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高砂西港盛立地の負の遺産から安全・安心の まちづくりへのプロセス
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日本は高度経済成長の時代に、各地において産業活動の結果による環境負荷が蓄積されてき
たが、その負の遺産から地域再生の取り組みが進められている。そのプロセスで住民にとって
最も関心があるのは、安全、さらに安心を得ることである。
兵庫県高砂西港は、2005(平成17)年高砂市が策定した「高砂みなとまちづくり構想」にお
いて「高砂西港の再整備と親水空間の創出」が先導プロジェクトとして位置づけられた。また
平成19年に高砂みなとまちづくり行動計画の中で「高砂西港の再編」が短期着手事業として位
置づけられた。しかし、昭和40年代に浚渫した土砂の高砂西港背後のPCB(ポリ塩化ビフェニ
ル)盛り立て地があり、住民にとって最も不安要因であり、その対策に関心が高く恒久対策が
課題となる。高砂西港の盛り立て地の負の遺産から安全・安心のまちづくりへのプロセスを検
証する。
1.高砂西港周辺の課題
高砂みなとまちづくりの中で、高砂西港を再整備するにあたって、高砂西港周辺の課題は 2
つある。西港の水深が浅いこととPCBの盛り立て地である。
京都女子大学現代社会研究
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高砂西港盛立地の負の遺産から安全・安心の
まちづくりへのプロセス
槇 村 久 子
要 旨
高度経済成長の時代に産業活動の結果による環境負荷が蓄積されたが、負の遺産から地域再
生の取り組みが進められている。そのプロセスで住民の関心は、安全さらに安心を得ることで
ある。兵庫県高砂西港は平成17年高砂市「高砂みなとまちづくり構想」において高砂西港の再
整備と親水空間の創出を先導プロジェクトとした。しかし昭和40年代に浚渫汚染土のPCB盛り
立て地が西港背後にあり、住民に最も不安要因であり関心が高く恒久対策が課題となる。市民、
行政、企業、専門家の高砂西港再整備推進協議会の検討経過から、高砂西港の盛り立て地の負
の遺産から安全・安心のまちづくりへのプロセスを検証した。
キーワード:安全・安心、高砂市、PCB、港湾整備、まちづくり
は じ め に

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高砂西港盛立地の負の遺産から安全・安心のまちづくりへのプロセス
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1 高砂西港
まず高砂西港は、兵庫県高砂市臨海部のほぼ中央に位置する。昭和40年代の臨海部の埋め立
てに伴いできた港で、約16haの水域と 3 バースの公共岸壁、また三菱重工業(株)( 1 バース)
と(株)カネカ等専用桟橋( 3 バース)の企業が占有する岸壁がある。
ところが、公共埠頭は、計画水深─5.5mが確保されていないために、貨物船の利用が制限
されてきた。また隣接する三菱重工業(株)の専用岸壁も前面の水域の土砂の堆積により大き
な貨物船が利用できず、企業活動に影響が及んできている。そのため近隣企業から公共埠頭の
機能強化に対する要請が寄せられていた。県議会でも高砂西港について「港湾再整備の具体的
な要請、アクセス強化、盛り立て地の恒久対策と有効活用方策について、今後どのように取り
組むのか」という質問があり、県は「港湾整備に責任を持つ県として高砂西港再整備推進協議
会を立ち上げ、地元住民や関係者と合意形成を図りながら、高砂みなとまちづくり構想の推進
の一翼を担っていく」と答弁している。(写真 1 )(写真 2 )
2 西港背後PCB盛り立て地
次に高砂西港の北側に、いわゆる高砂西港盛り立て地がある。これは昭和40年代の後半に同
港の低質土砂がPCBで汚染されていることがわかり、兵庫県・高砂市の指導のもとに、これら
を浚渫し、PCBが溶出しないようにセメントで固化処理をした後、造成された。(写真 3 )
