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(独)日本原子力研究開発機構の 高速実験炉「常陽」の役割と 今後の必要性に関する検討報告
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(独)日本原子力研究開発機構の
高速実験炉「常陽」の役割と
今後の必要性に関する検討報告書
2009 年 4 月
「常陽」利用検討委員会

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目 次
報告要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1. 炉内干渉物対策について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1.1 炉内干渉物の発生経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1.2 「常陽」再起動に向けた復旧方法と計画 ・・・・・・・・・・・・ 8
1.2.1 再起動に向けた復旧方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1.2.2 再起動に向けた復旧計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1.2.3 炉内観察・復旧により得られる技術的成果 ・・・・・・・・・ 9
2. 「常陽」の役割と今後の必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.1 我が国の FBR 開発における「常陽」の位置付け ・・・・・・・・・ 13
2.2 「常陽」の技術的特長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
2.3 国内での照射データ取得の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
2.4 「常陽」と「もんじゅ」の役割分担 ・・・・・・・・・・・・・・・ 25
2.5 「常陽」再起動後の利用ニーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
2.5.1 FaCT プロジェクト・FBR 実用化に向けた燃料・材料開発 ・・ 27
2.5.2 FBR 開発を支える基礎基盤技術開発 ・・・・・・・・・・・・ 30
2.5.3 FBR 開発を支える人材の育成 ・・・・・・・・・・・・・・・ 32
2.5.4 FBR 開発に係る国際協力における「常陽」の必要性 ・・・・・ 34
2.5.5 外部照射ニーズへの貢献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
結 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
添付-1 「常陽」利用検討委員会の構成 ・・・・・・・・・・・・・・ 40
添付-2 審議の経過
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
「常陽」利用検討委員会(第 1 回)議事概要 ・・・・・・・・・・・ 42
「常陽」利用検討委員会(第 2 回)議事概要 ・・・・・・・・・・・ 45
「常陽」利用検討委員会(第 3 回)議事概要 ・・・・・・・・・・・ 47
添付-3 原子力政策大綱等の一部抜粋 ・・・・・・・・・・・・・・ 48
付録 「常陽」利用検討委員会 資料 ・・・・・・・・・・・・・・ 51
参考資料 「常陽」の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98
用語解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103

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報告要旨
「常陽」利用検討委員会において、(独)日本原子力研究開発機構(以下、「原子
力機構」という。)の「常陽」の役割と今後の高速実験炉・照射炉の必要性を検討
し、この結果を踏まえて「常陽」再起動の妥当性及び必要性を明確にするとともに、
再起動後の「常陽」の効果的な利用等に対して議論した。その結果、高速増殖炉(以
下、「FBR」という。)の実用化に向けた研究開発を主目的とした実験炉・照射炉は
必要であり、「常陽」は今後も以下の役割を有する必要不可欠な施設であることか
ら、干渉物対策を早急に進め、早期に再起動させるべきであるとの結論を得た。
・ FBR サイクル実用化に向けた燃料・材料開発
・ 設計裕度を把握し、合理的な設計に反映するための限界照射試験
・ 安全性・経済性の更なる向上のための新技術実証試験
・ 制御された先進的照射装置を用いた高精度な照射試験
・ FBR 研究者、技術者の育成 等
(1)委員会における検討結果
「常陽」の再起動に向けた復旧計画及び「常陽」の役割と今後の必要性に関する
委員会での検討結果の概要を以下に示す。
① 「常陽」の役割と今後の必要性
(i) FaCT プロジェクト・FBR 実用化に向けた燃料・材料開発
FBR サイクル研究開発(以下、「FBR 開発」という。)は国家基幹技術の
一つとして位置付けられ、我が国のエネルギー政策上の重要課題である。「常
陽」は高速実験炉として、国産技術による FBR の技術的成立性の実証、燃
料・材料の照射試験、炉心・プラント特性評価技術等、FBR 関連の基礎基盤
技術の蓄積等に大きな役割を果たし、これらの成果は原型炉「もんじゅ」の
設計・建設等に大きく寄与した。今後においても、「常陽」は、世界最高の
照射能力・技術・精度及び照射後試験施設を有することから、FBR サイクル
実用化研究開発(以下、「FaCT プロジェクト」という。)において計画して
いる高燃焼度概念の成立性評価試験、設計用データ拡充のための溶融限界線
出力照射試験、環境負荷低減のためのマイナーアクチニド含有燃料開発に係
る照射試験等の実施には欠くことのできない施設である。
「常陽」を再起動しない場合、「もんじゅ」及び海外炉での代替照射が考
えられるが、当面「もんじゅ」は発電プラントとしての信頼性の実証に優先
的に取り組む計画であり、FaCT プロジェクトで要求されている照射試験を
所期の計画どおり実施することは難しい。また、海外炉で代替する場合、相
手国の政策変更やコスト変動のリスク、燃料輸送の問題、試験の自由度の制

