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「ロシア・日本エネルギーブリッジ」会議 2015 年 11 月 6 日 於:日本、東京 尊敬する皆様! 最
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「ロシア・日本エネルギーブリッジ」会議
2015 年 11 月 6 日 於:日本、東京
尊敬する皆様!
最初に笹川陽平様、及び田中伸男様に対して「ロシア・日本」エネルギーブリッ
ジをテーマにした第一回会議で講演する機会を与えてくださったことに感謝い
たします。
スライド1:ロシア・日本エネルギーブリッジの主要構造:「ロスネフチ」の役割
と可能性
私たちの会議は、ウラジオストクで9月初めに行われた東方経済フォーラムの
続きです。東方フォーラムで私たちは、エネルギー分野におけるロシアとアジア
太平洋諸国とのパートナーシップについて協議しました。今日ここで、私たちは
ロシアと日本の協力の形について対話を続けることができます。
スライド2:責任の限界
プレゼンテーションに若干の討議となるような見解や中間評価が含まれてい
ることについては、責任の限界があることに、ここに出席している尊敬する皆様
にも理解していただきたいと思います。
市場分析
このような討議においては、エネルギー資源の市場分析が極めて重要です。
ここ1年半ほどで大きく変わった石油市場の状況が、全ての残りのエネルギ
ー市場の状況に何らかの影響を与えています。
スライド3:シェール・オイルが世界の石油生産構造と輸出構造を変えている。
これらの変化は、何よりもシェール・オイルの生産現象に関わっていますし、
また以前は OPEC 諸国によりバランスがとられていたのですが事実上、今はア
メリカの地域市場がバランスをとるようになったことに関連しています。この
アメリカの地域市場は世界規模のとても重要な調整役を担っています。
このようなことがなぜ起きたかといえば、シェール・オイルの生産が急激に増
えただけでなく、アメリカに競争的な石油市場の発展を形成する要素があった
からです。具体的には財源、ファイナンス・デリバティブ、証券市場、石油ガス
パイプラインシステムの発展、さらには石油分野からの効果をすべての経済に
増幅させている膨大な数の下部組織などです。
これに関連して短中期的にみると、世界の石油市場の傾向をかなり決定づけ

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るのはアメリカ市場です。特にここ数ヶ月及びここ数年は、顕著な金融支援を確
実にうけるシェール・オイル生産がヘッジされるでしょう。
スライド4:リスクヘッジの可能性と 2017 年にかけてのアメリカのシェール会
社の流動性導入の可能性
現在シェール生産をおこなっている 25 社の負債総額は、およそ 1500 億ドル
です。評価によると、現行のヘッジメカニズムと資源量を担保にしての延長融資
は、現在の低い価格の条件では 2017 年まで保つことができるでしょう。
シェール生産の持続的安定性をきめ、石油の世界市場の将来に影響を与える
重要なファクターは、テクノロジーの進歩です。同時にこのファクターの生産量
に対する影響の程度についてはまだ不確定なところがあります。第一にこの不
確定さは資源産出地の品質に関わっています。
シェール企業は、活発にファイナンスバランスを再構築しています。非関連資
産や稼働させていない資産を売り、投資プログラムや配当金の支払いプログラ
ムを差し押さえ、支出の最適化をはかっています。
今年の 9 月、石油の世界市場において需要に対して供給過剰分は、一日あた
り 120 万バーレル以上減少しましたが、以前同様まだ一日当たり 100 万バーレ
ル供給が上回っており、この傾向は 2016 年末まで続くと予測されています。
結果、石油市場の状況については需要と供給のアンバランス状態が続いてい
るだけでなく、根本的に価格指標の数値が下がり、本質的に不確実性が高くなり、
高いリスクレベルと競争拡大が特徴となっています。
サウジアラビアの政策と問題
スライド5:サウジアラビアは、石油の生産を拡大している。
サウジアラビアは、石油価格が低い条件下で生産増強し、特に市場の割合を増
やす戦略を続けています。
これに関連して、指摘すべきことは、ここ 10 年間アメリカの中東からの石油