同盛り立て地は、これまで兵庫県・高砂市の環境監視の下に、(株)カネカと三菱製紙(株)
により管理されてきている。盛り立てから30数年が経過したが、これまでいわばそれぞれの立
場からアンタッチャブルな存在であったが、高砂みなとまちづくり構想、西港整備をきっかけ
に、今後どのようにしていくのか、安全性の議論が高まってきたのである。
そのため、高砂市の要請により、兵庫県は平成18年に専門家による「高砂西港盛り立て地の
PCB汚染土にかかる技術検討専門委員会」を設置して、盛り立て地の安全性について検証を開
始した。
西港周辺には、その他の課題として親水空間がある。同まちづくり構想では、高砂臨海部に
快適で美しくにぎわいのある水辺空間の創出が求められている。しかし、同港は市街地から近
い立地条件であるが、閉塞して市民が海辺に近寄れない状況にあることだ。
写真1 高砂西港の位置図
(出典:「高砂西港再整備推進協議会報告書」)
写真2 高砂西港の現状  (出典:同)

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2.高砂市の歴史と高砂みなとまちづくり構想
上記のような高砂西港の再整備や親水空間の創出が出てきた背景には、高砂市の歴史と「高
砂みなとまちづくり構想」がある。高砂は古来、白砂青松の海岸は風光明媚な地として知られ
る。婚儀の際におなじみとなった謡曲「高砂」の尉と姥の発祥地である。しかし、高砂市の臨
海部は兵庫県の播磨灘沿岸の東部に位置し、戦前、戦後、高度経済成長期を通して、播磨工業
地帯の中枢を担い、周辺地域の活力を支えてきた地域である。
そのため、高砂の海岸は埋め立てによる臨海部の開発により海岸線は失われてきた。そして、
市民は海岸に近づきにくくなり、なぎさは遠い存在となっていた。そのような背景があり、同
市の臨海部のあり方が市民参画と協働で平成16年から議論され、平成17年 7 月に「高砂みなと
まちづくり構想」が策定されている。
同構想の目指すところは 2 つある。第一に、快適で美しく賑わいのある水辺空間を創出し、
市民生活にいやしと安らぎを与えるとともに、港湾・道路などの社会基盤や地域資源を活用し、
産業の活性化を図ること。第二は、安全・安心を確保した上で、周辺地域との連携にも配慮し、
これまでのあらゆる資源を活用するとともに、需要に応じた新しい空間も形成しつつ、それら
が調和・ネットワークするミュージアムの実現を目指す、である。
そして、①高砂ウォーターフロントミュージアムづくり、②高砂産業ミュージアムづくり、
③高砂歴史ミュージアムづくり、が考えられている。この中で、高砂地区は高砂西港のリニュー
アルによる臨海部企業の物流拠点と親水空間の一体整備として位置づけられている。
しかし、物流拠点として港湾を整備し、親水空間を創出ようとすれば、30数年間手付かずで
あった、地域にとって負の遺産であるPCB浚渫汚染土の存在が記憶に浮上することになる。こ
の負の遺産をどのようにすれば未来につなぎ生かすことができるのか。一朝一夕にはいかない
と考えられる。
写真3 西港背後の盛り立て地の現状

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高砂西港盛立地の負の遺産から安全・安心のまちづくりへのプロセス
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3.高砂市における臨海整備検討の変遷
西港の再整備に当たって、住民の不安となっている海底土砂のPCB検出から処理、また関係
者の動きを年代順に概観してみると、次のとおりである。
1 高砂西港再整備に至る経過
昭和47年 高砂西港の底質土砂からPCBが検出、汚染されていることが判明
昭和48年 PCB対策本部設置
昭和49年∼51年 底質土砂を浚渫、セメントによる固化処理後、陸上に盛り立て、アスファル
トによる被覆(第一期工事、第二期工事)
昭和51年∼現在 盛り立て地の点検・補修、周辺でのモニタリングを継続
昭和52年(株)カネカと三菱製紙(株)「高砂西港盛立て地の管理に関する確約書」
