らキャピラリーガスクロマトグラフが開発され,一般的
に使用され始められており,これを使用した
完全
PCQ
塩素化物の個別分析法が確立された.この分析法により
血中
濃度は妨害物質の影響なしに毎年の定常的分
PCQ
析が確実に出来るようになった.
一方,先に述べたように,油症の主たる原因物質は
であり,すでに,原因ライスオイルや死亡患者組
PCDF
織から検出されていた.1986年当時の高橋所長は油症の
治療のためには患者体内の
の残留量を正確に把握
PCDF
することが必須であるとして,患者に皮下脂肪の提供を
要請し,自らも夫人と共に対照として皮下脂肪を提供し
た.所長の呼びかけで当所職員 9 名も皮下脂肪の提供
に応じた.患者のために研究者が外科手術による自らの
皮下脂肪の提供をしたことは患者にとって大きな驚きで
あり,非常な感謝を持って受け止められた.ともすれば
患者から不信の声が聞かれることもあった油症研究班は
これを契機に患者の信頼を得て,この後の排泄促進の臨
床研究が円滑に進むことになった.かくて,患者18名,
対照者11名のボランティアの皮下脂肪組織中の
,
PCQ
,
,
の分析を行った.その結果,患
PCDF PCDD Co-PCB
者では主要な原因物質である
が対照者(平均16
PCDF
)と比べ,最高100倍(1900
)も高濃度で残留
pg/g
pg/g
していることが明らかになった.さらに,患者糞便試料
から
等が検出され,腸管経由で
等の毒物が
PCDF
PCDF
排泄されていることも明らかになった.これらの知見か
ら患者体内に残留する
等の毒物の排泄促進が油症
PCDF
の治療として有効であると考えられた.1991年九大油症
治療研究班は
等の毒物排泄促進による臨床治療試
PCDF
験を開始することにした.皮下脂肪中の
を測定さ
PCDF
れた18名の患者ボランティアのうち
濃度の高い 3
PCDF
組の夫婦 6 名の血中
と糞便中
排泄量が調べ
PCDF
PCDF
られた.その結果,
は(体内残留量を反映する)
PCDF
脂肪中及び血中
濃度に対応して糞中に排泄されて
PCDF
いることが分かった.これら 6 名の患者ボランティア
に対し,高コレステロール治療薬として安全性が確立さ
れていたコレスチラミンを 6 ヶ月間服用してもらい,
服用前,服用 2 ヶ月, 4 ヶ月, 6 ヶ月時点の血液と糞
便試料中の
を測定した.その結果は, 1 名につ
PCDF
いては排泄促進傾向が認められたものの,他はコレスチ
ラミンの有効性は認められなかった.次いで,動物実験
で米ぬか繊維または米ぬか繊維とコレスチラミンの併用
投与が
の排泄を顕著に促進することを見出し,こ
PCB
の知見に基づいて,患者ボランティア 4 名に対して米
ぬか繊維とコレスチラミンの併用投与による
等の
PCDF
排泄促進実験が 2 回行われたが,結果は 2 名の患者で
は排泄促進傾向が見られたものの,他の 2 名では効果は
認められなかった.
油症と同様の中毒事件が日本の事件から11年後の1979
年台湾の中部で発生した.これは
と呼ばれ,
Yucheng
日本の油症は
と呼ばれており,共に国際的に通
Yusho
用する言葉となっている.台湾の
患者は血中
Yucheng
濃度が高いため,これらの患者に対して排泄促進
PCDF
治療を行えば効果が明らかに出来ると考え,1993年九大
油症治療研究班と台湾の成功大学の研究グループは共同
して台湾の
患者の
の排泄促進実験を臨
Yucheng
PCDF
床的に行うことにした.まず,台湾の患者31名の血中
PCDF
PCDF
を調査した 予想通り多くの患者で高い血中
.
濃度を認め,それは日本の油症患者の最高レベルの血中
濃度と同程度であった.これらの患者のうち半数
PCDF
の15名に米ぬか繊維とコレスチラミンを服用してもら
い 残りの半数の患者は対照群とし 投与前 1 週間及び 2
,
,
週間の投与期間中の糞便試料を毎回採取し
を測定
PCDF
した.また,投与終了時点で採血し,血中
濃度の
PCDF
増減を調べた.実験途中で服用を中断した患者や糞便試
料が採取できなかった患者を除いた治療群は最終的には
6 名となった.これらの患者の実験結果では 6 名中 4
名で排泄促進効果が認められた.また,投与後の血中
濃度は投与前に比べて減少していた.以上の結果
PCDF
から米ぬか繊維とコレスチラミンの服用による
の
PCDF
糞便中排泄促進効果が臨床的にも実証された.台湾の研
究グループにより30名の患者に対してコレスチラミン単
独での
排泄促進実験が行われ,投与前と投与後の
PCDF
血中
濃度が測定された.しかし,残念ながら血中
PCDF
濃度の減少は見られず,治療効果は認められなかった.
体内に残留している
等の有機塩素化合物は糞便
PCDF
中に排泄されるが,一方,皮脂等を介しても体外に排出
されていると考えられた.そこで,1994年油症患者と一
般人各数十名について皮脂中ダイオキシン類(
,
PCDD
,
)の血中濃度を調べた.その結果,大部
PCDF Co-PCB
分のダイオキシン類異性体は皮脂中濃度と血中濃度が相
関することが分かった.台湾の60名の患者について,皮
脂中ダイオキシン類濃度も調べられ,台湾の患者におい
ても皮脂中濃度と血中濃度は相関するという結果が得ら
れた.すなわち,これらの化合物は体内残留量に応じて
皮脂を介して排出されることが明らかになり,その量は
糞中への排泄量に匹敵するものと推定された.これは皮
脂がダイオキシン類の排泄経路として重要なものである
ことを示すとともに,皮脂中のダイオキシン類を調べる
ことによってもその体内残留を推定出来ることが示唆さ
れた.油症事件発生まもなくから毎年行われている患者