我々は,採取したコア試料の全岩化学分析を行い,
海底表層付近におけるレアアース濃度の鉛直分布を調
べました.その結果,南鳥島の南約270 km地点で採
取されたPC05コアにおいて,海底下3 m付近に総レア
アース濃度が6,800 ppmにも達する「超高濃度レア
アース泥」の存在が確認されました (図1および2;
Iijima et al., 2016).これは,南東太平洋・タヒチ沖
に分布するレアアース泥の総レアアース濃度 (1,000~
1,500 ppm) の4~7倍,中央北太平洋・ハワイ周辺に
おける同濃度 (約600 ppm) の10倍以上に達します.
特に,産業上重要な重レアアース (EuからLu) の濃度
は,現在操業中の中国の陸上鉱床の10倍以上という高
い濃度を示します.また,南鳥島の南南西約300 km
地点で採取されたPC04コアにおいても,5,000 ppm
に達する高濃度のレアアース泥が海底下8 m付近に分
布していることが明らかになりました (図1および2).
我々は,超高濃度レアアース泥を含む各層準の堆積
物について,詳細な顕微鏡観察を行いました.その結
果,本航海で採取された堆積物は基本的に,粘土サイ
ズの砕屑性粒子を主体として,十字沸石 (フィリップ
サイト),マイクロマンガンノジュール,海洋脊椎動物
の歯や骨片と思われるリン酸カルシウム (Biogenic
Calcium Phosphate, BCP) 粒子,少量の石英や有色
鉱物から成る遠洋性の褐色粘土でした (図2; Iijima et
al., 2016; Fujinaga et al., 2016).顕著な特徴として,
超高濃度レアアース泥層ではBCP粒子が非常に大きな
割合 (15~30%) を占めることが分かりました (Ohta
et al., 2016).これは,全岩化学組成のP2O5濃度の深
度方向プロファイルにも現れており (図3),レアアー
スとP2O5の濃度は極めて良い正の相関を示します.こ
のことは,南鳥島EEZのレアアース泥におけるレア
アースホスト鉱物相がBCP粒子であることを示してい
ます.