の輸入が 2005 年の 1 億 2500 万トンから 2015 年末にかけて 8200 万まで減少
したことです。同時にこの地域が現時点で問題を抱えているにもかかわらず、中
東諸国の石油生産量は同じ時期、1 億 1400 万トンも増えています。このように、
中東が極めて積極的に新しい石油の販売市場を開拓し始めている傾向が見られ
ます。
例えば、最近ハンガリーの Szazhalombatta 市にあるドゥナ石油精製工場が
クルディスタンから石油を輸入するようになりました。同様の例をポーランド
にみることが出来ます。ポーランドの首相が 2015 年 4 月にサウジアラビアを訪
問した後に、プウォツクとグダニスクの石油精製工場へのアラブ石油の供給が

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合意されました。
サウジアラビアが選択した戦略は、サウジアラビアに多くの利益をもたらす
どころか、その反対になっています。低い石油価格によってサウジアラビアは予
備基金の資金を数百億支出せざるをえず、外国の借款に頼らざるをえなくなっ
ています。
最近では厳しい予算倹約措置をとらざるをえなくなっています。サウジアラ
ビア財務省は、政府の他の省庁に対して支出の制限を勧告しています。特に年末
までは新しい自動車や家具を購入したり、新しい住宅を借りたりしないように、
新しい職員の任命も凍結するように勧告しています。
OPEC 諸国は巨大な財政損失に耐えつつ、以前同様に調整役の役割を拒否し
ています。つい最近の OPEC 会議では再び何の決定も採択されませんでした。
スライド6:世界の生産状況の変化と予想原価
長期的観点から、石油市場の将来をきめる重要な要素は、資源産出地の状況で
す。現在の評価では、世界の石油の消費需要はかなり高い原価の油田からの生産
によってのみ確保されることが証明されています。
2030 年までの新たに生産される石油の生産の約 75%(一日当たり 3300 万バ
ーレル)の原価分析をみると、最近の一日あたり 300 万バーレルの生産では、
2015 年度価格で1バーレル当たり 85 ドルから 98 ドルの高い石油となります。
新しく生産される1日当たり 2800 万バーレルの石油の生産原価は、2015 年度
価格で1バーレル当たり 75 ドルを超えることはありません。
さらに 2030 年までに現在の既存の石油生産能力設備(1 日あたり 3000 万バ
ーレル)が稼動停止となります。すでに今私たちはオランダや北海での石油の減
産の証人となっています。
エネルギー供給構造とエネルギー安全保障
スライド7:対日石油の供給者としてのロシアの強み
日本は、最近石油をおよそ1億 7000 万トンから 1 億 8000 万トン輸入してい
ます。かなり幅広い地域からの輸入の可能性があるにもかかわらず、日本の石油
輸入の 83%がペルシャ湾岸諸国からで、これらの国々は日本から遠く離れてお
り、ロジスティク上高い危険があります。またアジア太平洋諸国の近い供給国か
らの輸入は 13%以下です。
中国のペルシャ湾岸諸国からの石油の供給依存率は、51%以下です。
ペルシャ湾岸諸国の主要な油田から 1500km しか離れていないインドでもペ
ルシャ湾岸地域からの供給依存率は 58%です。
一方、アメリカではこの依存率はさらに少なく 25%で、エネルギー安全保障

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は国内の石油生産とカナダやメキシコといった近隣諸国からの供給とによって
確保されています。
スライド8:石油・ガス生産共同プロジェクトでのロシアと日本のパートナー
シップとしての協力ポテンシャルは大きい。
日本の皆様は長年にわたって全世界の有望な生産プロジェクトへの資本投資
を中心に、エネルギー安全保障問題の解決のために体系的な面倒な作業をおこ
なっています。しかし結果をみてみましょう。全世界の 140 のプロジェクトの
うち、およそ半分は地理的に近いもので、残りの半分のプロジェクトについては
厳しい経済、自然及び技術条件が特徴的となっており、さらに軍事紛争や政治的
リスクの脅威にもさらされています。
現在、海外プロジェクトに参加している日本企業は、炭化水素資源の需要量の
約 23%を確保しています。これはよい結果ですが、日本の長期的エネルギー安
全保障からいえば、まだ十分ではありません。
