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そこ、つっこみ処ですから: 検索結果

タグ「アニメ」が付けられているもの

http://gigazine.net/news/20130710-little-witch-academia-2/
この成功は素晴らしい。
で、政府のクール・ジャパン推進とは、どんな関係があるのだろうか。

というのは、こういうのがクラウドファンディングで成功するなら、政府のクール・ジャパン推進機構による金銭的支援なんて要らないというツイートを見かけたからだ。

まあ、確かにそういう側面があるのだけど、じゃあ国の支援なんて全く要らないかというと短絡的過ぎで、そもそもこの作品が、文化庁の支援で作られたという経緯がもっと理解されるべきだろうと感じた。
http://animemirai.jp/about.php

アニメミライのプロジェクトが始動した2010年の前、どんな状況だったか、覚えているだろうか。
前年の2009年、麻生内閣は、「アニメの殿堂」とか「漫画の殿堂」、「国営漫画喫茶」と揶揄された117億円の箱モノをお台場に作ろうとして、大きな批判を受けた。このブログでも批判した。
http://maruko.to/2009/04/post-25.html
-->
まだ、117億で、5・6本でも継続して作品に投資してくれた方がマシだ。
コンペは、代理店抜きなら10本作っても十分おつりくるぜ?
受注条件は、制作会社を国内に限定し、海外への下請けや外注は、極力制限しても良い。あと、制作過程でコンプライアンスを遵守させることは、必須条件だ。経産省とも連携すれば、
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20390487,00.htm?tag=nl
これのガイドラインを生かした成功例にさせても良い。
<--

その後、国立メディア芸術総合センターという仮称を得たのだけど、当時はmixiのコミュなんぞでも色々議論されていた。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43952487&comm_id=111198&page=all

そして7月、設立準備備委員会に日本アニメーター・演出家協会(JAniCA)が出席し、人材育成の必要性を訴えた。
http://www.janica.jp/press/mediacenter.html
国立メディア芸術総合センターを作るなら人材育成に使わせろと。

経産省も「アニメ産業コア人材育成事業」が動いていて、日本動画協会が随意契約してJAniCAが再委託していた。
http://www.meti.go.jp/information/data/c90728aj.html

で、9月に麻生内閣が終わり、民主党政権が始まった。

当時の「コンクリートからヒトへ」という大きな流れは、まだ誰もが覚えているだろう。
国立メディア芸術総合センターの話は消えたが、JAniCAによる人材育成の必要性の訴えが通じ、2010年、文化庁委託事業として「若手アニメーター育成プロジェクト」(後のアニメミライ)が始まった。

当初は、作品制作団体選定に関連してJAniCA内部でちょっとしたイザコザがあったり、心配な時期もあったが、今から考えれば大成功だったと言えるのだろう。
http://www.janica.jp/press/janicatimes_001.pdf
http://www.janica.jp/press/janicatimes_002.pdf

そうして、アニメミライ2013で制作されたのが、リトルウィッチアカデミアだったわけだ。
http://www.animemirai.jp/c2.php

「俺たちクールとか言ってる場合じゃねーよ。絶滅危惧種なんだよ!」と言ったかどうかは知らないが、アニメミライとは、「コンクリートからヒトへ」の民主党政権が、とても上手く機能した例だったのかもしれない。政権が自民党に戻って、経産省のクール・ジャパンがまたヘンテコな方向に進んでいても、
http://www.huffingtonpost.jp/social/Hiroshi_Koga/story_n_3438220_260977327.html
文化庁のアニメミライは健在(縦割りのお陰?(苦笑))であり、
http://www.animeanime.biz/all/136295/
http://www.kickstarter.com/projects/1311401276/little-witch-academia-2
こんな成功につながっているのだ。

こういう支援こそ、クールだと思う。

と、ここまで書いてから検索したら、
http://ure.pia.co.jp/articles/-/12761
丁度いい記事もあった(^^;

DRM freeでダウンロード

■Kick-Heart
前回のクラウドファンディング続きってわけではないけれど、最近これにちょこっとお金を出した話を。
http://www.kickstarter.com/projects/production-ig/masaaki-yuasas-kick-heart
IG湯浅監督の、約10分の短編アニメプロジェクト、Kick-Heartだ。

今日見たら、丁度10万ドルを超えていた。
でも、あと残り2週間で、もう5万ドルって達成できるのかな。ちょっと心配。
(10月30日までに15万ドルに達しないと、課金が発生しないシステムなので、正確にはまだ出資したとも言えない。)

湯浅監督といえば、マインド・ゲームが衝撃的で、劇場公開時も会社の同僚と一緒に観に行ったし、DVDも買って持っている。凄いのだけど、あまり広く一般に売れるというより、マニアじゃないと凄さが分からないタイプの監督かもしれない。(まあ、マインド・ゲームはロビン西氏の原作漫画も衝撃的に凄いのだけど。)

そんな監督が、クラウドファンディングで新作の資金を集めているというのだから、応援したくもなる。
http://animeanime.jp/article/2012/10/02/11614.html
http://animestyle.jp/news/2012/10/05/2663/

でも、それだけじゃない。

■ダウンロード
金額によって特典に差があるけれど、自分は15ドルを選んだ。まあ、今は節約生活してるからというのもあるけれど、高額な選択肢は、Blu-rayとかメディアももらえることになっていて、それが嫌だったからだ。

これが9月までなら、コピー防止されたメディアからのリッピングも私的使用なら合法だったから、プラスチックの円盤にもリッピング元として意味があった。でも、この10月から、著作権法の改悪でその手のリッピングが違法となったので、リッピングしちゃいけないプラスチックの円盤をもらっても、狭い部屋が保管場所として一層狭くなるだけになってしまった。

まあ、こんな話をしても、普段からDVD等を大量に買っていない、年に数えるほどしか有体物でコンテンツを買わない人には意味が理解できないかもしれないので、ちょっと説明したい。

自分は、一番DVDを買っていた頃は、年100枚以上買っていたヘビーユーザーで、全部で何枚保有するのかは、途中で数えるのをやめた過去がある。ま、エクセルで一覧作って管理はしているのだけど、全部はカウントしきれていない。(一覧作って管理する前は、忘れて同じ作品のDVDをダブって買ってしまったりしていた(自爆))
そして、当然の結果として、実家の自室は、それらDVDのパッケージが山積されている。東日本大震災の時は、それが倒壊して大変だった(苦笑)

さて。

今回のリッピング違法化が正しいと思っている人の中で、自分で購入した大量のコンテンツのパッケージの山から、ある作品を見たいと思って捜索を開始し、何時間も探し続けるという徒労を経験したことがある人は、一体どれほどいるだろうか?

お金がジャブジャブあれば、メディア保管庫でも作ってレンタルビデオ店のように整然と並べておけるだろうが、そうはいかない。うちは、大量のマンガはかなり整然と並べているが、DVDはBOXなど箱の形が様々なので、雑然と積み重ねてしまっており、後になって、奥に入ってしまった作品を引っ張り出すのは容易でない。30分の作品だろうと、2時間の作品だろうと、尺に関係なく場所を取るし、久しぶりに見たいと思った作品を探す苦労は、並大抵ではない。

箱からディスクのみ取り出して、別途ファイリングもしたりしているけれど、一冊に100枚くらい入るいくつものフォルダから、目的の1枚を探すのは、やっぱり大変なのだ。結局、観たい作品をいつでも骨を折らずに観られるようにするには、買った作品を片っ端からリッピングして、大容量なHDDに私的使用目的で整理して複製しておくというのが、9月までの至って合理的な問題解決方法だった。決して、複製したデータをネットに送信可能化しようとか、他人に渡そうなどというつもりは一切なく、純粋に私的使用のために、リッピング行為は合理的に必要だった。

別にプラスチックの円盤や無駄に豪華なパッケージを集めたいのではなく、純粋に観たい作品を観る方法としてDVDを買ってきただけなので、DVDなしに自由に鑑賞できるなら、そもそもDVDなんて欲しくない。(そういう意味では、収集マニアではないので、観賞用と保管用を別に買うなんてマニアの気持ちは理解できないが、レンタルしてリッピングするほど子供でもない。正直、25年くらい前は、著作権の存在すら知らず、悪意なしにレンタルビデオをダビングしていたが(遠い目)、大人になってから可能な限りDVD等で買い直した。)

だから、リッピングできず、観たい時に観るのが困難になるなら、もうこれ以上、邪魔になる円盤など増やしたくない。以前は軽い気持ちでDVDを購入していたが、今後は、どうしても買わなければならない特段の事情でもなければ、原則として買わないと決めた。しかし、ネットのオンデマンドサービスに満足しているわけでもないので、困ったなぁとは思っていた。(なんか、観たいのに買わないって本末転倒気味だけど、観たい時に自由に観られない前提なら、もう諦めるのを基本にしようと。つまり、ヘビーユーザーを意識的に引退することにしたわけだ。やっと普通の人に?)

そういうところだったので、クラウドファンディングで湯浅監督の作品を支援できるというだけでなく、ダウンロードで本編がデータでもらえるということが、とても素晴らしいと感じたわけだ。

しかも、Kick-Heartのクラウドファンディングのページには、以下のような説明もあった。

Our digital downloads will be DRM free and our Blu-ray and DVD's will be region free.

分かってらっしゃる!

ダウンロードしたら、タブレット端末にコピーして、寝転がりながら鑑賞させてもらうかもしれない。

ということで、Kick-Heartのクラウドファンディングは、デジタル著作権管理をしないファイルを配布してしまうという点でも、是非とも成功して欲しいと思ったわけだ。

■デジャブ
クラウドファンディングにお金を出すということは、それまで一般消費者にしかなれなかった人が、スポンサーになれるということだ。なんか、OVAの創世記に似たような話が...と思ったら、以下のインタビューを聞きなおして納得。

石川氏が25年前を振り返り、今はマーケットを意識するとエッジの効いた作品が作れないという話をしている。マスには受けないけど、たまには作りたい作品を作ることも必要で、そのためにクラウドファンディングは有用だと考えたわけだ。

1980年代、似たような理由でできた市場が、OVAだった。
その辺については、以前触れたので、興味のある人は以下をどうぞ。
http://maruko.to/2010/11/post-96.html

マス向けの作品と、エッジの効いた作りたい作品の、両方が必要という話も、とてもよく分かる。すると、DRM freeな本編データがダウンロードできるという方法も、マス向けには適用する気はないのかもしれない。けれど、リッピングが違法化されてしまった現在、マス向けでも何かしらのユーザー目線での対応は、検討して欲しいなぁ...

■蛇足
丁度、リッピング違法化について、マイナビがアンケートをやって公開した。
「DVDリッピングの違法化でDVDの売上は変わる? 「伸びると思う」は4.6%」
http://news.mynavi.jp/articles/2012/10/13/dvd/

そりゃそうだ、という結果。
このアンケート、自分も答えた記憶があるなと思ってたら、掲載されてる「年間100枚以上DVDを購入していたが、リッピングの違法化はまるで犯罪者扱いされているようで、怒りを感じる」という反対意見が、正に自分が答えたものだった(笑)

まあ、「法の支配」を尊重する我が国なので、きっと「法治主義」ではないので、悪法には従う必要がないという人もいるだろうけど...(ry

国策会社とクール・ジャパン

ちょっと気になる話題だったので、更新。

「政府、ハリウッドにアニメ・玩具セールス 国策会社設立」asahi.com:2011年11月3日3時7分
http://www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
-->
日本のアニメや玩具などのコンテンツをハリウッドで映画化するプロジェクトが、今月スタートする。政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して10月に設立した新会社が日本に利益をもたらすため、ハリウッドに素材を売り込む。
<--

朝日新聞デジタルに加入してないので、記事の続きは見てないけれど、この国策会社とは
http://maruko.to/2010/04/post-83.html
この時に「コンテンツ海外展開ファンド」と言われていたやつだろう。

「株式会社 All Nippon Entertainment Works」の設立については、アニメ!アニメ!ビズでも、3ヶ月前に書かれていた。
http://www.animeanime.biz/all/118161/

産業革新機構のホームページを見てみよう。
http://www.incj.co.jp/investment/deal_022.html
以下のPDFの4ページ目参照
http://www.incj.co.jp/PDF/1313377374.01.pdf
-->
【案件の意義(投資インパクト)】
●本邦コンテンツをグローバルに展開、結果としてグローバル市場からの収益を最大化した上で国内に還元し、グローバル市場で大きな収益を上げる革新的事例を創出し、文化産業からの次世代の国富獲得に貢献する
●国内コンテンツ業界の人材を育成し、グローバル市場における事業化ノウハウを蓄積。また、関連する各種ビジネスを日本勢が獲得することにより、国内産業のグローバル水準でのオペレーション能力を育成、日本の人材及びコンテンツ業界がグローバルビジネスの一角を占めることをめざし、全体のエコシステムを進化させる
<--

これ自体は、特に悪い事業とは思わない。
何故なら、昨年「クール・ジャパンのマヌケ」で書いた「コンテンツ海外展開ファンド」への苦言に、一部応えてくれたような内容だったからだ。

前提として、日本のコンテンツ業界が、グローバル展開に力不足であることを認めている点は重要だ。リメイクを通じた人材育成で、ハリウッドの流儀を身に付けるというのは、つまりは産業育成だ。これが成功した先に、初めて、オリジナル作品の自力でのグローバル展開なんて可能性が開けるのではないか。

記事が浅いから、誤解するだろうが、短絡的に否定しても何も始まらない。
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1320260613/
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/showbiz/manga/TKY201111020748.html

そら、政権批判とか、誰でも簡単にできる上に共感も得やすいから、楽だろうけどさ。

実は、産業革新機構使ってコンテンツ海外展開ファンド創設するって酷い話は、麻生政権時代にできている。(「クール・ジャパンのマヌケ」書いた時、忘れてたけどね(自爆))
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
前提として、俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れるとか大きな勘違いをしていたので、この頃のスキームだったら、日本のコンテンツ産業は空洞化して終わり。

それが、リメイクの過程でハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢になったのだから、同じ産業革新機構経由でも、単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。一見残念なのは、制作する現場への支援が見えない点だけど、この辺に関しては別の事業がいくつか存在するので、分けて考えているのかもしれない。まあ、分けられると、制作現場としてはガッカリなんだけど。

それから、朝日の記事でもう一つ誤解されている部分がある。
-->
まず、映画化を目指す日本の素材の権利を取得したうえで、米国のプロデューサーらと脚本作りや監督、俳優の選定などを進める。当初3年で権利10件、30億円の投資を見込んでいる。
<--

素材の権利を、何故All Nippon Entertainment Worksが取得するのか。
(この部分も、自民党時代と同じ。)

答えは、日本のコンテンツ特有の欠点の一つが、製作委員会方式で権利者がウジャウジャいることだからだろう。こんな面倒なことは、ハリウッドではやっていない。それが、この会社を通せば一社で権利処理できることで、あらゆる展開がスムーズに進められるようになるわけだ。この辺は、エンタメ系の弁護士あたりが思いつきそうな話だ。

今までは、リメイクしたくても、交渉せにゃならん会社が沢山あって、誰の許諾を得れば良いのか分からない場合などもあった。法律にはないが、窓口権というのを製作委員会のメンバー各社が持っていて、誰もがリメイクに協力的とは限らない。その一部が倒産したり、担当者が退職して引継ぎされてなかったりすると最悪で、後からどんな問題が生じるのか恐くて手が出せないとか。まあ、とにかく、ハードルが高いわけだ。リメイクの話なのだから、ある程度古い作品が対象だろうが、もっと古い作品だと、そもそも著作権の帰属レベルで、国内でも裁判だらけだったりするしね(苦笑)

それに、All Nippon Entertainment Worksが「権利を取得」すると言っても、条件付きの使用許諾の類ではないだろうか。オリジナルの権利者が、自らに不利な条件を簡単に飲むはずないので、単純に権利を失うような契約を前提にしているとは考え難い。ということで、そんなに目くじらたてる問題ではないだろう。


ところで、それにしても出資の仕方が迂遠ではないかと思うかもしれない。
実は、経産省のクール・ジャパン戦略推進事業には、北米向けにコンテンツ系のものが存在しない。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
流石に、俺たちクールとか言いながら、ノウハウ教えてくださいとは言えない。
でも、経産省がやるとしたら、確実にクール・ジャパン戦略推進事業の枠組みになってしまう。

クール・ジャパンと距離を置いて推進すべきという意味で、こういうアプローチをすること自体は、ありでしょ。望ましいとも言える。だから、あんまり国策会社とか強調しない方が良い。それこそ、こっそりやるべき事柄だ。

そんなわけで、All Nippon Entertainment Worksを頭から否定はしないのだけど、できればお願いしたいことがある。

そのリメイク作品のVFX、日本のCG制作会社とか絡ませて欲しい。
どのみち、将来日本に制作の仕事が回ってこないような話なら、意味ないしね。
間違っても、違法でも安価だからと、アジアのどっかの国にばかり仕事ふるようなスタイルは、学ばなくて良いから。
国産比率と法令遵守を条件に...とまではいかずとも、ハリウッドのVFX仕事の下請けでも、参加できるようにしてもらえませんかね?(^^;

まあ、All Nippon Entertainment Worksが天下りの隠れ蓑だったりしたら、最悪だけどね(苦笑)
目的は良くても、手段が杜撰でろくな結果が出なけりゃ、ちゃんと批判しよう。
怪しけりゃ、河野太郎とかが叩いてくれることに期待しつつ(笑)

安くなったもんだ

■廉価版DVD
今更という話ではあるけど、アニメのDVDの価格設定が面白い。旧作の廉価版DVDが大量に出始めて、コアなヲタクでなくても衝動買いできるようになってきている。

去年からのバンダイビジュアルのEMOTION the Bestというシリーズの登場がきっかけの一つのようだけど、ジェネオンのRONDO ROBE SELECTIONも、11月末までの期間限定の廉価版という形で販売していて、廉価版がちょっとしたブームになっている。こういう場合の期間限定という言葉の使い方は、購買意欲をくすぐる(笑)

以前、DVDのセル市場の価格設定について触れた、
http://maruko.to/2009/01/post-5.html
上記の第7項にも書いたけど、この市場には、ヘビーユーザー層(年間購入金額3万円以上)と、それ以外のライトユーザーというか、いわゆる一般消費者層が存在し、売上げの大半は少数のヘビーユーザーによって成立している。

