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緊急シンポジウム “品質立国日本”を揺るぎなくするために ~品質不祥事の再発防止を討論す
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1.はじめに
近年繰り返されている品質不祥事が“品質立国日本”
の信頼を大きく揺るがしている.この状況を看過する
ことなく,再発防止に向けた取り組みを,危機感をも
って対処する一環として“品質立国日本”の揺るぎなき
地位の確立と次世代への継承を目的に緊急シンポジウ
ムを開催した.
本シンポジウムは,一個人,一企業,一団体,一学
会の範疇を超えて「横串を通した総意」を社会へ発信
することを意図し,日本品質管理学会,日本科学技術
連盟,日本規格協会が共催し,経済産業省と日本経済
団体連合会の後援を得て,2018 年2 月21 日(水)に
早稲田大学小野記念講堂において定員を超える230余
名の参加のもとで行われた.
開会挨拶に立った日本品質管理学会会長の小原好一
氏は,品質経営の推進による社会への貢献を標榜し,
品質不祥事の再発防止に向けて社会に対する説明責任
を果たすとともに,志を同じくする多くの人と品質経
営の本質的な価値観を共有して進展させることにより,
“品質立国日本”を揺るぎなくするための新たな機会
にしたいという強固な意思を表明した.
基調講演,特別講演,パネルディスカッションによ
り構成された緊急シンポジウムでは,先人たちにより
脈々と築き上げ,世界から信頼を得てきた品質管理の
本質的な重要性を再認識し,将来にわたって日本の強
みとして錬成していくために,私たちが行動すべきこ
とは何かが真摯に討論された.緊急シンポジウムのプ
ログラムを表・1 に示す.
表・1 緊急シンポジウム プログラム
内容
講演者・登壇者(敬称略)
開会挨拶
小原 好一(日本品質管理学会会
長,前田建設工業㈱会長)
基調講演
「組織における人
の不適切な行動と
その未然防止」
中條 武志
(日本品質管理学会顧問,
中央大学教授)
特別講演
「トヨタにおける
生産を止める事の
意味」
佐々木 眞一
(日本科学技術連盟理事長,
トヨタ自動車㈱顧問・技監)
パネルディスカッ
ション
コーディネーター:
中條 武志(前掲)
パネラー:
小原 好一(前掲)
棟近 雅彦(日本品質管理学会
副会長,早稲田大学教授)
佐々木 眞一(前掲)
揖斐 敏夫
(日本規格協会理事長)
閉会挨拶
揖斐 敏夫(前掲)
緊急シンポジウム
“品質立国日本”を揺るぎなくするために
~品質不祥事の再発防止を討論する~
事業報告書
開催日:2018 年2 月21 日
一般社団法人日本品質管理学会 一般財団法人日本科学技術連盟 一般財団法人日本規格協会

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2.基調講演「組織における人の不適切な行動とその
未然防止」
日本品質管理学会 顧問
中央大学 教授
中條 武志 氏
基調講演では,品質不祥事の再発防止を考えるうえ
でのベースラインを与えることをねらいに,その起点
として「安全の確保,品質/質の保証,品質マネジメ
ント」の関係性を整理し,それを踏まえて「人の行動
から見た,情報の改ざん・隠蔽の発生メカニズム」と
「品質マネジメントの視点から,情報の改ざん・隠蔽
を未然に防ぐために組織が取り組むべきこと」を考察
した.最後に,「社会として何を行うべきか」を提唱し
た.
2.1 安全の確保,品質/質の保証,品質マネジメ
ント
品質/質の概念を確認した上で,安全の確保のため
には品質/質の保証が必要なことを明確にした.また,
品質保証の基本として,プロセス重視(プロセスアプ
ローチ),PDCAサイクル,未然防止(リスクに基づく
考え方)を挙げ,ニーズやシーズが変わる中で品質保
証を確実に実践できる組織能力を生み出す方法論とし
てTQM(総合的品質管理)を位置づけた.その上で,
このような関係性や各々の役割・位置付けに関する適
切な理解が,経営者から第一線職場の人々に必要であ
ることを強調した.
2.2 人の行動から見た,情報の改ざん・隠蔽の発
生メカニズム
トラブル・事故の原因について系統的に解きほぐし
(図・1参照),既知のノウハウの不適切な活用,特に
「悪意の無いノウハウからの逸脱」(失敗)が多くなっ
てきており,トラブル・事故を防ぐためには,「知識不
足」「スキル不足」「意図的不順守」(まあ,いいか)「意
図しないエラー」(うっかり)の4つに対する適切な対
策が必要なことを示した.
意図的不順守は,①対策を守ることの効用と,②対
策を守るための手間・守ることによる悪影響とを天秤
にかけたときに,正しい意思決定が行われないと発生
する.また,①を正しく行うには,適切なリスクの認
知と評価が必要であるとした.他方,意図しないエラ
ーは,①人間として避けられない意識の変動と,②人
間をエラーに導くまずい作業方法とが重なって発生す
るため,これを防ぐには,エラープルーフ化など,②
を改善することが重要であるとした.