日本企業が近い隣国であるロシアにあまり注目しないのは不思議です。現在
サハリン 1 とサハリン 2 の 2 つの協力プロジェクトがあるだけです。比較して
みると、アメリカとカナダにおいて日本企業は極めて多くの資金がかかる石油
鉱床、具体的にはオイルサンドとシェール・オイルの開発など 19 のプロジェク
トに参加しています。しかも、これらのプロジェクトについては、石油輸出権が
取得できるかどうかかなり疑わしいです。
日本の投資家のこういったプロジェクトの投資効率は、極めて低いです。私た
ちが知っている限り(シティバンクの評価によると)、ここ 3 年間でアメリカ・
カナダの生産困難な石油・ガスプロジェクト、及び北海の油田への投資の失敗に
より、日本企業は総額 6000 億円(約 60 億ドル)の損失を出しています。こう
している間に石油価格は高くなりました。海外の上流部門プロジェクトに関す
る INPEX 社の IRR(内部収益率)は、(ウッド・マッケンジー社の評価では)
2014 年末で 3.1%で、標準収益率の 4 分の 1 以下です。
ロシアのエネルギー市場と相互貿易
スライド9:ロシアの石油部門は持続性を誇示している。
ロシア経済のエネルギー部門でのエネルギー資源生産量は安定し、増加し、さ
らに輸出も増えています。
今年、ロシアと日本の貿易額は減少しているにもかかわらず、2015 年 1 月か
ら 8 月までのロシアから日本への石油輸出は、2014 年の同時期と比較して 20%
増加しています。2014 年度ロシアの対日石油輸出量 1350 万トンで、日本の総
石油需要量の 1 億 6800 万トンのうち 8.2%をまかないました。

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しかし、両国の貿易経済関係の発展ポテンシャルはまだかなり使われていま
せん。相互の貿易額を本質的に増やす可能性を私達は持っています。第一に、私
たちはエネルギー分野の共同プロジェクトを拡大しなければなりません。この
意味から今回の「ロシア・日本エネルギーブリッジ」会議は、このプロセスのス
タートとなります。有名な日本の諺に「長い道も一歩から」があります。まさに
ここから始まります。
エネルギー市場における価格変動の根拠
日本は第一次エネルギー資源需要量の 90%以上を輸入していることから、エ
ネルギー資源市場での現在の価格状況は、エネルギー消費者として大変好都合
であり、経済における費用削減の重要な要因となっています。しかし同時にヘン
リー・ハブ価格との連動は正当化されません。石油市場での価格変動を考慮した
上で、CIS 市場での伝統的な「石油連動」による価格形成は、ヘンリー・ハブベ
ースよりも日本の消費者にとってより魅力的です。
参考資料:
Japan Crude Cocktail(JCC)とは、日本に輸入される石油の標準価格
(輸入関税考慮せず)。日本の経済産業省により、一ケ月に一度計算されて
いる。日本、台湾、韓国が LNG を長期輸入する時の価格計算で利用する
標準指標である。
JCC の石油価格とヘンリー・ハブ価格のガス価格との比率は、2009 年
当初から 3 年間は増加傾向にあり、2012 年年前半には 11.74 の最大比率
に達しました。その後、この数字は常に下がる傾向にあり、最近では 3.48
となっている。
オーストラリアからの LNG の供給増加には限界があります。「ゴルゴン」プ
ロジェクトを含めて、オーストラリアのプロジェクト・オペレータが炭酸ガス
の含有率 20%、もしくは 20%以上の高い割合の「酸性」ガスを取り扱ってい
ることはよく知られています。この高い含有率は開発を困難にしているし、さ
らに環境上悪影響をもたらしかねません。
常に操業コストと全体コストのレベルを考える必要があります。石油価格は
いわゆる限界操業費のレベルを超えなければなりません。
もちろん、バランスの取れた市場では、石油価格は生産コストを完全にカバ
ーすることが予測されています。
供給過剰の時代では、石油価格は操業費のレベルまで下がることがあり、現
在市場でこういった状況が見られます。価格が今のようなレベルではバランス
をとることができません。すべてのコスト段階を必要とする新たな油田は、簡

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単には開発されることはないからです。