ところが廉価版DVDは、売上げに寄与してこなかった一般消費者層を開拓しようとするもので、画質にこだわるヘビーユーザー層は高額でもブルーレイを買うという棲み分けが成立した時代ならではの、ダブルスタンダード戦略だろう。ちょっと、昔を思い出しながら、廉価版の背景を想像してみる。


■昔のOVA
そもそも、OVAが登場した1980年代、ヘビーユーザーというか、まだ規模の小さなヲタク第一世代を対象に市場が形成されたため、価格は高いのが当たり前で、ビデオ作品を買うことへのハードルは、今とは比べ物にならない程高かった。まだ、大きなお友達が今ほど多くなく、大人がアニメを見るのもはばかられる時代に、平気で1万円以上の価格設定がされていたという状況の特殊性は、当時を知らないと理解し難い。最近だって、アニメはブルーレイが高い高いと言われているわけだが、約25年前はもっと高かったのに、ファンはそれが仕方ないと理解していた。日陰者の嗜好品というと語弊があるが、TV化が無理な作品をマイナー市場向けに製作するのだから、高いのが当たり前で、しかも買うというより、良作の作品作りにダイレクトに出資しているような感覚に近かったかもしれない。買い支える感覚だ。

丁度、当時のOVAの値段について、面白いツイートがある。
http://togetter.com/li/18577

皆でお金を出し合って買って観たなんてツイートもあるけれど、個人でいくつも買えるシロモノではなく、買ったら皆で貸し合うことに、著作権侵害だなんて誰も言わない時代だ。

当時、お金のないアニメファンがOVAを見る手段の第一は、アニメ専門誌(アニメージュアニメディア、ジ・アニメ、遅れて登場したニュータイプ、OVAのためのアニメV、他にも、アニメックファンロード月間アウトとか)のイベント告知のページで試写会情報をゲットし、せっせとハガキで応募することだった。(主要都市でしか開催されないので、地方在住のアニメファンは、さぞかし苦労しただろう。)

試写会会場では、普通の映画の試写会と異なり、アニメ本編の試写の前に、主題歌のライブコンサートなんてものも定番だった。というのも、会場ロビーではOVAの予約受付や、サントラのレコード販売が行われており、試写会と言いながらも即売場を兼ねていたからだ。

声優や監督の裏話やコンサートの合間に、必ず物品販売の告知が入り、「本日この会場でビデオの予約をされた方には、サイン入りポスターを差し上げます!」とか、「予約者は、イベント最後に、セル画や関係者のサイン色紙が当たる大抽選会に参加できます!最後に声優さんと握手も!」とか、「本日、まだ予約が少なくて、是非皆さんのご協力が必要です。続編につなげるためにも、是非!」みたいな、泣き落としもあった。

あ、当日既に販売会社の解散が決まっていて、この作品で最後ですから買ってください、なんて試写会も思い出したw

まあとにかく、未成年が大量に含まれる会場で、コンサートやイベントで昂揚させて判断能力を低下させ、その場でグッズ購入やOVAの予約をしなければ損だという印象を植えつけ、高額商品を売りつけ...というと、一歩間違えばマルチ商法の勧誘のようだが、別に悪質なわけではなく、レコードやビデオは、値引き無しの定価販売が当たり前の時代でもあって、特典がもらえるならと、こぞって予約の列ができていた。

それを羨ましく眺めつつ、OVAを買う金がないので、仕方なくサントラのレコードを買っていたのを思い出すが、LPレコードは大きいので、ジャケットの大きな絵をゲットできてちょっとお得に感じていたような気もするし、レコードでも、買えば当日の抽選会に参加できたり、関係者と握手できたり...って、やはり冷静な判断力を失っていたかな(自爆)

で、レンタルビデオを待つのが、第二の手段だ。いつからOVAがレンタルされるようになったのか定かでないが、OVAが置いてあるレンタル屋を見つけるのに、店を転々としたファンも多かろう。で、借りたら当たり前に、VHSのデッキを2台つないでアナログ劣化コピーして、よく分からない満足を得ていた。コピーガードなんて施されていない時代のお話(苦笑)


■価格破壊と市場拡大
今の感覚だと高いと感じるかもしれないが、一話4800円という価格破壊をもたらしたパトレイバーが、自分が初めてシリーズもので買い揃えられた作品だった(後に、演出してた澤井さんと職場が一緒になった時は、実はかなりブッたまげた)。その後、ウィークリービデオ(隔週で二話づつビデオを送ってくる)と称して一話2500円計算で全26話を予約者のみに限定販売した銀河英雄伝説、それらにつられて安く価格設定されたレア・ガルフォースなども、頑張って買ったw

今のアニメからは想像がつかないだろうが、パトレイバーも銀河英雄伝説も、途中のアイキャッチで、TVのようにCMが入っていた。ビデオ販売作品なのに、企業CM入れてコスト削減し、更には、いつかTVで放映できる日に備えていたのだ。

こうして、低価格化(当時として)、一般向けに市場拡大を目指す流れができた結果、予算をかけて自由に創った作品を少数者に売る市場としての、OVA本来の存在意義が、変化を始めた。マンガ連載との相乗効果を狙う、メディアミックス路線の作品が増えたのもこの頃からだろう。

OVA+マンガから始まったパトレイバーが、劇場版、TV放映へとつながっていく様は、サクセスストーリーそのものだったのではないだろうか。シリーズを買い支えたファンは、作品の成功そのものに歓喜したと言っても、言い過ぎではない。


■メジャー化の代償
パトレイバーを中高生で体験したヲタク第二世代は、第二次ベビーブーム世代でもあり、角川のメディアミックス路線や、攻殻機動隊、エヴァも体験しつつ、1990年代後半には大きなお友達へと成長し、高額作品でも買い支えられるようになった。すると、価格を気にせずクオリティにこだわるようになる。

しかし、深夜アニメの登場や、エヴァが社会現象となっていくにつれ、ビジネスとしてのヲタク市場の拡大は、ヲタクそのものが一般化していく過程と重なる。拡大した市場における一般化したヲタクは、最早本来のヲタクではないのと同様に、OVAも本来のOVAではなくなった。そこに残ったのは、単なる商品とその消費者、という関係に見えた。

かつては見る機会すら限られていたような作品が、衛生や地上波で放送されるような時代になったが、それをVHSで録画しても、最早満足しない。丁度、VHS+LDでの販売スタイルから、DVDへのメディアチェンジのタイミングで、劣化しないデジタルメディアで作品を保有したいという欲望が、TV放映そのものを作品の宣伝媒体と捉えるビジネスモデルを支えた。もちろん、旧作のVHSからDVDへの買い直し需要も生じた。

ヲタクの支払い意欲額の限界に挑戦するかの販売手法が登場する一方、低価格化で市場拡大を目指す必要性が薄れたのか、ガイナックス商法など、焼畑農業に躊躇がなくなった(苦笑)

それでも、好んで焼かれるファンとの蜜月が続き、市場が成立していた頃は良かった。しかし、理由は様々あろうが、ついにパイが縮小し始めたことで、ほころびが生じてきた。

第二次ベビーブーム世代の大きなお友達も既婚者が増えたろうし、そもそもデフレだし、昔と異なり携帯などの通信費が毎月生じる現在、どの世代も趣味に使える金が減っているのだろう。最近のヲタクにとって、映像作品の購入は必須でなくなり、ヲタク的なサービスやファッションその他、ライフスタイル全般におけるヲタク的消費の一部という位置付けとなり、マイナー市場を買い支えるという認識が希薄化したのだろうとも思う。かつてのOVAのような、稀少価値のある嗜好品ではなくなったのだから、そりゃ支払い意欲額も低下する。しかしそれは、そういうビジネスモデルを選択した結果でもある。ま、ジャパニメーションだのクールジャパンだの自画自賛したことの帰結とも言える。シビアな財布で選択と集中の結果、選択に漏れる作品が出たとしても、最早パトロンでもない消費者に文句は言えない。

そういう意味で、ネットの違法配信の影響云々言うのは、これが80年代の稀少価値がある時代のOVAなら理解できるが、90年代以降の、TV放送を前提としたビジネスモデルからすれば、売上げに悪影響が出る要因とは言えないはずで、何とも間が抜けた言い訳に聞こえる。初めから、放送の録画で満足して完結しない人々に向けて、その先の展開で利益を出す計算なのだから、ネット配信で満足してしまうような人は相手にしていなかったはずだ。

だから、
http://maruko.to/2010/07/post-90.html
こういう話になる。

メジャー化し、稀少価値が薄れた現在、消費者の支払い意欲額を引き上げるために、再度の囲い込みを狙うというのは、何とも後ろ向き過ぎる。囲っては焼き払い、囲っては焼き払いでは、いつしかペンペン草も生えなくなる。

あれ?
なんだか話が違う方向に進みすぎた(苦笑)

まあ、そんなこんなで、囲い込みではない、耕作面積拡大のための廉価版販売というのは、大いに賛成だ。

■廉価版の恩恵
減少しているとはいえ、依然としてヘビーユーザーは大事だ。ブルーレイに特典付けて高額にしても、ヘビーユーザー需要はまだ存在する。しかし、それ以外の一般消費者に対する働きかけの必要性も増している。単に、ブルーレイよりDVDが少し安い程度では、一般消費者にはそれでも高すぎる。双方に両立する有効な売り方は...

ということで、旧作DVDの廉価版販売という戦略が、流行りだしたのではなかろうか。ヘビーユーザーが高額で買う時、同時発売で極端な廉価版を出すわけにはいかないし、特典で差を付けるにも限界がある。そこで、時は金なり。旧作扱いなら、廉価版を出しても文句はなかろう。しかも、今更ヘビーユーザーは、DVDなんぞ欲しがらないから悔しくない。

ブルーレイへの過渡期だからこそ可能な、ヘビーユーザーの気分を害さない形での廉価版での需要創出というバンダイビジュアルの手法が継続し、各社も同様の戦略に出ている今、これは買う側にとってもチャンスだろう。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1011/11/news025.html
これのせいで今後は、廉価版を物理的なメディアで売るという販売手法自体が消える可能性すらある。そういう意味でも、一応メディアとして保有したい人には、今が本当の最後のチャンスかもしれない。

え?
メディアで保有したいって発想自体が、とっくに少数派?
すみません、元ヘビーユーザーだったもんで、やっぱ形が欲しくて(苦笑)


以下、一応自分向けメモとして、気になるのを貼っておこう。


って、気になりすぎる!!(自爆)


■蛇足
今頃、自分が最後にサポートした仕事が、やっと発売するのを見つけた(笑)

廉価版じゃないのにこの価格なのは、お子様向け作品だからだろう。
まぁ、記念に自分用に買っておくかな。

ビジネスと内輪受けの差

当たり前の話
先日、以下の記事を読んで、何をアホな話をしているのかと、ある意味驚いた。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1007/26/news010.html

先祖帰りとか、何言ってんの?

「それならば、作品に関連したおもちゃを買ってもらう代わりに映像はタダですよ、で僕はいいと思っています。」って、それ当たり前の話ではないか。

アートアニメじゃあるまいし、マーチャンダイジングとセットでビジネスを考えるのは、商業アニメとして何も珍しい話じゃない。

今までそれが当然と思っていなかったなら、根本的に、権利をクリエイトするという発想が抜けてる、典型例だろ。


で、ネット社会の弊害?
ジブリのやり方に付いていく?
10人程度の会社で?

言ってることが滅茶苦茶。

ネットの力に屈して作画クオリティを上げて失敗したとか、この人が言うとギャグみたいだが、クオリティを諦めてブランド力を上げるとか、何の夢物語だろう?


ヲタク市場
確かに、ヲタク市場のパイの奪い合いには限界がある。

そもそも、DVD のセル市場は、少数のヘビーユーザー(年間購入金額3万円以上)によって買い支えられてきた。5年前の日本映像ソフト協会の調査では、国民(16~69歳対象)の6%のヘビーユーザーの購入金額が、セル市場全体の77.7%を占めていたが、昨年の調査では、ヘビーユーザーが5.1%に減り、金額はセル市場の57.5%に減少した。5年前のセル市場は、3,124億円で、昨年は2,674億円だ。

敢えて言うなら、DVD、ブルーレイのヲタク市場そのものが縮小してるのだ。

だから、ヲタク市場の外へ、ブランド力を上げて打って出ようという考え自体は正しい。内輪受けビジネスには限界があって当然で、そんなことは何年も前から、言われていたことだけどね。

だけど、その手法がまた、「浮動票みたいなところで争うのではなくて、組織票でがっちり固めてしまうという。」のはどうか?

また囲い込みかいな(苦笑)
逆に、浮動票の広大な市場を相手にすべきなんじゃないの?


■「Cat Shit One」
そんなことを思っていたら、市場拡大を具体的に目指している、とある作品に出会った。インターネットをネガティブに捉えず、本編全て(22分)をYouTubeで無料配信(公開期間:2010年7月17日~9月20日)している、「Cat Shit One」だ。
http://www.catshitone.jp/

そして、そのプロデューサーが、大変良いことを話している動画を見つけた。

こういう手法を選択したプロデューサーが、どんな考え方なのか興味があったのだけれど、 元ビルドアップの岡部氏で、いつの間にか円谷プロを辞職して、新会社を作っていたようだ。時期的に考えれば、円谷がパチンコメーカーのフィールズの子会社になる直前だから、それを嫌っての辞職なのかもしれない。まあ、想像の域をでないが。

以下、面白い発言を抜粋してみる。
-->
オンラインで映像を輸出することがテーマにある。
日本の市場が冷え込んでる。お子様が減ってますから。
だから、やっぱりコンテンツは、海外に対して売っていかなきゃいけない。色んなところで唱えてるけど、ほとんどシカトされてるんですけど。

そういうところでインターネットのインフラを使えば、まずは単純に売れる。
じゃあそのお金どうするのというところがあるはある。
僕から言わせれば、海外と、じゃあパートナーシップどっかと契約して、どっかの放送局とやってどうこうやる形よりは、自分たちで海外に向けて発信して売っていく方が、最終的には利益がデカイだろうと。

あとは、ジャパンなんとかクールとかおっしゃってるけど、あれはでも、なんでしょうねぇ。例えば、アメリカのアニメエキスポとかコンベンションで、そういう人が取材にきて、ほらアメリカではこんなに凄い、日本のコンテンツがウケてるんですよと、そこだけ切り取って全米とか見ちゃうのヤバいでしょうと、僕5年住んでたから分かるんですよ。そんなにはウケてないんで。

自分たちで売っていくってところで、インターネットをフル活用して動いていけば、僕はもう活路が出ると。

なんでハリウッド映画が、凄く巨額のお金をかけるかとすれば、それはマーケットが広いからであって、だからマーケットを広げるってところを、僕らも模索していかない限りは、いくらクリエイティブで凝ったモン作るとか、もっと愛情がどうこうとか、そんなもの、全然お金って裏付けがなければ表現できませんから。

それをじゃあ、僕は実はずっと、そういう座布団を用意してくれるプロデューサーが現れると思っていたんです。作っていたから。
だけど、そんな人一生現れない。僕は40過ぎた時に分かったんです。ああ、もうない。そんな人現れないから、じゃもう自分でやろうと。
<--以上、抜粋終わり


なんつーか、成功して欲しいですな。

通常、短編作品を単館上映しても、赤字。でも、劇場公開で認知度上げて、DVDとか売る。今回は、赤字の劇場公開の部分が、YouTubeに置き換わった。

今のところ、国内のアドレスからのアクセスしか、YouTubeは見られない設定だそうな。

今後、DVDとブルーレイに加え、Amazonでフィギュア売って、そういうマーチャンダイジングを全部、製作元で仕切るそうな。(日本て、製作委員会で権利を細分化するから、ダメなんだよね。)

あと、3D版も作ってるとか。


ということで、公開されてる本編。(追記:既に公開は終了しており、見られません。)


感想としては、よくできてると思うけど、原作がベトナムなのに、現代風に中東を舞台にしてしまったのは、どうなんだろう?という気がする。

アメリカを中心とする中東での戦争の不正義が叫ばれてる昨今、砂漠で駱駝を殺しまくるって、世界的にはKYかも(^^;

可愛いウサギがリアルなことをするギャップが、効果的な演出なのは分かる。しかし、普通に見たら、中東に悪意のある作品てことになるだろう。これが、サウスパークみたいな意図が明確な作品ならまだしも、これは多分そうじゃないだろうな。 単に、配慮が足りない感じがする。

(もし、サムライの格好したサルが悪役で、殺されまくるアニメがあったら、日本人としては素直に見られないだろうと思うと、中東の人々に謝りたいくらい下品だ。)

平和な国のミリタリーマニアは、これでOKな感想なのだろうか?

作品としては成功して欲しいけど、中東向けには絶対に配信しないで欲しい。
うちのブログは、中東関係のエントリーも多いので分かると思うが、冗談じゃなくてね。


蛇足
ところで、エンディングに「Contents Cloud Creation Society for Producing "Cool Japan"」というのが出てきて、デジハリやボーンデジタル、HPなんかの企業名が出てくる。(IBMの名前がないのにIBMの園田氏の名前だけ出てくるのは謎。まさか、またHPに出戻りました?)

恐らく、ソフトとハード各社をデジハリで協力させ、クラウドのレンダーファームを試験運用でもしたのだろう。

かつて、ある劇場作品のレンダリングでIBMの世話になったが、あれで苦労した成果が、こういう作品に少しでも生かされてるなら、ちょっと嬉しい。

しかし、ジャパンなんとかクールを疑ってるプロデューサーが、Cool Japanと冠するレンダーファームの世話になっているとしたら、ちょっと皮肉だ。

まあ、Cool Japanは、僕もヤバイと思ってるので、話は合いそうだけど。
クール・ジャパンのマヌケ

■追記
http://www.ida-shop.com/category/12.html
注文した。微力ながら支援。

クール・ジャパンのマヌケ

http://mainichi.jp/select/biz/news/20100406k0000m020077000c.html?inb=fe
-->
経済産業省は5日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の産業競争力部会に「文化産業大国戦略」案を提示した。「クール・ジャパン」と呼ばれ、海外で人気のアニメやゲーム、ファッションなどの輸出テコ入れを官民一体で進めるのが狙い。政府が6月にまとめる新成長戦略に反映させる方針だ。

日本のアニメやファッションなどは海外での評価は高いが、輸出比率が低く、戦略案でも「海外で稼げていない」と指摘。そのうえで、映画などのコンテンツを海外で販売するのに不可欠な資金を提供する官民出資の「コンテンツ海外展開ファンド」を創設する。
<--

だそうで...