その上で,具体的な事例を用いて,情報の改ざん・
隠蔽の多くの事例を横断的に見ると,共通する発生メ
カニズムがあることを示した.
問題のない通常の場合には,複雑な業務を効率的に
行うため,ルール化と下位の担当者への権限の委譲が
進み,上位管理者は責任範囲からに次第に切り離され
る.また,問題が発生した場合の対応は,差し迫った
必要性がないため,その責任が曖昧なまま残される.
そのような状況で従来未経験な,想定外の問題が発生
すると,情報発信すべき下位の担当者は,通常と異な
る状況であるにもかかわらず自己の責任・権限の範囲
で何とかしようとし,どうにもできないとわかって始
めて上位に報告する.また,情報を受けとる上位の管
理者は,通常時と異なる状況で,自分が対処すること
が必要であるとの認識が薄く,必要な処置をとらない.
2.3 情報の改ざん・隠蔽を未然に防ぐために組織
が取り組むべきこと
情報の改ざん・隠蔽の発生メカニズムの進行を防ぐ
ためには,業務を合理的で単純なものにし,ルール化・
権限委譲の際に問題の発生を想定し,人に対する認識
の偏りを防ぐ教育・訓練を行えばよいが,このために
は,不適切な人の行動の引き金となる直接原因を取り
除くための品質マネジメントを,トップ,現場,管理
部門が一体となって行う必要がある(図・2 参照).し
かし,その実践にはいくつかの困難さが伴うため,こ
れを組織として乗り越える工夫が必要であるとして,
次の7 項目をその要点として挙げた.また,このうち
の1),3),4)および6)についての講演者の考え方を示
した.
悪意の無い
ノウハウから
の逸脱(失敗)
悪意のある
ノウハウの
活用(犯罪)
管理不良(ノウ
ハウの不適切
な活用)
技術不良
(ノウハウの
不足)
意図しないエラー
(うっかり)
知識不足
技能不足
意図的不順守
(まあ、いいか)
図・1 トラブル・事故の原因

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経営者の品質マネジメントへの関
わり方,事業における品質マネジ
メントの役割の明確化.
2)
品質マネジメントの範囲外とした
部分が,製品・サービスの適合や
顧客満足を確実にする組織の能
力・責任に影響を及ぼさないこと
の判断.
3)
目標の設定・展開,品質/質の見
える化,改善活動の推進.
4)
未然防止活動において考慮するリ
スクの範囲と詳細さ,取り組みが
有効でなかった場合の対応.
5)
ヒューマンエラーや意図的な不順
守に起因するリスクの洗い出し,対策の立案.
6)
必要な技術(組織の知識)の明確化,不足して
いる知識の獲得方法,知識の共有・活用のプロ
セス,品質マネジメント教育.
7)
文書化や責任・役割の必要性の判断.プロセス
に関する因果関係の把握と重点の明確化.
2.4 社会として何を行うべきか
組織が品質マネジメントに取り組むようにすること
が重要であり,社会としては次のようなことを行うべ
きだと提唱した.
- 問題の本質について正しく理解する.
- 品質マネジメントを普及する.特に,必要な知識・
スキルの習得の支援(研修など),成功事例の共有
の促進(大会,品質賞など),難しさを克服するた
めの新たな方法論の研究の促進など.
- 品質マネジメントを実践し続ける組織・人に対し
て敬意・賞賛を示す.
3.特別講演「トヨタにおける生産を止める事の意味」
日本科学技術連盟 理事長
トヨタ自動車㈱ 顧問・技監
佐々木 眞一 氏
3.1 自働化の理念
企業が引き起こした検査結果の改ざん,適正資格者
以外による検査の実施などは,決して未熟な組織運営
や悪事を企てた訳ではなく,人の心の弱さがもたらし
た不祥事という面が強く,問題への気づきが不充分で
自浄作用が働かなかったことが誘因になっているとの
問題意識から特別講演を切り出した.トヨタ自動車に
おける 1960 年初頭のクラウンやコロナの品質問題,
近年のリコールを例に,品質に対する数々のピンチに
直面したときに,隠したり,ごまかしたり,ましてや
嘘をついたりせずに,地道に改善を進めてこられたの
は,先人が残してくれた「自働化」の理念を守り続け
たおかげであると続けた.
佐々木氏は,トヨタ自動車での経験を踏まえ,対処
の考え方として,トヨタ生産方式でのニンベンのつい
た「自働化」と呼ばれる作業者自らが異常を感じたり,
発見したりしたときにラインを止めなければならない
仕組みの重要性を挙げた.異常を感じた作業者がライ
ン停止装置を入れると素早くベテラン作業者が異常を
処置し,それで対処できない異常へは技術スタッフや
監督者がすぐに集まり検討する.その間,誰もライン
の再始動を優先せず,異常が解決しない限り生産のす
べてを止めるという原則が徹底されている.また,作
業者がどれだけ早く異常を判断できるかを学ぶ教育も
行われている.生産は,生き物であり,日々何かしら
の異常や問題が発生するのは避けられない.それに対
する都度の対策によって管理状態が保たれているとい
うことを,体で覚えるのが大切であると力説した.