そのため、価格は全サイクルコストの長期のバランスのとれたレベルに戻ら
ざるをえません。
石油市場での供給過剰の現況は、かなりの程度これまでの大規模投資の結果
といえます。2010 年から 2014 年にかけて世界の石油生産者が新しい石油ガス
プロジェクトに積極的に投資し、しかもその範囲をかなり広げたことはよく知
られています。例えば、カナダの瀝青サンド、アメリカのシェール・オイル、
西アフリカや北海での深海プロジェクトなどです。投資開始から操業開始まで
タイム・ラグが 3 年から 4 年あるとして、始動する新プロジェクトによる生産
量増加による効果は将来数年は続くかもしれません。例えばシェブロン社は、
以前におこなった投資によって 2017 年までに液体炭化水素の生産増加を 9700
万トン(2014 年では 8510 万トン)まで見込んでいます。同様に BP 社は、
2014 年の 9600 万トンと比較し、2017 年にかけて 1 億 400 万トンまで石油生
産量の増加を見込んでいます。トタール社も同じく 2015 年から 2019 年にか
けて、すべての活動地域において炭化水素資源の生産増加を見込んでいます。
しかし、考慮すべき事があります。第一に、多国籍企業の石油生産が世界の
石油供給において支配的割合を占めているわけではないこと。第二に、多国籍
企業による供給の増加は現在の投資削減を考えると、一時的な現象だというこ
とです。
生産投資の落ち込み
2015 年の低い価格レベルは、石油ガス会社にとってかなりの減収につなが
り、多くの投資プロジェクトを採算性のとれないものにしてしまいました。結
果、コスト削減となり、それは企業予算にも影響を与えました。最終投資決定
の採択の段階にある多くの投資プロジェクトは取り消されるか、もしくはもっ
と後の時期に延期されました。ウッド・マッケンジー社の評価によると、2015
年に一年以上時期が延期されたプロジェクトによる液体炭化水素の生産量は、
2025 年には一日当たり 700 万バーレルになったはずでした。
スライド 10:石油分野への投資の減少
現在、石油部門における投資活動の減少傾向が見られます。ウッド・マッケ
ンジー社のデータによると、2015 年すでに昨年比で、上流部門への世界の投
資が総額 2200 億ドル減少していることが確認されています。しかし、これは
どちらかといえば楽観的な評価で、対石油生産への世界の投資の削減額が約
3000 億ドルになる可能性は極めて高いです。
徐々に私がお話したばかりの以前の投資による効果は弱まってきており、多

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くの評価では 2016 年度に石油生産量が絶対的に縮小する可能性もあり、この
ことは市場の均衡を促すことになるでしょう。
エネルギーブリッジのコンセプト
スライド 11:露日エネルギーブリッジ、資源インフラチャンネル
通常エネルギーブリッジというと、電力グリッドとエネルギーシステムのブ
リッジによって結合される設備の支援と理解されています。
同時に私たちがエネルギーブリッジの建設と言う場合、ただ単に電力グリッ
ドについてだけでなく、エネルギー資源の一次供給にもとづいた交流の幅広い
チャンネルを意味しています。具体的には石油・石油製品・LNG・その他のエ
ネルギー資源の供給、機械・設備などのカウンター供給、さらに資産の交換に
まで及びます。すなわちエネルギーブリッジをこのように理解することによっ
て、私たちのビジネス協力の拡大の可能性が広がります。
このようなエネルギーブリッジがあれば、両国のエネルギーシステムと経済
の重要な相互依存性といったものを考えることができます。つまり、事実上両
国の戦略パートナーシップの条件が形成されることになります。
上流部門における私たちの提案
戦略パートナーシップの方向に進むためには、エネルギッシュな行動が必要
です。「ロスネフチ」は様々な準備段階、つまり地質探鉱段階から商業生産レ
ベル段階にいたる 10 以上の生産プロジェクトを日本企業に対して提案してい
ます。
これら全てのプロジェクトは次のユニークな特徴を有しています。
*すでに財政面の調整がおこなわれており、この指標でなら世界市場で絶対的
に競争力があります。
*資本投資に関しては標準的な、すでに評価済みの条件で提案がおこなわれて
います。すなわち政治レベル、行政レベルでの特別な調整が全く必要ありま