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約等の課題もあるため必要な照射データを計画どおりに取得できない可能
性があるとともに、国内で照射データを取得するメリットである「質・量と
もに充実したデータ」、「開発の計画的な推進と時間的な即応性」、「国内技術
の向上・蓄積」等がなくなり、FBR 開発に支障が生じるとともに、我が国の
国際的な技術的優位性及び競争力の低下が懸念される。
FaCT プロジェクト以降の FBR 開発においても、設計の合理化・高度化を
図りさらなる安全性・経済性等の向上、安全規制に係る照射データの拡充を
図る必要がある。特に、燃料設計手法の合理化や燃料製造公差の緩和のため
の照射試験、製造・再処理技術と連動した核拡散抵抗性向上に係る対応方策
の実証等が重要となる。
また、「もんじゅ」が高速中性子照射場として確立された後も、「常陽」と
「もんじゅ」がそれぞれの特徴を活かし、「常陽」では革新的な燃料・材料
の先行照射試験や、高精度な照射試験による基礎データの取得、「もんじゅ」
では集合体レベルでの性能の実証等、その役割を分担することで、実用炉開
発に必要な安全性・経済性等の向上に係る照射データを取得することが可能
となる。
(ii) FBR 開発を支える基礎基盤技術開発・人材の育成
FBR 基礎基盤技術開発においても、実験炉である「常陽」は試験目的に合
わせた柔軟な原子炉の運転・照射試験が可能であるため、革新技術の実証、
先進的・革新的プラント計測技術開発、炉心・プラント安全性評価のための
実証試験等に供することができる。また、高精度な照射条件評価技術や照射
条件の制御が可能な先進的照射試験装置を有しており、燃料・材料照射挙動
メカニズムの解明、新しい解析法等の導出・適用性検証が可能である。これ
らの技術開発を推進し、実機データの活用による研究の活性化を図ることは
「常陽」の大きな役割であり、人材育成や大学の原子力教育・研究の向上、
産業界の技術基盤の維持の観点でも、「常陽」の利用ニーズは高い。
(iii) FBR 開発に係る国際協力
国際的な視点では、第 4 世代原子力システムの研究開発に関する国際フォ
ーラム(GIF)等の FBR 開発に係る枠組みの中で、世界的にも数少ない高速
中性子照射炉である「常陽」は、我が国が国際競争力を備え、世界の FBR
開発をリードする上で貴重な研究施設である。
② 復旧計画を踏まえた「常陽」再起動の妥当性
「常陽」では 2007 年に発生した計測線付実験装置試料部と回転プラグの干
渉による燃料交換機能の一部阻害及びその後確認された炉心上部機構下面の
整流板等の損傷により、原子炉を再起動するためには、炉心上部機構の交換及
び干渉物である計測線付実験装置試料部の回収が必要である。

