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「茶生産が創り出す社会 ――ビルマ(ミャンマー)ナムサン郡パラウン人社会を事例として」
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嗜好品文化フォーラム
平成23年5月21日
生駒 美樹(東京外国語大学大学院・総合国際学研究科)
「茶生産が創り出す社会 ――ビルマ(ミャンマー)ナムサン郡パラウン人社会を事例として」
1.問題の所在と研究目的
①ミャンマーの伝統文化にとって重要な意味をもつ食用茶ラペッソーの消費拡大の背景
②シャン州ナムサン郡一帯に居住する少数民族パラウン人の民族表象と茶の結びつきの背景
→茶生産地ナムサン郡と、消費地マンダレー市の相互関係を検討し、上記2点を明らかにする
2.先行研究にみる茶生産と茶消費の歴史
茶生産:パラウン人社会(主に英領時代の民族誌、ビルマ政府発行の民族誌 (i)
・トーンペン藩王国(現在のナムサン郡一帯)パラウン人藩王が治める、Shan Statsのひとつを構成
・茶生産を経済基盤→高い生活水準、政治権力の形成、茶の起源伝承
茶消費:ビルマ人社会(ビルマ歴史研究家による二次資料 (ii) ほか)
・ビルマ王朝の儀礼に不可欠、裁判所で茶を食す習慣
3.ナムサン郡の茶農家、製茶工場の調査から
・人口9割がパラウン人、茶生産に特化、ミャンマー最大の茶産地(国内生産量の半分を生産)
→特徴 ①生葉の交換、②リスク回避、③茶の象徴性、④販売への進出
4.マンダレー市における茶問屋、小売業者の調査から
・生産地と消費地の密接な関係 ←①産地による品質の区別、②安定した茶消費
→ナムサン郡の製茶工場主の販売参入 ←教育投資、ビルマ社会での生活基盤確立
5.考察
・ミャンマーで食茶の習慣が広まった背景
①ビルマ王朝による象徴的意味の付与、②ビルマ王朝のトーンペン藩王国支配、
③イギリスによる茶園の開発、④同一国家内に包摂、⑤インフラ整備
⇒象徴的意味合いを付与された食茶の習慣が、政治的背景による流通状況の改善と、技術向上による生
産量の増加という物理的な条件に支えられ、食用茶が広く嗜好品化され、大衆化した
・パラウン人の民族表象と茶の結びつきの背景
生業経済を支える資源であり文化的資源
⇒主な消費者であるビルマ人の伝統文化に不可欠であり、古くから品質の良い産地として彼らから認識
されているからこそ、茶をパラウンという民族を表象とするものとして主張
⇒茶販売に参入するナムサン郡のパラウン人はビルマ化する一方で、パラウンと茶の結びつきを強調
・民族表象の政治性 → 茶の種を与えた人物の変化、ビルマ語で茶を意味する語の起源を説明:対ビルマ
※茶生産に特化するナムサン郡のパラウン人の社会と民族表象は、主たる消費地のビルマ人社会との相互
関係のなかで構築
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嗜好品文化フォーラム
平成23年5月21日
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調査地地図
【現地調査】 調査言語ビルマ語
生産地 シャン州ナムサン郡(2010年3月)標高1500∼2000m
消費地 マンダレー管区マンダレー市(2009年9月、2010年8月)
【パラウン人】 モン・クメール語族
居住地域 中国雲南省∼ミャンマー北部、タイ北部にかけての山間部
ミャンマーでは主にシャン州に分布し居住
人口 ミャンマーに60万人、中国に1万2千人
Howard, Michael.C. and Wattana Wattanapun. 2001. The Palaung in Northern
Thailand.より ただし国勢調査は行われておらず正確には不明
表1 ナムサン郡 民族構成 (調査年不明)
表2 ナムサン郡 耕作地の利用(調査年不明)
Namhsan district.2009.Namhsan myone ahkyehkan ahyekalekmya. [ナムサン郡基本情報] . Namuhsan:Namuhsan district head officeより筆者作成
表3 ナムサン郡で生産される茶の分類と呼称
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(i) Milne, Leslie. 1924. The h me of an EASTERN CLAN ‐ A s udy of he Palaungs of the Shan States. Oxford: Clarendon Press.
Scott, J. G. and J. P. Hardiman. 1900. Gazetteer of Upper Burma and the Shan States, PartⅠ, Volume 1. Rangoon: Superintendent of
Government Printing and Stationary.
Min Nain. 1962. Medo Palaung(Palaungs of Burma). [ビルマのパラウン] . Myanmar: Ministry of Union Culture.
(ii) 大野徹2002『謎の仏教王国パガン 碑文の秘めるビルマ千年史』日本放送出版協会.
Thinkha. 1966. Lepet Yinkyehmu.[茶文化] Yangon: Sapei Beikman.