宇宙旅行…
いつかしてみたいと思っていますが
宇宙に長期滞在すると脳が構造的に変化する
という論文を読んだので
ここにご紹介したいと思います。



NEJM誌2017年11月2日号に掲載された
“Effects of Spaceflight on Astronaut Brain Structure as Indicated on MRI”という論文から抜粋して解説いたします。


米国の南カロライナ医科大学のDonna・R・Roberts先生たちの研究チームは

国際宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士と、短期間の宇宙旅行を経験をした宇宙飛行士の、任務前後の頭部MRI画像を比較し

特に長期任務後の宇宙飛行士の多くの脳に構造的な変化が生じている

と報告しています。



宇宙飛行士というのは、宇宙での任務中は微小重力下で過ごしています。

国際宇宙ステーションから帰還した宇宙飛行士に
視神経乳頭浮腫頭蓋内圧亢進などの症状が見られた

という報告が以前よりなされていて

これを

『視覚障害脳圧症候群(Vision Impairment and Intracranial Pressure(VIIP)Syndrome)』

と呼んでいます。

ここで解説…

▪️視神経乳頭浮腫
脳の内部や周辺の圧力上昇が原因で、視神経の眼球内にある部分が腫脹した状態で
一時的な視力障害や頭痛、嘔吐などを来します。




▪️頭蓋内圧亢進
頭蓋内の容積は限られていルームが、血腫や腫瘍などが占拠するなど、何らかの原因によって脳内の圧が高くなった状態。
意識障害や瞳孔不同、除脳硬直(四肢が突っ張ったままになる)、呼吸困難などを来し、致死的なこともある。




Roberts先生らは以前に
長期にわたって安静臥床をしていたクランケの脳のMRIを分析したことがあって

その時に
・脳の偏位
・脳脊髄液腔の狭小化
・脳室容積の増加

を発見し

長期滞在の宇宙飛行士にも同じような所見が見られるのではないか?
との仮説の下

今回のリサーチを行ないました。


対象となったのは34人の宇宙飛行士(男性28人、女性6人)。
18人は国際宇宙ステーションに長期滞在する任務を終えており
16人はスペースシャトルに搭乗して短期任務を果たした宇宙飛行士でした。



▪️長期任務群
平均滞在時間:164.8日
打ち上げ時点の平均年齢:48.6歳

▪️短期任務群
平均滞在時間:13.6日
打ち上げ時点の平均年齢:47.5歳

評価項目は
①中心溝部分の容積の変化
②頭頂部の脳脊髄液腔の容積の変化
③垂直方向への脳の偏位




結果は以下の通り。

①中心溝の狭小化は
長期任務群では18人中17人(94%)に、短期任務群では16人中3人(19%)に認められた。

②頭頂部の脳脊髄液腔の狭小化は
長期任務群では18人中17人(94%)に、短期任務群では16人中3人(19%)に認められた。

③第三脳室の拡張幅は
長期任務群では平均0.74±0.56mm、短期任務群では平均0.11±0.23mm
小脳扁桃の上方への移動は
長期任務群では1.08±0.94mm、短期任務群では0.10±0.87mmでした。

これらの結果から
長期任務後の宇宙飛行士は
・中心溝の狭小化
・頭頂部の脳脊髄液腔の狭小化
・脳の上方偏位
を認める傾向があることがわかりました。

ただ、臨床的な意義についてはまだ研究中とのことです。


ま、宇宙なんて超特殊な空間だし
脳が変化しても別に不思議じゃないんだけどね…


というのが私の率直な感想でした(笑)