で分かるように、葛西選手は今季もW杯に出場し続けています。これは、現時点の日本ジャンプ陣シード選手であることの証拠です。ソチオリンピックの代表有力候補といえるでしょう。
もし、ソチ五輪に出場できれば7大会連続「7度目のオリンピック出場」となります。何か想像を絶する、途方も無い記録ですが、これは冬季オリンピックにおける世界最高記録になるようです。
岡部選手も葛西選手も
① 絶対筋力の維持
② 肉体的持久力の維持
③ 競技技術の維持・向上
④ 精神面の充実
という、とても難しい課題を懸命にそして見事にクリアし続けています。
我が国に、岡部選手や葛西選手に引退を決意させるような若手の台頭が無い点には、一抹の寂しさもありますが、私はどちらかといえば「若手の台頭を凌ぐ、強力なベテランが居る」と考えます。
ソチの空に、我が国が世界に誇る2人のアラフォージャンパーが、大きな飛行線を描く姿を、是非是非観てみたいものです。
1970年生まれの43歳・岡部孝信選手は、12月14日に行われた国内ジャンプ競技の開幕戦・名寄ピヤシリ大会で、92m・99.5mと2本のジャンプを揃えて優勝しました。
1972年生まれの41歳・葛西紀明選手は、12月15日にドイツ・ティティゼーノイシュタッドで行われた、ジャンプのW杯で3位となり、W杯の最年長表彰台記録を更新しました。
両選手共に、1994年のリレハンメルオリンピックから出場しているというのですから、20年以上に渡って、日本男子スキージャンプ競技を引っ張ってきたということになります。気の遠くなるようなキャリアです。
岡部選手には、リレハンメル五輪の団体銀メダル、長野五輪の団体金メダル、世界選手権団体の3つの銅メダルといった数々の実績があります。
葛西選手にも、リレハンメル五輪の団体銀メダル、世界選手権の2つの団体銀メダル、2つの個人銅メダル、W杯の2回の個人総合3位といった数々の実績があります。
2人とも、日本男子スキージャンプ陣の中心選手として活躍を続けてきたのですが、この2人は競技人生において「厚い壁」にぶつかり、それを克服してきたところが、最も素晴らしい点だと思うのです。
岡部選手について有名なのは、レギュレーションの変更です。身長165cmと小柄な岡部選手の長野五輪の活躍を踏まえてなのかどうかはともかくとして、1988年の長野五輪直後に、スキージャンプのレギュレーション(規格)が大幅に変更されてしまいました。いわゆる「146%ルール」と呼ばれるもので、使うスキーの長さが最大「身長×146%」に制限されるというもので、身長が比較的低い日本人ジャンパーに圧倒的に不利な変更といわれました。
スキー板で風を捉え、より遠くに落下することを競うジャンプ競技では、風に当たる「スキー板の面積」が大きい方が有利ですので、スキー板は長いほうが良いのです。
この変更は、岡部選手に大きな影響を与え、2002年のソルトレークシティ五輪の代表からも外れました。既に30歳を越えていた岡部選手は、引退するのではとも囁かれました。
しかし、2005年~2006年シーズンに岡部選手は見事に復活しました。当時35歳の岡部の復活は、特に海外から「奇跡」と賞賛されました。ジャンプ王国オーストリアの専門誌で岡部特集が組まれたと報じられました。
ジャンプスタイルの根本的な見直しという、30歳を過ぎたトップアスリートにとっては、極めて難しいことに挑戦し、見事に完遂したという事実は、日本の誇りといえるでしょう。
2009年には、W杯で優勝し、自身の持つW杯最年長優勝記録を38歳4ヶ月に伸ばしました。そして、頭書の通り2013年~2014年シーズンの国内初戦で優勝したのです。
岡部選手はソチオリンピック代表を狙っていると思います。スキージャンプ競技における43歳のオリンピック代表!何と素晴らしいことでしょうか。
葛西選手の方は「ジャンプフォームの変遷」に悩まされてきた20年間であったと思います。V字フォームが当たり前になった頃、ジャンパーは前に突っ込むほど良いと言われる時代が続きました。
その時代、葛西選手の飛行フォームでは体の前傾が凄まじく、「ほとんどスキーと一直線」のフォームを実現し、飛距離を延ばしたのです。高い飛行線と言うよりは、前に前にと体を投げ出す低い飛行線が葛西選手の特徴となりました。とても美しいと思いました。
ところがその後、飛行スーツの変更のためか、スキー板の改良のためか、原因は分かりませんが、「あまり突っ込まないほうが良い」という時代がやってきました。このあたりの「スキージャンプ理論」の変遷は、私には分かりませんが、ジャンプ競技には時々、前の理論が正しかったのか疑問に感じられる変更が起こります。
とにもかくにも、葛西選手は時代時代の理論に則って、飛行フォームを変更し続けてきました。現在の葛西選手は、あまり突っ込み過ぎず、お腹の辺りに丸い空気の球が存在するようなフォームです。こうやってフォームを変更し続けながら、常に世界・日本のトップジャンパーの地位を維持し続けてきたのです。もの凄いことだと思います。
頭書の成績で分かるように、葛西選手は今季もW杯に出場し続けています。これは、現時点の日本ジャンプ陣シード選手であることの証拠です。ソチオリンピックの代表有力候補といえるでしょう。
もし、ソチ五輪に出場できれば7大会連続「7度目のオリンピック出場」となります。何か想像を絶する、途方も無い記録ですが、これは冬季オリンピックにおける世界最高記録になるようです。
岡部選手も葛西選手も
① 絶対筋力の維持
② 肉体的持久力の維持
③ 競技技術の維持・向上
④ 精神面の充実
という、とても難しい課題を懸命にそして見事にクリアし続けています。
我が国に、岡部選手や葛西選手に引退を決意させるような若手の台頭が無い点には、一抹の寂しさもありますが、私はどちらかといえば「若手の台頭を凌ぐ、強力なベテランが居る」と考えます。
ソチの空に、我が国が世界に誇る2人のアラフォージャンパーが、大きな飛行線を描く姿を、是非是非観てみたいものです。
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