原発をベースロード電源として確実に利用していくためには、何よりもまず、
国民の十分な理解が不可欠であり、社会から受容されるために以下の必要条件
を満たす必要がある。
提言1:安全神話と決別し、実効性ある避難計画も含めた多重防護の徹底と
不断の安全性向上を
原発の安全性については、福島第一原発事故を教訓とし、「止める、冷やす、
閉じ込める」で放射性物質の放出は起きないとする、いわゆる「安全神話」と
決別することが必要である。リスクと正面から向き合って「放出事故は起きう
る」ことを前提とし、事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響を緩和
したり、オフサイトの緊急時対応によって公衆の線量レベルを許容値以内に抑
えたりするという、国際原子力機関(IAEA)の求める多重の安全対策を取るこ
とが肝要である。
安全性の審査は原子力規制委員会の専門的な判断に委ねられるべきであるが、
設備が規制基準をクリアしたとしてもリスクは残る。安全対策は日々向上され
るべきものであり、事業者による不断の自主的安全性向上が求められる。その
ためには、より高い自主的安全目標を達成した場合に保険料を減額するなどの
インセンティブ付与、海外事業者を含めた業界内でのピアレビューなど、海外
の事例も参考にした制度を検討すべきである。
また、オフサイトにおける安全対策の充実が必要なことは、福島での事故を
見ても明白であり、かつ、再稼働の有無を問わず早急に取り組むべき課題であ
る。避難計画の策定は、立地地域の状況を熟知する地元自治体が主体となって
行うべきであるが、複数の自治体を跨ぐ計画となること、他の原発における避
難計画策定のノウハウを共有できること、さらに大規模な災害発生時には通
信・交通インフラが機能不全となり自衛隊や海外からの支援が必要となること
などを考慮すると、国がより前面に立った支援を行うべきである。計画の策定
が遅れている地域については積極的に支援し、その計画策定を急がせ、避難訓
練においては放射性物質が放出される重大事故をあらかじめ想定し、自衛隊も
参加する実働訓練を広い地域にわたって実施すべきである。
加えて、自然災害のみならず、原発を対象にしたテロなど有事に対する備え
についても国が主導し、自衛隊による原発関連施設の警備や、警察・海上保安
庁・自衛隊などによる訓練も含めて、万全を期すべきである。