「自働化」の考え方は,異常などの問題発見の必要
性を強く認識させるとともに,問題の見える化を確か
なものにし,組織的な改善を促す点を強調した.これ
によって,異常は速やかに顕在化し,問題の隠蔽など
を起こす必要もなく,正しい対応が可能になるとした.
3.2 自工程完結へのルーツ
生産を止める思想は,豊田G 型自動織機で開発され
トップマネジ
メント
管理部門
現場
図・2 品質マネジメントの組織的推進
方針の策定・展開
リソースの確保
問題の顕在化
対策の検討・実施
ツールの提供
組織化・支援
小集団活動
課題
課題
課題
課題
問題
課題
問題
課題
課題
問題
問題
ビジョン・方針
方針管理
上司との面談
上司との面談
能力目標
テーマ
教育研修
小集団活動
(実践の場)
年度方針
人材育成
計画
階層別・分野
別教育体系
能力評価
能力評価
(資
格認
定)
能力
評価票
仕組みの
見直し
品質管理教育
ルールの作成と遵守
異常の検出
と処置
結果
(異常)
プロセス
標準化
日常管理

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た糸が切れたら止まる仕組みを源とする.この思想は,
「品質の良いモノを,安く,タイムリーにお客様へお
届けする」というトヨタ生産方式(TPS)へ発展し,
無駄を出さないジャスト・イン・タイム,悪いモノを
作らない「自働化」などがTPS の成功を支えている.
1960 年代にトヨタ自動車は,経営管理の画期的革新
と良質廉価な製品の生産・開発をねらいに TQC を導
入し,「検査の理念は,検査しないことにあり」に例え
られる「品質は工程で造りこむ」考え方を根づかせた.
品質を工程で造りこむ考え方は継続的に改善され,
「自工程完結」が生み出された.約 800 工程の 2000
要素作業からなる自動車の水漏れに対する品質保証を
例に,一人ひとりの作業者が担当する工程の良品条件
を徹底的に整備する「自工程完結」の取り組みが紹介
された.良い製品図面を作り,良品条件を整備し,良
い作業標準を遵守し徹底的にやりきる.そして,現場
の困りごとや課題から設備・工法の改善,図面をより
良いものに変えていくサイクルを回し続ける.不良を
作り出さないために,製造・生産技術・設計の3 要件
を改善していくことが製造現場を強くし,自工程完結
を実現する道筋であると論じた(図・3 参照).
図・3 製造現場の強み
3.3 TQM の強化・推進
佐々木氏は,特別講演の最後に,特に大切に思うこ
ととして次項を挙げた.
1)
結果としての品質に加え,プロセスを管理する.
2)
プロセスに異常があれば,ただちに止める.
3)
原因を追究し,製造・生産技術・設計の視点で
改善する.
このためには,プロセスを重視した仕事の仕方と,
やりきる人材の育成が要諦であるとし,TQMの強化・
推進を強く訴求した.
4.パネルディスカッション
コーディネーター:
中條 武志 氏
パネラー:
日本品質管理学会 会長
小原 好一 氏
日本品質管理学会 副会長 棟近 雅彦 氏
日本科学技術連盟 理事長 佐々木 眞一 氏
日本規格協会
理事長 揖斐 敏夫 氏
※各パネラーの発言には,シンポジウム当日に時間の
都合上割愛した事項も含める.
4-1 パネル討論のねらい
一連の品質不祥事の報告書や報道の内容を見ると,
日本企業の品質管理が崩壊しているという主張がなさ
れたり,逆にコンプライアンスの問題であって品質管
理の問題ではないという主張がなされたりしている.
また,監査や罰則を強化すれば,自動化により人の要
素を排除すれば,防げるという考えに沿った対策の検
討が行われている.一連の品質不祥事について,「問題
の本質は何か」,および「問題を防ぐために取り組むべ
きことは何か」を討論する.これらを通して,品質管
理を組織・社会として推進・普及していく必要性を再
認識するのがパネル討論のねらいである.
4-2 論点①:問題の本質は何か
一連の不祥事は品質管理とは関係ないという意見と
関係あるという意見があるが,どちらなのか.関係す
るとすれば,どのような関係なのか.また,特定の組
織・職場の問題なのか,日本の多くの組織・職場に共
通する問題なのか,日本のすべての組織・職場に共通
する問題なのか.さらに,一連の不祥事の起因となっ
た人の行動が組織・職場の中で起こるメカニズムを,
どう考えればよいか.