せん。
*ユニークな随伴のビジネス提案が出されます。
日本の皆様は「ロスネフチ」が提案しているプロジェクトの大多数を知って
いると思います。私たちはこういったプロジェクトに関して多くの交渉をおこ
なってきましたが、結果は極めて小さなもので、まだ協議段階にいます。
しかし、中国やインドの同僚はすでに私たちが提案したプロジェクトに参加
しています。
私たちはプロジェクトのスペクトルを協議していて、これらのプロジェクト
のスペクトルはこれまでの伝統的な提案を拡大したものになっています。

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例えば、「サハリン1」プロジェクトの油田から近いサハリン島の大陸棚プ
ロジェクトです。アストラハノフスコエ海=ネクラソフスキー鉱区、カイガン
スコエ=ヴァシュカンスコエ海鉱区、デリュギンスキー鉱区などが含まれてい
て、確認済埋蔵量は 4020 万トン、コンデンセートが 2 億 3100 万トン、ガス
が 210 億㎥となっています。
私たちは現行の東シベリアと極東の産出地への有望な資本投資を提案してい
ます。特にヴェルフネチョンスコエ産出地、スレドネボツオビンスコエ産出
地、タグリスコエ産出地、ルースコエ産出地などで、これらの産出地での生産
拡大をロスネフチは近い将来計画しており、生産量は年間石油で 3000 万ト
ン、ガスで 160 億㎥を超えます。
私たちの提案には特別プロジェクトが含まれていて、特に現行の産出地での
生産拡大を貯留層の石油回収率を上げる方法を採用することによっておこない
ます。またガス田の開発(ハラムプルガス田、クィンスコ=チャセリノエガス
田、ルースコ=レチェンスコエガス田)さらに有望なペチョラ=LNG プロジ
ェクトの開発をおこないます。
ガスに関して言えば、ロシア東部地域の大陸部分のガスの総埋蔵量は 8.7 兆
㎥で、資源ポテンシャルは 33 兆㎥を超えます。これは、ロシアからアジア太
平洋諸国への輸出ポテンシャルが年間 3000 億㎥以上と評価できることを意味
します。
現在「ロスネフチ」は、日本のパートナーに総埋蔵量 60 億バーレル、石油
等価量 1000 億バーレルの産出地の生産プロジェクトを提案しています。
下流部門における私達の提案
スライド 12:日本への燃料エネルギー資源の輸入におけるロシアの割合と東
方石油化学会社プロジェクト
ロシア・日本エネルギーブリッジの発展のもう一つの方向性は、石油ガス精
製と石油製品の供給です。
現在、日本は年間約 2500 万から 3000 万トンの石油製品、主として精製加
工用のナフサを輸入しています。これはある意味原料供給の代替です。この量
の拡大計画は今のところないと考えています。しかし、私たちは皆様に今ある
可能性について考えてもらいたいと思っています。
特に、これは東方石油化学会社プロジェクトに関してです。これはロシア極
東における「ロスネフチ」の石油精製及び石油化学工場建設に関する大きな投
資プロジェクトに関連しています。これは設備供給の可能性でありますし、石
油化学工業の発展の枠内での労働と専門性の賢明なる分業でもあります。
燃料の貯蔵分野での共同作業のアイデアも同じく興味に値します。

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ここで若干忘れられた感のある「世界企業」のコンセプトを思いおこすこと
にします。このコンセプトの基礎にはシンプルな公式があります。それは「安
いところで原料を買いなさい、最も安い給与のところで品物をつくりなさい、
その品物の価格が最も高いところで品物を売りなさい」です。
現在、ロシアの東方地域は世界企業理論の観点から、少なくとも石油精製と
石油化学分野において最も優れた場所のひとつです。ここには原料があり、安
価な質の高い労働力があり、近くにはロシアとアジア太平洋諸国という大きな
物が不足している市場があります。しかも、ロシアのこの地域はリクレーショ
ンの面での可能性も有しています。
ロシア連邦のエネルギー分野の投資の魅力が、ルーブルの交換レートの柔軟
なメカニズムの中で形成されていることを強調したいと思います。炭化水素資
源の世界価格が本質的に下がっている状況で、このことはロシアの石油ガス分
野に一定の有利な点を作り出しています。特にロシアの石油ガスの新規プロジ
ェクトの競争力をコスト面で保証しています。
