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電子立国はなぜ凋落したか 主な話題 日本電子産業の軌跡 日本電子産業 1985年と2000年に転機
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西村吉雄
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電子立国はなぜ凋落したか
2017年3月11日
西村吉雄
主な話題
● 日本電子産業の軌跡
● 通信,コンピュータ,半導体,テレビの栄枯盛衰
● 分業というイノベーションを日本企業は嫌い続ける
● 国への依存と国の干渉
● 自動車産業と電子産業の融合
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3
日本電子産業の軌跡
資料:経済産業省機械統計,財務省貿易統計
日本電子産業
1985年と2000年に転機
● 1970~1985:輸出主導の高度成長
● 1985~2000:鎖国市場で,内需主導の成長
● 2000年以後:市場が開国し,10年半減の衰退
● 国内生産金額は2000年の26兆円をピークに,2015年
には約12兆円に激減
● 貿易収支は1985年の9兆円の黒字をピークに,2013
年に赤字転落。2015年は約1兆円の赤字
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西村吉雄
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主な話題
● 日本電子産業の軌跡
● 通信,コンピュータ,半導体,テレビの栄枯盛衰
● 分業というイノベーションを日本企業は嫌い続ける
● 国への依存と国の干渉
● 自動車産業と電子産業の融合
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1985年前後に起こったこと(1)
通信自由化
● 米国では1984年に通信市場が自由化され,日本では
1985年に電電公社が民営化された
● 同時期にディジタル化が完成し,ニューメディアなど
が実現するはずだった
● けれども,ほとんど同時に,携帯電話とインターネット
という大波が押し寄せて来る
● 自由化の際の予想とは違い,通信市場は携帯電話と
インターネットを軸に展開していく
6
携帯電話の加入者数と生産金額の推移
資料:総務省情報通信統計データベースと経済産業省機械統計
7
交換機と搬送装置の生産金額推移
資料:経済産業省機械統計
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西村吉雄
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米国では新興企業が続々登場
● 米国では1984年の通信自由化の後,AT&Tは情報産
業市場に,逆にIBMは通信市場に進出可能になる。
しかし両社の存在感は大きくならなかった
● 自由化後の新しい電子情報通信環境を活性化した
のは,マイクロソフト,インテル,シスコ,グーグル,ア
マゾン,アップル,クアルコム,さらにはフェースブック
などの新興企業群である
● 新興企業群はアジアのファウンドリやEMSと連携し,
グローバルな分業体制を構築する(後述)
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日本では旧電電ファミリーが
存在感を小さくしていく
● 日本の携帯電話は,最初は独自規格だったため「鎖
国の繁栄」が可能だった。規格が開国されると携帯
電話の国内生産は急速に縮小
● ISDNは短命に終わり,インターネットの普及が本格
化すると,交換機も搬送装置も生産が縮小
● 電電公社に通信機器を供給していた旧電電ファミリ
ーは,自由化後に存在感を小さくしていく
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コンピュータの生産,輸出,輸入
資料:経済産業省機械統計,財務省貿易統計
日本のパソコン:
鎖国のときは栄え,開国したら衰退
● 1981年にIBM-PCが発売され,その互換機が世
界標準となる。1980年代半ばには,世界市場で
はパソコンが汎用機を超える
● 漢字処理の関係で日本ではNECの「98」が主流と
なり,パソコンでも「鎖国」市場が形成される。汎
用機からパソコンへの転換も遅くなる
● 海外勢が漢字に対応し,加えてWindowsが登場
すると,日本でもパソコンの輸入が増え,国内生
産は減少していく
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西村吉雄
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0%
20%
40%
60%
80%
100%
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
