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四輪独立駆動およびアクティブ前後輪操舵が可能な電気自動車の 緊急回避距離の最小化
Page 1
CT-14-069
四輪独立駆動およびアクティブ前後輪操舵が可能な電気自動車の
緊急回避距離の最小化
澤村 大祐,藤本博志(東京大学)
Study of Minimum Collision Avoidance Distance
for Electric Vehicles with Four Wheel Independent Driving and Active Front and Rear Steering
Daisuke Sawamura
, Hiroshi Fujimoto (The University of Tokyo)
Abstract
In this paper, automatic collision avoidance is studied, where it is formulated as an optimal control problem. Further-
more, the problem is designed as minimization of the longitudinal distance for avoiding the collision. The optimal force
inputs are obtained by the vehicle initial velocities of longitudinal and lateral, as well as the lateral distance to avoid the
obstacle. Then, the inputs are distributed as the forces distributed to the four tires. Simulations and experiments are
carried out to verify the effectiveness of the proposed approach.
キーワード:電気自動車, 四輪独立駆動, アクティブ前後輪操舵, 衝突回避, 最適制御
(electric vehicle, four wheel independent driving, active front and rear steering, collsion avoidance, optimal control )
1. はじめに
動力源がモータである電気自動車 (Electric Vehicle:EV) は
内燃機関自動車と比較して環境面だけでなく, 運動制御面にお
いても以下の 3 つの優位点をもつ (1)
トルク応答が 2 桁速い
モータの分散配置により各輪独立駆動可能
モータに生じているトルクが電流値から正確に測定可能
これらの利点を生かして EV の運動制御に関して多くの研究
がなされている (2) (3)。近年注目されている衝突回避技術にも
これら EV の特性を活かすことが望ましい。
衝突回避問題に関しての先行研究は多数存在し, ポテンシャ
ルフィールド法による方法 (4) や非線形計画問題 (6) による方法
等がある。文献 (5) では前後輪操舵を用いて衝突回避を実現さ
せている。しかし, 前後輪舵角にはそれぞれ機械的な限界があ
り車両運動・軌跡は制限される。それらに冗長性を持たせて障
害物回避性能を向上させるには前後輪舵角だけでなく, 駆動力
差モーメントも制御対象として考慮すべきである。また, 文献
(6) において服部らは障害物回避問題を終端時間自由の最適制
御問題として定式化している。4 輪の制駆動力・舵角を自由に
制御できるとして質点モデルを用いて検討しているが, 服部ら
は実験結果を示すまでには至っていない。
本稿では, センサ等を用いたオンライン制御は行わず, 静止
障害物の位置を既知とする前提のもと, 文献 (6) の方法を用い
て最短回避経路算出を行う。そして車両がその経路に追従す
るように制駆動力・横力配分を行う。4 輪独立駆動およびアク
ティブ前後輪操舵により負荷率均等化制御を施した場合を提案
法として用い, シミュレーションと実験により緊急回避におけ
る回避距離の観点から負荷率均等化制御 (3) の有効性を示す。
2. 実験車両と車両モデル
21〉 実験車両
図 1 に実験車両, 表 1 にその諸元を示
す。この車両は著者らの研究グループが製作した電気自動車
図 1 FPEV2-Kanon
Fig. 1. FPEV2-Kanon
表 1 FPEV2-Kanon の車両パラメータ
Table 1. Vehicle Specification.
Vehicle Mass M
869 kg
Wheel base lf
0.999 m
Wheel base lr
0.701 m
Gravity height hg
0.51 m
Tire radius r
0.302 m
Vehicle inertia I
617 kgm2
Tread width df = dr
1.3 m
「FPEV2-Kanon」である。本車両には, ダイレクトドライブ方
式のインホイールモータが各輪に搭載されている。1 輪あた
り発生可能な最大トルクは前輪が ±500 Nm, 後輪が ±340 Nm
である。アクティブ前後輪自動操舵が可能であり, 最大操舵角
は前輪が ±0.35 rad, 後輪が ±0.15 rad である。
22〉 実験車両モデル
四輪独立駆動とアクティブ前後
輪操舵が可能な自動車についてのモデル化を行う。対象車両モ
デルを図 2(a) に, 前後輪操舵角 δi が十分小さい場合の車両の重
心点の前後方向, 横方向, ヨー軸周りの回転方向の運動方程式を
式 (1)∼(5) に示す。ただし,Fxall は車両重心点の前後力,Fyall
は車両重心点の横力,Nz は制駆動力差モーメント,Nt は横力
モーメント,Mz は車両重心点周りのヨーモーメントとし,Fxij
は各輪の制駆動力,Fyij は各輪の横力,di は前後輪トレッド幅,li
1/6

Page 2
(a) Vehicle model.
