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のぞみの台車亀裂の件について、もうちょっとだけ詳しく調べてみた
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のぞみの台車亀裂の件について、もうちょっとだけ詳しく調べてみた

12月11日に発生した新幹線史上初の重大インシデントであるが、どうも気になったのでちょっと改めて調べてみた。


調べてみた理由はたった1つで、「今回の件が運用上の問題とは思えなかったから」である。


以前より私は様々な技術関連の講義やら講演などに参加してきたが、その中で頭の中に残っていた言葉があった。

それは「新幹線や特急車両の台車枠と呼ばれる存在は、目視可能な亀裂が発生してから16万km前後は運転最高速度で運転しても破断までに至らない」という話である。


今回の事故の後、改めて台車が公開され、専門家による検証や周囲の金属関係に詳しいものたちの話にむしろ違和感を感じたのだ。

それは「これは普通に蓄積された疲労限界を超えた金属疲労による破断だ」という話だ。

ちょっと待って欲しい。


車体ならまだしも「台車」がそう簡単に金属疲労による破断を起こすのか?

正直な所、鉄道系は特許出願が少ない事情があるため私はそこまで詳しくはないのだが、少なくとも過去そんな事例で今回のような事故が起こったという話を聞かないので違和感しか感じない。


だからこそちょっとそこいらの技術関係の文書を漁ってみたが、やはり「16万km」という話は記憶違いではなかった。

また、さらに言うと「運用上の問題があった」という話については「あまりにも非現実過ぎる」というのもわかったので後述していこうと思う。


鉄道総合研究所と新日鉄住金などによる鉄道の台車の疲労設定における評価書というか技術書が見つかったのである。


その内容を簡単にまとめると、


・連続高速走行を続ける車両の台車は鋼製が好ましい。

・これによる重量の軽減は今後も課題となっていくだろう。

・軽量化を目指してアルミニウム合金を導入したいが現状極一部の部分にしか使えない。

・亀裂が生じた場合の耐久性について。(疲労度設定のための実証試験)


特に4番目が今回の件と密接に結びつく点である。

新日鉄住金と鉄道総合研究所は今後の速度アップのための台車の開発も目的とした、日常的に行われている試験と台車や部品交換に対する疲労度の設定がどのようにして行われているか解説していた。


そこでは下記のことが書かれていた。

・現在新幹線などの国産の高速鉄道向けの台車は基本的に3メーカーが製造しており、新日鉄住金は住友重工業が製造する台車の素材を提供している。

・3メーカーの品質はほぼ均一であり、評価試験で顕著な差が出ることは無い。

・その上で、寿命設定は「JIS規格を満たした素材」から算定したものを安全係数を設けた上で詳細に設定しつつ、評価試験を日常的に行っている。

・現在のJRなどで用いられる特急型車両と、新幹線などの高速鉄道の台車は、計算上「数センチ単位」の「目視できる亀裂」が生じてから、「約16万km前後までは絶対に破断しないよう計算された上で設計されている」



なぜ16万kmという設定理由は不明だが、少なくともそれなりに長い距離であるのは間違いない。

まあ「破断したら最悪脱線」なことを考えたら、「それぐらい余裕があってはじめて人を乗せることが許される」ということではないだろうか。

ただし新幹線の場合と特急車両という場合ではやや状況が異なる。


なぜなら、特急車両は1日で多くとも1000km前後しか使われないが、新幹線は5000km~6000km前後と長大な距離を1日の運用にて走行する。

よって新幹線の方が確かにそういう状況には陥りやすい。

16万kmというと一般的な特急車両の場合は半年はそこまでに陥らないわけだが、おそらくこれが台車における「車両検査」の設定日の起算となるのは容易に推察できる。


この計算だと「目視できる亀裂が生じてから約1月」で新幹線の台車は重大インシデントが起こった今回のような状況にまで至るわけだが、本当に1月放置されたのだろうか?