シェア(%)
韓国
米国
日本
欧州
台湾
DRAMの地域別シェア
出所:湯之上「エルピーダとは一体何だったのか」,
JBpress,2012年04月05日,原データ:データクエスト
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安すぎると非難され,
やがて高すぎて売れなくなる
● 1980年代前半の日本製DRAMは高価格ではなかった。
米国半導体業界は日本製DRAMの価格をダンピングと
して提訴。品質の割に「安すぎる」とした
● 価格監視制度(Fair Market Value)が導入される。同じと
きに円高が始まり,ドル建て価格が上がる。韓国製品に
は価格監視が適用されなかった
● やがてメモリー市場が汎用機からパソコンに転換。汎用
機向けの日本製高品質・長寿命DRAMは「高すぎて」売
れなくなる
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1985年以後のDRAM市場は
パソコンが牽引
● コンピュータの主役が1980年代後半には汎用コンピ
ュータからパソコンに転換。したがってDRAMの最大
用途も,汎用機からパソコンに変わる
● DRAMへの要求が,信頼性(長寿命)より,安い製品
の大量供給に変化。パソコンは5年以上使われること
はまれ。長寿命は要らないとされた
● 韓国はこのDRAM市場変化に追随し,日本企業はつ
いていけなかった
[湯之上『日経マイクロデバイス』,2005年10月号,pp.50-59]
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テレビの生産と輸出入
資料:経済産業省機械統計,財務省貿易統計
アナログ放送停止
2011年7月

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分かっていたはずの「地デジ特需」終了
● 2007~2010年に日本のテレビ・メーカーは大型投資
● 2011年7月にアナログ放送の電波が停まることは早く
から予定されていた。「地デジ特需」は,その前に終
わるに決まっている。それなのに各社は,なぜ大型
投資を続けたのか
● 言い訳の一つに海外需要があった。「地デジ特需は
日本国内の特殊事情だ。海外需要が急になくなるこ
とはない」
● しかし日本からのテレビ輸出は,1985年以後は微々
たるもの
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カラーテレビの輸出推移
資料:財務省貿易統計
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カラーテレビとVTRの輸出推移
資料:財務省貿易統計
19
カラーテレビとVTRの輸出推移
円とドルの交換レートも併せて示した 資料:財務省貿易統計など
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1985年前後に起こったこと(2)
● テレビやVTRの対米輸出は1985年を境に急減し,復活
しなかった。半導体でも貿易摩擦が激化
● 東西冷戦の「終わりの始まり」──ゴルバチョフがソ連
の最高指導者になる
● 先進国が円高政策で合意(プラザ合意)──3年間で
240円から120円へ
● 米国の短期政策(レーガノミックス)の転換──「強いド
ル」の演出(ドル高)から赤字削減を優先(ドル安)へ
● 米国の長期政策(冷戦対策優先)の転換──日本の工
業力の支援・活用から,日本の工業力抑制へ
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1985年前後に起こったこと(3)
● 東西冷戦の「終わり」が始まる
● 中国とインドが本格的に資本主義経済に参加
● 1990年の東西冷戦終了後には,東欧,中国,インド
などが実質的に資本主義経済圏となる
● やがて20億人を超える低賃金労働者が出現。これら
の地域にハードウエア製造工場が増えていく
● 日本はハードウエア生産の適地ではなくなる
● 日本では間もなくバブル経済がふくらみ,やがてはじ
け,低迷が長く続くことになる
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主な話題
● 日本電子産業の軌跡
● 通信,コンピュータ,半導体,テレビの栄枯盛衰
● 分業というイノベーションを日本企業は嫌い続ける
● 国への依存と国の干渉
● 自動車産業と電子産業の融合
23
「ハードとソフト」「設計と製造」の分業
● 1980年代のなかごろから,世界の電子情報通信分野
では「ハードとソフト」「設計と製造」の分業が進む
● パソコン業界ではグローバルな水平分業が定着
● 半導体産業ではファブレスの設計会社とシリコン・フ
ァウンドリによる製造サービスの分業が進展
● 電子機器ではファブレスの電子機器メーカーとEMS
(Electronics Manufacturing Service=電子機器製造