経産省は、何のためにアイディアボックスやったのさ?
アイディアボックスで、賛成が最多で最も盛り上がった意見が、無視されてるじゃないか。
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/

映像を制作している現場は、日本はハリウッドと比べてノウハウが足りないから、ハリウッドの下請けをしてでも質の向上を目指すべきだ、という切実な提案をした。もちろん、この意見には賛否両論あるだろうが、少なくともアイディアボックスでは、多数の支持を得た。しかし、それを受けた産業構造審議会は、「日本の作品はクールで優れてるけど、海外への売り込みに失敗してるだけだ」という真逆の戦略を打ち出したわけだ。

これが、大本営発表ってやつか?
前線の兵士は、圧倒的な火力の差を実感して現実的な戦略を提案したのに、大本営から「我々は優れているのだ!」「あとは神風が吹けば勝てる!」と言われて、「突撃命令」待ちだろうか?

産業構造審議会で、アイディアボックスの意見が無視された理由は、産業構造審議会情報経済分科会で配布された資料を見れば分かる。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100402aj.html
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の意見については、以下の資料の20ページ目で触れられている。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100402a062j.pdf
-->
日本は、CGに関する優れた技術・人材を有するものの高い人件費のため、ハリウッドなどの海外からのVFX等の映画製作の受注が行われていない。海外からの受注を呼び込むため、政府が税優遇措置、助成金、ハリウッド・プロダクション誘致等の支援を行うもの。
実際にCG業界等で活躍される方々を中心に、映画業界などの現状と課題などを踏まえ、活発な議論が行われ、アイディアボックスで最も多くの投票数を獲得した。

<--

1文目から、提案の大前提の理解を、間違って紹介している。

「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者は、日本は潜在的能力はあるが、「クオリティが低い」から、ハリウッドから受注して、仕事を通じてノウハウを学ぶ機会が必要だ、と主張していた。そして、ハリウッド作品に関わる中で、VFXだけでなく、ハリウッド映画の製作手法全体を学ぼうと。

ところが、それをまとめた上記資料では、「日本は、CGに関する優れた技術・人材を有する」という、真逆の前提で、提案の説明がされているのだ。

資料まとめた官僚さんは、日本語力に問題があるのですか?
誰かに「クール・ジャパン」のバイアスをかけられて、冷静さを失っているのですか?
もっとクールに考えてくださいよ。

まあ、提案されたご本人は、この結果でも前進と、前向きに受け止めておられるようなのが、唯一の救いだろうか。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/04/blog-post.html


そもそも、クール・ジャパンは、クール・ブリタニアのパクリみたいなものだ。

かつてイギリスは、国家そのものをブランドとして海外に売り込む政策をとり、その中心には、1997年に出版された「登録商標ブリテン」というレポートが存在する。どういうことがなされたかの詳細は、以下をどうぞ。
http://www.mskj.or.jp/getsurei/ninoyu0201.html

こういう話は以前から、高城剛氏が政府の審議会や書籍などで何度も紹介し、真似るべきだと絶賛していた。まったくその通り、流石トリックスターだと、自分も思っていた。そして、外務省は以前から、ポップカルチャー外交を唱えていた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/h18_sokai/05hokoku.html

ポップカルチャーと言うより、サブカルじゃん?という疑問はおいといて、まだこの頃は、クール・ジャパンを自称する程の驕りはなかったし、その手法が「登録商標ブリテン」からのパクリであることが、認識可能だった。外務省は頑張って、各国で日本文化を紹介するイベントを開催したりしてきたし、そこには経産省も関わってきた部分があったはずだ。

すると、クール・ジャパンとやらは、外務省のポップカルチャー外交の成果なのだろうか?

残念ながら、否である。

ダグラス・マッグレイが、「Japan's Gross National Cool」と論文を発表したのが2002年。

フランスのジャパンエキスポは、1999年から始まっているが、Cool Japanというキーワードがル・モンド紙に出たのは2003年だろうか。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C394170269/E382880148/index.html

日本では、「COOL JAPAN THE EXPLODING JAPANESE CONTEMPORARY ARTS」が出版されたのが2004年。

米国でのクール・ジャパンの仕掛け人の一人、アレクサンドラ・モンローが、グッゲンハイムのアジア担当シニア・キュレーターに就任したのが2006年。


つまり、このキーワードは古く、今更言い出す奴は時代遅れで、かなりクールじゃない。
クール・ジャパンの前は、ジャパニメーションとか言ってたのも似たようなものだ。

しかも、このキーワードが通じた国々は、既にこれから成長の見込めない、欧米である点に留意すべきだ。

経産省が昨年まとめた報告書でも、今後の国際展開先としてはアジアに注目していた。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/movie.pdf

上記報告書では、アメリカ市場への進出に失敗する最大の理由として、人材不足を挙げていた。アメリカ市場へ進出するための日本映画業界に必要な人材の要件として以下を示し、そういった人材は育成するには時間がかかるから、諦めてアジアを開拓しようという悲しい論理だが、しかしまだ冷静だった。
-->
 【専門知識】
・英語力(脚本や契約書の読解力)
・知的財産権の知識
・映画業界特有の会計の知識
・制作に関する知識(アメリカの大学、大学院での履修経験。しかも業界内での評価から、映画関連大学は、トップクラス校である必要性)

 【教養、素養面】
・業界特有の慣習、文化の把握力
・業界への同化力
・歴史、文化やトレンドなどの知識
・配偶者の社交性
・交渉における機転やジョークのノウハウ
<--

どうしてそれが今年になって、「コンテンツ海外展開ファンド」を創設すれば海外で稼げる、なんて無謀な戦略につながる?
俺たちクールだから?

寝言は寝てる時に言ってくれ。


アジアでは、哈日族(ハーリー族)はいるから、彼らを増やすような戦略は重要だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%88%E6%97%A5%E6%97%8F
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1694

しかし、既に哈日族な人々には、クール・ジャパンなどと言う必要は今更ない。

この点、以下のブログ(この方も経産省ですが必読)の「クールジャパンはインナーシンキングだ」という意見に、自分も賛成する。
http://d.hatena.ne.jp/masays/20100406
アニメージュの読者なら30年前から知ってる、という意見も同感(苦笑)

これから成長市場のアジアを主戦場とし、そこでまだ哈日族でない人々に訴えるには、クール・ジャパンなんて自画自賛が漏れ伝わるのはマズイ。

しかも、どうして「コンテンツ海外展開ファンド」なんだ?
どうせコピーするなら、クール・ブリタニアをもっと精巧に分析して、本家以上にしてくれ。なんで、劣化コピー以下の粗悪品な政策になってるのさ?
「登録商標ブリテン」をちゃんと分析したかい?

冷静な情報分析ができず、俺たちはスゴイ的な誤信に基づいて宣戦布告みたいな、いつか来た道と同じではないか。

アバターと竹槍で戦えと?


今、CG制作現場で使われている主要ツールで、国産のものなどないに等しい。
AutodeskAdobeの2社の製品抜きでは、何も作れないと言っても言い過ぎではない。
実際、国産ツールなんて、竹槍程度のものしかないのだ。

にもかかわらず、何でこんなに自信を持っているのか、さっぱり理解できない。


もちろん、制作現場の人間は、負けてることをよく理解している。
だからこそ、ハリウッドの下請けでもやってみたいという意見に、賛成が集まる。

フルCGで映画を作る時、最初に検討するのは、どのソフトウェアを使うかだ。
高いけど、PixarからRenderManを買うか?とか、とっても悩むのだ。

しかし、その選択肢に国産ツールなど、一つもない。選択したツールに深刻なバグがあって、制作に支障が生じても、海外のメーカーはほとんど対応してくれないと分かっていても、それを買うしかない。

道具を海外依存しておいて、ファンドがあれば勝てると思うような妄想は、制作現場で苦労してる人間からは、出てこないだろう。かなりマヌケだ。

その辺の詳細は以前、以下に書いたので繰り返さないが...日本の映像制作は、映画産業以外の仕事で食いつないでる点を理解して、効果のある産業支援を検討して欲しい。
http://maruko.to/2010/03/post-81.html

先月、円谷プロダクションデジタル・フロンティアフィールズに買収されたのも、必然の流れだ。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=201189
http://www.p-world.co.jp/news2/2010/3/29/news3894.htm


ところで、これから開拓すべき市場は、本当にアジアなのだろうか?

日本作品に好意的でありながら、ハリウッド作品を素直に受け入れられない、資金の豊富な国々と言えば、中東のイスラームな国々だ。経産省の資料等では、中東に関しては一言程度しか触れられていないが、民間のアニメ・CG制作会社は、既に中東へ関わり始めている。
http://animeanime.jp/biz/archives/2009/04/cg_4.html

上記サウジアラビアでのプロジェクトは、最近やっと動き始めたが、自分も在職中に見積もりに少し関わったこともあり、今後に注目している。なお当時、社長から冗談半分に「サウジ行く?」と聞かれたが、退職したのはそのせいではない(苦笑)

http://riyadh.exblog.jp/13433802/
いやはや、デッサンから始めてるとは、頭が下がります。

冗談抜きで、石油依存から脱却しようとしている中東諸国への文化的な関わり方というのは、今後の日本にとっても重要だろう。

例えば、日本の家電は、既に韓国等に負けており、挽回の兆しはない。今まで、アジア市場で負けているのは、安価な製品じゃないと売れないからで、日本製品は性能が上だけど高いから売れない、と説明されてきた。しかし、ドバイでも日本の家電が韓国製品に負けているそうで、値段は問題じゃないことが分かる。
http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428/31697357.html
(上記ブログのコメント欄で日本擁護してる人が、正に自称クール・ジャパンと同じニオイがする(苦笑))

今後、技術分野での優位は、益々失われると考えるのが順当だ。そういう意味でも、クール・ジャパンなんて今頃言ってるのは、かなり恥ずかしい。
サウジじゃまだ、一応尊敬を得られている日本人というブランドは、今後は何によって維持できるだろうか。

かつて中東諸国では、ポケモンがハラームだと、ファトワーが出た。イスラームの教えに反するとして、サウジでも禁止になった。逆に言えば、それほど大人気で、社会問題になっていたのだろう。
http://www.cafeglobe.com/news/dailynews/dn20010424-02.html

しかし、それでも日本のアニメは、今も受け入れられている。なんという素晴らしいお得意様だろう。イスラーム圏での日本のアニメの人気は、単なるブームではなさそうだ。中東から先進国を眺めた時、日本だけ違って見えるのかもしれない。

そんな中、超保守なサウジで日本人がCGを教えるということは、広く中東地域の将来の文化に、確実に影響を与えるだろう。

そのうち、サウジで一定規模のCG制作が可能となれば、オイルマネーで日本に下請け仕事、くれるかもよ...え?違う!?(苦笑)

蛇足:
ついに某試験まで1ヶ月を切り、ブログ書いてる暇がなくなるので、試験後に確実に失っているであろう気力を回復するまで、しばらくこのブログの新規エントリは控えます。

追記:5/24
「あなたが思う"クール・ジャパン"コンテンツは?」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1005/18/news098.html
うーむ、酷い調査&記事だ。
「最近、注目されるようになっている」とか、2行目から嘘ではないか。
一体、この記者の考える「最近」とは、何十年前までを含むのだろうか?
しかも、ドラゴンボールやドラえもんがクールとは、東京工芸大学はどんな質問したんだ?
質問する前提として、「クール」の意味を定義しないで、質問したんじゃあるまいな?
2ページ目に載ってる「宮崎駿映画で世界の子どもたちに見せてあげたいと思う作品」なんて質問自体、押し売りクール・ジャパンそのもの。
せめて、「見てもらいたい作品」というなら、まだ分かる。何で、質問からして上から目線なんだよ。


ところで最近、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会の報告書が出た。
http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006.html

産業構造審議会情報経済分科会みたいには、クールジャパンを盲信せず、ちゃんと日本が負けてることを真摯に受け止めてるところから考えてるのは、素晴らしいと思う。

でもやっぱり、パチ産業は無視してるけど(苦笑)

http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006-3.pdf
上記報告書の、表記上のP16にある
「② 大規模CG映像製作分野への参入」に出てくる
「アジア域内でのCGアニメ共同制作のためのインフラ構築構想(Creative Asian Pipeline 構想)」ってのが気になる。

概念的な話なのか、物理的にインターネット経由で共同作業とかいう無謀な話だろうか?

海外と仕事って、結局先方の国のインターネット普及状況に左右されてしまう。ヨーロッパにしろアジアにしろ帯域が狭くて、どこも光回線は皆無だから、連番画像とか大きいデータは、結局HDDをDHLで直送ってのが、まだまだ現実なんだよね。

追記:5/25
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者さんのブログで、「コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会」の報告書についてのフォローがされてましたので、リンクしておきます。(このエントリーにリンクしていただいていることに、遅ればせながら今気づきました。)
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx_20.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx3.html
先週、今回の報告書を読んだ時、アイディアボックスを反映しているのかな?とは思ったのですが、審議会と研究会の関係に詳しくないので、ぬか喜びしたエントリーは控えようと思っていました。しかし、上記3つめのエントリーによると、やはり意見が反映された報告書なのだということです。あとは、6月の新成長戦略にどうつながるか、注視したいです。

なお、上記を読んで、経産省のイメージの話がありましたので、このエントリーでも批判的に書いているため、念のため付言しておきます。

私の在籍したロースクールは、社会人のための夜間ローでしたから、クラスメイトは皆、仕事と二足のわらじでした。そして、様々な職種の様々な年齢層のクラスメイトの中に、経産省の現役官僚もおりました。共に勉強するうちに、職場の苦労話も自然と耳に入ってきましたから、その大変さも少しは理解しているつもりです。

また、今までもアニメ業界の下請け問題等の健全化のため、経産省が様々な取り組みをしていることも理解しており、私の中では、「経産省GJ!」と思うことも多いです。そういう、ある種の期待の高い役所でもあり、アイディアボックスを始めたことも、私は高評価しておりました。

それだけに、当初の産業構造審議会にガッカリしたのです。

そして、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会が、アイディアボックスの意見を反映しているのであれば、その報告書を公開した時点で、
http://twitter.com/openmeti
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/
これらで報告してくれても良いではないか、と思うのです。
せっかくTwitterやブログがあるのにアナウンスされなかったので、「アイディアボックスと無関係なのだろうか?」と、迷いました。私が報告書の公開を知ったのは、偶然他人のツイートからです。

そんなこんなで、経産省そのものをダメだとか言う気は全くなく、個々の人々が頑張ってることも知ってますが、問題点は問題点として指摘する、というスタンスです。

と、追記が長くなってしまいましたが、今年の新司法試験が終了ということで、今週は上記経産省のクラスメイトとも久々に飲むので、「メディアコンテンツ課」ってどうよ?とか聞いてみようかなw

追記:5/30
と、上の追記をしたところ、5/27にアナウンスされました。
http://twitter.com/openmeti/status/14798079247
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/20100527/1274919221
書いてみるものです。
って、単なる偶然か、ここを見ていただけているのかは、分かりませんが(^^;

ちなみに飲み会は、諸事情で急遽中止に。残念!

追記:6/10
「経済産業省にクール・ジャパン室設置」
http://www.animeanime.biz/all/2010060803/
言葉を失った...
今からでも遅くないから、「実はソレ、温暖化対策室の間違いでした」と言ってくれ!

少し先送りになった、東京都の非実在青少年についての条例改正案について、東京都小学校PTA協議会が、こんなことを書いてる。
http://ptatokyo.jugem.jp/?day=20100316
-->
報道によれば、昨年の児童ポルノ事件は全国で前年比約4割増の935件と
過去最多であり、小学生以下の被害者も約7割増の65人となるなどの
状況にあり、保護者の不安はこれまでになく高まっています。

<--

書いてあることのうち、上記部分だけが、唯一の客観的な事実かな。

-->
また、漫画やアニメであっても、幼い子どもが自分から性交を求め、
快楽を得ているかのようなもの、親子や姉弟・兄妹間の激しい性交が
愛情表現の一環であるかのように片付けられているものなど、
大人ですら良識のあるものなら目をふさぎたくなるようなものが、
何ら規制されることなく書店の店頭に置かれています。

<--

ここは、実際は現行の条例で規制されてるので、事実ではない。
というか、ゾーンニングもしない書店があるなら、そこに文句言った方が良い。


さて、PTAさんが書いてる、児童ポルノ事件の数字は、以下の警察庁の資料に書いてある。

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/syonenhikou_h21.pdf

上記資料のP12(実際はP20)からの、「5 少年の犯罪被害」から以下より一部抜粋(一部余分な部分を短縮したりして表を修正)してみる。
少年の犯罪被害の推移_s.jpg

少年の性犯罪被害の推移_s.jpg

少年の刑法犯被害の推移_s.jpg

小学生の犯罪被害の推移_s.jpg

少年犯罪被害の推移_s.jpg

13歳未満の少年の犯罪被害の推移_s.jpg

つくづく思う。日本の青少年は、犯罪被害が年々減っていて、素晴らしいね。こんな国、他にあるのかな。

あれ?すると、PTAが言ってる数字は?

ということで、以下の表の赤で囲った部分。

児童買春・児童ポルノ禁止法違反の送致状況_s.jpg

なななんですと!
児童ポルノだけ平成17年(2005年)から激増している!

