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?3)相談室 相談室
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1.市税の滞納者Aに督促状を発付しましたが、未
だ納付が確認できないので、更に催告文書を送付
したところ、口頭による納付誓約がとれました。
これらは、時効の中断事由となるでしょうか。
2.市税を滞納していたBが、時効が完成している
のを知らずに納付の申出をしてきましたが、どの
ように取り扱えばよいでしょうか。
1.督促状発付後における催告文書の送付は、時効
中断の効力を確定的には有しません。
また、口頭による納付誓約は、理論上は時効中
断事由となり得ますが、立証は非常に困難です。
2.消滅時効により徴収権は絶対的に消滅し、仮に
時効完成後に納付の申出があったとしても、これ
を徴収することはできません。
1.地方税法上の消滅時効制度について
地方税法(以下「法」といいます。)では、地方団
体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(以
下「徴収権」といいます。)について、原則として法
定納期限(注)の翌日から起算して5年間行使しな
い場合には、時効により消滅すると定めています
(法18条)。
ここでの徴収権とは、確定した地方団体の徴収金
の履行を求める権利とされ、租税債権の内容を確定
する権利としての賦課権とは異なります。
賦課権は、確認を主たる内容とする公法上の特殊
な行政処分をすることができる一種の形成権、つま
り、一方的に租税法律関係を形成する権利であると
考えられるのに対し、徴収権については、一般の私
債権に近似した性格を有しています。
このため、賦課権の行使に係る期間制限の制度と
しては、中断等のない除斥期間の制度が適用されて
います(法17条の5)が、徴収権については、私債
権における消滅時効制度が適用されています。
なお、消滅時効の起算日は、法定納期限の翌日と
されていますが、法18条第1項各号に該当する場合
には各号に定める日の翌日が起算日となります。
(注)法定納期限(法11条の4)
法又はこれに基づく条例の規定により地方税を納付
し、又は納入すべき期限(修正申告、期限後申告、更
正若しくは決定、繰上徴収又は徴収の猶予に係る期限
その他政令で定める期限を除く。)をいい、地方税で
納期を分けているものの第二期以降の分については、
その第一期分の納期限をいい、督促手数料、延滞金、
過少申告加算金、不申告加算金、重加算金及び滞納処
分費については、その徴収の起因となった地方税の当
該期限をいい、随時に課する地方税については、その
地方税を課することができることとなった日(法17条
の5第1項)をいう。
2.時効の中断について
時効の中断は、時効の停止(法18条の2第4項他)
とともに、時効の完成を阻止する制度です。中断の
事由が生じると、それまで継続した時効期間が中断
され、当該中断事由が終了した日の翌日を起算日と
して、改めて新たに時効期間が進行します。
時効の中断事由としては、法18条第3項により準
用する民法上の中断事由と、法18条の2に規定され
ている中断事由とに分類されます。
(1)民法上の中断事由
準用される民法上の中断事由としては、民法147
条の各号に規定されており、①請求②差押え、仮
差押え又は仮処分③承認の3つがあります。
まず、①請求ですが、これは裁判上の請求(民
解    説
回    答
質    問
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!
?3相談室
そ う
だ ん
し つ
相談室
徴収権の消滅時効について

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法149条)としての訴訟の提起等、裁判ないしこれに
準ずる手続きを指すとされます。納付納入のしょう
よう等の催告は、民法147条の請求に該当しますが、
民法153条の規定により、その催告の日の翌日から起
算して6ヶ月以内に差押え等をしなければ、時効中
断の効力は生じないとされており、注意が必要です。
次に、②差押え、仮差押え又は仮処分ですが、地
方団体の徴収金に係る滞納処分(法331条他)による
差押えもこれに該当し、当該差押えの解除等の時ま
で時効中断の効力が継続することとなります。
最後に、③承認ですが、例えば期限後申告、修正
申告、納付誓約書の提出、その他地方団体の徴収金
の納付納入の義務の承認と認められる滞納者の行為
があったときは、これらの行為のあった時において
時効は中断します。
なお、地方団体の徴収金の一部納付納入は、一般
に、その旨の意思表示が認められる限り、その一部
納付納入に係る地方団体の徴収金全部の承認があっ
たものとして、残りの部分について時効が中断しま
す。
すなわち、当該納付納入を行った者が、地方団体
の徴収金の一部の納付納入であることを認識し、な
お納付納入すべき同一の地方団体の徴収金があるこ
とを承知していると認められるときには、当該納付
納入は承認として時効中断の効力が認められるとい
うことになります。
具体例を挙げると、分割で納付していく旨を記し
た納付誓約書を提出し、その上での一部納付があっ
た場合、当該納付は承認と認められ、一部納付があ
ったその都度、当該納付のあった徴収金の残部分に
ついて時効中断の効力を有します。逆に、例えば過
誤納金の充当(法17条の2)は、本人の承認があっ
たとは認められないことから、時効中断の効力は有
しません。
なお、承認の事実を明らかにするため、一部納付
納入があった場合においては、その領収書等に一部
納付納入である旨及び残余金額等を記載して交付す
ることが適切と考えられます。
(2)法18条の2の中断事由
法18条の2に規定されている中断事由としては、
①納付又は納入に関する告知②督促③交付要求
(参加差押えを含む。)の3つがあります。