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これにより、「常陽」の再起動時期の目標は 2012 年度、復旧費用は約 35 億
円となるが、再起動後、順次 FaCT プロジェクトに必要な照射試験を実施す
ることによって、2015 年を目標とした実証炉の概念設計やその後の安全審査
に必要な照射試験データを取得でき、さらに、包括的アクチニドサイクルの国
際実証(GACID)計画等の国際協力にも我が国が主体的に貢献できる。また、
復旧対策を通じて進められる高速炉内の観察技術や保守・補修技術の開発成果
は、今後の実証炉及び実用炉の設計、保守・補修に活かせるデータとして貴重
である。
以上の結果より、「常陽」を再起動することが妥当であることを確認した。
(2)要望・提言
「常陽」の再起動にあたっては、原子力機構に対して以下を要望・提言する。
(ⅰ)「常陽」が我が国の FBR 開発のみならず、国際的な原子力システム開
発においても必要不可欠な施設であることから、「常陽」の運転が早期
に再開されるよう経営努力を行うとともに、関係機関はもちろんのこと、
地域、国民に対しても今回のトラブル、復旧に向けた対策及び今後の
FBR 開発における役割等に関する説明責任を果たしていくこと
(ⅱ)停止が長引くことによる FBR 開発への影響のみならず、社会・地元・
職員等への影響を考え、原子力機構全体の事業計画を踏まえつつ、十分
な安全確保対策を講じた上で、干渉物対策を効率的に早期に完遂するよ
う更に努力すること
(ⅲ)「常陽」の再起動後の運用にあたっては、実験炉である特長を活かし
て、迅速かつ信頼性の高い設計基礎・基盤データの継続的な提供が重要
であり、これらの基礎データと工学規模での経験を踏まえた研究成果を、
将来の FBR 設計に有効に活用できる生産性の高い実験炉となるように
取り組むとともに、公募研究や施設共用等の外部資金導入方策について
も今後検討すること

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緒 言
高速実験炉「常陽」は、FBR 燃料・材料開発のための照射試験、炉心やプラント
特性等の基礎データ取得、運転技術の蓄積や技術者養成、FBR 実用化のための革新
技術開発並びに国内外への高速中性子照射場の提供等の重要な役割を担ってきた。
この 30 年にわたる FBR 開発における「常陽」の成果は海外からも高く評価され、
2006 年に米国原子力学会よりランドマーク賞を受賞している。
しかしながら、2007 年 5 月 14 日に MK-Ⅲ炉心第 6’サイクル運転の終了に伴い
原子炉を停止した後、照射試験が終了した計測線付実験装置(以下、「MARICO-2」
という。)の保持部と試料部の切り離し作業を実施した際に、試料部の切り離しに
失敗し、本装置と回転プラグの干渉による燃料交換機能の一部阻害が確認され、そ
の後の炉内観察により、炉心上部機構(以下、「UCS」という。)下面の損傷が明ら
かとなった。
「常陽」を再起動するためには、燃料交換機能の一部阻害の復旧や炉心上部機構
の補修・交換等の対策が必要であることから、「常陽」再起動に向けた復旧方法と
計画の妥当性及び再起動の必要性、再起動後の「常陽」の効果的な利用について以
下の観点を踏まえて検討するため、原子力機構に各界の有識者から構成される「「常
陽」利用検討委員会」が 2008 年 12 月に設置された。
・FBR サイクルの実用化研究開発等に向けた国産技術開発と「常陽」の役割
・FBR 開発に係る国際協力における「常陽」の位置付け
・「常陽」における研究者、技術者の育成
・「もんじゅ」再起動後の研究開発等の役割分担
本報告書は、「常陽」利用検討委員会での検討結果を取りまとめたものである。

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1. 炉内干渉物対策について
1.1 炉内干渉物の発生経緯
「常陽」では 2007 年 5 月 15 日より第 15 回施設定期検査が開始された。5 月 28
日から 6 月 1 日の間に、照射試験が終了した計測線付実験装置(MARICO-2:図
1.1-1 参照)を炉心第 3 列の照射位置(炉心アドレス:3E3)から炉内燃料貯蔵ラ
ック(以下、「炉内ラック」という。)R16 に移動し、MARICO-2 の保持部と試料
部の切離作業が実施された。その後、6 月 11 日に回転プラグに燃料交換機を取り
付け、回転プラグを基準位置で下降させた際に、燃料交換機の新ホールドダウン軸
に荷重異常が発生し、調査のために炉内観察が実施された。炉内干渉物対策の経緯
を図 1.1-2 に示す。
集合体頂部等の観察結果及び UCS 下面の観察結果を図 1.1-3 に示す。これらの
観察により、MARICO-2 試料部と保持部が接続された状態で回転プラグを操作し
た結果、MARICO-2 試料部が炉内ラック上に突き出た状態で変形し、炉内干渉物
となっていることが確認された。さらに、炉内干渉物との接触により UCS 下面の
整流板が破損・変形していることが判明した(事象進展:図 1.1-4 参照)。なお、試
料部ハンドリングヘッドは MARICO-2 保持部に保持されていることが確認された。