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[棟近副会長]
<品質問題かコンプライアンス問題か>
日経新聞で,東京大学の藤本隆弘教授が述べられて
いる通り,無資格検査・改ざんは,法規・標準・契約
などの「逸脱行為」である.つまり,今回の品質問題
は,「製品・材料の品質」という狭義の品質を問うとい
うより,逸脱行為を発生させた「マネジメント・組織・
ひとの質」(広義の品質)にフォーカスする必要がある.
また,「よい品質の製品」を出すためのマネジメントに
は,逸脱行為が起こらないようにするマネジメントも
含まれる.逸脱行為と品質経営(広義の品質)の関係
について,品質経営を「疎かにした場合」と「実践し
ている場合」を対比しながら説明したい.
<広義の品質経営を疎かにした場合>
スピード感を伴う時代の変化に対応するためには,
その時代の流れにあった「革新的な戦略」を推進する
ことが必要になるが,革新ばかりに目が行くと基盤で
ある品質経営を推進するための「組織」や「ひと」の
育成が疎かになりがちである.また,「社会からの要請
の多様化」に伴い,経営課題が山積みとなり,品質経
営を推進する組織やひとの育成が後回しになっている
企業も散見される.組織やひとの育成を行わなくても,
直ちに影響が生じることはないが,時間の経過に伴い,
徐々に組織力は衰退し,気が付けば修復不可能なダメ
ージが生じる.いわゆる「ゆでガエル現象」である.
衰退した組織力が直ちに元に戻ることはない.「組織
力」も「個の力」も一朝一夕では向上しない.ゆえに,
「長期的なビジョン」を持ち,ぶれることなく品質経
営を推進する「組織力」と「個の力」を高めていくこ
とが求められる.
<品質経営を実践している場合>
品質経営を推進する「組織力向上・ひとづくり」を
重要課題に掲げ,着実に実践している企業は,当然な
がら品質不祥事が発生する可能性は低くなる.何故な
らば,ミスを含めた逸脱行為は,どの組織・職場にお
いても起こる可能性がある.しかし,品質経営が重要
と考え,そのための「ひとづくり」に注力している企
業では,経営者から最前線の社員まで「価値観を共有」
し,「問題を顕在化させて自発的に解決していく力」を
個人個人が養っているため,リスクを低減できる.ま
た,「組織づくり」を実践している企業では,問題を組
織的に解決することに加えて,再発防止・未然防止を
引き出すための「縦横のコミュニケーションと連携の
しくみ」を構築しているため,リスクをさらに低減で
きる.
[小原会長]
<問題の本質は「経営」にあり>
今回の品質問題の本質は「経営層」のリーダーシッ
プの有無にあると思う.問題を起こさせないための「ひ
と」を育てるのも,「しくみ」を構築するのも,経営層
のミッションである.経営層の担当者任せ,無関心は,
品質経営を形骸化させると同時に,先ほど話が出た「ゆ
でガエル化」の要因となる.積み重ねた信頼を失うの
は一瞬であり,信頼回復には,多大な時間と労力を要
する.従って,経営層は,「マネジメントの質」,「組織
の質」,「ひとの質」,「ものづくりの質」を高める「品
質経営」を,経営戦略の基本と考えなくてはならない.
また,長年にわたり品質経営に尽力してきた方々が,
不祥事の責任をとって退任してしまう,あるいは,定
年退職してしまうケースも散見される.長年にわたり
培ってきた品質経営に関する知識と経験を無にしては
ならず,企業の損失になる.彼らは,今の時代にこそ,
問題の再発防止,自社の品質経営の再構築,次世代の
人づくりに向けて,持てる力を最大に発揮していただ
きたい.
[佐々木理事長]
<機能分化に伴う経営層の関心の薄れが問題>
一連の不祥事は,品質マネジメントの問題ととらえ
るべきである.企業の目的は,お客様の価値を創り出
すことであるが,商品価値だけでは十分でなく,価値
を創り出す主体である企業が社会的責任を果たすこと
が求められる.例えば,その街に企業があることが付
加価値となる様な企業経営が必要.そして,お客様の
価値を創り出すことが品質マネジメントであり,経営
そのものである.
品質マネジメントにおける経営層の役割について,
経営者の品質マネジメントに対する関心が薄れ,担当
者任せになっているように感じている.日科技連では
1950~60 年代にかけて「品質無くして経営は成り立
たない」という使命のもとに経営層に対する教育を推
進し,経営層も呼応して品質立国を志した.そして,
品質マネジメント力は向上したが,専門家に任せれば
よいという機能分化が進み,社会の要請の多様化,規
制の強化なども背景として,経営層の関心が品質マネ
ジメントに行き届かなくなったことは否めない.

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経営層が品質マネジメントに関心を抱くか抱かない
かの分かれ目は,経営層が会社を自分の分身と考えて
いるか否かにあると考えている.会社と一体感を持つ
ことが大切である.