受託サービス)による分業が進展
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西村吉雄
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iPhoneにみるグローバル分業
● iPhoneのメーカー(ブランドを持ち,製造者責任を負う)
は,米国のアップル
● ハードウエア製造を請け負うのは台湾のEMS鴻海精
密工業(フォックスコン)。ただし鴻海の工場は主に中国
本土内にある
● 日本人が購入する iPhoneは中国からの輸入となる
● iPhoneの液晶パネルはシャープが供給。相手は鴻海だ
が,物流としては,日本から中国への輸出
西村 吉雄 NISHIMURA Yoshio
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製造業の再定義
● 「ものづくり」への固執が日本では信仰的。しかし「も
のづくり」とは何か,そし製造業とは何か。ものづくり
や製造業の再定義が必要
● 「ファブレス・メーカー+製造サービス業」が電子情報
通信分野では世界の主流。製品ブランドと製造者責
任はファブレスの「メーカー」が持つ。ハードウエア製
造に従事するファウンドリやEMSは「サービス業」
● ファブレス・メーカーにとって空洞化は無意味。工場を
持っていないから,工場の海外移転はあり得ない
● ファウンドリやEMSは,顧客サービス向上のために世
界各地に工場を展開。これを空洞化と言えるのか
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設計,製造,ユーザーの関係の変化
電子情報通信分野では
設計と製造の分業に合理性がある
● 電子情報通信分野の製品のハードウエアの中核は
集積回路である。そこにはムーアの法則が働く
● ムーアの法則を,価格低下ではなく付加価値向上に
転化しようとすれば,それを受け持つのはソフトウエ
アだ。電子製品の内部では,ほとんど常にプログラム
内蔵方式の情報処理が行われているからである
● ハードウエアの低価格生産と,ソフトウエアによる付
加価値向上は,別の企業による分業のほうが合理的
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西村吉雄
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ネットワークの発達は産業構造を
水平分業の方向に動かしてきた
● Web(ネットワーク)の発達は取引コストを下げる
• 情報交換の速度とコストが,社内と社外で差が小さくなる
• パートナーを世界中に広げて選択することが可能になる
• 自社内に抱え込むより,社外から調達したほうが有利な局面が
増える
• 「自前主義から連携・協力へ」が時代の方向となる
● 「垂直統合から水平分業へ」の方向にネットワークは時代
を動かす
日本のエレクトロニクス企業は
分業を嫌い続けた果てに衰退
● 1980年代後半以後,世界の電子情報通信産業は,
設計と製造の分業をグローバルに展開
● 日本のエレクトロニクス関連企業は,世界の動向に
背を向け,設計と製造の分業を嫌い続ける
● 半導体でも電子機器でも,自前主義(ハードウエアの
自社生産)に固執。ファブレスにもならず,ファウンド
リにもEMSにもなろうとしなかった
● 結果的に小規模な一体化企業が何社も林立し,全体
として衰退に向かう
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新たな分業の実現はイノベーション
● 「われわれの利用しうるいろいろな物や力の結びつき
方を変えて,結合を新しくすること(新結合の遂行)が
経済を発展させる」とし,新結合の例として「原料ある
いは半製品の新しい供給源の獲得」をシュムペータ
ーは挙げる[『経済発展の理論』岩波文庫,1977年;原著は
1912年発行]。これがイノベーションの原典
● このシュムペーターの原義に従えば,新たな分業の
実現はイノベーションそのものだ
● 分業を嫌い続けた日本電子産業は,この分野で起こ
ったイノベーションを拒否し続けたことになる
31
技術革新はイノベーションではない
● 技術革新はイノベーションではない
● 研究成果はイノベーションではない
● 新たな分業の実現はイノベーションである
西村 吉雄 NISHIMURA Yoshio
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シュムペーターの原義に戻れば,

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主な話題
● 日本電子産業の軌跡
● 通信,コンピュータ,半導体,テレビの栄枯盛衰
● 分業というイノベーションを日本企業は嫌い続ける
● 国への依存と国の干渉
● 自動車産業と電子産業の融合
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1990年代以後,半導体分野では数え切れな
