〈5・2〉 シミュレーション結果
従来法と提案法において,
ηijmax = 0.25 となるように ˜η を調整したシミュレーション結
果を図 7,8,9 に示す。図 7,8,9 (b) (c) (d) より前後輪舵角およ
び横力と前後力が機械的限界範囲内にあること, 図 7,8,9 (f) よ
りヨーレート 0 制御が達成できていることがわかる。これら
は横力と前後力が自由に発生できる領域にあり, ヨー運動なし
という文献 (6) の条件を満たしている。また, 図 7,8,9 (h) より
各輪負荷率の最大値が 0.25 に制御されていること, 提案法に
より負荷率が均等化されていることも確認できる。
6. 実
験
〈6・1〉 実験条件
2 章で述べた実験車両を用いて行った。
車速 30km/h まで加速し, 一定速度になるように速度制御を行
う。その後, 制御入力 F (t),γref = 0 を図 4 に示す制御系に入
力することで自動衝突回避を開始する。回避開始から te 後に
前後・横力の指令値を 0 とし, その他の条件はシミュレーショ
ンと同様とした。
〈6・2〉 実験結果
従来法と提案法における実験結果を図
10,11,12 に示す。図 10,11,12 (b) (f) より前後輪舵角およびヨー
レートが制御できていることが確認できる。図 10,11,12 (c) よ
り前後横力が指令値に一致しておらず, これは横力 PI 制御に
おける極が十分ではないない等が考えられる。図 10,11,12 (e)
より Nt を打ち消すように Nz が出力されて Mz の値が抑制さ
れていることが確認できる。
ηijmax に対する最短回避距離結果を図 5, 回避経路を図 6 に
示す。図 5(a) は各手法において ηijmax を拘束するため ˜η を
調整して取得したデータである。図 5(b) は図 5(a) より得られ
た ηijmax = 0.20, 0.25, 0.30 となるときの ˜η を用いて実験を行
い得られたデータから各手法 10 点ずつプロットしたものであ
る。シミュレーションと同様の実験結果が得られていることが
確認できる。本稿では, 位置ではなく前後力・横力を制御して
いるため, 回避経路には偏差が生じる。(Ye = 1 に対して横移
動距離は, 従来法 1 が約 0.97 m, 従来法 2 が約 0.91 m, 提案法
が約 0.94 m) しかし, 従来法に対して提案法の横移動移動距離
は 2, 3 cm の誤差なので, ここでは従来法と提案法の横移動距
離は等しいとして Xe を比較する。
表 2 に ηijmax を固定した各手法に実験結果を示す。ηijmax
= 0.25 の場合の Xe はで従来法 1 で 16.48 m, 従来法 2 で 13.62
m, 提案法では 13.27 m である。提案法により従来法 1 に対し
て Xe が 19.48 %, 従来法 2 に対して 2.57 %減少している。従
来法 2 に対しての効果が小さいが, 従来法 2 は指令軌道に対
しての追従性が悪いため, 横移動距離が等しくなるように Ye
を調整して Xe を比較すると更なる効果が期待できる。また,
ηijmax が増加するにつれて, Xe が減少していくことがわかる。
実験結果もほぼ同様の結果が得られている。
7. ま と め
本稿では, 4 輪独立駆動およびアクティブ前後輪操舵が可能
な電気自動車の緊急回避における負荷率均等化制御の有効性
を検討した。服部らの提案する方法により最短回避経路を算
出し, 車両がその軌跡に追従するために制駆動力・横力配分を
行った。提案法として負荷率均等化制御を用い, その有効性を
シミュレーションと実験により示した。従来法 1 に対しては
前後走行距離の大幅な短縮が, 従来法 2 に対しては指令軌跡へ
の追従性の高さを示すことができた。今後は移動物体の衝突
回避に関しても検討していく。
謝
辞
最後に本研究の一部は NEDO 産業技術研究助成 (プロジェ
クト ID:05A48701d) および文部科学省科学研究費補助金(基
盤研究 A 課題番号:26249061)によって行われたことを付記
する。
参考文献