などと驚いてはいけない。以下のサイトのグラフ参照。

http://toriaezumitekitayo.blog88.fc2.com/blog-entry-35.html

児童買春・児童ポルノ禁止法の2004年改正で、処罰範囲が拡大されたから、それまで処罰されなかった行為が、2005年から処罰されるようになっただけ。社会状況が悪化したわけではない。

そういう意味では、1999年の桶川ストーカー事件での警察怠慢後の、2000年の通達以後から、認知件数が激増したのと似たようなもんだ。


つまり、2005年からの児童ポルノ事件数の激増は、それまで処罰されなかった行為が、とても有効に処罰できるようになったことを意味しており、改正された法(現行法)が、とても有効に機能している何よりの証拠に過ぎない。

PTAさんは、もしかするとTVに毒されていて、センセーショナルに事件を取り上げる番組を見て、犯罪が増加しているとか、物凄い大きな事実誤認をしているかもしれないけれど、自分の印象としては、5年前から社会が急激に悪化したなどとは、実感したことがない。

犯罪社会学を勉強したり、ちゃんと犯罪白書を見れば、我が国の悪質な犯罪は、記録史上最低と言えるほど減少しており、かつてない程安全な社会になっていることは、客観的に明白なので、少年の犯罪被害が減少するのも当然だろう。

それでもPTAさんは、もしかしたら「そ、それでも、小学生以下の被害者が昨年比約7割増の65人なんて異常だ!今、過去最高に社会が悪化しているんだ!」とかおっしゃいたいかもしれない。

ははは...

児童ポルノ事件被害児童構成_s.jpg

小学生に限定するとだね、今から10年前の方が被害者多かったから、むしろ減ってますな。

PTAさんの言い分は、客観的な資料や証拠を読めない、子供のような発想ですね。

でもまあ、同じ警察庁の資料に基づくのに、こんな過激なグラフを見せられたり
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_tyosa-jikenchildren20100218j-01-w330
こんな恣意的に2004年以前を削ったグラフを見せられたりしたら、
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100218k0000e040060000c.html
マスコミの思う壺に、犯罪が激増してると、誤解しちゃうのも仕方ないか。

PTAさんは、情報リテラシーに欠けるようなので、お子さんの手本となるためにも、親御さんのためのお勉強の場所を作るとよろしいですよ。


さて、この手の警察資料では、突発的な数値の変動があった場合で、社会に大きな変化がない場合、警察が特定の犯罪の検挙に重点を置いたり、法律が変わったりするパターンであると解するのが、犯罪社会学的には順当なところだ。だけど、特に要因もなく、なだらかに変化するカーブは、現実の犯罪発生数の変化を反映していると解する信憑性が高いだろう。

すると、性犯罪含め、少年の被害は減少傾向と見るべきだ。それが、社会的傾向とすると、これに逆行する児童ポルノの突出が、尚更怪しい。

児童買春すら増えたと言うほどでなく、むしろ減少傾向で、特に出会い系サイト経由の児童買春は大きく減っている。これは、各インターネットや携帯事業者等の自主的な対策の効果もあるだろう。

なのに、児童ポルノの増加分は、ほとんどネット利用のケースの増加分そのものだ。

しかも、増減率99.6%って、いきなり倍に増えてるじゃんか。
平成20年と21年で、ネット上に児童ポルノが倍に氾濫した?

常識ある大人なら、1年で児童ポルノ事件が倍に増えたなどと言われれば、社会不安に陥る前に、その数字を疑うだろう。実際、日常的にネットを利用していれば、犯罪が倍に増加したなんて印象は受けないのだから。

あ、でも、ちょっと思い出すと、昨年は児童ポルノ関連で、それまではあんまり聞いたことなかったような事件が話題になっていた。

例えば、海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲示板に掲載した人物と、それが掲載された掲示板を開設していた大学生が逮捕された。
ニュースを見た時、リンクしただけとか、リンクが掲載されただけの掲示板開設者が逮捕されるとか、驚いたよ。
http://www.yomiuri.co.jp/net/security/s-news/20090708-OYT8T00330.htm
法や社会状況と関係なく、捜査機関側の判断基準が厳しくなったのかもしれない。

あと、母親が2歳の自分の娘の裸の写真を撮って逮捕されたのに続いて、母親が我が子の写真を売りまくる事件が続いた。正に昨年から急増した事件だ。
http://www.so-net.ne.jp/security/news/library/2073.html

金のために写真を売るってのは、単純に考えれば経済状況が悪化した影響も考慮すべきだろ。去年と一昨年で大きく変わったのは、つまり、リーマン・ショックの影響か?

昔は子供そのものを売り飛ばしてたのに比べれば、マシ?なわけない(苦笑)

あと、見た目が未成年に見える成人女性を撮影した猥褻ビデオで、擬似児童ポルノで逮捕とか話題になってたな。え?流石にこれは児童ポルノにはカウントされてないか(笑)


まあ、どっちにしても、今までの児童ポルノって、全部実在の被害の話だから、非実在青少年を規制すべきかどうかとは、全然関係ない話にしか聞こえない。PTAさんの書いてることは、論理的関連性がない無関係の事実を根拠に、アニメや漫画を規制しようっていうのだから、さっぱり分からん。実在児童のポルノの規制と、非実在青少年規制を関連付けるには、何かもう一つ客観的な根拠が必要であり、それがなければ論理の飛躍に過ぎない

でも、他に示されてる根拠って

-->
また、こうした漫画等の蔓延によって、青少年の判断能力や常識、価値観が
幼いときから歪められてしまう危機感を強く感じています。

<--

これだけ。
単に、抽象的な危険を想像しているだけではないか。

すると、やはり危険が具体化していないという意味で、表現の自由が失われる危険を訴える条例改正案反対派と、何も変わらない。

共に抽象的な危険を想定して対立するなら、まだ、憲法に根拠がある条例改正案反対派の方が、正当性があると感じる。

特に気持ち悪いと感じた文章はここだ。
-->
子どもを守るため、子どもが健やかに育つために、児童ポルノを根絶すること、
子どもを性的対象にする図書が青少年の目に触れないようにすること。
たったこれだけの願いであるにもかかわらず、一部には、えん罪や
表現の自由の規制を理由に、この条例改正案に反対している人がいると
聞きます。

<--

実在児童のポルノを根絶することに反対してる条例改正案反対派の意見なんて、聞いたことないぞ?

で、青少年の目に触れないようにするのは、ゾーニングでOKな話だ。
これも、反対している条例改正案反対派なんて、聞いたことない。

しかも、最後は伝聞だしw
誰か周囲に、妄想や嘘を吹き込む人々が集まってるのだろうか。

妄想でないなら、対立勢力を貶めようとする、意図的な印象操作ということになろう。

キモイですよ!


そもそも、今の条例だってちゃんと機能している。
児童買春・児童ポルノ禁止法だって、昨年国会で不必要に改悪されそうになったけど、今だってちゃんと機能してる。だからこそ、逮捕者が出るのだ。
新たに非実在青少年を規制したって、実在児童ポルノを根絶することとはリンクしないということが、どうして理解できないのだろ。

どこか、類似の規制を行っている国で、児童ポルノ根絶できた国があったら、是非教えて欲しい。

別に、児童ポルノを好むような奴を擁護する気は全くないが、18歳未満の性行為や性交類似行為を肯定的に描いてはいけないなんて条例改正案は、どう常識的に考えてもやり過ぎだろ。民法731条で、女性は16歳で結婚できてしまうのに、18歳未満の性行為は、肯定されてはいけない行為なのですか?

改正案を読めば、まともな国語力がある日本人なら、その危険性が理解できるはずだ。

PTAさんが、高校生の性行為は、全て根絶すべきと思ってる人々なら、言い分としては理解できるのだけど...まさかね。


現実は、我が国は少年の性犯罪被害がどんどん減ってる社会なのは上記資料の通りだから、アニメや漫画がガス抜きになって、犯罪抑制に寄与しているという漫画家たちの主張の方が、まだ説得力を感じる。

おまけに、昨年児童ポルノ事件が急増したというなら、尚更、それ以前から蔓延している過激なアニメや漫画の影響があると主張するのは、因果関係を無視しすぎだろう。相関関係すら認められない。

更に言うと、日本の少年は、犯罪被害が減少しているだけでなく、少年が犯罪を犯した側となる、刑法犯少年も減少している。

刑法犯少年の推移_s.jpg

凶悪犯の推移_s.jpg

ただし、凶悪犯の減少っぷりは凄いけど、実は知能犯が増えてる。

知能犯の推移_s.jpg

子供を持つ親御さん方は、こういう現実を把握してますか?

更に、触法少年にも触れておこう。触法少年とは、刑法41条で処罰対象から除外される、14歳未満の刑事未成年で、刑罰法令に触れる行為をした子供のことだ。

触法少年の推移_s.jpg

これも、別に問題ないとしか読めない。
すると、やはり少年犯罪の減少が大きいことを重視すべきだ。今の子供は、高校入学前くらいから、ちゃんと分別をわきまえる率が向上しているということだろう。

未成年人口の減少率を計算に入れて比較もしてみたが、有意に少年犯罪率が減少している。(もっとも、人口が減少すれば犯罪数が減少するのが当然という考え自体、物事を単純化し過ぎだが。)

一部の知能犯の増加を考慮しても、犯罪に走る未成年が減少傾向にあることは、正当に評価されるべき事実だろう。


し・か・し、PTAさんが、本当に注目すべき問題が、以下の表にある。

特別法犯少年の送致人員_s.jpg

触法少年の行為別補導人員_s.jpg

理由不明だが、軽犯罪法違反の事件だけ、激増している。
人口が減少したって、増える犯罪は増える。

軽犯罪法とは、PTAの皆さんが、漫画やアニメで心配しているような性表現の問題とは、全く別次元の問題だ。

軽犯罪法(Wikipedia)

ところが警察庁は、こういうことにはロクに説明してくれない。
だから、マスコミも取り上げない。
そういう問題こそ、PTAさんが問題視すべきなんじゃないですかね。


さて、以上なんですが...

PTAさんは、もう少し健全な発想で、少年の犯罪被害がどんどん減ってい我が国が、他国と違う点を考えてみるべきじゃないか?

具体的に、表現規制の厳しい国の犯罪率と、表現が比較的自由な我が国の犯罪率を比較してみるとか。

マスコミに騙されずに、頭冷やして客観的に考察しないと、子供を危険にさらそうとしているのは、条例改正に加担しているPTAさんだった...なんて結果になりかねないですよ。

こう説明すると、犯罪被害減少の現状を、規制強化の成果だと勘違いする人もいるみたいですが、そういう人には、児童ポルノ事件が平成20~21年で倍に増えたことになってる数字についての認識を、是非聞いてみたいところ。なんせ、改正案に賛成な人は、事件が「増えた」ことを前提にしているので。

信じるかは別にしても、こういう話もありますから。
「児童ポルノ規制による性犯罪の増加」
http://www42.tok2.com/home/seekseek/53.html

また、少年の人口減少を犯罪減少の原因だと信じてる人には、加害者人口と被害者人口を混同して考えていないのか、聞いてみたい。少年人口の減少は、少年が加害者になる事件の減少を説明する一因にはできるが、少年が被害者となる事件の減少を説明するには、無理がある。成人の加害者が、高齢化で引退でもしたのですかね?

まあ、実はある年に生まれた、異常に加害者率の高い大人の年代があるのは事実で、そういうのも比較すると、もっと面白い考察は可能かもしれませんが(苦笑)

他に、自らを正当化できる理由をご存知でしたら、是非教えてくださいな、PTAさん!


追記
なんとまー、事実誤認で暴走してるのはPTAだけじゃなくて、東京都青少年・治安対策本部すら、警察庁の発表と真逆の、虚偽の事実を前提に、無用の条例改正を急いでるとは驚いた。流石にこんな簡単な事実関係を誤って条例作るって、常識的に考えられないんじゃないだろうか。呆れたの通り越して、本当に怖くなってきたのですが...
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2010/03/317-5bb0.html

おまけに、東京都小学校PTA協議会も、保護者の声を代表してないそうだ。いよいよおかしな話になってきた。
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2010/03/post_86fe.html

あと、冒頭に「先送り」と書いたけど、現状では明日(3/19)決まってしまう可能性が、まだまだ高いそうだ。
都議会総務委員会傍聴してるMIAU事務局長さんのつぶやきを見るに、条例改正案をどうこうしようってレベルじゃなくて、日本全体をどうにかしようとしてる都議会総務委員会の雰囲気が伝わってきて、ドン引き。
http://twitter.com/himagine_no9/status/10659303702

もの凄い多くの反対意見が表明されてるのに、聞く耳持たずに、客観的な事実誤認(もしくは恣意的な曲解)に基づいて、こんな稚拙な条例改正案を通したい人って、どんな人たちなんだろう?

日本で戦後の民主主義教育受けているなら、手続きを尊重することこそが、民主主義の正当性を担保する唯一の方法だと、知ってて然るべきだろうに。

こんないい加減な不正義が、まかり通ってしまいそうだなんて、何か夢を見ているようだ。


追記2
5月10日に、このエントリーのファイルが壊れてテキストの最後の方が消失してしまっていたことに気づいたのですが、バックアップが見当たらず、思い出して少し書き直していました。

そうしましたところ、ご親切にコメント欄にて、壊れる前のテキストをご提供してくださる方がおり、5月21日に無事、元の内容に修復できました。

あーる様、お陰さまで無事修復でき、大変助かりました。
誠にありがとうございますm(_ _)m

映像産業とかカジノとか

最近、いくつかの場所で、映像制作やコンテンツ産業の在り方みたいな議論を目にしたので、自分も思うところを述べておきたいと思う。まとまりもなく、とりとめもない話をつらつらと...


■パチ仕事と映画、アニメ仕事
日本のアニメ、CG業界の特徴の1つに、パチンコ・パチスロ産業への依存というのがある。これは、旧作品の権利を持つ会社が、パチメーカーにその利用許諾を与えるという意味での受け身な話ではなく、パチンコ・パチスロ化する際に発生する映像制作案件を受注するという形での、純粋な映像制作仕事としての能動的・発展的関係の話だ。パチスロ台の液晶画面で流れる映像も、CG制作会社の立派な仕事なのだ。パチメーカーは、CG制作会社に、とてもまともな対価を支払う、お得意さんである。

対して、公知の事実として、日本のアニメの現場の貧しさについては、今更説明を要しないだろう。これは、実写系でも映像制作現場一般の話として、ある程度共通する部分もあるかもしれない。CG制作会社は、アニメだろうと実写だろうとゲームだろうとCMだろうと、コンピュータで作る映像なら、何でも受注できる会社が少なくない。しかし、アニメや映画仕事を受注する場合、元請けでもなけりゃ、まともにやって黒字にするのはかなり困難。その手の仕事の発注元は、映像制作にまともな金を払う気がないことが少なくないが、同時に、赤字で受注する制作会社も後を絶たない。需要と供給が、制作コスト割れしたポイントでバランスが保たれている。

この差が生じる理由は簡単だ。かつて、多くのCGデザイナーやプログラマは、パチ仕事をヨゴレだと思って避けていたが、映画仕事に参加するのはステータスなんで、若い頃はタダでも働きたい仕事だった。著名な劇場作品でも、学生上がりの未経験者を、インターンシップと称してただ働きさせているケースは後を絶たない。映画仕事を受注した会社は、学生の夢を食い物にしてでも活用しないと、赤字が拡大してしまう。

ある程度の規模の制作会社になると、有名な劇場作品に参加するのは、求人のために必須となる。同時に、劇場作品への参加を夢見て入社してきた社員たちの、モチベーションを維持する必要もある。だから、会社の宣伝、イメージアップのため、劇場作品を一定数受注し続ける。

すると、優秀な人材を確保するための赤字映画仕事と、会社経営を維持するための黒字パチ仕事とのバランスが、とても重要となる。黒字にしたいなら、パチ仕事ばかりやれば良いと思うかもれいないが、イメージの悪い会社に人材は集まらないので、両立させなければならない。特にデザイナーは、転職が頻繁で、フリーランスになってしまう人も多いので、一定規模で能力の高いデザイナーを雇用し続けるには、会社が魅力的でなければならない。更にパチ仕事は、ノウハウも必要で、守秘義務の厳しさもあり、映画仕事のように安易に学生を使うこともできない。

これが10年前なら、映画の赤字を埋めるのはゲーム仕事だった。アニメ業界からゲーム業界への人材流出も、当時のトレンドだった。しかし、ゲーム機の性能が向上し、リアルタイムの描画能力が高まった結果、ゲーム向けの映像制作仕事が激減した。憧れの仕事と収益の上がる仕事が合致していた時代は、ゲーム機の性能向上によって終わり、ゲーム仕事に代わって黒字仕事の柱となったのが、ヨゴレのパチ仕事だったわけだ。(念のため言っておくが、自分自身は、パチ仕事をヨゴレとは思ってない。十分に、素晴らしいと思ってるが、その理由は後で。)

みんなが憧れる映画仕事は、ヨゴレのパチ仕事によって、一部支えられてきた。
そしてやっと、パチ仕事のイメージが改善してきたのは、ごく最近の話だ。


■ダメな仕事
と・こ・ろ・が、パチ産業は、いわゆるコンテンツ産業の市場規模が計算される場面などでは、何故か除外されている。政府の発表する資料などでも、パチ業界は存在しない前提で、コンテンツ産業が語られる。20兆円産業のパチを無視して、それより遥かに小さな残余の業界をまとめて、コンテンツ市場の在り方が議論されている。そんな議論の価値が低いのは、言うまでもないだろう。

しかし、映画業界の権利者な方々は、自分たちのコンテンツが、実はパチのおこぼれで作られてる部分があることを知らないかもしれない。そんな人々にいくらヒアリングして資料が作られても、現実を全く反映しないのは当然だ。(対してパチ業界は、映画やゲームで培われた映像制作のノウハウの恩恵にあずかっている。)

各業界の権利者団体は、別個独立で、他業界を知らないかもしれない。しかし、映像制作現場のレイヤーで実際に様々な業界からの映像仕事を受注している各CG制作会社は、実は共通なので、複数の別個独立の業界のリスクが、映像制作現場のレイヤーで担保されてるのだ。逆に言うと、担保できてしまっているから、いつになってもダメな業界はダメなまま、なのかもしれない。

--追記
パチンコ業界は、警察庁が監督官庁であり、コンテンツ振興を扱う経産省からは手を出せないのかもしれない。
--

ダメな業界の仕事というのは、単に金がないだけではなく、コンテンツ制作過程が非合法だったりもする。映画仕事では、著名な監督が、ごく当たり前に、著作権侵害や制作に必要なソフトウェアの不正コピーを現場に指示する。例えば、各社に散らばった100名程度のスタッフで、監督のイメージする映像を共通認識して完成を目指すには、コンテだけじゃ足りないので、監督のイメージに近い既存の映画作品から、シーンやカット毎にリッピングして、関係スタッフに配られたりする。何十人もに違法DVDコピーで配られることもあれば、主要な制作会社のサーバーにリッピングした作品が蓄積されたり、海外の外注先に配布されたりする。(もちろん昔は、VHSの大量コピーだった。)

