最強女子高生「東龍」が見せた快進撃=バレーボール天皇杯・皇后杯全日本選手権

田中夕子

格上を倒してベスト4入りを果たした東龍。彼女たちの快進撃に、会場はくぎ付けとなった 【坂本清】

 バレーボールの天皇杯・皇后杯全日本選手権ファイナルラウンドが17日から20日、東京体育館で行われた。女子大会では、東九州龍谷高(大分、以下東龍)が、1回戦でV・プレミアリーグのNECを、続く準々決勝でパイオニアを破る快進撃を見せ、ベスト4入りを果たした。

高校生の域を越えたチーム

巧みなトスを上げるセッターの栄(前) 【坂本清】

 これが本当に高校生なのか。見る者は目を疑った。
 久光製薬のスーパーエース、元ブラジル代表のオリベイラ・エリザンジェラが放った強烈なバックアタックを、栄絵里香が169センチの小さな体で受け止め拾う。
「打てっ!」
 繰り返されるラリー中も、チャンスボールは正確に返し、高いブロックに対して無理な勝負はせず、懸命にボールをつなげ、一瞬のチャンスを逃さない。
 体勢を整えたセッターの栄からレフトの2年生村田しおりへ、ネットの白帯よりやや高い位置で、平行に、スピードのあるトスが上がる。まさに大人と子どもほど高さの違う相手にもおくさず、169センチの村田が鮮やかにクロススパイクを決めた瞬間、会場はどよめき、感嘆の拍手がわき起こる。
 相手コートに立つ34歳のキャプテン、先野久美子も東龍バレーに驚愕(きょうがく)したひとりだった。
「プレミアリーグのチームでも、あれだけ速いチームはない。それぐらい、速くて正確なバレーをしていました」
 高校生の域は、とっくに越えていた。

高校で「最高のバレーを教えてもらった」と語る長岡 【坂本清】

 3月の春高バレー、8月のインターハイ、10月の新潟国体。高校生にとって三大タイトルと言われる大会を、今年は東龍がすべて制し「三冠」を達成した。岩坂名奈(久光製薬)や松浦寛子(NEC)を擁した昨年も春高、インターハイを制し、地元大分での国体に勝利しての三冠を狙ったが、決勝で敗れ目標達成ならず。
 当時からセッターを務めた栄が言う。
「大分国体で負けたことが、今までの人生で一番悔しかった」
 コンビの徹底、ブロックとレシーブの連携など、一切の妥協をせずに日々の練習に取り組んだ。単調な攻撃になることを防ぐために、時には強打を禁じフェイントだけでゲーム練習を行い、高速コンビの組み立てはブラジル男子代表の映像を見て参考にした。
 相原昇監督が日本体育大でセッターだった経験を持つため、セッターにはより多くの課題が与えられた。身長の低い選手がどうしたら勝てるか、相手ブロッカーとの駆け引きや、チームの盛り上げ方。トスを上げるまでのモーションのスピード、手首の使い方など相原監督からの指導は細部へおよんだ。
 監督直伝の高速バレーで、全国大会を勝ち進む中で、得られた自信。
「早く、日本代表でトスを上げられるようになりたいんです」
 栄に芽生えた高い意識と志を、チーム全体が共有する。エースの長岡望悠(みゆ)も同様だ。
「高校に入ってからは、それまでと全く違う世界が広がっていた。この3年間で、最高のバレーを教えてもらいました」
 強くならないはずがなかった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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