なので私なりに車両検査についての状況について調べてみたが、JR東海が出している資料を見るとそんな事は無いことがわかる。


通常、車両検査の場合、他のローカル特急と違い、新幹線は「台車と車体」を一旦切り離して個別に車体を検査するが、これは数日に1度。(概ね2日1度と国交省に検査期間についての文書を提出している)


台車自体の詳しい検査は18ヶ月~60万kmに1回ということだが、それは「完全に分解しての検査」であり、最低限の検査はほぼ2日に1回は確実に行われている。


この「仕業検査」と呼ばれる2日1度の作業の際、台車は「交換」されているのだ。

効率的な運用を目指した上でそのようなことが行われているが、新幹線の場合、台車をはずして長時間も台車と車体を分離したまま放置しているのは非効率なため、台車と車体は簡単に取りはずしできるようにしており、文字通り交換してしまう。


レーシングカーでいうタイヤ交換をシャーシごと行っているようなものだが、交換した台車は車輪を削ったり、各部に対して亀裂などが生じていないが超音波検査などが行われる。


ようは何が言いたいかって「同じ台車を連続使用しない」

よって連続1ヶ月も酷使する前に現在の運用体制ならば、JR西とJR東海、JR九州は少なくとも同じ方法で日常的な車両検査を行っているため、「見つからない」というのはあまりにも非現実的すぎる。


なぜならば、超音波検査には特殊な装置を用いており、匠の技が発揮されるというようなヒューマンエラーが発生しないような運用システムを構築しているからだ。


よって筆者はこれらの状況から「運用上の問題」は「当日、すぐさま車両点検を行わなかった」という部分以外に無いのではないかと思っている。


問題はここからだ。

実は新日鉄住金、鉄道総合研究所の双方は「16万km以内に破断する事例がある」という報告レポートを出していたりする。

それも画像付で。


これはどういうことが原因によって発生するかというと大きく分けて2つ提示していた。

すでに上に列挙した話から1つは予想はつくと思うが……


1.JIS規格を満たしていない素材の剛性不足によるもの

2.溶接不良


1はもう何が言いたいかわかると思うが、まずは2について説明したいと思う。

台車は通常、人の手によって溶接された鋼板が用いられている。


これぞ匠の技が発揮された「産業大国日本」を象徴する溶接技術によって組まれたもので、技術品と呼んでもよいぐらいの精度で作られており、「1mmズレたら失敗」と言われるほどの信じられない高精度な溶接がなされたものであるのだが、やはりどうしても「溶接不良」という歩留まりとも言うべきモノは発生するらしく、そういったものは計算よりも大幅に早く亀裂が進行してしまうことが評価試験の時点でわかっている。


これが大体「6万~7万km前後」ということだが、そんな溶接不良品でも最低限2日に1度の検査までには破断せずに保つようだ。


亀裂は「溶接した部分」または「溶接した部分付近」ということで「あれ?」と思う疑問がわいてくるが、それは後でまたまとめるとして、次に1についてだが、


JIS規格を満たさない素材の場合、JIS規格より10%劣ると亀裂の進行は4乗の速度で進行するらしく、4万km前後で破断するらしい。


「あっ(察し)」である。


問題はここからだ、どうやらこれまでの評価試験で行われてこなかったことがある。

「溶接不良+JIS規格を満たさない素材が一体どれぐらいの距離で破断までに至るのか」


これについて新日鉄住金や鉄道総合研究所などは「JIS規格以下のモノが用いられることはありえない」と一蹴してしまっていた。

そりゃそうだ。


元来より信頼性一辺倒で成り立つ住友系企業がそういう状況に対し、「ありえない」と主張するのは至極当然。


この手の素材では国内シェアトップの新日鉄住金はJIS規格以下の製品は厳正に処分しているのは有名。

だからこそ価格も高いが、「新幹線に使うと長持ちする分コスト削減になる」と従来より重用されてきた背景がある。


これは余談だが、こういった製品の品質のさらなる向上により信頼性が上がったことで、実は今年ある改定が行われていたことはあまり知られていない。ニュースにも殆どならなかったが、技術系では随分話題になったことがある。