(b) Friction circle.
図 2 車両モデル
Fig. 2. Vehicle model.
は前後軸重心間距離である。ここで, 添え字 i は前後 (f,r) の
いずれか, j は左右 (l, r) のいずれかを表す。
Fxall = Fxf l + Fxf r + Fxrl + Fxrr ················ (1)
Fyall = Fyfl + Fyfr + Fyrl + Fyrr ················ (2)
Nz =
df
2
(Fxf l − Fxf r)
dr
2
(Fxrl − Fxrr) ····· (3)
Nt = lf (Fyfl + Fyfr) − lr(Fyrl + Fyrr) ········· (4)
Mz = Nz + Nt ································· (5)
各輪タイヤ横すべり角が十分に小さいとき, 車両は線形二輪
車両モデルとみなせる (7)。このとき, 前後輪のコーナリング
フォース Yi はタイヤ横すべり角に比例し, 前後輪の各横力は
これに等しいとみなせる。また, 車両の走行速度 V , 車両重心
点横すべり角 β, ヨーレート γ, 前後輪操舵角 δi, コーナリング
スティフネス Ci の関係を考慮して, 前後輪の各横力は以下の
ように近似できる。
Fyfj ≃ Yf =
Cf
1 + Tf s
(β +
lf
V
γ − δf )············· (6)
Fyrj ≃ Yr =
Cr
1 + Trs
(β −
lf
V
γ − δr)············· (7)
ここで, 一般的にタイヤ横力はタイヤ横滑り角に一次遅れの応
答をすることが知られており, Ti は時定数である。
各輪の垂直荷重 Fzij は, 車両重量 M, ホイールベース li, ロー
ル剛性前後配分比 ρi, 重心高 hg, 前後・横方向加速度 ax, ay, 符
号関数 sgn を用いて以下のように表せる。(7)
Fzfj =
1
2
lr
l
Mg − axM
hg
l
+ sgn(j)ρrayM
hg
dj
······ (8)
Fzrj =
1
2
lf
l
Mg + axM
hg
l
+ sgn(j)ρrayM
hg
dj
······ (9)
j = l(r) のとき, sgn(j) = 1(1) として扱う。
23〉 摩擦円の関係
各輪の制駆動力 Fxij と横力 Fyij
および垂直荷重 Fzij は常に次式を満たさなければならない。
F2
xij + F2
yij ≤ µFzij ··························· (10)
この関係を摩擦円と呼び図 2(b) に示す。(7) この式より各車輪
の発生合力ベクトルの摩擦円使用率として各輪の負荷率 ηij
次のように定義する。
ηij :=
F2
xij + F2
yij
µFzij
F2
xij + F2
yi
µFzii
············ (11)
図 3 回避軌道
Fig. 3. Avoidance trajectory.
