経済産業省が電通に丸投げ3500万円:映画、アニメ中国共同製作、ロケ誘致後方支援事業

今月12日に韓国の文化体育観光部が中国国営の中国电影集团公司と年内に共同製作協定締結すると発表した。

中国は公開する外国映画の数を制限しているため、共同製作認定により韓国映画プロダクションは中国映画のステータスを得るで国内映画の扱いで劇場公開にアクセスできるものである。

さらに互いの国で撮影する時に優遇を受けるだけに留まらず、需要が増しているVFX受注、俳優、クルーを含む映画に関わる様々な人員が国際プロジェクトに携われる機会を増やす協定になるという。

また今月インドも中国との国際共同製作協定締結に向けた政府級のワーキンググループを組織した。

一方日本はどうなのか?

我が国の映画やアニメ等を含むコンテンツは、アジアを始めとした世界各国において高い人気を博しており、2020年には、我が国のコンテンツ産業の売上高は20兆円程度に増加すると見込まれている。そのためには、海外市場獲得のための海外マーケットの調査や、海外マーケットを視野に入れたコンテンツを制作する国際共同製作の促進等が重要である。

しかし、国際共同製作の担う人材(プロデューサー、クリエイター)が十分に育っていないこと、諸外国に向けた我が国の情報基盤が存在していないこと、海外マーケットに関する市場調査が弱いことから、国際共同製作や海外ロケ誘致等の実績は思うように上げられていないのが現状である。

そこで、我が国のコンテンツ海外展開をより効率的・効果的に実施するために、海外のコンテンツ産業に関する調査や情報収集及び情報発信を実行できる、海外拠点を設置し、現地の日本企業等に対して販路開拓等の指導等を行うことで、我が国のコンテンツ産業規模を大きく成長させることを目的とする。

経済産業省が中国との共同製作、ロケ誘致の推進目的に平成24年5月16日から6月4日に公募をかけ「コンテンツ産業強化対策支援事業(映画・アニメ海外展開後方支援事業」を実施し、これを株式会社電通が約3500万円で受託し、北京電通広告有限公司を情報拠点とした。

この事業に関わる情報開示文書全文は下記の通りである。

契約書 実績報告書 事業報告書 (PDF)

公募の事業デザインを見ただけでも、韓国など世界の諸外国と日本の政府レベルの思考と未来ビジョンに絶望的な差があることがわかる。

実際、事業報告書をみてもその多くは共同製作、ロケ誘致とはあまり関連性のない「中国はこんなところだよ」とネット収集程度情報で極めて非実用的である。

そもそも国家が収集しなくとも対等な共同製作であれば、パートナー相手国がこういった自国情報を無償で用意するのが常識である。

政府間で協議すべき共同製作を、2週間程度の公募で採択した事業委託で継続的に協議することはできない。またそれを広告代理店で行なえば国家間の信用にもかかわる話である。

いつものように「電通さんにしかできない仕事」と国家認定し、未来永劫に渡って随意契約で電通と北京電通広告有限公司がこの分野の国家総代理店になって解決する話でもない。

しかもこの国にはすでに無数の官庁、行政組織が共同製作、ロケ誘致を謳い事業を行っている。

このコンテンツ強化専門調査会の議事録を見ても「 ANEWの経産省でございます 」「共同製作協定の外務省でございます」「 共同製作支援の文化庁でございます 」「テレビの総務省でございます」 +各傘下天下り、類似組織が存在し、根本的組織が国際的に一切機能していない組織に毎年税金が使われているのがわかる。

この情報で日本の映画共同製作やロケ誘致がお金の話ができるようになったのか?

この単純な質問に応えられない国家施策であるならばそれは無意味である。これを自問しするだけでもこの3500万円の事業広告書が共同製作、ロケ誘致に機能しないことがわかる。

また現実世界を知らないこの程度の情報で頭を膨らませたプロデューサーが共同開発、ロケ誘致を実現することもできない。

これについては事業開始時に内閣府情報公開・個人情報保護審査会の意義申し立てでも言及した。

経済産業省の同様な非実用的な情報収集事業は他にもある。コンテンツ産業強化で執行した「映像コンテンツの資金調達の検討に関する報告書 」もその例である。

まずここで取り上げらるケーススタディのソニーピクチャーズの映画「レインフォール」が失敗例であること、また資金調達に使用した香港銀行は数年前にアジア向け映画への融資を終了している。

この報告書をみても日本人プロデューサーにとって資金調達情報の実用性は皆無である。

製作現場と世界状勢の根本理解していない官僚と国家コンサルが発表する全く使えないこのような情報に毎年数千万円、数億の年度予算を使い切る事が最新の日本の”支援事業”となっている現状がある。

国際共同製作、ロケ誘致に足りないものは情報ではない。また情報は無数に溢れている。

また何のための共同製作、ロケ誘致なのか?

残念ながら経済産業省には国家課題の本質を理解する事も、それを解決する能力もない。あるのは税金を使い切る口実をでっち上げるだけで日本の産業の発展はあるのか?

国内官僚論理では海外市場は手に入らないし、相手にもされない。

もうすでに日本の行政施策は国際競争の遥か後方においていかれ国内で「クールジャパン」と一人で騒いでいるだけになっている。

それは日本の映画、アニメ産業に外資や投資を取り込み日本人産業雇用創出と産業振興が計れる術なのか?

これが応えられないようであればクールジャパンは本当にフールジャパンである。

刻も早く映画、アニメ産業の未来とは無関係の人間が税金を使って終わりにしてやり過ごすのではなく、また映画、アニメ産業に機能する、国際的に機能する国家組織、戦略にしなければ本当にこの国の映画、アニメ産業には未来がないと思う。

“経済産業省が電通に丸投げ3500万円:映画、アニメ中国共同製作、ロケ誘致後方支援事業” への 2 件のフィードバック

  1. 始めまして、毎回勉強するつもりで読ませていただいています。
    コンテンツ産業強化支援事業の国際共同製作の担う人材不足とありますが、本当にそうなのか?と勘ぐりたくなります。個人的に海外のクリエーターと親交をもっているかたもいますし、本当不足しているのは、資金繰りや海外でのリクープビジョンを持ったビジネスプロデューサーであると思います。
    それにしても政府がクールジャパンというと政治が絡むパフォーマンスにしか見えないのは私だけでしょうか…

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