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新事実が出たことで、現状におけるプリウスのブレーキ問題をあらためて考えてみた:jargonaut:オルタナティブ・ブログ

技術、動向、製品、その他いろいろなことについて(脈絡無く)話題を振ろうと思います。

新事実が出たことで、現状におけるプリウスのブレーキ問題をあらためて考えてみた

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やっと、プリウスのブレーキ問題の具体的な事例が出てきました。いままでのはどれも感覚的なもので再現性も無かったのですが、これは「確実に再現する」ということです。ちょっと長くなりますが、できましたら最後までお付き合いください。

その内容は、自動車評論家として著名な国沢光宏氏がブログに記載しています。ときどき外しますが(笑)、割と好きな自動車評論家の一人です。その国沢氏によると、確かに空走は起こせるとのこと。でも、それを見て、

 「そら見ろ。やはり問題はあったんじゃないか」

そう思った方もいらっしゃるかもしれませんが、たぶん、それは「早計」です。まずは、国沢氏のブログを見てください。

▼ 特ダネで実証試験
http://kunisawa.txt-nifty.com/kuni/2010/02/post-de33.html

ここから一部を引用すると、

35km/hで進入し、回生制動だけ掛かる程度のブレーキングをしたら、見事に抜けました。0,5秒とか1秒とかでなく、ブレーキペダルを動かさない限り、ブレーキ圧は高まらない。いつまでも空走してしまうということです。

とあります。

賢明な読者の皆様はすぐにお気付きのことと思いますが、問題は「回生制動だけ掛かる程度のブレーキングをしている」という部分。これは明らかに、クルマが本来持っているブレーキ(以降、「油圧ブレーキ」と呼びます)の介入をドライバーが拒否した運転をしているということです。

これだと、回生制動のみでブレーキングをすることをドライバーが望んでいるわけですから、一概に、減速しないのはクルマが悪いとは言えません。ブレーキを浅くしか踏んでいないため、クルマとしてはドライバーに「明確に止まる意志が無い」と判断して回生ブレーキを強く利かせないとしても当然だと思えるからです。むしろ逆に、クルマはドライバーの意図に忠実だと言うこともできますよね。さらに言うと、

ただ踏み増せば効くことも確認出来た。

ということですから、油圧ブレーキを使おうと思えば「止まれる」わけです。私などは、「なんだ。クルマは悪くないじゃん」とちょっと思ったりして……。^^;

まぁ、そのことは別として、「仮にもブレーキに足を置いているんだから減速してよ」という要求があるのも理解できます。しかし、それに対応するためには「ブレーキを踏む」という行為を拡大解釈する必要があります。極論すれば、ブレーキは加減が利くものではなく、「どんな形(たとえば少し)でもブレーキを踏んだら、それは無条件に止まれという人間のサインである」という解釈をするようにするということです。なんだか、私からしてみれば逆に使いにくくなるんじゃないかと思ったりもしますが。

「本当にそれでいいの」と思う部分はさておき、今回の騒動でそれよりも重要なことをいくつか感じました。以下、順に述べていきます。

この問題は、回生ブレーキを利用するクルマの全てで起こる可能性がある

この問題の本質は、「役割と利きの異なるブレーキが2系統ある」ことです。

そして、具体的な問題としては「クルマとしてはできるだけ多くのエネルギーを回収したい。だから、できるだけ回生ブレーキを使いたい。でも、回生ブレーキだけでは十分に止まれないから油圧ブレーキをどのような形で介入・作動させるのか?」という解が、人間の感覚とかブレーキの踏み方の個人差といった要素が介入するために簡単には決められないということが挙げられます。

今回のプリウスの件では、この異なる2種類のブレーキが切り替わる際に起こる“間”が空走を起こす原因になっているとして問題視されていますが、おそらく、ほとんどのドライバーはよほど注意していてもその間を感じることができないと思います(私も運転したことがあります)。でもその一方で、国沢氏の実験で分かったように、ドライバーが中途半端にブレーキを踏んだ状態では油圧ブレーキになかなか移行せず、空走感を感じる状況が生まれるといった形になるようです。

でもこれは、本当にクルマのせいなのでしょうか? 普通、教習所では「ブレーキは深く踏め」と教わるはずです。

話が脱線しそうなので戻しますと、仕組みの異なる2種類のブレーキがある場合、その使い分けをする部分はなかなかリニアにつなげることはできませんからドライバーの感覚と一致しない部分は必ず出てくるということです。

たとえばインサイト。確かにハイブリッドのシステムとしてはプリウスと異なりますが、2系統のブレーキを持つ点は一緒です。トヨタの方式と異なるのは、回生ブレーキと油圧ブレーキを別々に使うのではなく、たとえば8対2とかの割合で同時に動作させる部分です。ここが、ホンダが「自分のところは大丈夫」と言う根拠になっているようですが、回生ブレーキと油圧ブレーキの制御が変化するポイントは必ず存在します。ですので、違和感を感じるドライバーがいたとしても不思議ではありません。