ηij は 1 に近いほどタイヤ力の限界に近いことを表す。タイヤ
力の飽和を避けるために各輪の負荷を分散させる方法が多数研
究されている (8)。その 1 つとして各輪の負荷率の 2 乗和を最
小化する手法があり (3), 本稿ではこれを提案法として用いる。
3. 障害物回避の経路生成 (6)
31〉 問題設定
障害物回避の経路生成として, 服部ら
が文献 (6) にて提案した回避問題を終端時間自由の最適制御
問題として定式化した方法を用いる。4 輪の制駆動力・操舵角
を自由に制御できるとすればヨー運動が生じないとき回避性
能が最大であるとして質点モデルを用いて検討している。文
献 (6) では, 初速度 vX0, vY 0 と横移動距離 Ye, 車体質量 M, 車
体最大発生力 Fmax が既知の場合, 回避に必要な前後走行距離
Xe を最小化する最適制御入力 Fopt(t) を算出している。
図 3 のように衝突回避開始の車両位置を原点にとり, 水平面
内における地上に固定した XY 平面を設定する。任意の時刻
t における車両の位置を X(t), Y (t) とした初期条件, 終端条件
を式 (12),(13) と設定している。
[X(0) ˙X(0) Y (0) ˙Y (0)]T = [0 vX0 0 0]T ········· (12)
[Y (te) ˙Y (te)]T = [Ye 0]T ························· (13)
また, 質点における摩擦円の関係を拘束条件とする。
F2
X + F2
Y − F2
max 0···························· (14)
これらの条件下で, Xe(t) を最小化する Fopt(t) を導出する。文
献 (6) より上記の問題設定の場合, 次の連立方程式を得る。こ
こで, ν1, ν2 はラグランジュ定数, te は終端時刻を表す。


M
Fmax
vX0ν2
2
ν2
2
(ν1te+ν2)2+t2
e
ν2
2
1+ν2
1
ν1ν2
(1+ν2
1 )
3
2
Q=0
M
Fmax
vY 0ν1
(ν1te+ν2)2+t2
e−ν1
ν2
2
1+ν2
1
+
ν2
(1+ν2
1 )
3
2
Q=0
M
Fmax
vY 0te+
ν2
ν2
2(2−ν2
1)
2(1+ν2
1)2
3ν1ν2
2
2(1+ν2
1)
5
2
Q− M
Fmax
Ye
+
{(1+ν2
1 )(ν2−ν1te)3ν2}
(ν1te+ν2)2+t2
e
2(1+ν2
1 )2
=0
Q=ln
(1+ν2
1 )te−ν1ν2+
(ν1te+ν2)2+t2
e
1+ν2
1
−ν1ν2+
ν2
2
1+ν2
1
(15)
vX0, vY 0, Ye,Fmax, M が既知ならば, 式 (15) の解 ν1, ν2, te
求めることができ, これより最適制御入力 Fopt(t) を得る。
2/6

Page 3
d &
s
D
&
K
z D
>W&
図 4 ヨーレート制御系
Fig. 4. Yaw-rate Control System
Fopt(t)=[FXopt(t) FY opt(t)]T
=
Fmax
M
−t+te
(−t+te)2+1(−t+te)+ν2}2
−ν1t+ν1te+ν2
(−t+te)2+1(−t+te)+ν2}2
(16)
最適制御入力は Fopt(0) ̸= 0 であるが, Fopt(0) =0 とするた
めに, シミュレーションと実験では 10 rad/s のローパスフィル
タをかけている。
また, 回避に必要な前後移動距離 Xe は次式で求められる。
Xe =
Fmax
M
{(1+ν2
1 )te 3ν1ν2}
(ν1te +ν2)2 +t2
e
2(1+ν2
1 )2
+vX0te
Fmax
M
3ν1ν2
ν2
2
2(1+ν2
1 )2
+
Fmax
M
ν2
2 (2ν2
1 1)
2(1 + ν2
1 )
5
2
Q (17)
本稿では式 (14) の拘束条件で, 最大車体発生力を Fmax =
˜ηµMg と表現できるように質点負荷率 ˜η を導入する。˜η を大き
くすると, Xe も小さくなる。しかし, ˜η が大きくなりすぎると,
各輪の負荷率のいずれかが大きくなりすぎる可能性もある。ま
た, 前後輪操舵角, 各輪トルクが機械的に制限されることで横
力と制駆動力も制限される。そのため, ˜η はある程度小さい値
をとることになる。
4. 制御系設計
3 章で算出した Fopt(t) を図 4 に示す制御系に入力して前後
力・横力配分することで衝突回避を実現する。本稿では車体
滑り角は車体横滑り角オブザーバによって推定し (9), ヨーレー
トは車体重心に取り付けたジャイロセンサから取得している。
