独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡﨑俊雄、以下「原子力機構」とい
う。)の東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所放射線管理部、国立大学法人九
州大学(総長 有川節夫、以下「九州大学」という。)、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会
社(社長 北野進、以下「SII ナノテク」という。)の共同研究グループは、超ウラン元素
(TRU)(1)測定用の超伝導相転移端温度計(TES)型マイクロカロリーメーター(2)を開発し、世
界に先駆けてプルトニウム(Pu)(3)及びアメリシウム-241(241Am)(4)から放出されるエルエック
ス線(LX 線) (5)のスペクトル(6)を従来の放射線測定器の約 1/5 の高分解能で測定しました。
核燃料物質(7)であるPuなどの超ウラン元素からはアルファ(α)線(8)とともに微量のLX線
も放出されています。現在の Pu の分析ではα線測定法や質量分析法(9)を使用しています
が、これらの方法では、Pu などを化学的に分離して測定する必要があります。一方、LX 線
の測定であれば、物質の外側から非接触で測定することができます。しかしながら、従来の
放射線測定器ではエネルギー分解能(10)が十分ではないため、Pu のそれぞれの LX 線や核
燃料物質中に Pu と同時に存在する 241Am の LX 線と識別ができず、一部の限られた用途
の測定にしか利用されていませんでした。今回、原子力機構は、九州大学との共同研究に
より、超伝導(11)を利用した高分解能の放射線測定器であるTES 型マイクロカロリーメーター
を超ウラン元素測定用に開発し、核燃料サイクル工学研究所において Pu の測定実験を行
いました。実験の結果、従来の放射線測定器よりも高分解能(半値幅(12):約 50eV)のスペク
トルを測定し、Pu と 241Am が識別できることを確認しました。
本研究成果は、超ウラン元素の LX 線の放出率(13)に関する物理学的な基礎データの整
備への適用が期待できます。また、測定装置をスケールアップすることにより、これまでの
Pu 測定では困難であった非破壊かつ非接触の測定によって、分析作業の簡便化、迅速化、
被ばく線量の低減が期待できます。
本研究は、原子力機構の先行基礎工学研究課題(14)として原子力機構と九州大学との
共同研究により実施され、その成果は、日本原子力学会誌(英文誌)2010 年 3 月号に掲載
されました。
以上