[揖斐理事長]
≪リスクマネジメントの要点≫
今回のいわゆる「品質不正」問題は,製品の品質そ
のもの(狭義の「品質管理」)の問題というよりは,コ
ンプライアンス,ガバナンスなどのリスク管理を包含
した広義の「品質管理」の問題であると考える.
リスクマネジメントの観点からコメントしてみる.
リスクとは,その事象が顕在化すると企業に好まし
くない影響が発生するが,それがいつ顕在化するか明
らかでない不確実性があるという性質をもつものであ
る.品質管理に係わるリスクは,会社を取り巻くリス
クの一部ということにはなるが,工学的リスクに留ま
らず,社会的,経済的リスクと広い範囲にまで及ぶも
のと認識する必要がある.
リスク管理は,第 1(リスクの認知と評価)に問題
点の認識,リスクの抽出,リスクの評価,第 2(未然
防止)にリスクの除去・低減,第 3(問題が起こって
しまった場合の対応)にリスクが顕在化した場合の損
失最小化のための対策や事前のシミュレーションなど,
3 つの要素からなる.
いずれの要素も大変重要だが,結構難しい課題であ
る.いずれにせよ,リスクは完全にゼロにはできない
ことをよく認識して,リスクの除去・低減の不断の努
力とともに,問題が起こってしまった場合に手際よく
対応する心構えとそのための準備を怠らないことが肝
要である!
≪なぜ,品質管理に係るリスクマネジメントが巧くで
きなかったのか?≫
不良品問題ではないのに,なぜ「品質不正」と言わ
れるような大きな騒ぎに陥ったのか?
今回の一連の品質問題をリスク管理の面からみると,
まず,第 1(リスクの認知と評価)の段階からつまず
いていたのではないかと言いたい.そもそもリスクを
正確に認知し,評価することは簡単ではない上に,例
えば現場レベルの品質という面からしかリスクをチェ
ックせず,企業の経営という面からリスクを見ようと
しなければ,すなわち多面的・総合的にリスクを把握
し評価しようとしなければ,データ書き換えのような
第三者から見れば明らかに拙いと考えられる事柄であ
っても,リスクと気づかない,あるいはリスクとは認
識できても速やかに除去・低減すべきリスクと評価で
きないという様なことが容易に起こりうることを示し
ている.
第 2(未然防止)では,業績が振るわず,社内での
優先順位が低くなり,予算や人材が適切に配分されな
いなどの事情により,そもそも認知したリスクの未然
防止対策を講じていない,あるいは講じても十分な対
策をしていないことが原因となるケースもありうる.
また,第 3(問題が起こってしまった場合の対応)で
は,未然防止対策では除去しきれなかった残存リスク
や発見できなかったリスクが顕在化して問題化し始め
た時に,手際よく処理し,損失を最小限に抑えられれ
ば,さすがにこの会社はしっかりしていると評判を落
とさずに済ませられることもある.しかし,問題化し
た場合を想定した事前のシミュレーションができてい
なければ,「想定外」だったと右往左往し,対応が後手
に回ることになって,もともと大した問題ではなかっ
たのに騒ぎを必要以上に大きくして,結果,企業価値
を大きく毀損することになってしまうというケースも
少なくない.
今回,品質問題を起こしたことが明らかになった企
業は数社だけだが,ハインリッヒの法則(労働災害に
おいて,1 件の重症事故の背景には,29 件の軽傷の事
故と,300 件の傷害にいたらない事故(ヒヤリ・ハッ
ト)があるという経験則)から考えると,適切なリス
ク管理ができておらず,品質に繋がる問題を起こすリ
スクを抱えた企業は,少なくないのではないか.
なぜこの様に品質管理に係るリスク管理が上手くで
きないのか.原因としては,次のとおり,色々な要素
が考えられる.
<1. 全社マネジメントの欠如>
今回の事象では,製造,品質管理,検査部門などの
関連部署だけの問題として捉えられ,営業や経営管理
部門など,品質に関わる全ての部門,すなわち全社マ
ネジメントの課題として認識されていなかったのでは
ないか.
棟近先生や小原会長が話されたとおり,品質経営が
上手くいっていない.現場と経営その他,縦横のコミ
ュニケーションと連携が上手く機能していない,ある
いは中條先生の講演の中にあったとおり1つの事業な
のに複数のマネジメントが存在する,すなわち事業プ

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ロセスと品質管理プロセスが遊離している.
リスクマネジメントは,経営層の責任において実施
すべき経営管理業務であり,関連部署の課題としての
み取り扱うのではなく,マネジメント全体の課題とし
て捉え,内外の状況の変化に応じたリスクの定期的な
見直しや会社全体のポリシー共有を含め,継続的改善
に努めることが極めて重要である.
<2. 職場風土,人間関係>
職場での問題意識,年月をかけて醸成されてきたそ
の企業または職場特有の,社会の一般常識から逸脱し
た常識などにより,問題点の把握やリスクの抽出がで
きない,あるいは,できても偏って一面的なものにな
る恐れが高くなる.