下記で示す従来法と提案法では制御系は全て共通で前後・横力
配分方法が異なる。
41〉 横力のみ (従来法 1)
前後力は一切発生させず横
力のみによる操舵回避を行う。横位置, 横速度, 横加速度の指
令値を式 (12),(13) を満たすように 5 次多項式より求める。
Y (t) = 10
Ye
t3
e
t3 15
Ye
t4
e
t4 + 6
Ye
t5
e
t5 ··············(18)
Fy max ≤ Fmax ··································(19)
te =
10
3
3
Ye
˜ηµg
···························(20)
終端時間 te は質点負荷率 ˜η の値により変動する。
また,2 輪車両モデルとみなした式 (2),(4) より横力配分則を
以下に示し, Nt = 0 を指令値として入力する。
[
Fyf
Fyr
]
=
[
2
2
2lf
2lr
]1[
Fyall
Nt
]
············ (21)
42〉 均等配分法 (従来法 2)
左前後輪, 右前後輪に各々
等しく制駆動力を配分する方法を均等配分法と呼び, 式 (1),(3)
より制駆動力配分則を以下に示す。
[
Fxl
Fxr
]
=
[
2
2
(df +dr) df +dr
]1[
Fxall
Nz
]
·····(22)
横力配分は従来法 1 と同様に行う。Mz = 0 を満たすように
Nt = −Nz を指令値として入力する。
43〉 負荷率均等化制御 (3)(提案法)
Nz, ˆNt を, 車両
のヨーモーメント Mz, 外乱モーメント ˆNd とすることで, ヨー
レート制御系を構成する。式 (1)∼(5) より次式を得る。
Fxall
Fyall
Mz
=
0
0
1
1
1
1
2
2
0
0
0
0
2lf
2lr df
2
df
2
dr
2
dr
2
Fyf
Fyr
Fxf l
Fxf r
Fxrl
Fxrr
(23)
ここで, 左辺の入力列ベクトル [Fxall
Fyall
Mz]T b,
右辺の係数行列を A, 横力および制駆動力の列ベクトル
[Fyf Fyr Fxf l Fxf r Fxrl Fxrr]T x とする。µ は全輪等し
いとして, を各輪の負荷率の二乗和を評価関数 J とする。
J =
i=f,r
j=l,r
(µηij )2
= xT Wx
W = diag
(
1
F 2
zfl
+
1
F 2
zfr
, 1
F 2
zrl
+ 1
F 2
zrr
, 1
F 2
zfl
,
1
F 2
zfr
, 1
F 2
zrl
, 1
F 2
zrr
)
(24)
ただし, W は重み行列である。Fzij は式 (8),(9) より ax, ay
測定することで推定する。J を最小化する重み付き最小二乗解
は以下のようになる。
xopt = W
1AT (AW
1AT )
1b ················ (25)
シミュレーションと実験では, ηijmax が 0.20, 0.25, 0.30 とな
るように ˜η を調整した Xe を比較する。
5. シミュレーション
51〉 シミュレーション条件
ロール剛性配分比は簡単
化のため, ρf = ρr = 0.5 と仮定した。摩擦係数を µ = 0.8, 前後
輪コーナリングスティフネスのノミナル値は Cf = 11220, Cf =
23600, 式 (7),(8) における時定数は Tf = Tr = 0.1585 とした。
回避は図 3 に示す経路で行い, 住宅街での走行を想定してお
り, vX0 =30 km/h,vY 0 = 0 km/h,Ye =1m と設定する。
ヨー運動をさせないため, γref =0 とする。ヨーレートに対
しフィードバック制御 (P 制御) を行い, 比例ゲインは Nin から
γ への伝達関数 1
Ins に対し極が-10 rad/s となるように極配置
法で決定し,YMO の極も-10 rad/s に設定した。式 (21) によっ
て配分される Fyj に対しフィードフォワード制御およびフィー
ドバック制御 (PI 制御) を行った。この PI 制御器のゲインは
プラントを式 (6),(7) としたときの閉ループの極が前後輪どち
らも-10 rad/s となるよう極配置法によって求めた。
3/6

Page 4
0.18
0.2
0.22
0.24
0.26
0.28
0.3
11
12
13
14
15
16
17
18
maximum tire workload [−]
avoidable distance X
e
[m]
conv1
conv2
prop
(a) Simulation.