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図 1.1-1 計測線付実験装置(MARICO-2)と試料部切り離し作業の概要
図 1.1-2 炉内干渉物対策の経緯

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図 1.1-3 主な炉内観察結果
図 1.1-4 試料部切離作業時の事象進展

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1.2 「常陽」再起動に向けた復旧方法と計画
「常陽」の再起動に向けた復旧方法・計画に関する原子力機構からの説明を受け、
以下の 3 項目について議論し、再起動の妥当性を確認した。なお、根本原因分析等
により、今回のトラブルの原因・教訓、再発防止対策を十分検討し、原子力機構内
で適切に情報が共有されることを要望する。
1.2.1 再起動に向けた復旧方法
「常陽」を再起動するためには、炉内干渉物となっている MARICO-2 試料
部の回収と、整流板等が変形した UCS の復旧が必要である。UCS の復旧方法
として、UCS の交換と補修について比較検討した。それぞれの概要を図 1.2-1
及び 1.2-2、両者の比較を図 1.2-3 に示す。なお、MARICO-2 試料部について
は、どちらの復旧方法にあっても、UCS を一時撤去した孔を利用して回収す
る計画である。
UCS を交換する場合、ナトリウムが付着した放射性廃棄物の保管が課題と
なるが、「常陽」では MK-Ⅲ冷却系改造工事において主中間熱交換器を交換し
た実績が有り、これに基づいて既設 UCS の保管方法が検討されている。一方、
UCS を補修する場合、UCS の放射化量が大きいことから、遮へいセルと変形
した整流板等を遠隔補修・検査する技術開発が必要となる。また、作業スペー
ス等を考慮すると、遮へいセルを設置するための建家が新たに必要となり、場
所の確保、費用と期間の問題とともに、設置のための許認可も必要となる。さ
らに、蒸着したナトリウムによる抵抗力により、引き抜いた UCS に損傷が生
じ、再利用できない可能性も否定できない。
以上のように、UCS を補修する場合には交換する場合に比べて、遠隔装置
の開発及び遮へいセルの設置等に伴い、費用が数十億円程度、期間についても
数年程度増加することが想定されることから、UCS を交換することにより復
旧する計画である。
図 1.2-4 に示すように、海外でも同様なトラブルを経験し、それを克服して
運転を再開している。「常陽」においてもこれらの実績を参考とし、「常陽」に
おけるこれまでの保守経験を踏まえて UCS 交換に係る技術開発を進め、交換
工事に伴うトラブルが生じないよう十分な安全対策および品質管理を講じた
上で、できるだけ早期に工事を完了して再起動することが肝要である。これら
の作業にあたっては、外部への安全上のリスクが生じないよう、十分な対策を
講じることが重要であり、放射性物質等の放散防止策、監視等が実施される計
画であることを確認した。
1.2.2 再起動に向けた復旧計画
原子力機構における「常陽」の再起動計画(目標)は図 1.2-5 に示すように

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2012 年度とされている。今後、(1)費用対効果、(2)時間、(3)交換・補修によ
る技術的な成果や新 UCS 設備の機能向上についてさらに検討するとともに、
復旧作業を効率的に早期に完遂するよう要望した。
1.2.3 炉内観察・復旧により得られる技術的成果
FBR の冷却材である液体金属ナトリウムは、原子炉停止時においても約
200℃の高温で管理され、化学的に活性であることから、ナトリウム液面上部
にはカバーガスとしてアルゴンガスを充填し、原子炉容器上部には遮へい及び
カバーガスの気密性を確保するための遮へいプラグ(以下、「回転プラグ」と
いう。)が設置されている。このため、原子炉容器内への観察・回収装置の挿
入は、回転プラグに設けた貫通孔から気密性を確保した状態で実施する必要が
あり、さらに、これらの装置には耐放射線性と耐熱性が要求される。
UCS の交換、MARICO-2 試料部の回収作業を通じて、これまで FBR にお
いて経験が少なかった遠隔操作を含む炉内観察技術の高度化、高放射線・高温
環境下で使用可能なファイバスコープ等の炉内観察システムの開発、変形した
集合体等の回収技術等を蓄積することが可能である。
上記技術は今後の FBR 開発に重要な技術であり、実証炉・実用炉の設計に
活かせる FBR の炉内保守・補修技術のベースとなる知見を得ることができる
と考える。また、これらの技術開発に加え、撤去した既設 UCS は約 30 年間
の使用実績を有し、実機環境下での炉内構造物材料特性を把握する上で貴重な
素材であることから、照射試料として有効活用し、今後の研究開発に資するよ
う要望した。