スタッフは、必要に応じてPCで参考作品の映像を見て、監督のイメージを共有しようと努力しながら、自分たちの作品を制作する。スタッフの人数分、何十作品ものDVDを買うなんて真面目なことは、誰も考えない。何しろ予算の少ない仕事だ。他人の作品を参考にする事自体は合法でも、参考にする手段が非合法なのに、それに文句を言う映画制作関係者は、ほとんど存在しない。リスペクトしてれば良いと思ってる。

劇中で表示される文字などに至っては、どこかからフォントを違法コピーしてCD-Rに焼いてきて、ポンと渡され、「この文字でよろしく」みたいなこともある。

自分がかつて在籍したCG制作会社では、そういう非合法な制作手法を排除するのが、自分の仕事の一つでもあった。受注仕事では、違法行為を指示してくるのがクライアントであり、これと衝突することは極力避けなければならない。現場にウルサイと思われつつも、自分たちの仕事を合法とするため、いつも苦労した。

CG業界とアニメ業界の垣根が崩れ、旧態依然としたアニメ制作会社と共同作業するようになると、本当に最悪な場面に出くわした。アニメの会社は、ソフトウェアを買うものだと考えていないところが大半だ。金の無い業界の常識とは、そういうものだ。それでも、一緒に仕事をする以上、不正ソフトを使わないでくれと、相手の会社の責任者と話をしたりもした。「そんなことしてると、メーカーの監査が入りますよ」と脅しても、「そんなのは追い返すから大丈夫だ」と、まるで気にするのが馬鹿みたいに言われる業界だった。

不正を排除しようという意識を持たない会社が大半だが、そうして違法に作られた自分らの作品の権利だけは、絶対に守られるべきだと信じて疑わない、不思議な業界。それが、映画やアニメの業界だ。極論ではなく、一般論として、日本のアニメ等で、その制作過程全体において完全に合法性が担保されている作品は、皆無と言って良いだろう。中には、「うちの会社に不法行為はない!」と言いたい会社もあるだろうが、下請けや、人件費が安価だからと仕事を投げる、アジア各国の外注先の制作会社が何をしているかは、見て見ぬふりだ。フリーランスのデザイナーに発注する場合も、その個人が、自宅でどんなソフトをしっかりと買い揃えているか、クラックされた不正ソフトを使用していないかなど、発注側は誰も気にしない。結局、安く受注する会社や個人を便利に使うことで、不法行為を押し付けている。


■パチの良さ
対してパチは、完全に合法的な仕事を求められる。発注元が、何度も納品物をチェックする。高い金を出すだけでなく、合法的なコンテンツの制作にこだわる会社が多い。例えば、CGではテクスチャー画像をいくつも使用するが、パチ仕事では、作中で使用した全テクスチャーの著作権チェックがされる。テクスチャー一覧を提出すると、先方の法務部がチェックしたりする。テクスチャー画像は、ロイヤリティフリーの素材集などを買って利用することが多いが、素材集の発売元の会社が無くなっていると、テクスチャー差し替えの指示を出されたり...

そんなことは、かつてのゲーム仕事でも、要求されなかった。


フォントも、遊技機で合法的に使用できる、業務用フォントの契約を求められる。一度、先方がフォントの種類決定を後回しにして、仮のフォントで納品することを現場レベルで合意し、後に先方が差し替える話になっていたのに、先方の法務部に伝わっておらず、「不正なフォントで納品し、損害を与えた」と、損害賠償に発展しそうな時もあった。本当に、合法的なコンテンツにこだわる業界だ。(様々な著作権関係の裁判経験から、パチ業界は学んでいるのかもしれない。)

そういう仕事をしつつ、一方で、自堕落な映画やアニメの関係者に接すると、合法的なパチの仕事を受注できる会社というのが、とても誇らしいと感じるようになったのを覚えている。

しかしながら、パチに代替する黒字仕事が登場する前に、もしもパチ仕事が激減すると、経営が傾くCG制作会社も少なくないだろう。パチ業界は、最近持ち直したような話も聞くが、ちょっと前は市場規模が縮小傾向で、先行きに不安があった。そこで待ち望まれてきたのが、カジノ解禁だ。


■需要創出としてのカジノへの期待
カジノに期待するというと、どうやら、カジノのゲームマシンの仕事に期待をしているのではないかと、大きな誤解をしている人がいる。それは、あまりにもカジノを知らなすぎる。

もちろん、既存のパチメーカーは、海外のギャンブルマシンの供給も行っているので、既存のパチメーカーとの関係の延長で、カジノ向けのマシンの仕事も、期待が大きい部分ではある。CG制作会社から、パチメーカーへ転職し、海外カジノ向けの機種に関わってるなんて人もいる。

しかし、十数年前、自分がまだデジハリの学生だった頃から、SIGGRAPHとラスベガス旅行はセットだった。カジノとは、エンターテインメントの総合産業であり、当時からデジハリの杉山校長は、本場を見ろと学生に教えていた。

ラスベガスは、いたるところにコンテンツが溢れ、輝いていた。遊園地でもないのに、スタートレックのライドものや、ショー、シアターがホテル毎に存在し、どこもかしこも映像仕事の宝の山に見えた。街中の巨大スクリーンが、無数の映像を消費していた。

カジノを解禁するとは、単にギャンブルを解禁することではなく、ギャンブルを中心とした一大エンターテインメント都市を構築し、街中のいたるところにコンテンツ需要が生まれるということだ。合法化の暁には、これらの仕事を、国内の会社が受注できる制度を担保することは、必須だろう。その際、受注した仕事を海外に下請けに出すようなことを一定数制限すると、更に良いかもしれない。

これを、ゲーム、アニメ、映画などと、コンテンツの下流の権利者レイヤーの縦割りでしか業界を評価していないと、上流の制作現場レイヤーの重複に気がつかないので、カジノの魅力が理解できない。

CG制作会社に、「あなたの会社は、アニメ業界ですか?映画業界ですか?ゲーム業界ですか?それともCM業界?」と質問するのが、どれだけ愚問か分かるだろう。1つの会社で、実写合成だって、アニメだって、博物館の展示映像だって、何でもやってたりするのだ(もちろん、それぞれの専業の会社もあるが、そういうところは業界と運命を共にするしかない。)。だから、カジノ解禁で需要が創出されると、パチ依存の現状の偏りを緩和する方向に作用するだろう。それが、間接的に映画やアニメを支えることにつながる。


■制作サイドの改善
もちろん、個々の業界がそれぞれ健全化を目指すのは大事だ。しかし、日本のアニメ系の会社は、プログラマはゲーム会社にいるものだと、勘違いしてる感じがある。アニメの制作会社で、プログラマを重視して雇用している会社は、ほとんど無いのではないか。それが、Pixarに永遠に追いつけない原因だ。道具は、自分たちで作るものだという認識が、文科系アニメ制作会社には抜け落ちてる。なんせ、ソフトウェアは不正入手するのが当たり前だと思ってるのは前記の通りなんで、それを作るのに人件費をかけるという発想がないのかもしれない。プログラマが雇えないのか、雇う気がないのかは別にしても、そういう会社が淘汰されるのは、ある程度仕方のない話だ。

不正を行わずに、プログラマも雇わず、道具をひたすら真面目に買う側にいる会社もあるだろう。プラグイン一つ自給せず、必要なら買えば良いと。それはそれで、黒字を維持できるなら良いのだけれど、かなり非効率なので、小規模な会社でしか無理ではないかな。

理科系CG制作会社は、まだ、映像制作におけるプログラマーの重要性は、理解している。デジハリ時代のクラスメイトなども、インハウスのツールで海外に対抗しようと、ゲーム会社の出資でCG映画専門の大規模な制作会社を立ち上げた奴もいる。そういう会社が成功するよう、心から声援を送りたい。でも、映画ばっかじゃ飽きないの?とは思う。

専門化せず、つまみ食い的に、多様な業界の映像需要に応えられる会社というのが、時代の変化にも生き残れ、社員も飽きずに在職し続けられる、ノウハウのある楽しい職場なんじゃないかなと、個人的に思っている。

ノウハウがなければ生き残れないし、生き残った会社にしかノウハウは残らない。
焼畑農業みたいな業務スタイルの会社は、どうぞご自由にご退場ください。
...とか言ってみるテスト。


■風が吹けば桶屋が儲かる的なナニカ
このブログは、観光立国に関わるものを時々書くけれど、それは、観光立国にはカジノが必須だと考えており、カジノが認められればコンテンツ産業が潤うと考えているからだ。そして、JALを批判するのは、観光立国をインフラ面で妨げているのがJALだからだ。

航空行政が健全化し、LCC+地方空港による安価な観光インフラが整備され、普天間基地跡地だろうと、夕張だろうと、お台場だろうと、カジノが解禁され、観光立国となることが、日本のコンテンツ産業の活性化と合法化(カジノにまつわる仕事は、非合法であってはならないので、不正を厭わない旧態依然とした制作会社は受注できない仕組みも必要)につながる可能性というのに、大いに期待してる。


そして自分は、そういう時代に法律分野で貢献できたらという思いで、職を辞して法科大学院にいる。今回の日弁連の会長選にはガッカリしたし、今年はどうあがいても合格できそうにないけど、新司法試験は三振するまでチャレンジする所存。ギャンブル人生ですわ(涙)


■蛇足1
みんなの党の柿沢議員は、都議時代にお台場カジノ構想に深く関わり、カジノ推進に積極的だし、ショートショートフィルムフェスティバルにも関わってて、映像産業に興味も持ってる。かつ、みんなの党は観光立国も重視している。こういう話に興味持ってくれないだろうか?

■蛇足2
経産省が、コンテンツ振興策についての意見募集をしているので、またちょっと違う話を書いてみた。
「レンダリングサービス等におけるテンポラリライセンス」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00786/

■蛇足3
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」で、このエントリを紹介。
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/
関連して、こちらにも紹介されてます。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/02/vfx_9898.html

みんな、なんとかしたいんだよね。

サマーウォーズって


http://wiredvision.jp/blog/takamori/200907/200907141700.html

細田監督だから、ハズレは無いのだろうけど、予告見た感じ、昔の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」を思い出させるね。デジモンが、アバターに代わった?

パソコンや携帯とかデジタルデバイス使って、子供が、家の中から世界を救うってパターン、もしかして同じなんじゃない?
(本編見てないので、分からんけど)

上記記事には、ブロードバンド衛星通信回線とか書かれてるけど、デジモンの時は、ISDNに衛星携帯だった。
当時、通信インフラが絶たれた状況で、子供が家からネットにつなげて世界を救うには、どうしたら良い?と聞かれて、イリジウムとか、衛星携帯しか無いのではないか?と答えたら、やっぱりそーかーと、他に手段は無いかと、監督は悩まれてた。そんな10年前の、高田馬場の裏路地のオープンカフェでの会話を思い出した。

デジモンの時は、大人の知らないところで、子供だけで世界を救った(このパターンは、ドラえもんでも何でも、アニメの黄金パターンというか、子供心が燃えるんだよねw)けど、今度はそこが違うみたいだね。

なんか、今度は大家族で子供を支える感じなのかな?
子供世界で閉じないところが、ヒキコモリ→リア充 な感じの、主人公の成長を感じる(笑)
まあ、それだけネットが、リアルな存在になったからこそ、今作れる作品なのかも。で、逆に現代、大家族なんて存在はリアルじゃないわけで、そこが観客にとっての、映画の世界だけの架空な「お話」として、楽しめる部分なのかも。お話を作る上で、リアルとヴァーチャルの逆転現象が起きてる感じ。

サマーウォーズ観る人は、先に、ぼくらのウォーゲーム!から観ておくのも、面白いかも。


とかいって、全然違う作品になってたら、ゴメンなさい(自爆)

よなよなペンギン公式サイト発見

いつの間にか公式サイトがオープンしてた。
http://yonapen.jp/

来週あたり、IMAGICAで公式スタッフ試写とか。

法科大学院の授業で行けませんが...公開されたら、劇場行きますんで。

河野太郎GJ

「殿堂」という箱モノ
国産比率と法令遵守を条件に
レンタル倉庫でも借りろ

↑今まで何度も取り上げてきた、例の「殿堂」という文化庁天下り国営マンガ喫茶の件、河野太郎氏が反対してくれた。

http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1066
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1067
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1070

素晴らしい。前に、国籍法改正の時も、一番正しく理解して改正に賛成していたが故に、無知なネトウヨ酷士様から総攻撃を食らってたけど、今回も一番よく理解して反対したが故に、賛成派の文化を創ってない人々からの反論が、氏のmixiの日記版に連なってる模様。

間違いなく、河野さん、あなた正しいですよ。
アニメ、CGの制作側の人間として、応援します。
自分らの仕事が、文化庁の役人の天下りのネタに利用されるなんて、真っ平です。

文化庁は、作った箱に、誰が作品を提供するのか、考えてないでしょ。
117億円には、作品を買い取る金は含まれず、当然に徴収でもできると思っているのだ。そうなら、応じる作家や作品のリストでも見せてみろ。

例えば、手塚作品なら手塚治虫記念館、長谷川町子なら長谷川町子記念館と、既に著名な漫画家は、それぞれ記念館があり、町おこし的な要素もある。にもかかわらず、殿堂に著名作家の目玉作品を集められるとは思えない。

運営は民間に委託を想定してるそうだけど、どこの会社?信用できるの?

しかも、映画が殿堂の対象から除外されている以上、日本の有名な劇場アニメなどは、所蔵されない。映画抜きのメディア芸術なんて、詐欺みたいなものだ。


今、観光庁が、ポップカルチャー戦略の外務省と、産業育成側の経産省と連携して、パリでこんなことをやってる。
http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=41245
縦割りの壁を越えての連携は、素晴らしい。

で、何で文化庁の名前が無いの?
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000021.html

観光立国を目指す日本にとって、地方の観光資源は重要だ。地方都市に漫画家等の記念館が点在することは、外国人観光客の足を運ばせるネタになる。しかし、お台場に殿堂を作れば、逆効果でしょ。

ヲタクな外人は、そんなものが無くとも、アキバ目当てに東京には来る。
なので、殿堂を地方に作るなら、まだ国家戦略として一貫性を感じる。
一貫性が無いのは、文化庁だけ縦割り維持してるから?と聞きたくなる。

外国人へのアピールなら、見るべき観光資源を近くに集めてはならない。一度の来日で、観光資源を消化させないことが重要だ。また日本へ行きたい、次はあっちの地方都市へ行ってみよう、と思わせることができるかどうかだ。

お台場なんて、呼ばなくたってヲタク外人はコミケで来るって...orz

国産比率と法令遵守を条件に

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009050400166


流通先を確保するというのは、麻生総理が発表した愚策の内容に沿ってるのだろう。
しかし、アニメ産業が抱える問題は、販路拡大ができないことではない。

流通先を確保したところで、制作現場が潤うことはない。新たな利権が生まれ、制作しない誰かが私腹を肥やすだけだ。

アニメ産業というのは、制作現場の貧困状態が有名だが、人件費的な理由から既にアジア各国に生産拠点が移転している産業という、アパレル業界と類似した状況にある。そして、国内の制作現場の人材空洞化が深刻化している。有名なアニメ監督の年齢を見れば高齢者ばかりで、若手の監督でメジャーな人物が皆無なことからも、如実に現れている。

人材育成の妨げとなっている中間搾取構造を排除し、産業構造の健全化をしなければ、絶滅しかねない産業だ。経産省は、下請法の観点からアニメ産業にメスも入れてるから、分かってるとは思う。

ファンドに真の産業支援の意味を持たせるなら、制作過程でコンプライアンスを遵守し、下請法に反したり、非常識な中間搾取をせず、かつ、国内での制作比率が一定割合以上の作品に限定して支援すべきだ。

そうしないと、利益は中間搾取者の懐へ、仕事はタイ、韓国、中国に流れるだけになる。

天下りしか考えない文化庁とは、違うところを見せて欲しい。

なんで知ってる?

http://anond.hatelabo.jp/20090414170900
http://anond.hatelabo.jp/20090414225924

色々面白かったのだけど、本筋ではない以下の点が特にw
--

でもパチンコはどんどんやる人はやれば良いと思うし、アニメパチンコもどんどんやれば良いと思ってる。
だってアニメ製作会社もお金ないからパチンコで一山当てないと新作予算ないんだよ。
エウレカだってパチンコのおかげで映画資金できたし、
マクロスFだってパチンコアクエリオンのおかげでお金ができて製作できたんだから、
オタとしてアニパチはどんどんやれば良いと思います!
買い支えでDVD購入っていっても一般庶民にはお金の限界があるので、出したい人が出せば良いんだよ!
アニパチに文句つけるなら、買い支えをしっかりしてないと文句出せないと思う。

--

なんでそんなこと知ってるんだ。
それくらい、一般常識化してるのか?

多分、ヤマトの新作が作られるのも、パチの金であることは、間違いない。
http://maruko.to/2009/03/post-19.html

某CG制作会社が、赤字だらけの実写合成の邦画仕事を受注できるのも、他のパチ仕事の収益で赤を埋められるからに他ならない。邦画がヒットしても、制作現場にゃ回ってこないのが、この国の搾取構造だ。潤うのは権利者のみ。現場は、あんな名作やこんなヒット作まで、邦画のVFXを赤で受注し、パチの黒で穴埋めするのが日常。

パチ仕事は、最初からまともな金を出してくれる。しかも大半は、権利関係に厳しくて、コンプライアンスを尊重し、合法的な仕事を強制してくれる。他人の著作権を無視することにかけてはグダグダな、既存のアニメや映画産業の連中の最悪な業務スタイルとは天と地。使ったテクスチャー素材の一覧を提出させられて、1枚1枚の権利関係をチェックされるのも普通。権利の怪しいフォントを使った日には、損害賠償ものだ。

しかし、クリエイターの大半は、黒のパチより、赤の映画仕事をやりたいのだよ。だから会社は、やりたい赤の仕事を受注するために、あまり表に出せない黒の仕事もやる。あれだ、弁護士に例えるなら、刑事事件ばかりやりたいけれど、それじゃ赤字で事務所潰れるから、金のために民事で食いつなぐようなものだ。映画やアニメの仕事ばかりをやりたいけど、会社が潰れるから、パチで食いつなぐ。それが、今の日本のコンテンツ産業の実態だ。麻生さんよ、知らないだろ?