伝聞ですが、インサイトの場合、油圧ブレーキを使ったりすることでどうしても劣ってしまう回生能力を補うために、回生ブレーキの作動中はエンジンブレーキによるロスを防ぐことを目的としてエンジンを停止し、バルブを全開放する(ポンピングロス対策)といったことをしているようです。複雑さは大差ありません

さらにこの問題は、純粋な電気自動車でも2系統のブレーキを持てば同様になります。早い話、このブレーキ問題は、実際にはかなり広範囲に渡るんですね。

国土交通省やメディアはそれでいいの?

トヨタがプリウスを含むハイブリッドのリコールを申請したのは、傍目には、国土交通省の圧力があったように見えます(間違っていたらごめんなさい)。

しかし、今回、私が目を留めた国沢氏の記事は、業界の人間とはいえ一人のライターが調べてが書いたものです。こうした話が国土交通省やトヨタから出てこなかったのは、正直、残念に思います。

また、あくまで私見ですが、国土交通省には「日本は技術立国を目指しているのに、自分の国の先端技術を自ら叩いてどうするのでしょうか? もっと冷静に分析を重ね、協力しあって産業振興を図るのが本筋だと思うのですが、間違っていますでしょうか?」と感じ、一部のメディアの方々には「話題性を主とするのではなく、きちんとした事実を伝えてほしい」と感じたことを付け加えておきます。

下手なバッシングは、利用者の利益にならない

今回強く感じたのは、物作りというものに対して技術的評価と社会的評価がきちんとされないという事実です。別に、作ったものを褒めてほしいということを言っているのではありません。何かあったときに、冷静かつ客観的に事実を探し、評価し、問題点を探るといったことがなかなか行われない。それどころか、テレビやインターネットを見れば、プリウスどころか「トヨタが危ない」といったようなことにまで言及までされていたのには、少々がっかりしました。

技術の進歩というものは、少しのひらめきと地道な積み重ねを重ねていくものです。今回の問題の件で、経営体力の無い企業が新技術に及び腰になり、本来なら生まれたものが利用者に届かなくなるといったことを想像してみてください。技術は停滞し、技術者のモチベーションも下がるでしょう。利用者は、もしかしたら得られたかもしれない新しいものを失います。それは、利用者にとって利益になるのでしょうか。

まとめとして

いろいろ脱線をしましたが、そろそろまとめに入りたいと思います。

最初に戻ってプリウスのブレーキですが、少なくとも圧雪路のような低ミュー路で、かつ浅くブレーキを踏んだ場合に空走が発生する可能性があるという条件が分かりました(国沢さん、グットジョブです)。

路面のミューが高い場合にはタイヤの転がり抵抗も大きくなるので減速幅も大きくなるのでしょう。低ミュー路だとタイヤの転がり抵抗も小さくなりますから減速幅が小さくなるということで空走感が強調される、といったところでしょうか。

こうした状況下でプリウスを運転する可能性がある方は、トヨタが行うという改修を受けたほうがいいような気がします。とはいえ、国沢氏の記事にもあるように、ブレーキを深く踏めば油圧ブレーキ及びABSが作動するので、空走感を感じたらブレーキを信じて深く踏むというのが基本かもしれません。

雪道のように滑りやすい路面でブレーキを深く踏むのを躊躇される方もいると思いますが、ABSのようなシステムはブレーキが強く踏まれることが作動条件のひとつとなっています。一度、広い場所で試してみることをお勧めします。

あと他に何か問題が隠れている可能性はゼロではありませんが、いままで出てきた情報を見る限り、他に、問題とされている空走感を誘発する条件は見あたりません。その意味では空走感が起こる理由をひとつ知ることができ、雲をつかむような状況から解放され少し安心しています。ただ、大事な事実を私が知らないだけかもしれないので、何か明確な条件をご存知の方がいらっしゃいましたらお教えください。

新しい技術は、その稼働実績によってその安全性が保証される根拠になります。その点では、プリウスのシステムは大きな問題を引き起こさずにすでに長い実績を持つに至りました。私たちは、その点を信じてもいいのではないでしょうか。いまは当たり前のように使われているディスクブレーキも、最初の頃は「停止直前の利きが甘い」と言われて厳しい時代があったのです。オートマチックミッションも、初期の頃はさほど信用されませんでした。でも、いまは当たり前に使っています。

いずれにしても、こういった件に関しては、私たちユーザーが冷静な目を持つことが重要だと思います。

稚拙な文章に長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

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