いほどの国家プロジェクトが創られた
出典:湯之上『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』文藝春秋社,2013年
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次々と「国有化」される電機産業
出典:大西ほか「ゾンビ企業を助け新産業を見殺す国 日本は資本主義
国家と言えるのか」『日経ビジネス』,2016年1月11日号,pp.24-29
国への依存と国の干渉が体質に
● 米国では電信・電話・放送に関して,民間人が技術を
開発し,民間人が事業を始めた
● 日本では外国から技術を導入し,事業は国(または
国に近い公共事業体)が運営
● 民間企業の役割は,国への通信機器・放送機器の納
入だった。納入機器の仕様も数量も国が決める
● この状況が100年続いたため,民間企業の国への依
存と,国の干渉が,業界の体質となる
● 「明治維新からの脱却」が,2014年の課題とされる[井
上友二電子情報通信学会会長,2014年3月5日の講演資料]
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科学技術への公的資金投入は
日本経済を活性化していない
● バブル崩壊後の経済低迷が続くなか,1995年に科学
技術基本法が制定された。この法律に基づき,科学
技術基本計画が1996年にスタートする
● 1996年の第1期科学技術基本計画以来20年,毎年4
~5兆円の公的資金が科学技術分野に投入されてき
た。累積すれば,そろそろ100兆円である
● けれども科学技術への公的資金投入が,日本経済を
活性化したという徴候は見出しがたい。この20年,日
本経済は低迷を続けている
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科学技術基本計画は社会主義的
● 20年続けても経済活性化に効果のない科学技術予
算は見直すべきである。総合科学技術・イノベーショ
ン会議の主たる関心は,学問振興よりも経済活性化
だろう。わざわざ名称にイノベーションを加えたほどな
のだから
● 第○期科学技術基本計画は名前からして,いかにも
社会主義的だ。かつてのソ連や中国では,第○次5
カ年計画が花盛りだった
● 5カ年計画でイノベーションが実現するなら,ソ連は
崩壊しなかったのではないか
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主な話題
● 日本電子産業の軌跡
● 通信,コンピュータ,半導体,テレビの栄枯盛衰
● 分業というイノベーションを日本企業は嫌い続ける
● 国への依存と国の干渉
● 自動車産業と電子産業の融合
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電子産業と自動車産業の貿易収支
資料:財務省貿易統計

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国営だった情報通信事業と
民営の自動車産業
● 日本では100年にわたり,電信・電話・放送は,国(ま
たは国に近い公共事業体)が運営。民間企業の役割
は,国への通信機器・放送機器の納入だった
● 2011年の「地デジ特需」も,国の意志によって意図的
につくられた。特需が終わったら,日本のテレビ産業
は崩壊してしまった
● これに対して自動車産業,特に乗用車産業は,民間
企業主体で成長してきた。クルマを買うのも作るのも
基本は民間人である
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価格圧力とソフトウエア圧力が
それほど大きくなかった
● 自動車産業には,ムーアの法則による価格圧力とプ
ログラム内蔵方式によるソフトウエア圧力が,電子産
業ほどには働かない。自動車の基本は「機械」だった
● 設計と製造の分業は,自動車産業には必然性がな
かった。ハードウエアとソフトウエアが別モジュールと
して独立している領域が,自動車では限定的
● 実は重電や白物家電でも,価格圧力とソフトウエア圧
力は電子産業ほどではない。日立製作所や三菱電
機は事業領域から「電子」を切り捨て,「電機」に戻る
ことによって業績を回復
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自動車の「電子化」による
自動車産業の「電子産業化」
● 自動車の「電子化」は進む。電気モーターを電子的に
制御──自動車はこういうものになりつつある
● マイクロプロセッサが大量に搭載され,プログラム内
蔵方式によるソフトウエア制御が激増
● 安全性,さらには自動運転の実現は,事実上ICT事
業。クルマはネットワーク端末になる
● これらの「電子化」によって,自動車産業が電子産業
のたどった道をたどることになるおそれ,ないとは言
えない