こっちは事故とはほぼ無関係の改訂であるはが、実はJR東海は平成29年4月に、国交省に「交番検査について従来よりも検査期間を若干延ばす規定の変更届」を提出し、国交省に認められた背景がある。

従来は「走行距離3万kmまたは30日」とされた交番検査を「信頼性の大幅な上昇と各種試験の結果」から「走行距離8万kmまたは45日」とした。


交番検査というのは「電気系統」や「ブレーキ関係」「パンタグラフなどの検査」といった部分の電気系を中心としたものであり、これの期間を昭和39年の開業以来、初めての改定を行い、JR東海に続きJR西やJR九州なども追随した。


交番検査はあまりにも内容が異なるため今回の件とは無縁とほぼいいきれるが、むしろ近年では「製品品質の向上」によって点検周期は伸びる傾向にあったのだ。


だからこそ今回の問題はJR東海にとっても痛手であろう。

何しろJR東海は「今後も品質向上により、点検周期を伸ばしてコスト削減をしたい」という思惑があったからだ。


問題を起こしたのはJR西だが、車体はJR東海も同じものを使う上、検査方式が同じ以上、点検に問題があると疑われればJR東海の努力は無駄になる。


また、これらの品質向上のために鉄道総合研究所なども交えて日夜評価試験を行い、開発に力を入れていた住友系企業にとってもダメージだ。



だが問題は「今回の件で問題を起こした車体の台車は従来より製品品質の向上にひたむきであった、新日鉄住金の素材ではない」ということ。

川崎重工が製造したというが、そのための素材を卸したメーカーはまだ判明していない。


どうも事故からすぐに「川崎重工」と名前が出た背景には、川崎重工がいいか悪いかはさておき、事故が判明した直後は3メーカーの名前がしきりに出ていたことが関係している気がする。

やはり企業としてはプライドがある以上、問題を起こしていないなら同列に語られるのは嫌だろうなとは思った。


ただ「川崎重工の製造に問題があった」と言われると「?」である。

筆者からすると「鋼を用いて加工することに関しては川崎重工は国内でも屈指の技術力を持つ企業」という認識があり、特に昨今のバイクにおいては「NinjaH2」といった、他社には絶対真似できないような「鋼のフレーム」を作っているような会社が、そんなミスをするだろうか?と思ったのだ。


そこで改めて神戸製鋼の件を調べてみたが、神戸製鋼の件で彼らが偽装した鋼系の素材のうち、最もJIS規格から程遠い品質のものはどれぐらいの性能低下がいたのかについて調べてみた。


一応言うと私は「神戸製鋼の仕業か!」なんて思ってはいないが、川崎重工とのやり取りがあったのは事実だし、また「神戸製鋼以外もやらかしたのではないかと思っている人間」なので、やらかした上でデータを公開してくれた神戸製鋼のものを参考にさせてもらった。


それを見ると「最も酷い鋼板ではJIS規格より23%も強度が低い」ということがわかった。


私はこの話を見てなぜだかカチッとパズルのピースがハマッた気がした。

そこでちょっと金属関係に詳しい者に鉄道総合研究所と新日鉄住金の強度計算式で簡単に「JIS規格を23%下回る素材で台車枠を作った場合の疲労進行速度」を算出してもらい、数センチの目視できる亀裂からどれぐらいで破断まで生じるか簡単に計算してもらったところ「約1万km」という数値がでた。


「約1万km?」


この時点で筆者は脳内で勝手に盛り上がっていたが、今回の状況も合わせて筆者の脳内を文章に表すと、


まず今回発生した車両だが、2日前の「仕業検査」では問題は出ていないらしき話がすでに判明している。

そこから走行したのが当日までに約7000km~8000km。


もし仮に「前日、亀裂を見落としていた」状況からの場合で、「溶接不良」が発生していなかったとしても「JIS規格より2割下回る素材」が使われていると今回の状況と同じレベルの破断しかねない状況になることが簡単な計算でわかった。