さらに石油精製分野で日本の皆様にとって興味深い可能性が、もうひとつあ
ります。それは生産プロジェクトへの資本参加です。上流部門における権益の
購入は、石油価格の変動に関するリスクヘッジとなりますし、さらに原料市場
で価格が不安定で変動する状況下での、ビジネスの持続的発展を意味します。
このような方法を日本の石油精製会社がおこなっていることを知っています。
参考資料:
日本の大きな石油精製会社 2 社、JX 日鉱日石エネルギー株式会社と出
光興産株式会社は、自社の石油精製工場から本質的に遠い場所である北
海やカナダ、アメリカに石油ガス生産資産を持っています。
JX 日鉱日石エネルギー株式会社はマレーシア、カナダ、イギリス、
アメリカ、オーストラリア、アラブ首長国連邦に炭化水素生産企業の権
益をもっています。2014 年度 JX 日鉱日石エネルギー株式会社は、特に
マレーシアとカナダにおいて 570 万石油換算トンを生産しています。日
本におけるこの会社の石油精製能力は、約 7000 万トンです。
出光興産株式会社は、北海、ベトナム、カンボジアの石油生産会社の
権益を持っています。2014 年度の総生産量は、150 万石油換算トンで主
たる生産地は北海です。日本における出光興産の石油精製工場の石油精
製能力は、2300 万トンでした。これらの企業の決算報告書から、生産
量が少ないにもかかわらず、2013 年から 2014 年にかけてのこの生産活
動がこの 2 つの企業に営業利益の主たる利益をもたらしていたことがわ
かっています。

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どうしたらこういったヘッジ機能を可能にできるかを一緒に検討できます。
造船ズベズダ
スライド 13:造船会社「ズベズダ」を例にした技術協力と現地生産
ロシアの大陸棚での資源開発に関する長期計画では、船舶と設備をしっかり
と確保しなければなりません。極東は 21 世紀のロシアの発展優先地域であ
り、新しいハイテク生産施設をつくらなければなりません。
ウラジオストク地域で建設中の造船所「ズベズダ」は、こういったハイテク
生産施設の中で重要な位置を占めます。この造船所の周辺に必要な資材や部品
を製造する企業や船舶設備工場などが設立されます。
造船所の最初の工場はすでに建設が始まっています。造船所は大陸棚プロジ
ェクトで使用される複雑な船舶機械や船団にサービスを提供する船舶の建設に
特化されます。
「ロスネフチ」やその他の大企業が発注者ですが、造船会社「ズベズダ」に
対して集中発注をおこなう協定にはすでに署名しています。
ロシア産業貿易発展省の結論では、2030 年までに行われるこの造船会社に
対する発注は、約 1400 隻の様々な用途の船舶および船舶機械となるとのこと
です。こうした大規模発注による保障されたプロジェクトが、パートナーや投
資家に開かれています。最初のこうした協定はすでに合意されています。ウラ
ジオストクでのフォーラムでオランダの Damen Shipyards Group と造船技術
の現地生産化に関する協定に署名しました。さらにシンガポールとの合意もあ
ります。私たちはすべての関連会社に協力への参加を呼びかけます。
日本の造船会社は海外進出の面では伝統的に抑えているにもかかわらず、最
近 10 年間で中国、ベトナム、ブラジル及びフィリピンの造船会社に投資をか
なり活発におこなっています。
私たちから見ると、ロシアの民間造船会社はブラジルの造船会社の 15 年前
と多くの点で似ています。当時ブラジルの大陸棚での石油生産の発展は、スタ
ート時点にたったばかりでした。
現在三井造船株式会社、住友重機械工業株式会社、Kawasaki Shipbuilding
及び船舶機器製造会社などが、ロシアの造船プロジェクト、造船所「ズベズ
ダ」のプロジェクトに参加可能です。その後プロジェクト参加企業は、北極を
含めたロシアの大陸棚資源の開発に積極的に参加できるようになります。これ
は技術パートナーの主要な権利の一つです。
製鉄業
ロシアの極東に新たに大きな造船所を設立することは、同様に極東地域に鋼

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板の追加の需要を、品質の高い鉄鋼製品に対する追加の需要をつくりだしま
す。これに関連して極東地域での最新の薄板圧延工場の建設問題が現実的に緊