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図 1.2-1 UCS 交換と MARICO-2 試料部の回収について
図 1.2-2 UCS の補修について

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図 1.2-3 UCS の交換と補修の比較
図 1.2-4 海外 FBR における炉内観察・補修等の実績

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図 1.2-5 原子力機構による「常陽」の再起動計画(目標)

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2. 「常陽」の役割と今後の必要性
2.1 我が国の FBR 開発における「常陽」の位置付け
FBR 開発は、我が国の国家基幹技術の一つとして位置付けられ、添付-3 に示す
2005 年に原子力委員会が策定した「原子力政策大綱」、2006 年に文部科学省がと
りまとめた「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」に記載されているよう
に、FBR の国産開発を目標として、産・官・学の総力を結集し、その研究開発が進
められている。FBR 実用化に向けた開発ステップを図 2.1-1 に示す。「常陽」は 1966
年に原子力委員会が策定した「動力炉開発の基本方針」(添付-3 参照)に基づき、
自主的な FBR 開発の効率的推進を図ることを目的として、FBR 開発計画の第 1 段
階にあたる実験炉及び高速中性子照射炉として建設された。「常陽」は日本初のナ
トリウム冷却型高速炉であり、MK-Ⅰ炉心は増殖性能の実証を含め、原型炉の設計
等のための技術的経験の取得・蓄積を、MK-Ⅱ、Ⅲ炉心は照射炉として FBR の技
術的経験の取得・蓄積及び燃料・材料照射試験の実施を主な目的としている(図
2.1-2、2.1-3 参照)。なお、MK-Ⅲ炉心は FBR 実用化のための燃料・材料開発にお
ける目標照射量(ペレット最高燃焼度:∼25 万 MWd/t、原子弾き出し数:∼250 dpa)
を踏まえ、中性子束密度の増加と照射場の拡大等を図り、照射性能を向上したもの
である。
また、原子力政策大綱等にも記載されているように、「常陽」には、FBR 用燃料・
材料等の開発のための照射試験のみならず、革新技術の実機プラントでの実証、技
術者養成、教育研修等の場としての活用も求められている。
FBR 開発において、「常陽」が高速実験炉・高速中性子照射炉として、これまで
果たしてきた役割と今後期待される役割の概要を図 2.1-4、2.1-5 に示す。今後の
FBR 開発における「常陽」の主な役割は、高速中性子照射炉として FaCT プロジ
ェクト関連の照射試験に代表される安全性・経済性向上を目的とした照射試験を実
施することである。また、これらの照射データの取得を通じて運転・許認可実績を
蓄積し、プラント安全性向上、新技術実証、技術伝承等に寄与していくことも重要
である。

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図 2.1-1 FBR 実用化の開発ステップ
図 2.1-2 「常陽」及び大洗研究開発センターの施設群

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図 2.1-3 「常陽」の運転実績
図 2.1-4 実験炉としての「常陽」の役割