また、「後3cmしか残っていない」ということだが、おそらく破断までは1000km前後は走行可能と思われるのでほぼ計算と合致する。


よって今回の事故において筆者は「台車枠の鋼材がJIS規格を満たしていたのかどうか」をまずはじめに調べるべきだとこの場において進言する。


詳細な計算はなろう読者の中でも理系のプロのみなさんが上記に書いた内容からレポートを探してもらい、自分たちで計算してもらうとして、あんまり数字が得意ではない筆者でもちょっと調べてみたらこんなことがわかったのだ。


今回の件で思うことはやっぱ「表面上のニュース」だけで判断してはいけないなという事。

気になったら徹底的に調べてみれば、それなりの情報は集まってくる。


世間ではしきりに「JR西」ばかり悪者にされているが、JR西はこれまでの評価試験の結果を見ていたら「今日1日ぐらいは保つだろ」と思っても不思議ではない。


だって総合研究所などが出したレポートでは「1日は絶対に保つ」とあるし、その前の段階での点検でも問題が確認されていないもの。


でもそれは「安全神話」の裏に潜む「産業大国日本としての品質とプライド」という2つのものがあって初めて成立していたわけで、「JISより2割も品質が悪い」モンが平気で出回っていたことがわかった以上、件の会社である神戸製鋼以外にも同じことをやっていたら「安全神話」なんてまやかしになるということだ。


もちろん今回の問題は「溶接不良」という可能性もあるが、「溶接不良があっても2日に1回の点検までは保つ」ように設計されている以上、やはり私は「素材の耐久不足による事故」を疑う。


だってよ、今までそんな事例なかったんだぜ?

そして、新幹線の点検自体はシステム化されていて「ヒューマンエラー」が極めて起こりにくくなっていて、特に「最も重要な装置」に分類される「台車」なんて人の手が殆ど入らないような検査体制なのに、本当に「1月以上も亀裂を見逃して破談に至った」なんてありえるかな?


そっちの話が出てきたほうが逆に怖いが、なんというか、JR西の社長の謝罪会見の時の顔がまさに「やるべきことをきちんとやってきたのにこうなった」というような感じでいたたまれなくなったよ。


今後実態解明がなされるとは思うが、ただの特許関連の人間で周囲から「視点がズレてる」といわれる立場の人間がちょいと調べてみましたなんて話。


最後にちょっと薀蓄。

鉄道関連は特許出願が少ない。


その理由について説明する。


理由は鉄道の場合、競合するということが殆どないから。

基本的に工業の場合、「競合他社」というのがあるが、鉄道の場合は製造メーカーが決まっており、ほぼ同一区間を走るような路線でも車両は同一メーカーのものなんて事がある。


車両製造などにおいて競争関係というのが無いんだよね。


だから基本的に「企業秘密ノウハウ」として隠してしまう。

理由としては特許は公開情報なんで、全世界に公開するものである一方、特許は「その国ごとに保護する」という状況があるため、一度公開した上で他国で出願しなかったという事になると容易に技術が盗まれるわけだ。


そして鉄道なんかは「国家単位」で熾烈な争いが繰り広げられているわけだから、「特許」なんかにする旨みなんて殆どない。

一応「出願」がされないわけではなく、なぜかパンタグラフ関係だけやたら多いが車体関係などは殆ど出願されない。


こういうのは秘密にしておくから優位に立てるのであって、なんでもかんでも鉄道系技術を出願する中華人民共和国の場合は「他国の技術を購入して盗んでそれを公知にすることで他社の出願を妨害しつつ」「特許化したら他国へ特許侵害として訴えよう」というあくどい野望があってそのような行動をしている。


だが日本もドイツもその他も基本的に殆ど出願しないのは鉄道とは「国家的事業」であり、戦闘機やミサイルといったモノとはまた別の「国の技術的な意味での国宝」だからだ。


そういうのはね、特許にしちゃいけないんです。

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