0.18
0.2
0.22
0.24
0.26
0.28
0.3
11
12
13
14
15
16
17
18
maximum tire workload [−]
avoidable distance X
e
[m]
conv1
conv2
prop
(b) Experiment.
図 5 ηijmax に対する回避距離
Fig. 5. Avoindance distance for each ηijmax.
0
5
10
15
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
X [m]
Y [m]
conv1
conv2
prop
(a) Simulation.
0
5
10
15
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
X [m]
Y [m]
conv1
conv2
prop
(b) Experiment.
図 6 回避経路 (ηijmax = 0.25).
Fig. 6. Avoindance trajectory(ηijmax = 0.25).
52〉 シミュレーション結果
従来法と提案法において,
ηijmax = 0.25 となるように ˜η を調整したシミュレーション結
果を図 7,8,9 に示す。図 7,8,9 (b) (c) (d) より前後輪舵角およ
び横力と前後力が機械的限界範囲内にあること, 図 7,8,9 (f) よ
りヨーレート 0 制御が達成できていることがわかる。これら
は横力と前後力が自由に発生できる領域にあり, ヨー運動なし
という文献 (6) の条件を満たしている。また, 図 7,8,9 (h) より
各輪負荷率の最大値が 0.25 に制御されていること, 提案法に
より負荷率が均等化されていることも確認できる。
6.
61〉 実験条件
2 章で述べた実験車両を用いて行った。
車速 30km/h まで加速し, 一定速度になるように速度制御を行
う。その後, 制御入力 F (t),γref = 0 を図 4 に示す制御系に入
力することで自動衝突回避を開始する。回避開始から te 後に
前後・横力の指令値を 0 とし, その他の条件はシミュレーショ
ンと同様とした。
62〉 実験結果
従来法と提案法における実験結果を図
10,11,12 に示す。図 10,11,12 (b) (f) より前後輪舵角およびヨー
レートが制御できていることが確認できる。図 10,11,12 (c) よ
り前後横力が指令値に一致しておらず, これは横力 PI 制御に
おける極が十分ではないない等が考えられる。図 10,11,12 (e)
より Nt を打ち消すように Nz が出力されて Mz の値が抑制さ
れていることが確認できる。
ηijmax に対する最短回避距離結果を図 5, 回避経路を図 6 に
示す。図 5(a) は各手法において ηijmax を拘束するため ˜η
調整して取得したデータである。図 5(b) は図 5(a) より得られ
ηijmax = 0.20, 0.25, 0.30 となるときの ˜η を用いて実験を行
い得られたデータから各手法 10 点ずつプロットしたものであ
る。シミュレーションと同様の実験結果が得られていることが
確認できる。本稿では, 位置ではなく前後力・横力を制御して
いるため, 回避経路には偏差が生じる。(Ye = 1 に対して横移
動距離は, 従来法 1 が約 0.97 m, 従来法 2 が約 0.91 m, 提案法
が約 0.94 m) しかし, 従来法に対して提案法の横移動移動距離
は 2, 3 cm の誤差なので, ここでは従来法と提案法の横移動距
離は等しいとして Xe を比較する。
表 2 に ηijmax を固定した各手法に実験結果を示す。ηijmax
= 0.25 の場合の Xe はで従来法 1 で 16.48 m, 従来法 2 で 13.62
m, 提案法では 13.27 m である。提案法により従来法 1 に対し
Xe が 19.48 %, 従来法 2 に対して 2.57 %減少している。従
来法 2 に対しての効果が小さいが, 従来法 2 は指令軌道に対
しての追従性が悪いため, 横移動距離が等しくなるように Ye
を調整して Xe を比較すると更なる効果が期待できる。また,
ηijmax が増加するにつれて, Xe が減少していくことがわかる。
実験結果もほぼ同様の結果が得られている。
7. ま と め
本稿では, 4 輪独立駆動およびアクティブ前後輪操舵が可能
な電気自動車の緊急回避における負荷率均等化制御の有効性
を検討した。服部らの提案する方法により最短回避経路を算
出し, 車両がその軌跡に追従するために制駆動力・横力配分を
行った。提案法として負荷率均等化制御を用い, その有効性を
シミュレーションと実験により示した。従来法 1 に対しては
前後走行距離の大幅な短縮が, 従来法 2 に対しては指令軌跡へ
の追従性の高さを示すことができた。今後は移動物体の衝突
回避に関しても検討していく。
最後に本研究の一部は NEDO 産業技術研究助成 (プロジェ
クト ID:05A48701d) および文部科学省科学研究費補助金(基
盤研究 A 課題番号:26249061)によって行われたことを付記
する。
参考文献
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( 7 ) 安部 正人:自動車の運動と制御, 山海堂 (2003)
4/6

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0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal Force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfδr
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload
図 7 シミュレーション結果 (従来法 1, ηijmax = 0.25)
Fig. 7. Simulation results(conv1, ηijmax = 0.25).