平成17年 7 月 「高砂みなとまちづくり構想」策定
平成17年10月 「高砂みなとまちづくり構想推進協議会」設立
平成18年 6 月 「高砂西港盛立て地のPCB汚染土に係る技術検討専門委員会」設置
平成19年 9 月 「高砂西港盛立て地のPCB汚染土に係る報告書」
平成20年 3 月 「高砂西港再整備推進協議会」設置
平成20年 3 月∼21年 3 月 「高砂西港再整備推進協議会」で 6 回、将来像を検討
2 「高砂西港再整備推進協議会」の目的と検討の組織
高砂西港及びその周辺が抱える課題について、一体的に検討を行い、住民の安心・安全と地
域の活性化を図ることを目的に、専門家、市民、企業、行政で構成する「高砂西港再整備推進
協議会」を平成20年 3 月に設置して、未来に向けた高砂西港周辺の将来像について検討を進め
てきた。
同協議会の主な検討項目として、①港湾利用活性化を目的とした港湾整備計画、②盛り立て
地の恒久対策と有効活用方策、③親水空間の創出計画、④港湾活性化に資するアクセス計画と
された。
計画の作成は意思決定のプロセスと誰がメンバーにはいって議論し、まとめていくのかが重
要である。同協議会は、地元及び関係企業と合意形成を図りながら、高砂西港再整備計画をと
りまとめるとしている。そのため、学識者として高砂みなとまちづくり構想推進協議会会長、
高砂西港盛り立て地のPCB汚染土に係る技術検討専門委員会委員長、高砂市都市計画審議会会
長、兵庫県港湾審議会委員の 4 人。市民として地元自治会から高砂市連合自治会会長(高砂地
区連合自治会会長兼務)、西畑地区コミュニティ協議会会長の 2 人。関係団体として、高砂商
工会議所会頭、高砂市観光協会会長、高砂漁業協同組合代表理事組合長の 3 人。企業として三
菱重工業(株)高砂製作所長、(株)カネカ高砂工業所長、三菱製紙(株)高砂工場長のの 3 人。
議会として高砂市議会議長一人。行政として高砂市長、兵庫県東播磨県民局長の 2 人である。

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この多くは、みなとまちづくり構想推進協議会のメンバーでもある。それぞれの立場から、議
論された。
4.PCB盛り立て地対策の問題
西港再整備の最も重要な問題はPCB盛り立て地の取扱である。同協議会の議論や後で述べる
ように、住民や地域にとって最も関心が高く、不安要因になっているのは盛り立て地である。
1 PCBの盛り立てについて(昭和40年後半、昭和49年−51年)
盛り立て地は、現在西港北側に位置する(株)カネカと三菱製紙(株)の敷地内の約 5 ha、
高さ 5 mのアスファルトで覆われた巨大な丘となっている。横404.4m、縦196.4mの敷地で、
(株)カネカ管理部分44000m2、三菱製紙(株)管理部分7000m2、浚渫固化土224000m3、覆土
59000m3。これまで兵庫県と高砂市による監視の下、土地の所有者である両社が「高砂西港盛
り立て地の管理に関する確約書」を昭和52年 8 月に交わし、年 2 回周辺の雨水、地下水、大気
の周辺調査を実施し、盛り立て地の点検・補修をしている。また高砂市でも年 2 回同様の周辺
調査をしている。
2 PCB汚染土にかかる技術検討専門委員会での安全性の検証
技術検討専門委員会は、環境面の安全性の検証、構造面での安全性の検証、そして恒久対策
と検討事項を技術的な視点から次のようにまとめている。
q 環境面での安全性の検証
環境面の安全性の検証では、平成18年にボーリングを実施。①遮水性は盛り立て地上面はア
スファルト被覆がされ点検補修されている、法面覆土の下はアスファルト被覆、盛り立て地の
下は難透水性のカーバイド層1.8mと難透水性の沖積粘土性土層1.3m∼ 3 m、地下水位は盛り
立て地周辺下1.5m以上。結果、遮水性は非常に高く、地下水位と盛り立て地の間の物質移動
はほとんどない。
PCB測定結果は、周辺ボーリング採取土壌は、PCB含有試験では定量下限地未満、PCB溶出
試験は定量下限地未満。盛り立て地ボーリング採取土壌は、覆土はPCB含有試験、溶出試験と