あるいは,他部門の話には口を出さないという雰囲
気がある.リスクは本当に起こるか否か分からない話
なので,上司が取り合ってくれない.声の大きい人の
意見に引きずられる.
先達から永年実施してきた行為を今さら否定できず,
また,成果主義のもとでは悪い話は速やかに報告しろ
と言われても,組織防衛意識が働き,会社全体のリス
クとして抽出できなかったというケースもあるだろう.
<3. 属人化 vs システム化>
日本企業の特徴であり,強みでもある現場重視,現
場の創意工夫に基づく業務のあり方が一方で属人化を
生み,組織として,業務プロセスとして機能しないた
め,現場で発生した問題が企業全体の問題として取り
上げられ難くなっている一面もあると考える.
<4. 仕組みの形骸化>
業績が振るわないので予算や人員の十分な投入がさ
れない,あるいは品質管理は既に完成したものとの認
識で社内の優先順位が低くなってしまっているなど
様々な理由から,リスクについて計画段階で十分な検
討が行われず,後追い,モグラたたきの活動が中心と
なっている.あるいは,内部統制や内部監査の仕組み
はあっても,活動が形骸化してきており,現場から経
営者にリスク情報が適切に伝達されない,全社的な適
切な検討ができないなど様々な状況が考えられる.
<5. 人材育成の不足>
社内でその必要性が認識されておらず,品質管理プ
ロセスの実施に必要となる人員が適切に配置されてい
ない,あるいは教育・訓練が組織的に行われておらず,
全て担当者任せになり,日常の品質管理のレベルが低
下していると考えられる.
<6. 品質マネジメントシステム活用の難しさ>
品質マネジメントのレベルを高めたい企業にとって,
ISO9001 に基づく品質マネジメントシステムは,パフ
ォーマンスを改善し,継続的改善への取組みのための
安定した基盤を構築するための大変に有用なシステム
である.しかし,ISOのマネジメントシステム規格は,
あらゆる国の,あらゆる業種の,あらゆる規模・形態
の組織への適用を目指しているため,規格には,
“what”は示されているが,“how”は示されていな
いことから,ISO 9001 は使い難いという面があるた
めに,上手く役立てられていない,あるいは使いこな
せていないケースが少なくない.
4-3 論点②:問題を防ぐために取り組むべきこと
は何か
対策として,「自動化」「監査・罰則の強化」「教育」
「コミュニケーションの改善」などがあがっているが,
これらについてどう考えるか.また,品質管理(トッ
プマネジメントのリーダーシップ,経営目標・戦略の
策定・展開と方針管理,標準化と日常管理,小集団改
善活動,品質管理教育,品質保証など)の視点から見
て,何を行うべきか.さらに,QC サークル活動が原
因の一端という報道もあるが,QC サークル活動との
関係をどう考えるべきか.また,ISO 9001 に基づく
品質マネジメントシステム認証は役に立たないのでは
ないかという意見もあるが,どう考えるべきか.
[小原会長]
<自動化について>
最近,IoT,AI,ロボットなどが劇的な進化を遂げ
ており,品質経営においても大いに活用できる.今の
世の中は,社会からの要請が多様化し,社員の負担は
増大する一方である.自動化・機械化すべき部分は進
め,社員が注力すべき業務に専念できる環境を構築す
ることが求められる.ただし,自動化が進んでも,
得られた「データを読み取る力」と「俯瞰的に物事を
見渡す視野」を「ひと」が持たなければ,品質経営に
活かせない.つまり,「自動システムを開発」するのも,
「品質経営を機能」させるのも「ひと」である.いか
に AI や IoT が進化しても,それはあくまでも道具で
あり,それを使いこなすのは「ひと」の技能・スキル・

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知恵である.
<経営戦略について>
先ほど,問題の本質は「経営層」にあると述べたが,
経営層が果たすべき役割について,経営戦略の観点か
ら言及したい.
経営戦略は,大きく分けて2 つあると思う.一つは,
「社会の変化を先取る『革新』戦略」であり,二つ目
は,「時代を問わず不変の『基盤』戦略」である.革新
戦略の例が「AI などを駆使した生産革新」であり,基
盤戦略の例として「品質経営」「ESG」などが位置付
けられる.品質経営とは,「ものづくりの質」だけでな
く,「ひとづくり」「組織づくり」を含めた「マネジメ
ントの質向上」を指す.この場合の「ひとづくり」と
は,革新戦略に役立つ「ひとづくり」ではなく,品質
経営を行うための「ひとづくり」である.企業は,「革
新戦略」への関心が高くなる傾向があるため,品質経
営などの「基盤戦略」が後回しになりがちである.し
かし,基盤が弱体化すると必然的に問題が発生する.
従って,革新戦略と基盤戦略を「両輪」として推進す
ること,「偏りを無くすこと」が経営層の役割である.
また,革新戦略は,各社の「独自性」が求められるが,
基盤戦略の進め方はどの企業も概ね「共通」である.