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal Force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfδr
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload
図 8 シミュレーション結果 (従来法 2, ηijmax = 0.25)
Fig. 8. Simulation results(conv2, ηijmax = 0.25).
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfδr
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload.
図 9 シミュレーション結果 (提案法, ηijmax = 0.25)
Fig. 9. Simulation results(prop, ηijmax = 0.25)
( 8 ) 西原 修, 平岡 敏洋, 熊本博光:独立操舵車両における横力と
制駆動力の最適配分: タイヤ負荷の Minimax 最適化, 日本機
械学会論文集 C 編, Vol. 72, No.714, pp. 537–544(2006)
( 9 ) 青木 良文, 堀 洋一:電気自動車における車体すべり角オブ
ザーバのロバスト化と実車データによる検証, 電気学会論文
誌D, Vol.125, No.5, pp.467–472(2005)
5/6

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表 2 実験結果 ( ηijmax を固定した各手法における Xe)
Table 2. Experiment results(Avoindance distance for each ηijmax).
ηijmax
conv1 [m]
conv2 [m]
prop [m]
v.s. conv1 [%] v.s. conv2 [%]
0.20
17.71 (˜η = 0.174) 14.81 (˜η = 0.168) 14.72 (˜η = 0.170)
16.89
0.61
0.25
16.48 (˜η = 0.210) 13.62 (˜η = 0.202) 13.27 (˜η = 0.209)
19.48
2.57
0.30
15.29 (˜η = 0.243) 12.77 (˜η = 0.234) 12.50 (˜η = 0.246)
18.25
2.11
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal Force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfref
δfreal
δrref
δrreal
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload
図 10 実験結果 (従来法 1, ηijmax = 0.25)
Fig. 10. Experiment results(conv1, ηijmax = 0.25).
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal Force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfref
δfreal
δrref
δrreal
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload
図 11 実験結果 (従来法 2, ηijmax = 0.25)
Fig. 11. Experiment results(conv2, ηijmax = 0.25).
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−1500
−1000
−500
0
500
1000
1500
time [s]
FXopt,F
Yopt [N]
Fxref
Fxreal
Fyref
Fyreal
(a) Optimal force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
steering angle [rad]
δfref
δfreal
δrref
δrreal
(b) Steering angle.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−500
−400
−300
−200
−100
0
100
200
300
400
500
time [s]
lateral force [N]
Fyfref
Fyfreal
Fyrref
Fyrreal
(c) Lateral force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−350
−300
−250
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
time [s]
driving force [N]
FL
FR
RL
RR
(d) Driving force.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−200
−150
−100
−50
0
50
100
150
200
time [s]
Nz,Nt,Mz [Nm]
Nz
Nt
Mz
(e) Moment.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.25
−0.2
−0.15
−0.1
−0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
yaw−rate [rad/s]
ref
real
(f) Yaw-rate.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
−0.02
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
time [s]
slip angle [rad]
ref
real
(g) Slip angle
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
tire workload [−]
FL
FR
RL
RR
(h) Tire workload.
図 12 実験結果 (提案法, ηijmax = 0.25)
Fig. 12. Experiment results(prop, ηijmax = 0.25)
6/6