も定量下限地未満。PCB含有固化土は含有試験では第一期工事部分では280∼470mg/kg、第
二期工事部分は22∼31mg/kg、溶出試験では第一期工事部分では0.0006∼0.0024mg/L、第
二期工事部分は定量下限値未満である。
③周辺への漏洩の有無は、PCBは周辺から遮蔽されており、漏洩の可能性はない。
w 構造面での安全性の検証
①盛り立て地の「すべり」の検証では、通常時はすべりは生じないが、震度 6 強の大規模地
震時は、盛り立て下部、周辺地盤が液状化する可能性が高く、その場合盛り立て土法面にすべ
りが生じる可能性がある。この場合、遮水性の地下土留め壁を設置すれば、地震時に液状化し
た場合のすべりを阻止することができる、としている。
②盛り立て地の「地盤の流動化」に対する影響の検証では、盛り立て地は水際線から離れて

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位置していること、また液状化しやすい 5 m以上の地層が連続していないことから、「地盤の
流動化」による影響は小さい、としている。
③盛り立て地の地盤沈下は、圧蜜試験から得られる沈下期間は約2.5年であるのに対して、
実際は30年以上経過していることから、今後さらに沈下が進むとは考えにくい。
④津波時、高潮時の安全性について、想定津波高さより盛り立て地の地盤高さが高い、高潮
に対して大きく侵食されることはない。大雨時の安全性については、大雨時でも盛り立て地の
排水路があふれることはない、高潮と大雨が重なった場合でも盛り立て地の排水路はあふれる
ことはない、としている。
⑤擁壁の安定性は、破損したとしても盛り立て地の安全性に影響を与えることはないが、擁
壁内側の盛り立て土造成以前の背面土砂などが道路に崩れる可能性があるとする。住宅地があ
る北側は地震時に地盤の支持力が不足、また東側は通常時でも鉄筋が不足している、とする。
以上から、技術検討専門委員会は将来にわたって安全性をより確実にするための方策として、
恒久対策を検討するよう提言している。
e 盛り立て地対策の選定と実施にかかる課題の提示
盛り立て地の現状の安全性が確認されたが、擁壁の補強の必要性が判明した。そこで次に、
将来の安全性を確保するために、恒久対策を検討し、 3 つの方法と、それぞれの技術、要する
時間、要する経費の課題を抽出している。
PCB全量撤去のA案、現地処分のB案、現地封じ込めのC案である。
A案は 2 つある。第 1 案は盛り立て土を全量搬出し、分解処理して、最終処分場に埋め立て
る方法。第 2 案は、盛り立て土を全量搬出し、最終処分場に直接埋め立てる。
B案は、盛り立て土を全量掘削し、近傍で分解処理し、現地埋め戻し、または搬出して最終
処分場に埋め立てる。
C案は、上部被覆方式で、遮水性を不織布+遮水シート+不織布などで強化する。第 2 案は
同様の上部被覆とさらに液状化対策として周辺地下地盤に遮水性地下土留め壁工事をする。
それぞれの方法はいずれも課題がある。同報告書は次のように課題を提示している。
A案は、分解処理と埋め立ての場合工期20年、直接埋め立ての場合工期10年。費用は分解処
理と埋め立ての場合1570億円、直接埋め立ての場合400億円。またこの方法は、埋め立ての受
け入れ可能な施設の確保、また、工事中は長期にわたり粉塵等が周辺に飛散するリスクが継続
する。
B案は、工期が20年で、費用は1500億円。近傍で分解処理するための大規模処理施設の建設
が必要となる。また20年の工事中、長期にわたり粉塵等が周辺に飛散するリスクが継続する。
C案は、現地封じ込めのため、工期は 2 年。費用は上部被覆40億円と遮水性地下土留め壁35
億円で計75億円。短期間に施工でき、粉塵等が飛散するリスクがない、また地下土留めをする
C第 2 案は大規模地震等に対しても安全性を確保できる。(図 1 )

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r 恒久化対策 3 つの方法と選択の問題
技術専門委員会報告書では上記の 3 つの恒久対策を示しているが、それらを選択するか、ど