今、パチ業界の市場規模が急激に縮小してるけど、このままいくと、本当にやりたい仕事を赤で受けられなくなるかもしれない。だからこそ、カジノの合法化を早くしてほしい。カジノ向けの遊技機市場が確立される前に、代替市場が無いのにパチ市場がこのまま縮小したら、文化庁がどう天下ろうが、日本のアニメ・CG産業は終了のお知らせが(ry

まあ、収益構造を健全化するために、一度ぶっ壊すのも道かもしれない。

国内の会社が赤で受けられなくなれば......いや、タイや韓国に仕事が流されるだけか...orz

http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2009-03/12/content_17431010.htm

こういう記事も、純粋に、危機的状況にしか読めない(苦笑)

「殿堂」という箱モノ

http://diggindeeper.blog43.fc2.com/blog-entry-832.html
http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY200904090145.html

最悪だ・・・

どうしたら、そんなクダラナイ箱モノに117億も税金を浪費する方法を思いつくんだ?
何が「政府の新経済対策の一つ」だ。かんぽの宿と同じじゃねーか!
出来上がったら最後、それを維持するのに、ずっと税金が必要になるじゃないか!!

>センターではアニメなどの映像作品を鑑賞したり、マンガを読んだり、ゲームを体験したりできる。

そんなの、東京ならどこだってできるじゃんか...

「ジャパン・クール」だ?
「ジャパニメーション」と同じで、日本でしか通じないんだろ?
「クール・ブリタニア」の名前だけコピってるだけだろ?

いいかげん、文化の名の下に天下り先を開拓して税金投入するのやめろよ文化庁!!
文化庁の役人個々人の懐を潤すために、アニメだのマンガだの使うなよ!!
天下りはJASRACだけにしてくれ。

まだ、117億で、5・6本でも継続して作品に投資してくれた方がマシだ。
コンペは、代理店抜きなら10本作っても十分おつりくるぜ?
受注条件は、制作会社を国内に限定し、海外への下請けや外注は、極力制限しても良い。あと、制作過程でコンプライアンスを遵守させることは、必須条件だ。経産省とも連携すれば、
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20390487,00.htm?tag=nl
これのガイドラインを生かした成功例にさせても良い。

で、もちろん、外務省のポップカルチャー戦略と連動させる。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/h18_sokai/05hokoku.html

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/koryu/pop/kawaii/

そしてそして、観光庁とも連携して...


まあ、実際のところ、NFB(カナダ国立映画制作庁)とか、少しは真似して欲しい。あっちは、今年70年目だぞ?
http://blogs.yahoo.co.jp/sabumasa/27759487.html

もちろん、NFBは興行的には失敗してる

でも、本当に素晴らしい作品を多数輩出していることは、ちょっとアニメに詳しい奴なら誰だって知ってる。文化庁さんよ、アート系なら尚更だぜ?
日本なら、成功させる方法もあるかもよ。
え?制作費に使われたら、天下りが美味しくないって?

本当に最悪だ・・・

>5/6追記
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200904/2009042801059

-->
 文化庁は28日、アニメ、漫画、映画などの作品を展示するための美術館「国立メディア芸術総合センター」(仮称)を新設する構想を発表した。東京・お台場が候補地で、来場者数の目標は年間60万人。2009年度補正予算案に建設費用117億円を計上しており、11年度の完成を目指す。
 有識者による検討会が今回まとめた構想では、延べ床面積約1万平方メートルの4-5階建てとなる見通し。館内にスクリーンを備え、常設・企画展示などを行う。将来を担う人材を育成するため公開講座も実施するという。
 運営は独立行政法人国立美術館が外部に委託する。年1億5000万円程度の入場料を見込むほか、企業の協賛金、関連グッズ販売、イベント会場としての使用料で運営費用を賄う予定。
<--

ということで、場所はお台場だそうだ。問題は、運営が、独立行政法人国立美術館ではないことが明らかとなった点だろう。独立行政法人国立美術館が、謎の外部へ委託する。

外部ってどこだ!?
検討会とやらの有識者って誰だ!?

その1
その2
その3

前回から間が空いてしまったが、前回の民事訴訟法的なポイントについて松本氏の側から見てから、最後にパチンコ裁判の和解を取り上げる。

前回、著作者裁判とPSソフト裁判がほぼ同時期に係属し、互いに統一的に解決されるべき争点を含んでいたことから、主観的追加的併合や、弁論の併合の可能性があったと指摘した。しかし、松本氏を著作者と思っていた可能性すらある東北新社としても、著作権を西崎氏から譲り受けた際の経緯の不適切さから、松本氏のみが著作者であったら困る状況にあっただろうとも指摘した。だから、互いに西崎氏と敵対しながら、共同訴訟関係になれなかったのだろうと。

どちらの裁判の訴訟物も、判決の効力が他に影響するようなものではないので、必要的共同訴訟(民訴40条)とならないのは当然だが、どの当事者の主張した著作者も異なったので、通常共同訴訟にすらできなかったわけだ。

各当事者の主張した、宇宙戦艦ヤマトの著作者:
・西崎氏:自分
・松本氏:自分
・東北新社:ウエストケープ及びオフィスアカデミー

しかし、そうであるなら、松本氏が著作者裁判を提起したこと自体に疑問が生じる。先に係属していたPSソフト裁判で、両当事者が、自らの主張と異なる者を著作者だと争っていたのであり、どちらが勝つにしても松本氏には受け入れられない裁判だったはずだ。自らの事実上の利益に反する。この場合、松本氏は、PSソフト裁判に独立当事者参加(民訴47条)すべきだったのではないか。

-->
独立当事者参加:民訴法47条1項
訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる。
<--

互いに矛盾した理由を元に判決が出るかもしれない2つのタッグマッチ(PSソフト裁判、著作者裁判)を平行して行うのではなく、バトルロイヤル(独立当事者参加)で三者が一気に決着を着けるべきだったはずだ。松本氏の弁護士が、PSソフト裁判の存在を知らなかったはずはない。何しろ、松本氏の訴訟復代理人弁護士は、PSソフト裁判被告のバンダイビジュアルの訴訟代理人弁護士でもあったのだから。

おや?

独立当事者参加となった場合、バンダイビジュアルと松本氏は対立関係に立つ。何のことは無い。この弁護士では、そもそも独立当事者参加など、不可能だったわけだ。敵対する当事者同士の弁護など、同時にできないことは言うまでもない。

両立し得ない事実の主張をしているクライアントを同時に抱えて2つの訴訟を受任していたという事実だけでは、どのように関わるようになったのか経緯が不明なので、安易に批判はできない。単に、気持ち悪いとは思う。

しかし、影響が無い建て前とはいえ、同じ裁判長裁判官で同時期に係属している訴訟で、矛盾する主張をすることが、少なくともクライアントの為に最適とは思えない。弁護士倫理的には、ギリギリセーフなのだろうか...

あまり深入りしてはいけないような気がしてきたので、これ以上触れない。
とにかく著作者裁判は、独立して提起された点からして、民事訴訟法的に不適切だったのではないか、という指摘に留めておく。


さて、最後のパチンコ裁判に移ろう。

東北新社は、平成16年6月、パチンコ機「CRフィーバー大ヤマト」およびパチスロ機「大ヤマトS」等の製品が、東北新社が保有するアニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト」の著作権を侵害しているとして、パチンコ機を製造販売した株式会社三共のほか、株式会社ビスティ(パチスロ機製造販売)、インターナショナル・カード・システム株式会社(PS2用パチンコシミュレーションゲーム製造販売)、および株式会社アニメーションソフト(「大ヤマト」の許諾元(旧:株式会社ベンチャーソフト))を相手方として、東京地裁に損害賠償請求等を提起(平成16年(ワ)第13725号)。
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=1274

これに対し、アニメーションソフトの補助参加人として、松本氏と、氏が代表取締役の零時社が参加。つまりこの裁判は、「東北新社v.s.松本氏」というのが、本当の構図だ。三共、ビスティ、インターナショナル・カード・システムら3社担当の弁護士が2名、アニメーションソフトの弁護士が4名なのに、補助参加人の松本氏らの弁護士は12名もいる。

また、この訴訟が係属後、三共らは「CRフィーバー大ヤマト2」等も製造販売したため、翌年、それらの著作権侵害(及び不正競争防止法に基づく請求)を理由に同様の訴訟が東北新社から提起され、三共、ビスティ、フィールズが被告になったが、これは先の訴訟と同日に同じ裁判官らによってほぼ同じ判決がなされているので、特に触れない。
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=1275

訴訟提起段階での、東北新社の奇妙な点は、松本氏原作の「大ヤマト」そのものには、何も請求していない点だろうか。松本氏からの許諾で、被告アニメーションソフトが製作した、OVA「大ヤマト零号」のDVD販売に関しても、何も請求していない。つまり、「大ヤマト」そのものが「宇宙戦艦ヤマト」の著作権を侵害したかどうかは、争われていない。そこから、更に許諾を受けて製造販売された、「大ヤマト」の遊技機等が、著作権侵害と言われたのだ。どうやら東北新社は、「大ヤマト」そのものは「宇宙戦艦ヤマト」とは無関係の著作物という認識を持っているか、翻案された著作物だとは認識していても存在を認めているか、単に松本氏とは争いたくなかったか、ということだろう。当事者と争点を増やしたくなかっただけかもしれないが、松本氏との直接対決を避けようという姿勢だけは、いつも一貫しているのかもしれない。

しかし、「大ヤマト」原作者として松本氏は、これを静観はできなかったのか、結局は弁護士12名を従えて補助参加した。一見、尤もな気もするが、よく考えると補助参加する利益が松本氏にあったのか、大いに謎だ。

-->
民訴法42条:補助参加
訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。

<--

松本氏は、被告アニメーションソフトの補助参加人となったのだが、訴外の第三者として傍観していてアニメーションソフトが敗訴したところで、松本氏に対して法律上はおろか、事実上の影響すら考え辛い。判決の効力は、訴外の松本氏に及ばないし、パチンコ裁判の争点に関連する事実のうち、原作者として許諾を与えた側に、事実上利害関係が生じる点が無いのだ。

民事訴訟法的には、補助参加した場合の参加者への判決の効力は、一つの論点である。現在の判例・通説は、「参加的効力説」というのをとっている。この説では、敗訴した場合の判決中の理由にも、補助参加人は拘束される。しかし、勝訴したからといって利益となることなど、ほとんどない。後日、勝訴した理由と矛盾する理由で、被参加人(この場合はアニメーションソフト)から何か不利益な請求をされるリスクを回避できる、という程度である。「あの一緒に戦った裁判で、そんな事実は否定されたじゃないか!」という感じだ。

しかし、ライセンス許諾者側の松本氏は、勝訴した場合にアニメーションソフトから何か請求されるような関係に無いのだ。何か請求される可能性がある場合とは、アニメーションソフトが敗訴した場合しか想定できない。松本氏が許諾した著作物に瑕疵があった(他人の著作権を侵害していた)等の理由で、損害賠償を求められるケースだろうか。この場合、参加的効力説からは、補助参加人は敗訴の責任を被参加人と共同して負担させられるので、損害賠償から免れなくなるという不利益しか生じない。参加せずに傍観していれば、アニメーションソフトが敗訴したところで、その裁判は松本氏に一切関係無いので、後に損害賠償請求訴訟を提起されても、前訴の敗訴理由などに拘束されずに一から争える。一体、松本氏が補助参加した理由は、何だったのだろう。どんな利害関係が成立するのか。

補助参加とは、当事者から異議が出なければ、裁判所は利益の有無などの要件を満たしているか、わざわざ判断しない。自ら不利益を負いに来る者を、当事者らが受け入れるなら、反対する理由はない。

実は、松本氏は、被参加人のアニメーションソフトが唯一責任を追及された、共同不法行為成立の可否について、何も言わなかった。本当は、補助する意思など無いとしか思えない。この視点から、被告らと補助参加人が、どの争点にどう応じたかの違いを見ると面白い。三共、ビスティ、インターナショナル・カード・システムの3被告は、全ての争点に応じている。しかし、アニメーションソフトと補助参加人は、利害関係が異なることが明確なのだ。

東北新社が著作権を有するかどうかという根本的な争点に、アニメーションソフトは争った形跡がない。沈黙は、自白とみなされる(民訴159条1項)。しかし、翻案権は有しないと争っている。対して松本氏は、映画製作者はオフィスアカデミー又はウエスト・ケープだったとして、西崎氏は製作者ではないので著作権を有せず、その西崎氏から著作権譲渡を受けたとする東北新社の著作権を否定。しかし、翻案権に関しては、「不知」と陳述した。不知の陳述は、一応否認との推定を受ける(民訴159条2項)が、争ったという効果は弱い。この争点について、アニメーションソフトが使った証拠は、正に松本氏が東北新社と交わした合意書であったのだ。その合意書の当事者の松本氏が、補助参加しながら不知の陳述しかしなかったというのは、補助しないどころか、険悪な関係すら想像してしまう。

逆に見ると、アニメーションソフトは、映画製作者がオフィス・アカデミー又はウエスト・ケープとは主張せず、翻案権は西崎氏に留保されていると主張したので、西崎氏は著作権者であった必要がある。つまり、映画製作者は西崎氏であって欲しいのだ。しかし松本氏は、そもそも西崎氏が映画製作者とされることが我慢できないので、西崎氏に翻案権が留保されること自体を認めたくないのだ。何しろ、西崎氏との和解で、どうせ手足を縛られているのだから。

アニメーションソフトは、松本氏と東北新社で交わした平成11年1月25日の合意書を生かせれば、OVA「大ヤマト」が「宇宙戦艦ヤマト」っぽくても、製作を正当化できる。三共らの遊技機を保護する以上に、自らの作品もいつ訴えられるか分からない立場であり、西崎氏から東北新社への著作権譲渡時に、翻案権が留保されたと主張することは、価値があるのだ。

東北新社への譲渡契約について、合意書3条によれば
-->
ヤマト作品に登場するキャラクター(人物,メカニック等の名称,デザインを含む)を使用し新たな映像作品(ただし,キャラクター使用以外の行為でヤマト作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利は西崎に留保されていること。
<--
と確認しており、同4条2項では、
-->
乙(東北新社)は,甲(松本氏)がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合,これに全面的に協力する。ただし,甲は,乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し,説明する。
<--
と規定されている。つまり、許諾を得る関係には無いというものだ。

同じ合意書は、別の争点でも活用される。それは、東北新社が、三共らの製品について、宇宙戦艦ヤマトの著作権を行使できる立場にあるかという争点だ。この争点は、上記の翻案権の存否に関する争点と背中合わせだが、ここでは松本氏も同じ合意書を用いて主張している。三共らの製品は、守ろうという姿勢のようだ。しかし、アニメーションソフトの主張との差が明快だ。アニメーションソフトは、同じく合意書の3条と4条を使ったが、松本氏は3条を使わず、4条のみを使ったのだ。西崎氏に翻案権が留保されていると解釈できる規定は、何が何でも使いたくないのだろう(苦笑)

映画製作者が西崎氏でないとなると、東北新社は譲渡契約を無権利者と締結したこととなり、せっかくの合意書の前提すら危うい。実をとるアニメーションソフトと、名誉のみにこだわる松本氏のスタンスの違いは、明確と言えよう。結局のところ、補助参加などではなかったのだ。補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触してはならない(民訴45条2項)のだ。

-->
45条2項:補助参加人の訴訟行為
補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。

<--

結果、正に西崎氏が映画製作者とは認められず、東北新社への著作権譲渡が認められないとする判決が下される。三共らの完全勝訴と言えよう。しかし、アニメーションソフトや松本氏にとって、この勝ち方がプラスになったのか怪しい。負けた東北新社は、当然控訴した。

なお、東北新社が負けたのは、主張がお粗末だったからで、訴訟の経緯を見れば妥当な判決だ。合意書4条2項に対する東北新社の反論は、酷いとしか言いようがない。

「丙4合意書は,丙4合意が成立するに至る経緯からすれば,原告と補助参加人P1との友好協力関係全般についての精神的,営業政策的観点から作成されたものであり,丙4合意書4条2項も,法律的な意味はない。」だそうだ。

精神的、営業政策的観点から、松本氏をだまくらかしたということだ。そんなことが、よく自ら主張できるものだ。こういった、信義に反するようなことを言うから、勝てないのではないか。

また、遡ればPSソフト裁判の際、著作者人格権侵害を主張する西崎氏に対して、東北新社は西崎氏が著作者ではないと争った。その際、ウエストケープ及びオフィスアカデミーが著作者だと主張したのだ。法人が著作者となる場合とは、職務著作(著作権法15条)の場合しかないことは、「その2」で書いた。ところがパチンコ裁判では、西崎氏が映画製作者だったとするために、ウエストケープ及びオフィスアカデミーは実体のないダミー会社だったと主張したのだ。著作権譲渡契約書に、両社が製作者として表示されていた事実について、何の根拠も示さずに「ダミー会社だから、実態は西崎氏個人が製作者だ」と主張したのだ。ダミー会社だったのなら、正に西崎氏は著作者だったということではないか。まあ、相手が異なれば既判力は及ばないので、訴訟戦略上は、裁判毎に矛盾した主張をするのも自由だ。しかし、過去に自らが利用した証拠で負けるというのは、因果応報というものだ。

控訴の結果は、「その1」で書いた通り、訴訟上の和解(和解3)だ。またしても和解だ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081215/trl0812152023017-n1.htm

http://www.tfc.co.jp/news/detail.php?reg_id=203

-->

 本和解は、被控訴人らのうち一部の者が東北新社に対して和解金2億5000万円を支払うことを内容とするものです。なお、本和解成立の前提となる当事者間の合意により、本和解金の趣旨等を含むこれ以外の事情について説明することはできませんので、ご理解頂きますようお願い申し上げます。
 東北新社は、日本のアニメーション史に残る不朽の名作「宇宙戦艦ヤマト」の著作権を正当に保有する会社として、今後も同作品の権利ビジネスを積極的に展開していく意向です。

<--

この発表から想像できることは以下だ。
・被控訴人らのうち一部の者
→アニメーションソフトは、既に一審判決前に解散してしまった会社なので、どう考えても和解金など出せまい。判決と異なり、実効性のない和解など、するはずが無い。すると、必然的に三共ら遊技機メーカーのことだろう。
・本和解金の趣旨等を含むこれ以外の事情について説明することはできません
→和解金の趣旨が、損害賠償金ではない、別の何かかもしれない。
・東北新社は、日本のアニメーション史に残る不朽の名作「宇宙戦艦ヤマト」の著作権を正当に保有
→著作権譲渡契約の経緯を正当化できたかは怪しい。正当化できたなら、その根拠を公表することが、東北新社にとって最大の利益のはずだ。正当化でき、和解金の趣旨が損害賠償金なら、誰も隠すべき理由がない。堂々と発表しただろう。

wikiでは、東北新社が控訴審で、著作権の包括移転契約の正当性を証明する証拠を提出したとも書かれている
しかし、その情報のソースが示されておらず、にわかに信じられない。

つまり
・著作権取得を論理的に正当化はできないが、著作権者であることを相手方には認めてもらった。
・引き換えに、損害賠償請求は諦め、何か別の、公にすると都合の悪い趣旨で和解金を得たかもしれない。

2億5千万円を損害賠償以外で出費したとしたら、それが支払側にプラスになるケースとは何だ。何かへの出資だろうか...

