ここで若干忘れられた感のある「世界企業」のコンセプトを思いおこすこと
にします。このコンセプトの基礎にはシンプルな公式があります。それは「安
いところで原料を買いなさい、最も安い給与のところで品物をつくりなさい、
その品物の価格が最も高いところで品物を売りなさい」です。
現在、ロシアの東方地域は世界企業理論の観点から、少なくとも石油精製と
石油化学分野において最も優れた場所のひとつです。ここには原料があり、安
価な質の高い労働力があり、近くにはロシアとアジア太平洋諸国という大きな
物が不足している市場があります。しかも、ロシアのこの地域はリクレーショ
ンの面での可能性も有しています。
ロシア連邦のエネルギー分野の投資の魅力が、ルーブルの交換レートの柔軟
なメカニズムの中で形成されていることを強調したいと思います。炭化水素資
源の世界価格が本質的に下がっている状況で、このことはロシアの石油ガス分
野に一定の有利な点を作り出しています。特にロシアの石油ガスの新規プロジ
ェクトの競争力をコスト面で保証しています。
さらに石油精製分野で日本の皆様にとって興味深い可能性が、もうひとつあ
ります。それは生産プロジェクトへの資本参加です。上流部門における権益の
購入は、石油価格の変動に関するリスクヘッジとなりますし、さらに原料市場
で価格が不安定で変動する状況下での、ビジネスの持続的発展を意味します。
このような方法を日本の石油精製会社がおこなっていることを知っています。
参考資料:
日本の大きな石油精製会社 2 社、JX 日鉱日石エネルギー株式会社と出
光興産株式会社は、自社の石油精製工場から本質的に遠い場所である北
海やカナダ、アメリカに石油ガス生産資産を持っています。
JX 日鉱日石エネルギー株式会社はマレーシア、カナダ、イギリス、
アメリカ、オーストラリア、アラブ首長国連邦に炭化水素生産企業の権
益をもっています。2014 年度 JX 日鉱日石エネルギー株式会社は、特に
マレーシアとカナダにおいて 570 万石油換算トンを生産しています。日
本におけるこの会社の石油精製能力は、約 7000 万トンです。
出光興産株式会社は、北海、ベトナム、カンボジアの石油生産会社の
権益を持っています。2014 年度の総生産量は、150 万石油換算トンで主
たる生産地は北海です。日本における出光興産の石油精製工場の石油精
製能力は、2300 万トンでした。これらの企業の決算報告書から、生産
量が少ないにもかかわらず、2013 年から 2014 年にかけてのこの生産活
動がこの 2 つの企業に営業利益の主たる利益をもたらしていたことがわ
かっています。