れを選択するか、ほかに方法はないのか。高砂西港再整備推進協議会は周辺住民の生活と深い
かかわりがあるため、報告書の内容を理解してもらうために、「高砂西港盛り立て地にかかる
住民説明会」を開催した。
5.住民の不安は何か−住民説明会での問題、何が住民にとって問題か
協議会で盛り立て地の恒久対策としてどの方法を選択するかが大きな課題である。そのため、
「高砂西港盛立て地に係る検討経緯」(兵庫県農政環境部)と「高砂西港盛立て地のPCB汚染土
に係る技術検討専門委員会報告書」の内容(同委員会)について、住民への周知を図るため、
高砂市が主催して平成20年 8 月住民説明会が開催された。さらに11月に最も身近な西畑地区
コミュニティ協議会が主催して地域ミーティングを、また高砂市主催で 8 回意見交換をしてい
る。
平成20年 8 月23日(土)高砂地区コミュニティセンター(高砂市主催)
平成20年 8 月30日(土)福祉保健センター(高砂市主催)
平成20年11月15日(土)西畑共同自治会館(西畑地区コミュニティ協議会主催)
地域ミーティング
平成20年11月10日∼21日(市内 8 地区)(高砂市主催)
第 1 回目は地元であり、第 2 回目は高砂市全体の市民に対してである。第 1 回、 2 回と住民
説明会ではさまざまな意見が出されているが、発言要旨により 6 つに分類している。①高砂西
港盛立て地に係る基本的な考え方、②盛り立て地の安全性、③跡地利用、④高砂西港、⑤住民
説明会、⑥その他である。
住民それぞれの発言要旨から、さらに何が問題だと考えているかがわかる。
① 基本的な考え方
「市民の命の問題として真剣に考えていただきたい」「付近住民、漁業者の安全性を重視し、
対策を講じるべき」「最終的には市民の立場に立って処理してほしい」など基本姿勢に関する
もの。
「特に高砂町の人は、全量撤去してほしいと思っている」「無くなることが願いであるが、
今すぐそれをやってほしいとは思っていない」「全量撤去、現地分解処理は粉塵の問題があり、
非常にかえって危険、C案でもやむをえない。仮にC案であれば仮置きである」等々は、本来
は住民にとっては全量撤去が欲求であるが、現実の方法の中ではC案もやむなしなど、工法に
関するもの。
「住民投票により、恒久対策方法を決めてはどうか。説明しただけで終わるとか、議会と市
だけで決めて進めるべきではない」「企業の責任で全面撤去は当然である。将来であっても撤
去すべきである」「責任は許可してきた国と企業にある。技術的な問題、費用の負担、法律の

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制定について働きかけるべき」「国に要望し、盛り立て地を一日でも早く撤去してほしい」「市
民の税金を使わずにやってほしい」など、責任者と費用負担、意思決定に関するもの。
② 盛り立て地の安全性
「アスファルトの下のカーバイド滓は、安全か。液状化しても大丈夫か」「第一期と第二期
工事の固化処理はどのような方法によるか」「万一アスファルトが割れた場合は、カーバイド
滓を通してPCBが出てくる可能性があるのではないか」「盛り立て地を見せてくれないので、
安全性を非常に疑う」「補修時には付近住民に知らせてほしい。PCBの影響は無いか。 2 年前
に擁壁から液体が流れ出ていた」など安全性や処理方法に関するもの。
「PCBについてもっと市民に知らせるべき」「PCBが健康に対してどのような影響があるか、
危険性があるか明確にしてほしい」「10年前の、擁壁横の側溝水中の水銀、シアン濃度が基準
を超えたデータをもっている。」「高砂以外のPCB汚染土を、外部から運んできたという話しを
聞いた」などPCBそのものに関するもの。
③ 跡地利用
「盛り立て地の上に公園など作ってほしくない。公園にした場合、企業の責任が曖昧になる」
「海の見える公園なんて誰も期待していない。公園なんか造ってほしくない」「汚染土壌の上に
公園を造っている事例はあるか」など、汚染土の盛り立て地が公園として跡地利用される懸念
に関するものである。
④ 高砂西港