急の解決を要する問題です。こういったプロジェクトには多くの日本企業が関
心を抱くことと思います。
「ロスネフチ」の投資プログラムと主要注文
現在「ロスネフチ」は、世界で最も多くの投資をおこなっている石油・ガス
会社の一つです。2015 年度「ロスネフチ」が購入した技術設備資源、工事や
サービスの総額は 243 億ドルです。2017 年までの承認されたビジネス・プラン
および 2018 年の計画では、購入総額が年間 250 億から 260 億ドルのレベルま
で増えることが予想されています。
「ロスネフチ」の投資プログラムの規模は世界でも最も大きな注文となって
おり、それは第一に機械製造や化学工業製品ですが、総額は毎年 51 億ドルに
なると予想されます。
「ロスネフチ」社の 2016 年から 2018 年までのビジネス・プランに沿った
形の物的技術資源需要は、176 億ドルとなります。特に下記の品名グループが
含まれています。
* 250 万トンのケーシングパイプ及ぶポンプ・コンプレッサーパイプ、総額
1450 億ルーブル(24 億ドル)
*80 万トンの化学製品、総額 417 億ルーブル(7 億ドル)
*4 万 7000km の水中ケーブル、総額 180 億ルーブル(3 億ドル)
*17000 個の生産用水中ポンプ、総額 160 億ルーブル(2 億 7000 万ドル)
*2800 個の変圧器、総額 130 億ルーブル(2 億 1000 万ドル)
日本企業は現在ロスネフチの注文をわずかに受けていますが、それは輸入品
全体の 0.46%以下です。
今私がお話した技術協力の可能性は、日本のパートナーが私たちの投資プロ
グラムの枠内で物的・技術資源の優先的供給者になりうることを考慮すると、
実際にはもっと幅広いです。
電力ブリッジ
スライド 14:サハリンと北海道間のエネルギーブリッジプロジェクト
ご存知の通り、ロシアと日本の企業はすでに 1990 年代からロシアから北海
道への電力供給の様々な可能性を探っています。ロシアの代表が、特別セクシ
ョンでより詳細にこのエネルギーブリッジの現在の可能性についてお話ししま
す。これは、サハリンに総発電能力 3 ギガワットとなる既存の発電所の近代化
と新しい発電所を建設する話であり、発電された電力はその後 200 億 kw/時で

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の地下ケーブルによる対日輸出の可能性がみこまれています。長期的にはこの
発電能力は、サハリン及び東方統一電力システム社の電力システムが統合され
ることにより、本質的に増加できます。
プロジェクトの具体的なビジネス・プランについては、日本側の需要と要望
によって変わると理解しています。私たちはこの問題での皆様方のイニシアチ
ブを待っています。この件に関して本質的な問題についてお話しすると、現在
日本への電力輸入をおこなうにあたっての法律基盤がありません。したがっ
て、私たちが実際にこういったインフラプロジェクトを実行する場合には、な
んらかの決定をこの分野で採択しなければなりません。
勿論私たちは、北海道の地元の電力会社「北海道電力株式会社」が最近、再
生可能エネルギーの発電設備を活発に増強していること、さらにガスを使用し
た新しい大きな発電所の建設を準備していることを知っています。しかし、こ
ういった努力は地域の発電能力の増大だけを目指していて、2020 年代に引退
が計画されている北海道の古い石炭発電所の発電能力を補填するほどではあり
ません。
参考資料:
北海道電力株式会社は、北海道の独占電力会社。2015 年 6 月 30 日現在の
定格発電容量は 8.5 ギガワットで、内訳は石炭発電所 2.4 ギガワット、水力
発電所 2.2 ギガワット、原子力発電所 2.1 ギガワット、重油発電所 1.5 ギガ
ワットとなっている。2015 年後半で新しい大規模なガス発電所/石狩湾新港
発電所/(3 基、各 570 メガワット)の建設開始が予定されている。1 号機は
2019 年、2 号機は 2021 年、3 号機は 2028 年の稼動が計画されている。この
発電所は古い火力発電所の引退にともなって稼動される。
サハリンから北海道への電力供給は、日本の最北の島の電力供給の持続的安
定性を高めることにつながるし、また最終消費者にとっては電力価格が安くな
ります。
さらにもう一つの重要な長所があります。こういった形での電力供給によ