まず、①納付又は納入に関する告知ですが、納
税通知書等により地方団体の徴収金に係る納付納
入に関する告知がされた場合、当該告知にて指定
された納付納入に関する期限までの期間につき、
時効が中断します。
次に、②督促ですが、督促状(又は第二次納税
義務者に対する督促のための納付納入の催告書
(法11条第2項))を発付したときは、その発付日
から起算して10日を経過した日までの期間につき、
時効が中断します。ただし、その発付日から10日
を経過した日までの間に、繰上徴収(法13条の2)
により差押えがされた場合には、当該差押えがさ
れた日までの期間となります。
最後に、③交付要求(参加差押えを含む。)です
が、交付要求がなされている間は、時効が中断し
ます。このとき、交付要求先の執行機関の強制手
続き(担保権の実行としての競売等)が取り消さ
れても、既に行った交付要求に係る時効中断の効
力は失われません(法18条の2第2項)。
3.時効の絶対的効力
地方税の徴収権の時効については、援用(=時効
の完成を主張すること)を要せず、また、その利益
を放棄することができません(法18条第2項)。
したがって、地方税の徴収権は、時効期間の経過
によって、絶対的に消滅することとなり、その結果、
地方団体は、納税者が時効を援用するかどうかに関
わらず、時効完成後においては徴収の手続きをとる
ことができず、また、納税者も、時効の利益を放棄
して時効完成後に納付をすることはできません。
この点、時効の利益を受ける者が援用しない限り
時効の効力が発生せず、時効期間の経過後であって
も時効の利益を放棄でき、任意に弁済が可能である
私債権とは異なります(民法145条、146条)。
この消滅時効の絶対的効力は、租税債権に限定さ
れることなく、公法上の債権に共通です(地方自治
法236条、会計法31条)。
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4.質問について
(質問1)
督促状発付後の催告文書の送付ですが、2で述べ
たとおり、これは納付納入のしょうようとしての
「催告」に該当します。ただし、民法153条には、「催
告は、六箇月以内に、裁判上の請求、(中略)、差押
え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断
の効力を生じない。」とありますので、催告の日の翌
日から起算して6ヶ月以内に差押え、承認((一部)
納付、納付誓約書の提出等)等の時効中断事由がな
ければ、当該催告について時効中断の効力は発生し
ません。(なお、催告の日の翌日から起算して6ヶ月
以内に差押え等を行えば、当該催告の日に遡って時
効中断の効力が発生します。)
まれに、「催告文書を送れば時効期間が6ヶ月延び
るので、時効が迫っても、その都度催告文書を送付
すれば時効にかからない」などと誤った理解がされ
ているケースもありますので、注意が必要です。
また、口頭による納付誓約の効力ですが、確かに
理論上は民法における承認に該当し、時効中断の効
力を有しますが、実際にそれを証明することは非常
に困難であり、特に後日の紛争等を考慮すると、事
実上これにより時効中断の効力が発生するとして運
用することは適切とは言えません。滞納となってい
る徴収金の一覧を記した納付誓約書を徴するなど、
証拠能力の観点から、後日の確認が容易な形式によ
ることが望ましいといえます。
(質問2)
租税債権に係る消滅時効が完成した場合ですが、
地方税の徴収権は時効の完成によって絶対的に消滅
し、不納欠損に係る処理を行うこととなります。
なお、仮に時効完成後に納付納入がなされても、
これを徴収することはできません。誤ってこれを徴
収した場合には、誤納金として還付又は充当しなけ
ればなりません(法17条及び同17条の2)。
5.おわりに
近年においては、差押え等の必要な措置を講じず
に租税債権を時効により消滅させた事例(※1)に
ついて、消滅時効の完成により徴収できなくなった
額(延滞金を含む。)等を地方団体に対する損害と認
定し、地方団体の長や担当職員がこれに係る賠償責
任を問われるケースが見られます。
また、消滅時効とは直接の関係はありませんが、
延滞金について滞納処分を執行しなかったことが、
徴収権者としての裁量を逸脱し、違法と確認された
判例(※2)も見られるところです。
いずれも下級審判決であることや、個別具体の事情
は各事例の内容により当然異なることから、類似事例
についてすべて一律に結論付けることは困難ですが、
地方団体における租税債権の管理・徴収については、
延滞金等の附帯金も含め、厳正な事務執行に努めなけ
ればならないことは言うまでもありません。
(大阪府総務部市町村課税政グループ)
※1 具体例としては、重大な過失により租税債権の管
理を著しく怠ったとして、監査委員による監査
結果を踏まえ、市が当時の担当幹部3名(税務担当
課長等)に対して約1億7千万円の損害賠償を求め
る訴えを起こした事例(平成18年7月28日神戸新聞
WEBNEWS)や、自ら税を徴収する義務又は職
員が違法に税の徴収を怠ることを阻止すべき指揮監
督上の義務を怠った重大な過失があったとして、長
の不法行為が認められ、当該地方公共団体に対して
損害賠償責任を負うとされた判例(平成13年2月2
2日東京高裁判決及び平成17年5月16日徳島地裁判
決)が挙げられる。(なお、後者の徳島地裁判決に
ついては、賠償命令を受けた長が判決を不服として
控訴している。)
※2 具体例としては、換価価値を有する財産があるに
も関わらず、担保も徴取せず、完納まで長期間を要
する分割納付(いわゆる少額分納)を事実上認め、
滞納処分を執行しなかったことが、徴収権者として
の裁量を逸脱し、違法と確認された判例(固定資産
税に係る延滞金について平成17年2月24日津地裁判
決、同様に不動産取得税に係る延滞金について平成
18年1月19日名古屋高裁判決)が挙げられる。
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