想像しても無駄だが、いずれ作品が発表される段階で、何かしら明らかになると面白い。


ところで、著作者裁判とPSソフト裁判で、飯村裁判官の下した判決が確定していたら、どうなっていただろうか。もしくは、PSソフト裁判に松本氏が独立当事者参加して、3者に既判力の及ぶ判決が確定していたら、どうだったろうか。西崎氏が著作者であり、東北新社は翻案権の制約を受けない包括的な著作権者であり、それを松本氏も争えないという既判力だ。明らかになっている事実関係を客観的にみて、最も妥当な結論だろう。単純に三共らに既判力が及ばずとも、パチンコ裁判を避けられた可能性もあるかもしれない。そうすれば、とっくに「復活編」は実現していたかもしれない。

ヤマトの訴訟の歴史を振り返ると、先のことを考えず、その場その場で都合の良いように和解し、和解内容を明らかにせず、権利関係を不明確にして無駄な争いを増やしてきたように見えてならない。

パチンコ裁判での東北新社の敗訴は、何にも増して、最悪だった。破産廃止決定された法人に著作権が残っていたとすれば、さぞ、旧債権者らを喜ばせたことだろう。三共らは、東北新社の著作権を否定できたところで、どれ程の価値があったのだろうか。裁判所は、清算人を選任して宇宙戦艦ヤマトの著作権を換価させ、その配当は、旧債権者らに追加配当されたことだろう。そして、新たに著作権者となる者と、三共らの新たな戦いの幕が...否、そうなることが分かっているなら、三共が自ら著作権者となる可能性もあっただろう。それは、宇宙戦艦ヤマトという作品にとって、幸せだったろうか。

作品を生かすも殺すも、権利関係を明確にすべくアドバイスする、弁護士の責任だ。ヤマトと比べ、僅か5年後の作品であるガンダムとの作品数の差、世界の広がりの差は、比較せずにはいられない。もちろん、作品が多ければ良いわけでも、世界が広がれば良いわけでもない。しかし、法的問題が生じる作品と、生じなかった作品の差は、確実に存在する。マクロスも然りだ。

望むべくは、「その1」で示した懸念が、杞憂であって欲しい。和解の内容が、西崎氏にとってマイナスでないことを祈るばかりだ。過去の争いを水に流し、東北新社、西崎氏、松本氏が協力して「復活編」を素晴らしい作品に仕上げてくれれば、ファンにとって最上の喜びとなろう。不安と期待を込めて、待つしかない。「その1」から読んでくれた方は、是非とも不安と期待を共有していただきたい。

最後に、和解後最初の、東北新社許諾による、藤商事によるパチンコ遊技機のサイトへリンクする。
http://www.cryamato2.com/

素晴らしすぎるクオリティではないか。


その1
その2
その4

西崎原告が、バンダイ、バンダイビジュアル、東北新社らを訴えたPSソフト裁判一審(東京地判平成13年7月2日)において、西崎氏の請求は以下であった。
--
1 被告らは,別紙物件目録1及び2記載の各ゲームソフトを複製,譲渡又は貸与してはならない。
2 被告らは,原告に対し,連帯して金1億円及び内金3000万円に対する平成11年9月15日から,内金7000万円に対する平成12年5月23日から各支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
--
http://tyosaku.hanrei.jp/hanrei/cr/3276.html
http://members.at.infoseek.co.jp/just1bit/yamato/rights/trials.html#2

主な争点は3つ。
1:宇宙戦艦ヤマトの著作者は誰か
2:著作権譲渡契約に、翻案権譲渡と、著作者人格権に基づく請求の放棄が含まれたか
3:著作者人格権侵害に基づく請求をすることは、信義則違反か

このうち、著作者については、3つの訴訟を通して全てで争われている共通の争点だが、PSソフト裁判での裁判所の判断は以下。
「原告は,アニメ作品の制作等を業としていたが,昭和49年から58年に掛けて,テレビないし劇場用映画である本件各著作物を制作,著作した(なお,本訴において,被告らは,本件各著作物の制作過程について,反証を全く行っていないが,このような弁論の全趣旨に照らして,上記のように認定した。)。」

西崎氏の著作者人格権を否定したい東北新社らは、この点にろくな反証をしなかった。著作権譲渡契約時の添付書類の記述と、作品中のクレジット表記のみから、ウエストケープとオフィスアカデミーが著作者だ、としか反証しなかったのだ。著作者を本気で争うのなら、裁判所の言うように、制作過程に関する西崎氏の主張を潰す必要があったはずだ。「書いてあったから著作者だ」などという反証は、とても本気の反証ではない。

後のパチンコ裁判では、裁判所こそがそのような理由を使う。しかしこの時点では、この裁判と平行して係属していた、「その2」で取り上げた著作者裁判を無視できない。タイムラインにまとめてみた。


PSソフト裁判と著作者裁判は、僅か1ヶ月程の時間差で始まり、共に、同じ著作物の著作者人格権侵害が争われていたのだ。

両方の当事者であった西崎氏の代理人弁護士は、どちらも共通の面子の6名だし、PSソフト裁判のバンダイビジュアルの代理人弁護士は、著作者裁判の松本氏の復代理人弁護士を務めている。しかも、同じ東京地裁民事第29部であり、裁判官は3名中の2名が重複し、その一人は両訴訟に裁判長裁判官として関わった飯村敏明氏だった。

これだけ重複していながら、同じ争点を含む訴訟を別々に争い、別々に和解し、他方の和解内容に一方の当事者が苦言を呈するような状況とは、一体なんだ?

二当事者間で係属している訴訟に、第三者が新たに共同訴訟人として参加する、主観的追加的併合という方法がある。しかし、これは最判(昭和62年7月17日)が否定しているので、難しい。それでも、問題の早期解決を本当に望むのであれば、主観的追加的民訴法152条によって、弁論併合の申し出でを促し、裁判は一つにされても良かった。裁判官は、訴訟経済を無視した当事者らの茶番を、どう思っていたのだろうか。

「反証を全く行なっていない」などと括弧書きしたのも、皮肉かもしれない。何しろ、仮に東北新社らの反証が認められてしまえば、間違いなく2つの裁判は矛盾してしまう状況だったのだ。併合もせずに別々に争いながら、手抜きな反証を見せられたら、裁判官だって「何やってんの、あんたら?」と言いたいところだろう。

もしもPSソフト裁判で東北新社らの反証が認められ、ウエストケープ及びオフィスアカデミーが著作者となり、著作者裁判では西崎氏が著作者と認められていたなら、民事訴訟法的には全く問題なく、矛盾した事実認定に基づいた判決が、同じ裁判官から出るところであった。松本氏が著作者と認められていた場合も同様であることは、後述する。

せっかく矛盾しない判決がなされたが、共に控訴審段階で和解に至り、飯村裁判官の苦労?も無に帰するのだが、その結果が後のパチンコ裁判で影響することなど、因果応報である。


ここで、東北新社の真意を想像するのに、西崎氏が著作者人格権侵害を訴える元になった著作物の、PSソフトの表記を確認してみよう。
>(C)松本零士/東北新社・バイダイビジュアル
何故か松本氏の名前が...

もしもこれが、
>(C)東北新社・バイダイビジュアル
であったなら、西崎氏の気持ちも違っただろう。

当時の東北新社は、松本氏を著作者の一人と真に信じていた可能性もあるようだ。以下は、本エントリー「その1」にいただいたコメントから訪問した、「9の部屋」さんのサイトだ。
http://www.newyamato.com/main3.htm
http://www.newyamato.com/main3_tfcem.htm

(C)表記自体は、無方式主義のベルヌ条約加盟国である日本では、そもそも法的な意味はない。そんなことを書かずとも著作権は保護されるのであって、(C)表記をするのは、それに意味があるという誤解に基づく単なる慣行である場合が多い。(万国著作権条約のみに加盟する無方式主義の国(かつてのアメリカ)で著作物を保護する場合には、意味がある。)

別に、松本氏が著作者であろうと、映画製作に参加している以上著作権は映画製作者に帰属している。誰であろうと、著作者人格権侵害などと騒がないでくれれば良い。しかし、松本氏のみが著作者で、西崎氏もウエストケープもオフィスアカデミーも著作者でないとなると、西崎氏との著作権譲渡契約の記載に反してしまい、よろしくない。東北新社としては、ウエストケープとオフィスアカデミーという法人も著作者であって欲しいが、その為には、西崎氏が著作者的に関わり、それが職務著作として法人に帰属している必要がある。ところが松本氏は、"自身のみ"が著作者だと言い出してしまった。

この矛盾が、主観的追加的弁論併合をされなかった理由の一つではないだろうか。収拾がつかない。収拾をつけるということは、松本氏と完全に敵対することを意味するが、まだこの段階ではその気もない。東北新社としては

著作者:ウエストケープ及びオフィスアカデミー(+松本氏)
著作権:西崎氏から、東北新社へ譲渡

としたいが、PSソフト裁判と著作者裁判からは、どう頑張っても合一的にこの結論は導けない。

東北新社がそんな状況に置かれたのは、遡れば、西崎氏から東北新社への著作権譲渡契約の記載が不適切だったからに他ならない。(西崎氏が著作権者でありながら、法人が著作者であるという記述があり、その関係が生じるには、法人から著作権が西崎氏個人に譲渡されたこと以外にない。しかし、著作権を法人が個人に譲渡することなど、何か特段の事情でもなければあり得ない話だ。にも関わらず、その西崎氏個人から著作権譲渡を受けたことで、後のパチンコ裁判一審での敗訴につながる。)

さて、前置きが長くなったが、PSソフト裁判の和解を見てみよう。
●和解2:平成16年5月28日 PSソフト裁判 訴訟上の和解
http://web.archive.org/web/20070515052223/http://www.enagio.com/release/old.html#040712
--
「宇宙戦艦ヤマト・復活篇」発進 2004.7.12
かねてより、「宇宙戦艦ヤマト」のゲームに関する著作者人格権問題で、係争状態にりました西崎義展(本名:弘文)(株)東北新社、(株)バンダイ、バンダイビジュアル(株)の三社は、5月28日、 東京高等裁判所民事法廷において西崎義展の控訴取り下げによる和解が成立しました。
この和解調書の中で、西崎義展が「宇宙戦艦ヤマト」の著作者である旨を公表しても反意を唱えない事が確認され、三社は了承しました。
 
これにより、西崎義展が新作の制作を 全面的に委託している(株)エナジオは、劇場用アニメ「新宇宙戦艦ヤマト 復活篇」(仮題)の 制作について、「宇宙戦艦ヤマト」の著作権者である(株)東北新社と協議に入りました。
--

この和解については、上記の西崎氏側の発表しか情報源がない。東北新社側は、和解について何も発表しなかったようだ。これを、裁判外の和解だと評しているブログを散見するが、その根拠は不明だ。

・法廷で
・控訴取り下げ
・和解調書が存在

ただ、これは矛盾も感じる。控訴した西崎氏が控訴を取り下げたなら、単に一審確定で西崎氏敗訴なので、和解ではないように思える。しかし、法廷で和解が成立し、和解調書が作成されている以上、訴訟上の和解であることは間違いない。実務は、和解を広く認めているであろうから、控訴取下げを条件とした訴訟上の和解というのも可能であるかもしれない。しかし、論理的に民訴法に反しない解釈としては、訴えの取り下げを控訴取り下げと混同して発表したのかもしれない。

和解条件として判明しているのは、「西崎義展が「宇宙戦艦ヤマト」の著作者である旨を公表しても反意を唱えない」ことのみで、「新宇宙戦艦ヤマト 復活篇」に関する東北新社との何らかの約束を得たであろうことは推測するしかない。そのためには、前後の動きが重要だろう。

「その2」に書いた通り、著作者裁判での西崎氏と松本氏の「和解1」の内容は、東北新社にとって想定外であったことが伺える。そして、PSソフト裁判一審では完全に苦境に陥っていたはずの西崎氏の立場が、著作者裁判の「和解1」で蘇った。松本氏側は、「和解1」に則り、宇宙戦艦ヤマトとは別物作品として、OVA「大ヤマト零号」のDVD発売を開始する。DVD第一巻の発売が3月31日、第二巻が5月10日と続き、5月28日にPSソフト裁判は和解(和解2)する。そして6月、三共ら松本氏側を相手取ったパチンコ裁判を、東北新社は提起したのだ。

東北新社は、和解1の前は松本氏に宇宙戦艦ヤマトの続編を作らせようとしてきた。しかし、和解1の後は、完全にコントロールの利かななくなった松本氏を、間接的に牽制する必要性を感じ始めた。ベンチャーソフトなどと組んで「大ヤマト零号」なぞ作ってしまう松本氏よりも、どうせ獄中でろくな活動ができない西崎氏に、著作者だと公表するくらい許してやる方が、遥かにマシだ。しかも西崎氏は、正当なヤマトの続編しか作る気が無い。元々、著作者人格権侵害などと言ってこなければ、西崎氏と争うべき理由などなかったはずだ...

そして、7月12日のエナジオのニュースリリース後の動きは以下だ。
7月20日:2006年の復活編公開が、新聞メディア等で取り上げられる。
http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_07/g2004072003.html
http://web.archive.org/web/20040720055515/http://www.asahi.com/culture/update/0720/003.html
7月24日:蚊帳の外におかれることが正しいのに、松本氏にコメントを求めた、事情を知らない間抜けな記事が出る。
http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_07/g2004072406.html
7月26日:松本氏が復活編に無関係であることが正しい証拠ととして、1年前の「和解1」の全てをエナジオが公表。
http://web.archive.org/web/20070515052223/http://www.enagio.com/release/old.html#040726


西崎氏としても、和解に価値があった。PSソフト裁判一審判決からは、自分が復活編を製作できる勝算は低い。しかも、最初の覚醒剤事件の刑期は満了したが、その後の銃刀法違反事件の上告が棄却され、5年6ヶ月の実刑が確定してしまった。獄中からできることは限られるし、(C)表記から松本氏の名前が消えるなら、PSソフト裁判で著作者人格権侵害を争い続ける意義も減少した。東北新社は、復活編について協議してくれるというし、松本氏に許したことと、三共らの作ったパチンコ遊技機の実際は、かなりかけ離れ、和解1に反する内容にもなっているようだから、パチンコ裁判を提起するなら敵ではない。

おいおい、歌が、まんま、宇宙戦艦ヤマト言うとるやんけ!

後は、東北新社がパチンコ裁判で請求認容判決を得るのを待って、復活編を...のはずだったろうか。ところが2006年、東北新社は三共らに負けてしまったのだ...