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パリ協定後の自動車を制約するのは
石油ではなく,CO2と自動運転
● 自動車の使うエネルギーは大きい。日本では全エネ
ルギーの4分の1を自動車が消費する。これは全電
力に等しい。自動車の燃料は,今はほとんど石油
● パリ協定後の自動車を左右するのはCO2排出量と自
動運転である。「石油は使い切れないほどある」「日経
テクノロジーオンライン,2016年6月15日]
● もはや自動運転開発は不可避。自動運転車の駆動
系は電気になる。これにCO2排出制限が加われば,
電気自動車に向かわざるを得ない
西村 吉雄 NISHIMURA Yoshio
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電気自動車へのシフトが加速
● ディーゼル主体だった欧州車が,パリ・モーターショー
2016でEV(Electric Vehicle=電気自動車)へシフト
● 純粋のEVには慎重で,ハイブリッド中心だったトヨタ
が量産型EVの投入を発表。マツダなど,EVに距離を
おいてきたメーカーも参入へ
● 中国は安価な電動バスやEVを量産。大気汚染対策
としてもEV重視。蓄電池の生産シェアでも世界一
● なおトヨタの燃料電池車の駆動系は電気。燃料電池
は発電機として機能。日産の新型車はエンジンを発
電機としてだけ使用し,駆動系は電気とする
西村 吉雄 NISHIMURA Yoshio
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自動運転による自動車産業の変化
● 所有から使用への決め手は自動運転
● 高齢者運転に悩む過疎地自治体の自動運転を切望
● 無人自動運転に対する法制度の壁は厚い。けれども
世界では100万人以上が自動車事故で死んでいる。
事故が減るなら,結局は導入されるだろう。保険会社
の動向が鍵を握る
● 自動車関連企業の合従連衡が,IT企業やAIベンチャ
ーなどを含め,グローバルに進む──自動運転シス
テムの開発は財務体力が強くないと担えない。開発
投資を回収できるまでの時間が長いからである
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所有(モノ)から使用(サービス)へ
● タクシー業界の変化が進行中。たとえばUberは白タ
クをネットで組織化してユーザーに好評
● カー・シェアリングの普及が急。乗り捨てを自由にで
きるか。自動運転への期待大
● 無人の自動運転が実現すると,カー・シェアリング,レ
ンタカー,タクシーの区別がなくなる
● 数十年後の究極の姿:無人タクシー+趣味として運
転を楽しむクルマ
● 「所有から使用へ」が本格化すれば,自動車数は減
少。エネルギーや環境に好影響。自動車産業は激変
47
このごろ都にはやるもの
48
資料:日本経済新聞電子版

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西村吉雄
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自動車は100年ぶりの技術革新期
● 内燃機関による現在の自動車の基本構造は,20世紀
初頭に確立する。その基本構造がいま,根本から変わ
ろうとしている
● 21世紀初頭の現在,内燃機関,電気モーター,水素燃
料電池,あるいはそれらのハイブリッドなどがパワート
レーンの候補として競い合っている
● 人工知能やIoTが自動運転を実現しようとしている
● シェアリング・サービスの台頭は,クルマと人の関係,
あるいは自動車産業の構造を大きく変えるだろう
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電子技術は数十年ぶりの転換期
● ビッグデータ,人工知能,IoTはいずれも,広い意味で
は電子技術だ。電子技術は新時代を迎えている
● ムーアの法則が経済合理的でない例が増え始め,
post-Mooreと呼ばれる動きが顕在化してきた
● プログラム内蔵方式は人工知能チップには不向きとさ
れ,新たな方式が模索されている。この動きを post-
Neumannと呼ぶことがある
● ビッグデータ処理では,相関関係を帰納的に抽出する
ことが重視される。要素間の因果関係を演繹的に求め
てきた近代科学とは違う方向への展開である
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電子産業と自動車産業の融合
● ビッグデータ,人工知能,IoTはいずれも,広い意味で
は電子技術だ。これからの電子産業は,これらの新技
術によって牽引される
● そしてこれらの新技術はすべて,自動運転に必要な技
術である。新たな電子技術はすべて,自動運転の場で
試されることになる
● その意味で,これからの電子産業は,自動車産業によ
って牽引されることになるだろう。しかし逆に,自動車
産業は電子化され,過去の強みが維持されるとはか
ぎらなくなるだろう
51
52
ご清聴ありがとうございました