「港があまりお粗末過ぎる。港がないと町は栄えない」「高砂の港が別府港(加古川市)の
ような立派な港になってほしい」「大きな船が入ることは全く望んでいない」「西港を浚渫した
土砂はどこでも処分できるのか」「西港を充分機能が発揮できるような施設にしてほしい」「魚
介類の調査をしてほしい」など、西港のあり方そのものに関するものである。
⑤ 住民説明会
「今なぜ住民説明会なのか。住民説明会の位置づけは」「説明会をもっと早くやるべき」「先
に住民説明会を実施し、市民の考えを持って協議会に望むべき。説明会に市の考え方が無い」
など説明会の開催の時期と位置づけに関するもの。また「住民説明会の周知方法が不十分。各
地区でも説明すべき」「港全体の計画を持って説明会を開催しないと住民の意見を聞いたこと
にならない」「第 3 回の協議会で意見をどう反映させ、その結果をいつ報告するのか」など説
明会の手法に関するものである。
⑥ その他
「西港を今後とも有意義に利用するためにも、南北道路が必要である」「万が一の際に、非
難道路を確保するためにも、南北を結ぶ道路の整備が必要ではないか」など道路整備に関する
もの、また「盛り立て地の安全性に関する環境測定を実施するときは、一般市民を立ち合わせ
るべき」という安全性と環境の測定のデータに関するもの。
以上の住民の発言から、不安要因を分類すれば、以下のようになる。PCB盛り立て地に対す

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る行政の基本姿勢、対策の工法、責任者、費用負担、意思決定者、PCBそのもの、PCBの処理
方法、処理の安全性、跡地利用の公園への疑問、西港のあり方、説明会の手法、環境測定の
データの信憑性である。
これらの根底にあるのは、PCB汚染土に対する不安であり、本来的に全量撤去を望んでいる
が、現実的に不可能だとすれば、どのように安全と安心が得られるかの欲求である。
住民説明会やミーティングでの議論の外、平成20年 8 月から 9 月に意見募集も実施している。
その結果、14件の意見書が提出されている。
また住民意見書の外に、推進協議会会長宛に、 2 団体から要望が提出されている。その要旨
は「工法の選定については拙速に決定しないこと」「協議会の非公開、過半数議決のルールを
変更すること」「徹底した低質調査なしでは浚渫計画を進めないこと」等の要望である。
会議の進め方や内容については住民の気になるところである。協議会は原則公開とするが、
開催日時や場所などは記者発表し、会議の内容は、請求があれば会議資料を配布するし、会議
終了後は議事要旨を県民局のホームページで公開するとしている。傍聴については、委員の率
直な意見交換や意思決定の中立性が損なわれないよう認めていなかった。この傍聴について公
開の要望があったのである。最終的には協議会の合意により、公開するよう変更されている。
6.対策の選定にかかる課題と方向性
上記のような、住民説明会や意見書、要望書、また協議会での議論の経過から、課題と方向
性が次のように整理された。
安全性、透明性、将来性への方向性
住民の安心・安全への配慮を最重点におきつつ、将来の盛り立て地のあり方への課題を協議
会で検討した結果、盛り立て地対策の方向性は、「安全性」「透明性」「将来性」の 3 つの視点
から集約された。
安全性は住民にとって最も重要事項であり、透明性はその安全性を担保する方法である。し
かし現状のままでは将来安全であるとは言えず、将来の安全性に向けて対策とまちづくりを進
めるという選択をしたことになる。
「安全性」は、盛り立て地の将来にわたる安全性をより確実にすることができる対策を実施
する。
そのため、①現地封じ込めのC案を基本にした対策をする。②盛り立て地の管理体制の確保
として、対策後も盛り立て地の管理、モニタリングを実施していく体制を確保する。③PCB含
有固化土処理技術の情報収集として、対策後もPCBに関する技術情報の収集を継続する。これ
は、新技術により将来PCBの分解処理がうまくできるようになるかもしれない、という住民の
期待があるためである。