その1
その3
その4

ヤマト関連訴訟という場合、重要なのは4つあり、更に著作権に関する物となると3つある。そして、その3つ全てが、一審の終局判決後、控訴審段階で和解が成立している。2つ1つは裁判外の和解、1つ2つは訴訟上の和解だ。
http://members.at.infoseek.co.jp/just1bit/yamato/rights/history.html
上記サイトで、PSソフト裁判、著作者裁判、パチンコ裁判と表現されているものだ。

訴訟提起の順番としては、PSソフト裁判、著作者裁判、パチンコ裁判なのだが、和解の順番としては、著作者裁判、PSソフト裁判、パチンコ裁判だったので、まずは著作者裁判の和解から取り上げる。

★和解1:平成15年7月29日 訴えの取下げによる裁判外の和解★
著作者人格権の所在、つまりは著作者は誰かを争った、松本原告v.s.西崎被告の一審判決(東京地判平成14年3月25日)は、西崎氏の完全勝利だった。「映画の著作物」たる一連の8作品(最初のTVシリーズから、劇場版の完結編まで)のモダンオーサーは西崎氏であることが、詳細な事実認定から明らかにされた。この裁判は、現著作権法16条(映画の著作物の著作者)の適用による事例判断をした初めての事案として、著作権法の世界では有名な事件だ。松本氏は控訴した。

ところが翌年、完全勝利だった西崎氏が譲歩する内容で、裁判外での和解が成立した。これによって、訴訟係属そのものが遡及的に消滅した。民事訴訟法292条(控訴の取下げ)が準用する262条(訴えの取下げの効果)によって、取り下げられた訴えは、最初から係属していなかったものとみなされる。一審判決は、ヤマトの実際の権利関係とは離れて、純粋に著作権法を学ぶための事例としてしか、意味を持たなくなったのだ。しかし、一審の終局判決の後に訴えを取り下げた者は、もう同じ訴えを提起できない。再審の禁止(民訴法262条2項)という効果のみが、当事者に残った。

なお、何をもって同じ訴えと見るかは、実は法的には厄介な問題ではある。訴訟物が同一であれば、原則として同一の訴えとみなされるが、後訴の提起時に訴えの提起を必要とする合理的事情が存在すれば、同一の訴えとはみなされない(最判昭和52年7月19日、百選(3版)99事件)。よって必ずしも、この問題が再審できないわけではない、とだけ付言しておく。

この和解内容については、一時期その全文が、西崎氏の息子が代表取締役を務めるエナジオのホームページで公表されていたが、現在は削除されてしまっているようだ。しかし、Internet Archiveには、残っていた。
当時のニュースリリースページ
和解書PDF
確認書PDF

ぼかされているのは、氏名・住所などの部分だろう。また、和解書における「別件映画」とは、過去の宇宙戦艦ヤマトの8作品(TVシリーズから、劇場版の完結編まで)のことであろう。

この和解には、西崎、松本両名以外に、株式会社ベンチャーソフトという会社が加わっているので、少し触れておく。この会社は、平成11年7月23日設立の株式会社レイジ・マツモト・アソシエイツが、同年12月14日に商号変更して生まれ、平成12年1月の松本氏の誕生パーティと共に設立発表されている。
http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/reishi.htm
http://yasai.2ch.net/venture/kako/987/987922146.html
(香ばしい...少し懐かしい部分も(苦笑))
翌平成13年、江守商事と共に、ヴィームを設立(平成16年11月解散)。
http://www.emori.co.jp/ir/enpri_report_46/03.html
そして、平成17年12月1日にはアニメーションソフトと商号変更し、翌18年6月19日解散した。

この解散の煽りを食らったのが、OVA「大YAMATO零号」だ。

その後、紆余曲折あって、やっとDVD-BOXが発売されたが、一般市場向けには、なんと昨年10月24日に発売されたばかりだ。時期的に、東北新社のパチンコ裁判の和解を前提にしていたことは間違いないだろう。
http://www.daiyamato-box.com/

つまり、和解書に出てくる「大銀河シリーズ 大ヤマト編」という松本氏側のヤマトは、結果的に「大YAMATO零号」となった。しかし、ベンチャーソフトが作ろうとしていたのは、本当は別のヤマトだった。
http://web.archive.org/web/20020206062040/http://www.venturesoft.co.jp/news/newsrelease/2002/y20020125-1.htm

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E8%89%A6%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%88

何故、松本氏が小学館で連載していた「新宇宙戦艦ヤマト(グレートヤマト)」ではなく、「大YAMATO零号」になったのかは、和解書の第5項を読めば分かる。松本氏&ベンチャーソフトは、過去の宇宙戦艦ヤマトと無関係な作品しか、西崎氏に製作を許されなかったのだ。だから、過去のヤマトと無関係な新作として、「大YAMATO零号」を作った。

しかし、この和解の遥か前の平成11年1月25日、松本氏は東北新社との間で、「宇宙戦艦ヤマト等に関する合意書」を交わしていることが、パチンコ裁判の中で判明している。
合意書の4条には、以下の記述がある。(甲=松本氏、乙=東北新社)
--
1項
「甲は,乙の対象作品に関する上記の権利の行使が円滑に行われるように,全面的に協力する。」
2項
「乙は,甲がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合,これに全面的に協力する。ただし,甲は,乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し,説明する。」
--

つまり松本氏は、自らが正当な著作者であったかどうかなど関係なく、著作権者たる東北新社との間で、既に宇宙戦艦ヤマトの二次的著作物たる「新宇宙戦艦ヤマト」を作る際の、何らかの協力関係を築いていたのだ。この合意の4日前、平成11年1月21日に、西崎氏の覚醒剤事件の控訴が棄却されている。ベンチャーソフトは、正にその合意のできた年に設立された会社であり、レイジ・マツモト・アソシエイツは設立1ヵ月後に、松本氏と、「新宇宙戦艦ヤマト」の映像化等の契約を締結している。

西崎氏の有罪が確実となった時点で、著作権者たる東北新社は、松本氏と組む選択をしたのだろう。ダークなイメージの西崎氏ではなく、松本氏が著作者である方が、新作の宣伝には適している。つまり、西崎氏は、東北新社から切り捨てられたのではないか?

遡れば、平成9年12月に、西崎氏は最初の覚醒剤取締法違反で逮捕され、翌10年3月公開の劇場作品「銀河鉄道999エターナル・ファンタジー」に、最後にほんの少しだけ、宇宙戦艦ヤマトそのものが出ていた。(この映画は大外れだったが、デジハリ時代の知り合いが就職先でCGを担当していて、煙のパーティクル表現のレンダリングが重くて重くて大変だと聞かされていたが、案の定、煙というよりエクトプラズム?というような、酷い煙になっていた。)これは、松本氏の意向に沿った作品だが、東映アニメーションの劇場作品にヤマトを出すには、どう考えても、著作権者たる東北新社の許諾を得たはずだ。

つまり、西崎氏のイメージダウンと反比例する形で、イメージの良い松本氏がヤマトの新作を作ることを、著作権者たる東北新社はバックアップしてきた経緯が見て取れる。

にもかかわらず、和解によって、松本氏による宇宙戦艦ヤマトの続編製作の道が封印され、西崎氏による復活編の製作が、逆に合意されてしまったのだ。続編を作って欲しい相手がパチモンを作り、作って欲しくない相手が続編を作るという合意だ。とても著作権者として、納得できる結果ではない。

西崎氏からすれば、松本氏が著作者でないという一審判決が出たところで、実は大した意味がなかった。

http://web.archive.org/web/20020401221821/http://www.venturesoft.co.jp/news/newsrelease/2002/y20020329-1.htm

そんなことと無関係に、著作権者たる東北新社が松本氏に許諾を与えて、続編を作らせようという動きが存在する以上、松本氏が続編を製作できない判決が必要だった。しかし、そんな判決は出るはずがない。すると、一見西崎氏が譲歩したかに見える和解内容が、西崎氏にとっては、一審判決よりもベストな答えだったのだ。

この和解に対して東北新社は、プレスリリースで反論した。

http://web.archive.org/web/20031203222016/http://www.tfc.co.jp/news/030806.html
http://members.at.infoseek.co.jp/just1bit/yamato/rights/recon3.html#tfc
東北新社の複雑な心境が読み取れると言うと、深読みし過ぎだろうか?

字面では西崎・松本両者の作品を同等に否定しているのだが、それに伴う行動は起こしていない。
逆に、松本氏が「大銀河シリーズ 大ヤマト編」を製作することについて、「松本零士氏は、株式会社東北新社から新作製作についての全面的な協力合意を得ております」とのベンチャーソフトのプレスリリースがあるわけだ。
確かに、「大YAMATO零号」のDVDが、販売差止請求されたなどという話は聞いたことがない。

更に言うと、松本氏の漫画は、東北新社の著作物の二次的著作物だ。松本氏がその続編漫画を公表するなら、東北新社の許諾が必要だ。小学館のサイトからは、当時からずっと、「新宇宙戦艦ヤマト(グレートヤマト)」の一部が公衆送信され続けている。まさか、こっそり同人誌を作って、無許諾で公開しているわけではないだろう。
http://ginga999.shogakukan.co.jp/yamato/

東北新社は、松本氏に続編を作らせようと、長らく考えていたのだろう。

-----以下、蛇足的だが、和解書と確認書についてもう少し詳しく見たい人のために、著作権法を16、15、29条の順におさらいしておく。

--
16条:映画の著作物の著作者
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
--

映画の著作物とは、絵や音楽などの一般的な著作物とは、著作権法上の扱いが異なる。前者の著作者をモダンオーサー、後者の著作者をクラシカルオーサーと呼び、16条でその分担を明確にしている。映画のように、多人数が創作に関わる著作物では、それら全員を共同著作者としてしまっては、何をするにも全員の許諾を求める必要が生じ、実質上著作物の円滑な運用を阻害する。特に映画は、商業目的に製作される場合を念頭に置いており、権利関係の簡略化の要請が強い。そこで、「全体的形成に創作的に寄与した者」のみを、映画の著作物の著作者に限定した。映画の著作物の元となる、原作小説やら音楽やら、アニメなら原画やら、個々の著作物(複製ないし翻案される原著作物)の著作者(クラシカルオーサー)は、映画の著作物の著作者から除外されたのだ。
しかし、モダンオーサーから除外されても、クラシカルオーサーにとって映画の著作物は、自らの著作物の二次的著作物に該当するので、映画の著作者に認められる著作権(21~28条)と同等の権利を持ってしまう。よって、事前の契約によって、これを制限する特約を盛り込むことが、映画の著作物の円滑な利用には重要となる。

例えば、最初の「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズの次に、これを再編集した最初の劇場版「宇宙戦艦ヤマト」が西崎氏によって公開された。この際、松本氏は劇場版に関わっていないのだが、その大ヒットを知り、公開から一週間後になって、西崎氏に対価の支払いを求めた。そして西崎氏は、これを争わずに1000万円支払った。
当事者達が意識していたかは知らないが、松本氏が、映画の著作物たるTVシリーズのクラシカルオーサーであったなら、その二次的著作物である劇場版に対して、この様な請求をすることが可能なわけだ。現在なら、この様な要求をクラシカルオーサーにさせないため、事前に権利行使を制限する特約を盛り込んだ契約書が交わされるだろう。

--
15条1項:職務上作成する著作物の著作者
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
--

15条1項は、職務著作を規定している。「使用者の発意」「使用者の業務に従事する者」「職務上作成されたもの」「使用者の名義」「契約、勤務規則その他に別段の定め」という要件で、自然人でない法人を著作者とする。これは、単に著作権を法人が得るのと異なり、著作者人格権まで法人が得るので、実際に創作したはずの自然人には何も残らない。

16条でモダンオーサーとなるべき監督やプロデューサーも、所属する映画製作会社の仕事として関わった場合、15条1項で自動的に、著作者としての立場を法人に奪われる(という表現は語弊があるが)。

ところが、フリーランスの監督が、委託されて映画の著作物の製作に参加した場合、15条1項は使えない。そこで出てくるのが、29条1項だ。

--
29条1項:映画の著作物の著作権の帰属
映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
--

映画製作に参加を約束すると、外部の監督でも、著作権だけは映画製作会社に奪われる。残るのは著作者としての著作者人格権のみだが、映画製作に参加する場合の契約書では、著作者人格権の不行使特約が盛り込まれるのが通常だ。つまり、ちゃんと契約書があれば、本来の著作者は何もできない。契約書がなくとも、映画の著作物の著作権は、全て映画製作会社に集まる。映画の著作物とは、これほど特殊な扱いを受ける著作物なのだ。


----では戻って、和解書の第4項と確認書を見てみよう。
和解書第4項は、西崎氏と松本氏の両名はモダンオーサーで、加えて松本氏は、クラシカルオーサーでもあるという内容だ。そして、確認書の第1項で、クラシカルオーサーの著作権行使を制限している。

8作品のうち、公開当時の表記としては、
1「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズ(昭和49年10月6日~50年3月30日)
2「宇宙戦艦ヤマト」劇場版(昭和52年8月6日)
3「さらば宇宙戦艦ヤマト」(昭和53年8月5日)
4「宇宙戦艦ヤマト2」TVシリーズ(昭和53年10月14日~54年4月7日)
5「宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち」(昭和54年7月31日)
6「ヤマトよ永遠に」(昭和55年8月2日)
→オフィス・アカデミー
7「宇宙戦艦ヤマトIII」(昭和55年10月11日~56年4月4日)
→東京動画
8「宇宙戦艦ヤマト・完結編35mm」(昭和58年3月19日)
 「宇宙戦艦ヤマト・完結編70mm」(昭和58年11月5日)
→ウエスト・ケープ・コーポレーション
が製作会社のようだが、後の訴訟で提出された東北新社への著作権譲渡契約時の資料では、6・7・8がウエスト・ケープ、1~5がオフィス・アカデミーの著作物を著作者とされていた。異なる理由は知らない。

問題は、西崎氏が映画製作者であったか、法人が映画製作者であったかで、職務著作の帰属が変わってしまう点だ。
オフィス・アカデミーにしても、ウエスト・ケープにしても、西崎氏自身の会社だ(ウエスト=西、ケープ=岬...つまり西崎氏の苗字)。個人と法人が一体的であることが、厄介な問題を生む。

実は、この和解の3ヶ月前に、角川映画著作権確認事件(東京地判平成15年4月23日)というのがあった。
いわゆる角川映画の製作者は、角川春樹氏ではなく、春樹事務所又は角川書店だとされた判決だ。角川春樹氏の主張では、契約書では春樹事務所が映画製作の当事者として記名捺印しているが、同事務所の法人格は形骸化しており、自身と同一であり、契約の主体は実質的に角川春樹個人であるというものだった。しかし裁判所は、法人こそが映画製作者だと判決した。詳細な理由は省くが、気になる人は調べてみると良い。

ヤマトの著作者が誰かという問題も、西崎氏とその個人会社の法人格の問題であり、上記判例は見過ごせないはずだ。しかし、和解書によれば、西崎氏個人がモダンオーサーとされており、映画製作者が自身であったというのが、西崎氏の認識であったことがうかがえる。西崎氏がモダンオーサーであったという前提に立つなら、著作権は当初、西崎氏個人に集中し、その後、法人に譲渡されたかどうかという問題になる。

松本氏は、業務委託を受けている立場なので、モダンオーサーにはなれるが、映画製作者が西崎氏だろうと、法人だろうと、どのみち29条1項で著作権は無いだろう。二人がモダンオーサーである以上、二人から著作者人格権は奪えない。しかし、権利行使を制限することはできる。そこで、西崎氏のみが著作者人格権を行使できるという内容で和解した。


東北新社は平成8年12月20日に、当該著作権を包括的に譲渡された立場だったが、西崎氏個人からなのか、オフィス・アカデミーやウエスト・ケープという法人からの譲渡だったのかが、パチンコ裁判では問題になった。しかし、問題になった原因の一端は、この和解書の記述の曖昧さから、西崎氏の認識にあったのではないかと思えなくもない。

もちろん東北新社のプレスリリースでは、「1996年12月20日に西崎氏本人(氏の関連会社も連帯)から譲渡を受け」という書き方でフォローしている。著作権者の可能性のある者全てが連帯して著作権譲渡した、ということを主張しているのだ。この契約内容も、以下に紹介されている。(素晴らしいですね)
http://members.at.infoseek.co.jp/just1bit/yamato/rights/contract199612.html

ちなみに、この10条はやはり重要に思えるのだが、パチンコ裁判において被告側から主張されたにも関わらず、裁判所の判断には至らなかった。

んーー、長いな...続く...か?

その2
その3
その4

東京国際アニメフェア2009にて、
http://www.tokyoanime.jp/ja/

東北新社によって、宇宙戦艦ヤマトの新作劇場版が、年内公開とアナウンスされた。

http://www.oricon.co.jp/news/confidence/64286/full/
http://animeanime.jp/news/archives/2009/03/post_704.html
http://www.gigazine.net/index.php?/news/comments/20090318_taf2009_yamato/

今年のアニメフェアには、うちの会社は出展していないので、間接的に報道されている事実しか知らないけれど、ヤマトファンの"大きなお友達"には、嬉しい知らせだろう。ところが、ヤマトの著作権を巡る長年の争いを一度でも調べたことがある者なら、決して安心できるような発表ではない。

何故なら、今回の発表された新作のストーリーは、1994年(バンダイビジュアルから発売の宣伝用VHS・LD、「宇宙戦艦ヤマト胎動編 ヤマトわが心の不滅の艦」)から西崎氏が何度も製作しようとしてきた、「復活編」と呼ばれる新作のソレそのものにしか見えないからだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E8%89%A6%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%88_%E5%BE%A9%E6%B4%BB%E7%B7%A8

http://www.geocities.jp/space_battle_ship_yamato_200x/yamato.html

http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_07/g2004072003.html

http://www.j-cast.com/2006/10/02003179.html

ニコニコには、当時公表された動画まで上がっている。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4171760


ところが、今回の東北新社の発表に関する報道に、西崎氏の名前が無い。しかし、松本氏の名前はある。

単に、報道に抜けているだけなら良いが、過去にこれだけ話題になってきた人物の名前があれば、記者が書き落とすとは思えない。東北新社のホームページを見ても、まだ新作に関するニュースリリースも無いので、これ以上のことが分からない...


さて、この不安を共有してもらう(自分だけ不安なのは悔しい)には、その問題認識の前提となる、事の経緯を知る必要があるだろう。しかし、はっきり言って、ヤマト関連の醜い争いを一から説明すると大変なことになるので、経緯を知らない方は、2006年末の時点までをまとめられているブログや
http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/ClapHand/eid/411972/cid/25910/

以下のサイトをどうぞ。
http://members.at.infoseek.co.jp/just1bit/yamato/rights/history.html


問題は、東北新社が三共などに負けた一審判決:東京地裁平成18年12月27日

http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=1274

http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=1275

の後だ。なんと昨年末、この訴訟"も"控訴審途中で和解してしまったわけだ。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081215/trl0812152023017-n1.htm

http://www.tfc.co.jp/news/detail.php?reg_id=203


しかも、一審で負けた東北新社が、和解金2億5000万円を得るという大逆転の内容に、誰もが驚いたはずだ。



一審判決から後、和解までの間、最初の劇場公開から30周年を迎えたヤマト周辺の動きは活発だった(一審係属中と思われる、TVシリーズ開始から30周年の時と比べて)。

http://lalabitmarket.channel.or.jp/site/feature/yamato_helmet.html

http://lalabitmarket.channel.or.jp/site/feature/deslar_wine.html

DVD-BOXや、関連グッズの発売が続いた。

  平成19年8月     平成20年2月

東北新社の文字もある宣伝ページに、西崎氏のメッセージが写真付きで公開されているのに、松本氏が一切触れられていないのが印象的だった。
http://www.dot-anime.com/tb/yamato/

そして8月、西崎氏自身が、正に今回東北新社の発表しているストーリーと同じ内容で、新作の製作を発表したばかりだったわけだ。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2008/08/01/13.html

http://eiga.com/buzz/20080804/1

この時点で
>今回は西崎氏曰く「全てがクリアに」なっての再始動だ。

と書かれていたのが気になっていた。和解の結論が予定されていたのだろうか?

しかし、当時の予定では、エナジオが中心となって製作される予定だったわけで、何か西崎氏の想定とは違ったことになっているのではないだろうか?

東北新社の和解は、西崎氏の想定の内か外だったのか、非常に気になる。


実は、ヤマトの著作権問題をややこしくしている理由の一つが、この控訴審段階での和解の繰り返しだ。

和解のもたらした弊害については、次のエントリーとしよう。

1
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