1-1.背景
- ダイオキシン類の各種発生源からの排出状況は明らかではないが、ごみ焼却炉からの排出が総排出量の8~9割を占めているとの報告がある。
- ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類が周辺住民に不安を与え、社会問題化しており、ごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出削減が緊急の課題となっている。
1-2.これまでの取組の経緯
- 平成2年12月に「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン検討会」によりガイドライン(以下「旧ガイドライン」という。)がとりまとめられ、これに基づき厚生省は地方公共団体を指導してきた。
1-3.このたびの取組
- 平成8年6月に厚生科学研究班によりダイオキシン類の当面の耐容一日摂取量(TDI)を10pg-TEQ/kg/day と提案する中間報告がとりまとめられた。
- 平成8年6月に厚生省水道環境部に「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」を設置し、このTDIを新たな評価指針とし、対策を検討した。
1-4.今後のごみ処理体系
1) |
ごみの排出抑制、リサイクルによる焼却量の削減 |
2) |
全連続炉における適切な焼却(排出ガス対策、ごみ処理の広域化、間欠炉の廃止) |
3) |
溶融固化等による焼却灰・飛灰の適正処理 |
4) |
最終処分場対策
|
1-5.対策の効果の見込み
|
現 状 (1996年) |
緊急対策 実施後 |
恒久対策 |
5年後 |
10年後 |
20年後 |
ダイオキシン類 排出総量 (g-TEQ/年) |
4,300 |
2,800 |
590 |
100 |
20 |
削減率(%) |
- |
35 |
86 |
98 |
99.6 |
2-1.緊急対策の判断基準
- 次の摂取量の合計が当面のTDIの範囲内となるような排出濃度を判断基準として設定
1) |
通常の一般的な摂取量(安全性を高めるため、個人の嗜好、食習慣の差を考慮して平均値よりも大きな値を設定)
|
2) |
ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類によって増加するおそれのある摂取量
|
|
・大気の吸入による摂取: |
大気中濃度が増加すると、周辺で生産される食品に含まれるダイオキシン類も同じ割合で増加し、これを摂取すると仮定
|
|
・大気から食品を経由した摂取: |
大気中での拡散倍率を200,000 倍と仮定(安全性を高めるため、比較的拡散しにくい気象条件を設定)
|
- 以上の考え方のもとに、ごみ焼却施設周辺の最も影響を受ける地点においても摂取量の合計が当面のTDIに達するおそれのないよう、排出濃度80ng-TEQ/Nm3を判断のための基準として提案。
2-2.恒久対策の基準
- 緊急対策の判断基準値を下回った場合でも、ダイオキシン類の排出量を技術的に可能な限り削減することとし、環境庁の「ダイオキシンリスク評価検討会」において平成8年12月に示された「健康リスク評価指針値」(5pg-TEQ/kg/day。人の健康を維持するための許容限度としてではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として人の暴露量を評価するために用いる値)をも参考としつつ、恒久対策を実施。
- 今後建設される新設のごみ焼却炉については、最新の技術を盛り込むことにより、技術的に実施可能な目標として、ダイオキシン類の排出濃度を0.1ng-TEQ/Nm3以下とする。
- 恒久対策の基準
炉の種類 |
区 分 |
基準値
(ng-TEQ/Nm3) |
全連続炉 |
新設炉 |
0.1 |
既設炉 |
旧ガイドライン適用炉 |
0.5 |
旧ガイドライン非適用炉 |
1 |
准連続炉
機械化バッチ炉
固定バッチ炉 |
既設炉 |
連続運転 |
1 |
間欠運転 |
5 |
3-1.緊急対策の実施
ダイオキシン類の排出濃度の測定結果を踏まえ、排出濃度が80ng-TEQ/Nm3を超える施設にあっては、至急具体的な対策を検討し、実施。
【対策例】 |
1) |
燃焼管理の適正化 |
|
2) |
間欠運転から連続運転への変更 |
|
3) |
施設の改造 |
|
4) |
施設の休廃止 |
- 緊急対策の実施後には、再度濃度を測定し、講じた対策の効果を把握。
3-2.恒久対策の実施
3-2-1.ごみの排出抑制とリサイクルの推進
- ごみの排出抑制、リサイクル等により焼却量そのものをできるだけ減らす。
3-2-2.焼却施設における対策
・ |
燃焼の安定化、高度な排ガス処理等によるダイオキシン類の排出削減の実施可能性、熱エネルギーの有効利用等の観点から、全連続炉による焼却が適切。
|
・ |
燃焼管理の適正化、施設の改造等の対策を効果的に組み合わせて継続的に実施。 |
・ |
