いくつかの拠点集落に狩猟民を移住させたのである。新
生村もその一つであり,以後,定住農耕化が進められて
きた。村の総人口は1,046人(315戸)で,オロチョン族
はそのうち161人のみだが,かれらは,今なお小興安嶺で
ノロやハンダハンの狩猟に精をだしている。
新生村には,漢族の大工が1953年に建てた住居がいく
つか残っている。いずれもログハウス形式の壁体を土で
塗りこめた建物で,屋根は板葺・切妻造とする。漢族大
工の作品とはいえ,漢族住宅に特有な空間の村称性はみ
とめられない。内部空間は2列に分かれ,その間仕切り
壁に接して,入口側に竈,居室側に航を配する。実測し
たT06(図3−4)では,居室がさらに南北に分割され,
いずれの部屋にも航を設ける。また,杭と杭のあいだの
間仕切り壁を「火堵」とする。
エヴェンキ族住居丁10 内蒙古との省境にちかい訥河
市の興旺郷占仁村は,エヴェンキ族の村である。ただし,
村民は自分たちを「索倫」とよんでおり,池上の言語分
類にいうソロン語(第I群③)の担い手と思われる。興
旺郷全体の人口は12,720人で,そのうち462人(142戸)
がエヴェンキ族。調査した占仁村は,前村と後村に分か
れ,T09が後村,T10が前村の住居である。この村の建物
は,前述したオロチョンの住居よりも総じて古く,聞取
りによればT09は1930年代,T10は150年ほど前の建築と
いう。ここではT10をとりあげておく (図3−5)。
T10の敷地は南側の道路に面し,中央の門から20mほど
畑のあいだの通路をぬけて,主屋の前庭に至る。主屋は
切妻造・平屋建で,屋根の葺材には下地に厚い土を塗り,
その上に草を貼りつけている。正面の外壁には赤れんが
を貼るが,これは1986年の改装である。主屋の東脇には,
カマボコ土葺屋根・平屋の物置が付属する。
主屋の平面は3列型で,左右対称の漢族住宅にちかい
間取りといえよう。この場合,両側の部屋は航付きの居
室だが,中央間は漢式の「庁・堂」系広間ではなく,左
右の間仕切り壁に3つの竈が密着した厨房的空間となる。
また,居室の姉には,あきらかな造り替えの痕跡がみと
められる。T1Oでは,左右の居室いずれもが,かつては
「万字航」の形式をとっていた。万字杭では,奥にあた
る妻壁側が上座とされ,その壁面上部にはマルと呼ばれ
る神棚をおいた。占仁村では,万字炕は減ったが,妻壁
内側にマルを残す家が少なくない。
▲
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図3−4 オロチョン族住居丁06
主屋平薗図 1:250
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T10は150年ほど前にエヴェンキ族が建てた住居だが,
その後,売買が繰り返され,現在の家主(漢族)は1978
年にこの家を購入した。夫婦と娘2人の4人住まいで,
日常の起居は,中央間と東の居室で足りている。西の居
室はたんなる物置と化しており,万字炕を撤去した場所
に大きな芋の貯蔵穴を設けている。小屋組は2重梁式の
素朴な架構で,棟木から板状の材を吊り下げ,天井組子
を支えている。
(2)竪穴住居「地缶子」
同江市の街津口では,アムール川南岸でナーナイ族の
竪穴住屠を2棟発見した。ナーナイの竪穴住居は,この
地では「地審子」と呼ばれる。
ナーナイ族住居丁02調査時を遡る2年前に廃屋とな
った竪穴住居(図3−6)。おもての妻のところだけ草を葺
いているが,それ以外はすべて土で覆われる。屋根土は
とくに締まっているわけでもなく,黒土をのせているだ
けで,その上は草ぽうぼう。裏側からみると,ただマウ
ンド上に草が生えているだけで,とても住まいにはみえ
ない。塚のようだという,靺鞨や馬韓の土室についての
東夷伝の記載を髣髴とさせる風景が,そこに展開してい
る。
中に人ってみると,赤れんが積みの炕・竈・煙突は壊
れはじめていた。内部は逆台形状の平面をしており,奥
半分に炕をおく。姉の東北隅に煙突の付根,東南隅に竃
の痕跡が残る。小屋組は棟持柱式で,棟木と周堤上の桁
のあいだに多数の垂木をわたす。垂木は径5∼8cmの柳
の枝で,それを5∼10cmのピッチでずらっとならべる。
垂木を密に配し,その上に下地のムシロを敷いてから,
屋根に土をのせている。興味深いのは,一般的に土葺き
の場合,屋根勾配は緩いはずなのに,T02・T03ではいず
れも垂木勾配が45度近くあり,さらに垂木がわずかでは
あるが内側に湾曲していたことである。
ナーナイ族住屠丁03 こちらは2年前に新築されたば
かりの竪穴住屠(図3−7)。50歳の女性(ナーナイ族)が
47歳の夫(漢族)とともに通年居住する。居住部分は平
面が3.3×3.9mで,地面から約80cm穴を掘りこみ,そこ
から丸太を3∼4本校倉風に積みあげて壁体とする。内
部は奥の半分に炕を設け,その手前に2本の棟持柱をた
てる。棟木は屋内2本の棟持柱と,入口の両脇の柱との
あいだにわたされる。この2本棟木システムにより,屋
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図3−5aエヴェンキ族住居丁10
主屋平面図 1:250
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