「透明性」は、住民と情報を共有し理解を進めながら、安全で透明性の高い盛り立て地対策
として実施する。

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そのため、①盛り立て地の現状や再整備計画の内容について広く市民に知らせるために市や
協議会が広報誌を発行して市民と情報共有していく。②事業実施に当たっては、工事の安全
性・透明性を確保するため、学識者による指導の下に県が監理・施工監理をし、環境監視体制
を構築する。そのために「高砂西港再整備技術専門委員会(仮称)」の設置を検討する。また
③実施に当たって、県、市、企業は地元住民に対する説明会を継続実施していくなど丁寧な対
応に努める。
「将来性」は、未来志向の高砂みなとまちづくりを見据えた活用を行い、負の遺産からの転
進を実現する。
そのため、盛り立て地の活用として、安全性を優先したみなとまちづくりを見据えた未来志
向の活用を進める。その基本的な考え方として、①盛り立て地の上は、基本的に立ち入り制限
とするなど、安全性を優先とした活用を検討する ②過去の歴史を構成に伝えるとともに、未
来にもつなげる活用を進める ③港湾整備や臨海部周辺と連携した、にぎわいある親水・水辺
空間として寄与できる活用を進める ④地元地域や環境保全に対して貢献できる活用を検討す
る。
以上のような盛り立て地対策の方向性をまとめている。その基本は、安全性を継続的に確保
し、未来に向けて負の遺産を反転していくための選択である。
7.高砂西港周辺みなとまちづくりの将来像
これまでの住民説明会や地域ミーティングでの住民の意見、PCB汚染土にかかる技術検討専
門委員会、高砂市、兵庫県の意見等を踏まえ、高砂西港整備推進協議会は、負の遺産を抱えた
まちから今後どのようなまちとして再生していくのかを、高砂港周辺みなとまちづくりの将来
像をまとめている。高砂西港整備の基本的な計画をつくる全体の構想になるものだ。「安心」
「元気」「未来」の 3 つを柱に、「安心・元気を未来につなげる高砂西港みなとまちづくり」と
している。
まず「元気」につなげるために、次の 3 つの将来像を構想している。①港湾機能の強化とし
て公共埠頭の浚渫と三菱重工業(株)専用埠頭の泊地の埋め立て、②アクセス道路の強化とし
て相生橋西詰め交差点の渋滞解消と新設道路の検討、③親水・水辺空間の創出として高砂西港
みなと公園(仮称)である。
この中で、公園は、高砂海浜公園とあらい浜風公園と水辺ネットワークの形成が考えられて
いる。工場地帯における海浜への水辺へのアクセスの欲求は、他地域にも多い。しかし、同地
区に整備が予定される公園は、PCBの盛り立て地に隣接しており、住民がもつ公園イメージが
どのようなものであるかが重要になる。
そこで、その要因になっている、「安心」のまちについての構想を見よう。検討段階で使用
されてきた「安全」という言葉が、「安心」へと変わっている。「安全」が科学的、技術的に保
障されていても、人間、住民にとって精神的、また安全であることが確保されるシステムが必

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要である。それが「安心」であり、安全から安心へ次の段階へと進めるものと考えられる。協
議会では、次のように構想する。
第一に、高砂西港盛り立て地の将来に向けた安全性の確保として 3 点。①PCBの全量撤去や
現地分解処理と比較して、粉塵等の環境影響が小さく、かつ地震を想定した早期の対策実施が
可能な現地封じ込め対策を実施し、盛り立て地の安全性を将来にわたり、より確実にする。②
盛り立て地対策の実施にあたっては、工事の安全性、透明性を確保するため、学識者の指導の
下、県が設計監理と施工監理を行うとともに、適切な環境監視ができる体制を構築する。③盛
り立て地対策は、県と市の主導により、盛り立て地の適切な管理・監視等を行うとともに、周
辺環境のモニタリングを継続実施する。なお、将来、PCB含有固化土を安全に、かつ合理的な
コストで短期的に処理できる技術が開発された場合は、適用可能性について検討する、として
いる。