り、日本国内の大気中への炭酸ガス排出量を削減できますし、環境上クリーン
なエネルギーを手にすることになります。
長期的な観点から、さらにより野心的なプロジェクトがあります。これはロ
シアの極東地域から人口の多い、産業が発展した本州に電力供給するプロジェ
クトで、こういったプロジェクトについても提案することは可能だと思ってい
ます。
電力エネルギーにおける協力には、日本企業によるスズンスコエ産出地、タ

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グルスコエ産出地、ロードチノエ産出地といった新しい産出地に小規模の発電
所を建設する協力も含まれています。私たちは、今この瞬間でも電力購入に関
する長期契約に署名する用意があります。
成長のための空間について
優れた日本の戦略家であり、ビジネス・マネジメントの大家である大前研一
氏は、著作の中で「持続する緩慢な成長」は一種の経済スタグフレーションの
ようなものであるとして、その危険性を警告していました。大前氏は、これは
「本質的に経営判断のミスの可能性を拡大させ、その影響を深くし、修正のた
めの時間的な通路をせばめる」と書いていました。結論の一つの例として、大
前氏は国際拡張を、海外市場への進出を提案しています。
ロシアとの協力関係は、拡張の方針や日本の発展にとっての重要な促進剤に
なります。わが国の豊かな天然資源、日本とロシアの地理的な近さなどが、エ
ネルギー分野の協力の拡大によって、さらには露日の将来のエネルギーブリッ
ジの支柱構造をつくることによって、こういった可能性を生むのです。
スライド 15:世界のエネルギーバランスと石油需要予測
ロシア側からのこういった作業は、すでにおこなわれています。主要な貿易
パートナーを多角化するとの考えから、私たちはロシアのシベリアや極東にお
ける生産資産と輸送インフラを積極的に拡大しています。ロシアからアジア太
平洋諸国に対する石油の供給は、2005 年から 2014 年までで 4740 万トン増え
ました。
2014 年度中国に 3000 万トン、日本に 1170 万トン、韓国に 1010 万トン供
給しました。
私達はロシアの石油のアジア太平洋諸国への輸出拡大の可能性は、東シベリ
アと極東の資源基地が開発され、輸送インフラが発展するにつれ、2020 年ま
でに 8000 万トンまで増えると見込んでいます。供給の大部分は中国向けにな
りますが、しかし私達は中国だけでなく、他のアジア太平洋諸国、第一に日本
に私達のエネルギー資源の供給を増やしたいと考えています。
両国の関係の長期性と予見の可能性の原則に基づいて、今後も仕事をおこな
っていくつもりです。信頼と善隣友好関係の原則であり、政治的な方針よりも
経済の合理性が重要だと考える原則です。
恐らく、どこかで私達は勇気をもたなくてはなりません。最近の歴史から一
つの例を思い起こします。大企業でない「日本海洋掘削株式会社(JDC)」が
1976 年の露日協定にしたがって、サハリン北東大陸棚の産出地の探鉱に参加
しました。1977 年から 1983 年にかけてこの会社の支援で、チャイボ、アルク

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トン・ダギ、オドプトの 3 つの産出地が発見され、これらは後に生産物分与協
定「サハリン1」に入りました。この会社が業務を成功裡におこなったこと
で、日本コンソシアム「サハリン石油ガス開発株式会社(SODECO)」は「サ
ハリン 1」プロジェクトの実施では行列の最後尾でパートナーになったわけで
はありません。このサハリン 1 のプロジェクトの枠内で、ほぼ 10 年間で 7500
万トン以上の石油が生産されました。この石油のほとんどが日本に供給されま
した。
結論
大前研一氏は著書で、「国際舞台では基本的な変化がおこっており、それは
東西対立、南北対立やその他の単純化したコンセプトでは説明できません。効
率的な経済制限をおこなうのであるなら、過去の幻想や概念を捨てる必要があ
る」と書いています。
大石油会社の社長として、将来の発展のために効率的な協力関係の場の拡大
を支持しています。
日本に「蒔かぬ種は生えぬ」という諺があります。将来大きな経済的結果を
えるためには、共同プロジェクトの仕事を今すぐに始めなければなりません。
これで基調講演を終わります。
ご清聴ありがとうございました。