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図 2.1-5 照射炉としての「常陽」の役割

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2.2 「常陽」の技術的特長
FBR 開発には、広範な種類及び照射条件での燃料・材料の照射試験、燃料溶融等
の限界照射等に対応できる高速中性子照射炉と照射後試験施設が必要である。また、
我が国が高速中性子照射炉を有することは、大学からの受託照射(核融合炉材料の
照射試験等)等を容易とし、基礎基盤技術開発を発展・活性化するとともに、将来
を担う技術者養成・教育研修の場を提供することを可能とする。
「常陽」はこれらの要件を踏まえた上で、高速中性子照射炉として以下の技術的
特長を有するとともに、国際協力に貢献できる数少ない高速中性子照射炉である。
現在運転中の世界の高速炉の仕様・特長を比較して図 2.2-1 に示す。このうち、フ
ェニックス(仏国)は 2009 年に運転を終了する予定であるため、現在、高速中性
子照射場として利用可能な高速炉は、「常陽」、BOR-60(露国)、BN-600(露国)
となり、「常陽」は我が国が FBR の安全利用をはじめ、FBR 利用技術に係る原子
力先進国として、主導的な役割を担うための重要な研究施設である。
(1)世界最高レベルの高速中性子束
世界の試験研究炉の全中性子束、高速中性子束を比較した結果を図 2.2-2 に
示す。「常陽」は世界的にも最高レベルの高速中性子束を有する貴重な施設であ
る。燃料・材料開発においては、多種多様な仕様及び条件下での照射データを
取得することが重要であり、世界最高レベルの高速中性子束は燃料・材料の照
射試験期間を短縮し、開発を加速することで、より多くの照射データの取得を
可能とする。
(2)高品質な照射データ
燃料・材料開発においては、照射データの質を担保することも重要である。
高品質な照射データは燃料・材料の適切な設計仕様の設定を可能とし、安全性・
経済性を向上させることができる。「常陽」では、これまでに照射場の特性を把
握するため、炉内の中性子束・温度の測定手法が確立され、取得した実測デー
タに基づいて高度化した核熱計算法が整備されており、これに基づき高品質な
照射データが提供されている(図 2.2-3 参照)。
(3)世界に類のない照射試験技術
燃料・材料開発を推進するためには、広範な種類の燃料・材料を多種多様な
条件で照射し、データを取得することが重要である。「常陽」では多種多様な照
射試験に対応するため照射試験技術を高度化しており、照射実績の少ない燃
料・材料や通常運転を超える条件を模擬した照射試験を、要求された照射条件
において安全かつ高精度で実施することができる。これまでにも、ウラン・プ
ルトニウム混合酸化物燃料の限界性能を確認するための燃料溶融限界出力試験

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等を実施し、設計裕度の把握、燃料温度評価手法の高度化を図った実績がある。
さらに、照射中の材料の温度を精度良く制御可能なオンライン照射試験装置が
開発されている。(図 2.2-4 参照)。
(4)最先端の照射後試験技術
「常陽」には照射後試験施設が隣接しており、破壊・非破壊の照射後試験が
実施できる他、照射試料の炉内への再装荷が可能である。さらに、世界で唯一、
照射済集合体の非破壊試験に適用可能なX線CT装置が開発・整備されている。
この装置により、照射後、迅速に多量のデータを取得でき、これまで得られな
かった長期照射試験の中間データの取得が可能であるため、効率的な燃料・材
料開発の推進に資することができる(図 2.2-5 参照)。
(5)実験炉としての柔軟な運用
実験炉である「常陽」は、照射試験目的に合わせて運転時間や原子炉出力等
が柔軟に設定でき、燃料・材料照射挙動メカニズム解明のための照射試験、新
技術の実証、炉心・プラント安全性向上等を目的とした事象メカニズムの解明
等、FBR の研究開発に資するデータの提供が可能である。
また、「常陽」は高速中性子照射炉としての役割に加え、高速実験炉としての所
期の目的の一つである自主技術によるナトリウム冷却型 FBR の設計・建設・運転
に係る技術的経験を蓄積する役割を有する。長年の運転・保守実績に基づく「常陽」
で蓄積される技術的経験は、FBR 技術を体系的に確立するにあたり貴重なデータと
なる。特に、MK-Ⅲ計画において主中間熱交換器に使用した 316FR 鋼等の新材料
の実機使用実績は、今後の実証炉・実用炉において安全性を担保し、国民の理解を
得るために重要な技術的実績となる。

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図 2.2-1 主要な高速炉の比較
図 2.2-2 主要な中性子照射場の比較

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図 2.2-3 高精度な照射条件の評価
図 2.2-4 多種多様な照射試験に対応した照射技術の高度化の例

