yamazaki
見て!この男前!

愛称:山ちゃん 西の王子 チョイ悪王子 ザキヤマ(違)
棋風:矢倉を指さない居飛車党 変態流
基本能力:序盤B~S 中盤B~A 終盤B~S
特殊能力:ムラッ気 圧倒的閃き 


・現代将棋の恐ろしさ
現代将棋は事前研究のウエイトが大きな割合を占めています。特に角換わり、横歩取りといった戦形では水面下で詰みまで研究されている事が多々あって、一度指定局面に誘導されると以後はどうしても勝ちが無い場面があります。

kaku
有名な富岡流。

一例を挙げると上の局面は角換わりの定跡の一つですがなんとこの時点で先手必勝と言われています。この後に難解な変化がいくつかあるワケですが、全て先手勝ちと言われています。ただこれを実戦でぶっつけでいきなり指すのはあの鬼畜眼鏡をして「不可能」と断言されています。この後20手程で詰むや詰まざるやという局面になるわけですが、その時の詰まない手順が凄すぎるので研究無しで実戦で読み切って指すのは不可能だ、と。さらに事前研究が恐ろしいのは上記の局面は20手程前から変化の余地が無いという事で実質勝負は15手前についていたという事です。

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カウンターを狙って事前にアタリを避けて△4四銀とした局面。角換わりではよくある手だが遡ればなんとこの時点で殆ど先手必勝なのだ。

この局面になってしまえば将棋が強い弱いは関係ありません。知ってるか知らないかの世界です。知ってさえいれば僕が名人に勝つ事も可能です。このような局面は若手棋士を中心とした研究会で日進月歩水面下でどんどん生み出されていっています。現代将棋って恐ろしい!そんな中研究にはまらないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

・現代将棋界で生き残る2つのスタイル
戦形によっては事前研究で実質勝負アリといった事が多数存在するので、その落とし穴を避けるにはどうしたらいいでしょうか。1つは頑張って勉強する。当たり前の話ですが最新形に熟知していれば落とし穴を避けるどころか逆に落とし穴に嵌めてやる事も可能。ただ170人の将棋天才集団の中でさらに一日10時間以上の将棋の勉強というこれまた狂気を感じさせる行動、それに月の半数以上の時間と情熱を注ぎこむという事は中々皆が皆同じことをできるわけではないです。そして2つ目の方法は研究を外しやすい戦形に誘導して、これは研究してないだろっという手を指すわけです。勿論といってはなんですが山崎は後者です。

2012-08-16a
いきなり2手目に△6二金。狙いは研究を外す事。素人の将棋っぽいけど、プロ養成組織の最高峰で指されているある意味最新形(?)。

上は極端な例ですが、とにかく研究さえ外してさえしまえば後は力勝負。「俺の方が将棋は強いから最新形で嵌めるのだけは勘弁な!」という手です。なんという豪胆な思想。山崎も思想の根本は似たようなものですが、考え方のベクトルは少し違います。「不勉強な僕が最新形についていけるワケがない。研究で嵌めて苛めないで!」ヘタレです。例えるなら5教科7科目も勉強するのはしんどいけど大学には行っておきたいという高校生が私立文系コースというオアシスをみつけた時と似たような状況でしょうか。自分の不勉強さは認めるもののまぁなんとかうまい事やっていきたいという横着極まりない思想っ!しかし山崎はただ横着な人間とは一味違ったのです。

・羽生も認める天賦の才
sinyama

山崎の「味の違い」の一例を挙げますと、上の局面は横歩取りという戦形で新山崎流と呼ばれる形。将棋の格言で「居玉は避けよ」(王様はとりあえず動かしときなさい)という言葉がありますが、上記の局面はそれを真っ向から否定。「居玉でも先に攻めて主導権を握れたら素敵やん」という思想です。一般的には山崎が対局中に「研究に嵌りたくないから、その場の思いつきで指した」と言われていますし本人もそう言っているのですが、インタビューによっては「事前の研究会で少し試してみて面白かったから」と言っている事もあり真相は不明。そこらへんの曖昧さがなんとも山崎らしい。ただ一つ確かなのは上記の形は山崎自身大した研究の裏打ちもなく実戦投入したという事。

ただこれが実に素晴らしい構想で、一時は「横歩取り(8五飛型)の先手必勝の陣形ではないか」と言われた事さえあります。単にその場で思いつきで指した手がその後何年にも渡って最重要の研究対象となるのはまさに天性のセンスがなせる業。なんとなく面白そうと思って思いつきで発表した論文が後に学会での最重要課題として何年もその道のトップ集団が研究するようなものです。フェルマーの最終定理みたいなもんですね。ちなみに上記の局面は数年間に渡り徹底的に研究され、研究のスピードも速かったせいか僕自身、山崎が上記の戦形を指しているところをみた事は無いです(研究は避けよ)。

・天賦の才を持ちながらもガラスのハート
誰もが認める桁違いのセンス、才能を持ちながらも実績はそこそこの一流止まりの山崎。光速の寄せで知られる関西将棋界の重鎮である谷川からは「なんでタイトルが取れないんだ。早く取れ」と叱責され、現在第一人者である渡辺からは「山崎君は強い。私生活さえちゃんとすれば」と褒められているんだか、貶されているんだかよく分からない事を言われ、一部の棋士からは恐怖の対象である羽生からは「山崎君の将棋は独創性が素晴らしい」と大絶賛されるものの対戦成績は2-14とフルボッコにされ、しかも負けた上で「やる気を出せ」と説教されるオマケ付き。山崎以外にタイトルを取れない事でこんなにボロクソに言われている棋士は僕は知りません。

また優勢な局面でも「こんなに強い人から僕がこんなに優勢になれるわけがない」とネガティブ思考全開で銀をタダで取れる状況でそれを見送りボロボロに負かされたりとそのヘタレっぷりは逆に愛される領域に。ただ将棋が辛いからって麻雀とかに全力で現実逃避しないで!あなたはは誰もが認める「やればできる子」なのだから!

・矢内さんを諦めます


一部で「生放送中に棋士が告白した!」と話題になった「矢内さんを諦めます」動画。他にも似たような動画三本を取り揃えております。(要アカウント)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13553095
http://www.nicovideo.jp/watch/sm280759
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9022621

本人は「軽い気持ちで言った。反省はしていない。ネタになっておいしい」と言ってはいるもののやうたんの照れくさそうな表情、仕草・・・。こらー羽生に(将棋で)フルボッコにされても仕方ないわ。

まぁ本気半分、冗談半分の僕の戯言はおいといて、山崎には華があるんですよね。人間としての魅力というのか。それに加えて、天賦の才による独創性、またそれによる心の弱さという儚さ、それがまた人間としての魅力を増しているとも言えます。将棋界の中で若手と言ってももう三十路。

彼の華が咲き誇る日は来るのか、目が離せません。