品質経営の進め方については,棟近副会長から後述す
る.
[棟近副会長]
問題を防ぐために取り組むべきことが最大の関心事
と思われるが,「まず自分自身で考える」ことが重要で
ある.そのような観点で,私自身が考えていることを
述べたい.
<監査・ISO9000 認証について>
不正が起こらないように監視するしくみは必要であ
る.24 時間ビデオで監視することではなく,外部監査
員による監査,各種データの複数名による確認など,
少し外の目,複数の目が入るような工夫をすることが
必要.将来的には,AI による自動チェックなどができ
るようになると良い.人は弱いので,このような取り
組みをすることも重要である.しかし,問題を隠した
り,そもそも組織内の人が問題と認識していなければ,
内部監査,ISO 認証機関の審査などでの発見は困難で
ある.監査やQMS などのしくみは,「問題を解決しよ
う」,「再発防止しよう」,「未然防止しよう」という,
トップから最前線の社員までの「活動の共有」が前提
となって機能する.この点においても,経営層のリー
ダーシップが前提となる.
<品質経営における経営層の役割(例)>
・品質経営を「経営方針」に掲げ,展開し,PDCA を
まわす責務(方針管理)
・「個の力と組織力の向上」を奨励(小集団改善活動・
品質管理教育など)
・結果の前段階の「プロセスで問題・課題を発見」を
奨励(プロセス保証)
・問題が発生したら「隠さず,直ちに報告」を奨励(日
常管理)
しかし,しくみを導入しても経営層が無関心では形
骸化の恐れがある.一部の報道では「現場の自主的な
改善活動が行き過ぎた結果」との意見があるが,経営
とオペレーションの不一致は,現場の責任ではなく経
営責任である.
また,品質経営の本質は「人間性尊重」にある.人
間性尊重の経営とは,自主性,自分の意思により自発
的に行い,そして頭を使ってよく考え,人間の無限の
能力を発揮させる経営であり,それを具現化した取り
組みが「小集団改善活動」である.経営層は,改めて
この本質を深く理解することが求められる.
そして,問題を防ぐためには,トップが不正をして
はいけないという姿勢を示すことに尽きる.常に,不
正をしないという行動規範に従って決断をしている姿
勢を示すとともに,実際にそういう決断をすることが
大切である.私の経験では,トップが自らやれば社員
は従う.ゆえに,経営層のリーダーシップが最も重要
ととらえている.
[日本品質管理学会として取り組むこと]
<手法・システム>
自動化・機械化は投資を要するが,汎用化が進めば
コストダウンに結び付く.日本品質管理学会において
も,IoT などを駆使した汎用性のある品質管理の「手
法・システム」を開発すれば,社会全体への普及と発
展に貢献できると考えており,日本品質管理学会の中
で発足した「生産革新部会」などで進めたいと考えて
いる.
<支部活動を通して>
日本品質管理学会では支部活動を強化している.
全国各支部の行事において,本日の要旨に加えて,方
針管理,日常管理,プロセス保証,小集団改善活動,

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品質管理教育などの要諦を伝え続けることにより,普
及を進めたい.
<経営層に訴求する活動>
日本科学技術連盟,日本規格協会をはじめ,品質経
営の志を共にする団体との連携を深め,経営層に訴求
する活動を展開する.
[佐々木理事長]
<自働化・教育などについて>
問題が大きくなる前に顕在化し対処する組織づくり
が大切である.そのために自動化,教育,コミュニケ
ーションシステムが必要になるが,罰則・監査につい
ては逆のメッセージとなってしまう恐れがあると個人
的には思っている.
<経営層の役割>
お客様価値を高めるために,企業活動を正しく導く
ために,経営層の役割が重要となるが,コマツの坂根
相談役が実践されている「バッドニュースファースト」
が大切と考えている.企業活動を行う限り,問題が無
いことはあり得ず,経営層は問題が生じるという覚悟
のもとに,組織に問題を顕在化し,解決する力を備え
ることが求められる.問題が生じることがまずいと考
える経営者もいるが,企業活動を営む上で,問題は必
ず発生することを念頭に置く必要がある.
<QCサークル(小集団改善活動について>
QC サークル活動は,現場の活性化を目的としてい
るが,QC サークル活動を通して組織全体の活力を高
め,経営に貢献することが本質である.また,経営層
は,QC サークル活動を通して経営理念を徹底する責
務がある.
[揖斐理事長]
1つの事業なのに複数のマネジメントが存在,すな
わち経営と品質のプロセス/マネジメントが遊離して
いることが問題なのだから,プロセス/マネジメント
を一つに統合するか各プロセス/マネジメントを同期
させて,いわゆる品質経営を実現することが必要とな
る.
このためには,品質管理に関する社内の優先度を上
げ,職場の意識を変え,既存の品質に係る事業プロセ
スを活性化し,必要なお金と人的資源を適切に投入し
ていかなければならないということである.