准連続炉、機械バッチ炉及び固定バッチ炉では、運転方法の工夫により連続運転が可能な場合は、24時間の連続運転を実施。
|
3-2-3.焼却灰・飛灰対策
・ |
焼却の過程におけるダイオキシン類の発生防止 |
・ |
灰の溶融固化等の高度処理によるダイオキシン類の分解 |
- 焼却灰、飛灰が埋め立てられる最終処分場における対策
・ |
最終処分場での焼却残渣の飛散防止措置 |
・ |
浸出水による公共用水域及び地下水の汚染防止措置
|
3-2-4.ごみ処理の広域化
- 小規模な市町村にあっては、発生するごみの量が少ないために、全連続化が困難。隣接市町村が連携して、一定規模以上の全連続炉への集約化(広域化)を総合的かつ計画的に推進。
- 都道府県が広域化計画を策定し、広域化を推進。
3-3.対策のフォローアップ
- 原則として年に1回ダイオキシン類排出濃度を測定し、測定結果は積極的に公表。
- 最新の知見、対策技術、排出実態について継続的に情報収集を行い、必要に応じて対策の見直し・強化。
┌─ 施設運営 ─┬─ 適正負荷 ・ ごみ質の均一化、適正負荷運転
│ ├─ 連続運転の長期化
│ └─ 定期測定の励行 ・年1回のダイオキシン類濃度測定
│
├─ 燃焼設備 ─┬─ 燃焼温度 ・800℃以上(850 ℃以上の維持が望ましい)
│ ├─ CO濃度 ・50ppm 以下(O212%換算値の4時間平均値)
│ └─ 安定燃焼 ・500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない(5回/hr以下)
│
├─ ガス冷却 ─┬─ 廃熱回収ボイラ ・ボイラ伝熱面上のダスト堆積を抑制
│ 設備 │ (全連続炉のみ) ・ボイラ出口排ガス温度の低温化
│ ├─ 炉頂型ガス冷却室の改造
│ └─ 空気予熱器 ・空気予熱器内のダスト堆積を抑制
│
└─ 排ガス ─┬─ 電気集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200~280℃)
処理設備 │ ・ろ過式集じん器に交換
├─ ろ過式集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200℃未満)
└─ マルチサイクロン・ろ過式集じん器に交換
┌─ 施設運営 ─┬─ 適正負荷 ・ごみ質の均一化、適正負荷運転
│ ├─ 連続運転の長期化
│ └─ 定期測定の励行 ・年1回のダイオキシン類排出濃度定期測定
│
├─ 受入れ ─┬─ 十分な容量のごみピット ・自動ごみクレーンの設置
│ 供給設備 └─ 前処理装置、供給装置の設置
│
├─ 燃焼設備 ─┬─ 燃焼温度 ・850℃以上(900 ℃以上の維持が望ましい)
│ ├─ 滞留時間 ・2秒以上
│ ├─ CO濃度 ・30ppm 以下(O212%換算値の4時間平均値)
│ ├─ 安定燃焼 ・100ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない
│ └─ 連続監視 ・温度計、CO連続分析計、O2 連続分析計の設置と監視
│
├─ ガス冷却 ─── 廃熱回収ボイラ・燃焼室をボイラ水管壁で構成
│ 設備 ・ボイラ伝熱面上のダスト堆積を抑制
│ ・ボイラ出口排ガス温度の低温化
│ ・排ガスのボイラ通過時間の短縮化
│
└─ 排ガス ─┬─ 集じん器 ・集じん器入口排ガス温度を低温化(200℃未満)
処理設備 ├─ 吸着除去法 ・粉末活性炭の吹き込み
│ ・活性炭系吸着塔の設置
└─ 分解除去法 ・酸化触媒等によるダイオキシン類の分解
- RDFを燃焼させる設備の設置・運営に当たっての対策
・ |
RDFの保管については、水漏れ等による変質が生じないよう留意 |
・ |
焼却炉、ガス冷却設備、排ガス処理設備計は、ごみ焼却炉と同様の対策を講ずることとし、排出の基準も同様。
|
7-1.灰処理設備
- 排ガス対策による、焼却残渣に含まれるダイオキシン類を抑制。また、焼却灰、飛灰を対象とした溶融固化処理等によりダイオキシン類の削減が可能。
7-2.最終処分場における対策
- 廃棄物の投下時、埋立作業時における飛散の防止。
- 浸出水処理設備により浮遊物質除去を徹底(当面、処理水のSS濃度10mg/l以下)。
- ダイオキシン類をできるだけ発生、排出しないよう施設の構造、運営・管理に加え、以下の対策が有効。
1) |
排ガス漏出の防止 |
2) |
作業室等における換気・空調 |
3) |
焼却灰、飛灰の飛散防止 |
4) |
発じん作業時の防じんマスクの着用 等 |
9-1.ダイオキシン類に関する調査研究
1) |
ガス化溶融等新たな焼却技術 |
2) |
ダイオキシンの発生メカニズム |
3) |
最終処分場に関するデータの収集及び対策の検討 |
4) |
環境中での挙動に関する調査研究 |
5) |
分析の精度管理及び簡易な分析方法の検討 |
9-2.ダイオキシン対策に資する関連分野の検討
1) |
RDF化施設の構造指針、RDFの品質基準 |
2) |
溶融スラグの品質基準 |
|