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【スクープ】北朝鮮有事に備える中国のシナリオ——想像以上に進む米中協調と核管理 | Business Insider Japan

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【スクープ】北朝鮮有事に備える中国のシナリオ——想像以上に進む米中協調と核管理

北朝鮮国境に配置されている15万の中国人民解放軍部隊が一斉に動き始めた。吉林省延辺朝鮮族自治州から北朝鮮との国境を超えた部隊は、陸と空から約100キロ東の豊渓里(ブンゲリ)核実験場を一目散に目指す。北朝鮮の核施設を中国軍が管理下に置くためだ ——。

ハリウッドの近未来映画ではない。米軍が北朝鮮を軍事攻撃した場合、「北京」が描くシナリオの一つなのだ。

それだけではない。核・ミサイル危機がエスカレートしたこの夏以来、中国はアメリカとの間でこうした「有事シナリオ」に基づき、軍事協力について詰めた話し合いを始めたということが、このほど筆者の取材でわかった。われわれの想像以上に米中協力は進んでいると見なければならない。

人民解放軍

Reuters / Jason Lee

米統合参謀本部議長とも

3年ぶりに訪れた北京で、ある中国人研究者から聞いた「有事シナリオ」の中身は衝撃だった。北京では9月半ば防空警報の試験が行われ、市内で3分間サイレンが鳴り響いた。これも有事に備えた訓練だろう。

彼は続ける。米中間ではこの春以来、制服高官同士で突っ込んだ話し合いを重ねてきた。8月半ば米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が訪中した際は、わざわざ東北部の遼寧省瀋陽まで案内し、北朝鮮に最も近い解放軍「北部戦区」の軍事訓練を視察させたほどだ。

ダンフォード氏は、同行記者に朝鮮半島有事を想定し「危機が起きた場合に米中双方が判断を誤るのを避けるため、効果的な対話の枠組みを持つことが有効だ」と語っている。

冒頭の「有事シナリオ」が、この時米中のホットな話題になったことを示唆する発言だ。米朝緊張は今のところトランプ・金正恩による口先のチキンゲームにとどまっているものの、北京もワシントンも最悪のケースに備えたシナリオ作りを怠っていない。

もし米軍が北の軍事施設をピンポイント攻撃する先制攻撃に出たら、北は38度線沿いに集中配備している数千門もの長射程砲やロケット砲を発射して反撃に出るだろう。それだけでは済まない。ワシントンと平壌はミサイル発射と核戦争準備アラートに入る。

南北統一後のシナリオも想定

その時、中国軍はどう出るのか。その回答こそ、北朝鮮危機をめぐる「北京」の本音が表れるはずだ。

中国軍が越境し北朝鮮人民軍と衝突したら、アメリカはどうするだろう?

研究者は答える。ワシントンは北京を支持する。一方、米軍が検討している「金正恩斬首作戦」を「北京」は黙認する。つまり反対しない。

金体制崩壊後のシナリオも話し合っているという。中国は韓国主導の南北統一が実現すれば、国境をはさんで米軍と隣り合わせになるから、統一には反対とみなされてきた。

しかし、研究者はそれを否定する。ワシントンは、統一した場合は米軍を朝鮮半島には置かない選択肢も検討しており、そうなれば北京の懸念はなくなるため、統一を支持するというのだ。

米中首脳会談

想像以上に緊密に連携を取っているという米中。

Reuters / Saul Loeb

北京の有事シナリオは、決して突飛とは言えない。賈慶国・北京大学国際関係学院院長が9月中旬、英文サイトに発表した「北朝鮮の最悪の事態に備える時」と題する論文には、そのアウトラインが透けてみえる。

賈氏は①北朝鮮緊急事態の対応について中国は米韓との協議を始めるべき②中国が北の核管理を担っても、アメリカは核不拡散の観点から反対しない③北朝鮮国内の秩序回復のための米軍の進駐に中国は反対——などと書いた。

先の「有事シナリオ」をなぞっているような内容ではないか。

方針転換した中国の対北姿勢

緊迫度を増す北朝鮮情勢で、よく見えないのが中国の本音だろう。朝鮮戦争では人民志願軍が参戦、毛沢東の長男を含め18万人の死者を出したから、北京は中朝関係を「血盟関係」と形容してきた。しかしそれはあくまで、冷戦時代を引きずった前世紀までの話にすぎない。

北朝鮮の朝鮮中央通信はこの5月、中国を名指し批判を始めた。文化大革命以来のことだ。一方、9月9日の北朝鮮建国記念日では、習近平主席は祝電を平壌に送らなかった。両国の首脳の相互訪問は5年以上も途絶えている。中国は国連安保理の決議に従い、北朝鮮への厳しい制裁に同調し始めた。

中国政府当局者に北朝鮮情勢について聞くと、かつては「腫れ物に触る」ように発言に慎重だった、しかし、いまやメディアや研究者も金体制批判を全く厭わず公言するようになった。

では「北京」が北朝鮮政策を根本的に見直したのはいつからか。

中朝関係に詳しい東洋学園大の朱建栄教授は、「2016年末の5回目の核実験と今年2月の金正男暗殺事件を契機に、習近平指導部は方針を転換し、4月上旬の米中首脳会談で新しい方針を明確に打ち出した」と分析する。

新方針について同氏は①北朝鮮の核開発を最大の脅威と位置付けた②脅威除去についてはアメリカなど関係諸国との協力を重視③国内世論・説得工作を進めリスクを自らとる——と説明した。

中国はもちろん、朝鮮半島有事や金体制崩壊を望んでいるわけではない。核危機は、国境からわずか100キロの中国に深刻な核被害をもたらすし、大量の難民流入を覚悟しなければならない。国連制裁決議に賛成するのも、制裁しながら対話による出口を摸索するためである。

米中会談に探りを入れる日本

冒頭の中国人研究者は日本の役割にも触れた。安倍首相は9月21日、国連総会で北朝鮮危機について「対話による問題解決の試みは無に帰した」と、圧力強化を繰り返す演説をした。会場は空席ばかりが目立ち、国際政治における日本の地盤沈下をいやが応にも際立たせた。

国連総会の安倍首相

北朝鮮に対しては「圧力しかない」と述べる安倍首相だが……。

Reuters / Saul Loeb

安倍氏は9月3日にトランプ大統領と電話会談した直後、「この1週間でトランプ大統領と3度、電話首脳会談を行った」と自賛した。確かにトランプ氏と最も頻繁に電話会談しているのは彼だ。

しかし、その内容は? 冒頭の研究者によると、「米中首脳の電話会談の内容に探りを入れてばかりいると聞いている」。事実なら「蚊帳の外」に置かれている現状を物語ってはいないか。

日米同盟強化によって中国包囲網を進めることに熱心な安倍氏だが、トランプ氏から見れば、アメリカの言う事は何でも聞いてくれる「手下」同然だ。

岩田清文・元陸上自衛隊幕僚長は最近、米軍が南シナ海などで中国と軍事衝突した場合、米領グアムまで一時退却し、沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の防衛は日本に委ねる案が検討されていることを明らかにした。集団的自衛権の行使容認のための安保法制を逆手に、自衛隊の役割拡大を求めているのだ。

北朝鮮危機で、アメリカが同盟国の日本と韓国を守ってくれると信じるのは、あまりにも人のよい期待に過ぎない。

(文・岡田充)

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