IoT,AI,Big data 技術を活用する Connected
Industries,Industry4.0 などが実現する将来の社会で
は,グローバル標準の活用が不可欠になっていくとい
うことも考え合わせると,私としては,適切な品質経
営を実現するためには,ISO 9001 をはじめとする国
際マネジメントシステム規格が大変役に立つと皆さん
に言いたい.
ISO 9001 認証が役に立っていないという声もある
が,役立てることができていない,あるいは使いこな
せていないのではないか.ISO のマネジメントシステ
ム規格は,あらゆる国の,あらゆる業種の,あらゆる
規模・形態の組織への適用を目指しているため,規格
には,“what”は示されているが,“how”は示されて
いない.このため,それぞれの企業に適したマネジメ
ントシステムを構築・維持できず,形ばかりの役に立
たないものとなり易いという欠点はある.しかしなが
ら,私自身,企業の事業所長をしていた時に,ISO の
マネジメントシステム規格は役に立たないのではと最
初に感じたことは確かにあったが,ISO のマネジメン
トシステムを使って,PDCA を回しながら,パフォー
マンスを改善し,継続的改善への取組みのための安定
した基盤を構築できたという経験があるので,改善を
図り事業の質のレベルを上げたい企業には,自信を持
ってお勧めできる.
中国は,中国品質管理のレベルアップに国策として
取り組むことを最近明らかにしており,このまま手を
こまねいていると,日本の最大の強みである“品質”
も国際競争において後手に回る恐れがある.
日本には,方針管理,日常管理,小集団改善活動(QC
サークル),統計的手法,品質管理教育など,様々な優
れた品質管理の仕組み・ツールがあり,成果を上げて
きた.ISO 9001 に基づく品質マネジメントと日本の
優れた品質管理の仕組み・ツールとを上手く融合させ
ることができれば,ISO9001 が使いやすい実用性の高
いものになり,品質管理/品質経営の効果的・効率的
な運営が容易になることが期待できる.
このためには,本日共催している日本品質管理学会,
日本科学技術連盟と日本規格協会の3団体が協力して,
まずは,JSQC(日本品質管理学会)規格の JIS/ISO 化
を積極的に図るとともに,優れた企業のマネジメント
システム・ツールの規格化という様なことも検討する
ことが重要と考える.日本の優れた現場での品質管理

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を維持しつつ,ガバナンス面の強化などを盛り込んだ
「広義の品質管理」=「品質経営」の内容を標準化す
ることができれば,日本の品質と品質経営の優位性を
将来にわたり揺るぎないものにしていくことに大いに
役立てるのではないかと考える.
4-4 討論のまとめ
顧客・社会にとっての価値を創ることが事業の目的
であり,価値創造を行うための組織能力を向上するた
めの品質マネジメントは事業を支える基盤とすべきも
のである.しかし,変化のスピードが速くなり,規模
が大きくなり,成功体験を経るにしたがって,品質マ
ネジメントが多くの経営要素の中の一つになり,経営
層の関心が薄れていく.これに伴って,品質マネジメ
ントのための組織づくり,人づくりが行き届かなくな
り,結果として,問題やリスクを顕在化できず,担当
者まかせになってしまったことが問題の本質である.
問題を防ぐためには経営層のリーダーシップが重要
である.革新戦略が無ければ企業は成長しないが,そ
ればかりでなく基盤戦略として品質マネジメントのた
めの人づくり,組織づくりが求められる.問題を見え
る化すること,経営層はバッドニュースファーストを
言い続けることが大切であり,QC サークル,ISO マ
ネジメントシステムなどの具体的なツールについては,
どのように役立てるのかというねらいを持ち,有効に
活用するための工夫を行うことが必要である.
5.まとめ
閉会挨拶において,日本規格協会理事長の揖斐敏夫
氏は,一連の品質不祥事が品質経営の問題であるとの
認識がこの度の緊急シンポジウムによって深まり,品
質経営の重要性と,品質不祥事の再発防止について未
来志向の議論が進展したと総括した.
品質重視の考え方は,第2次世界大戦後,先人たち
が苦労して築き上げ,世界から信頼を得てきたわが国
の貴重な文化であり,強みである.日本の経済・社会
の持続的な発展を確かなものにしていくためには,是
非とも次世代にこの貴重な文化と強みを継承していか
なければならないとまとめた.
品質経営の適切な実施に責務を負う経営層に対して,
品質関連諸団体が一致協力し,今後も時宜を得た品質
管理の啓発活動を積極的に展開していくとの所信を述
べ,緊急シンポジウムを締めくくった.
<本件連絡窓口(メールアドレス)>
UrgentSympo@jsqc.org
(本メールアドレスに送信頂いた内容は,
共催3団体の担当者が確認致します)
<共催3団体URL>
一般社団法人日本品質管理学会
http://www.jsqc.org/
一般財団法人日本科学技術連盟
http://www.juse.or.jp/
一般財団法人日本規格協会
https://www.jsa.or.jp/