これは、住民にとって、安全性が確保されるとはいえ、本来的に目の前や地域にPCB固化土
の盛り立て地があることは不安要因であり、将来の可能性について言及したものとなっている。
第二に、情報を共有し理解しながら進めるまちづくりとして 3 点をあげている。①再整備計
画策定後も対策・整備事業の実施に当たり、高砂西港再整備推進協議会を継続させる。②盛り
立て地の状況や再整備の進捗状況等を市民に広く知らせるため、積極的な広報を進めていく。
③対策・整備事業の実施にあたり、県・市・企業は、地元住民に対する説明会を実施していく
など丁寧な説明を継続する。
図1 盛り立て地対策のイメージ     (出典:「高砂市西港再整備報告書」)

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高砂西港盛立地の負の遺産から安全・安心のまちづくりへのプロセス
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以上のように、安全を確保し、協議会という住民と県や市・企業との交渉・協働の場と、県
や市の設計・施工の管理と環境監視を置き、県・市・企業の役割と責任体制を構築することで、
「安心」を創っていこうとしている。(図 2 )
さらに、こうしたPCBの盛り立て地という地域にとって“負の遺産”からの脱却は、未来に
どのようにマイナスを生かすかである。
そこで第二に未来に向けて環境負荷の蓄積から環境に寄与できるまちづくりをめざしている。
①安全性を最優先に活用し、盛り立て地の上は基本的には立ち入り制限にする。②過去の歴史
を後世に伝えるとともに未来につなげられる活用をする。たとえば、盛り立て地南側の公園予
定地に過去の歴史を継承できるよう配慮するなど。③環境に寄与するまちやイメージを変える
ために、太陽光発電のソーラーパネルを置くなど考えられている。また④港湾整備や臨海部周
辺と連携して賑わいのある親水・水辺空間に寄与できるよう、公園整備をする、としている。
しかし、公園整備も盛り立て地の隣接状況や、立ち入り制限をいう現実に、盛り立て地がある
限り、日常的に利用するだろうかは疑問が残る。現在は盛り立てられたという事実と経過を
知っている住民がいる限り伝えられるであろうが、分からなくなることの方が心配である。
戦前から高度経済成長期に工業地帯として中枢を担い、その経過の中で臨海部の埋め立てに
よる海岸線の消失、埋め立て地の工業立地によりPCBの低質土砂の汚染と浚渫による盛り立て
地の造成。特に汚染土の盛り立て地という負の遺産を、長年手付かずであったが、西港再整備
という街づくりの検討段階で、安全から安心へのまちづくりへの動きが開始されたと考える。
今後は更なるコストと安全と時間による選択と実施に当たっての事業主体と責任の明確化が求
められる。
図2 盛り立て地対策の実施体制     (出典:「高砂市西港再整備報告書」)
ま と め

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京都女子大学現代社会研究
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また、長く封印状態であった盛り立て地のこれまでの経過をたどりながら、高砂西港再整備
協議会という住民、行政、企業、専門家の詳細な議論と住民説明会などの議論を通して、住民
の何が不安で問題なのかを深め、安全性、透明性、将来性を重要な視点として、盛り立て地対
策とまちづくりの方向性と方法を選択していったプロセスの中に、地域の負の遺産から安全と
安心へのまちづくりの転進が見られる。
参考文献
高砂市市勢要覧」高砂市
「高砂みなとまちづくり構想」高砂市、2005年 7 月
「高砂西港盛立地に係る住民説明会の開催結果等について」2008年10月
「高砂西港盛立地のPCB汚染土に係る報告書について(住民説明会資料)」高砂西港盛り立て地のPCB汚染土
に係る技術検討専門委員会、2008年10月
高砂西港再整備推進協議会報告書「未来に向けた高砂周辺の将来像」2009年 3 月
兵庫県県民局ホームページ