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図 2.2-5 最先端の照射後試験技術

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2.3 国内での照射データ取得の意義
これまでの我が国における FBR 開発の実績を踏まえ、今後の開発においても、
我が国の優秀な FBR 技術を自主技術として発展させていくことが、将来のエネル
ギー確保の観点から重要である。特に、燃料・材料開発は FBR を実用化する上で
最重要課題の一つである(図 2.3-1 参照)。燃料・材料開発においては、その健全性
を確保するとともに、経済性向上の観点で高燃焼度化による燃料費低減を達成し、
かつ、燃料製造技術との調和が図られることが求められる。燃料・材料開発に係る
国内でのデータ取得体制を図 2.3-2 に示す。燃料のふるまいと製造実績との関連研
究は「常陽」、将来的には「もんじゅ」を加えた国内での照射試験によって照射デ
ータを取得することで推進される。
FBR は軽水炉よりも炉心燃料寿命を長期化しやすい核的な特長を有するが、一方
で、高中性子束、高出力密度、高燃焼度、高温ナトリウム環境等の厳しい環境で使
用されることから、実機の高速炉で取得される照射データは極めて重要である。国
内でこれらの照射データを取得するメリットを以下に示す。
・ 「常陽」の照射性能を活かした質・量ともに充実したデータ
「常陽」では合理的な裕度の設定や経済的整合性を有する信頼性の確保
等に必要な精緻な評価が可能
・ 多量データの合理的な取得と負担軽減
多種多様な照射条件で、多量のデータを取得していくには、国内照射・
国内データ取得が輸送負担・費用負担の軽減の面でも適切
・ FBR 開発の計画的な推進と時間的な即応性
エネルギー資源確保に向けた燃料開発から照射後試験までの研究開発を
我が国主導で実施可能であり、また、革新技術等に係る照射試験をタイム
リーに実施し、必要な照射データを隣接する照射後試験施設で取得可能
・ 国内技術の向上・蓄積
国内で燃料・材料の製造、照射、照射後試験を実施することは、国内の
技術者育成に寄与
・ 燃料の製造技術関連データの保護
日本独自の技術で製造した燃料を国内で試験することにより、詳細な
ノウハウの流出を防止
国内で照射データが取得できなくなり、海外炉を利用して照射データを取得する
場合、照射炉の所有国の原子力や外交上の政策の影響、コストの増加等のリスクが
あり、国外への燃料輸送の問題や、照射試験の自由度への制約等の課題により、我
が国の FBR 開発に必要な照射データを計画どおりに取得できない可能性がある。
また、2.5.4 で後述するように、「常陽」は我が国が有する FBR 開発の貴重な研究
施設であり、「常陽」で得られる精度の良い照射データや革新的な技術の検証結果

Page 25
- 23 -
に寄せる国際的な期待も大きい。
このため、国内で照射データを取得できる体制を整備・保持することは、FBR 開
発において重要であると考える。高速中性子照射炉として優れた特長を有する「常
陽」を失った場合、国内で照射データを取得するメリットである「FBR 開発の計画
的な推進と時間的な即応性」、「国内技術の向上・蓄積」等がなくなり、国家基幹技
術である FBR 開発に支障が生じるとともに、FBR 開発における我が国の国際的な
技術的優位性及び競争力の低下が懸念される。
また、軽水炉分野においても、安全性・経済性の更なる向上に試験研究炉が大き
な役割を果たしていることを踏まえると、FBR の実用化以降も、安全性・経済性の
向上のための革新技術の開発に高速中性子照射炉は重要な役割を果たしていく必
要がある。

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- 24 -
図 2.3-1 FBR の実用化に向けた燃料・材料開発の重要性
図 2.3-2 燃料・材料開発に関する国内でのデータ取得体制

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- 25 -
2.4 「常陽」と「もんじゅ」の役割分担
「もんじゅ」は地元の了解を得つつ、原子力政策大綱にも記載されているとおり、
運転を早期に再開し、原型炉として 10 年程度以内を目途に「発電プラントとして
の信頼性の実証」と「運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立」の所期の目的
を達成することを優先して取り組む計画である。その後、高速中性子を研究開発に
提供できることを踏まえ、高速増殖炉の実用化に向けた研究開発の場として活用・
利用することが期待されている。これに向けて、「もんじゅ」炉心の高性能化等を
実施し、高速中性子照射場としての性能を確認し、機能を整備した上で、「常陽」
で培われた照射技術等を「もんじゅ」に移転し、経済性・安全性の向上のための照
射試験等に供する計画である。
発電プラントとしての信頼性の実証等を目的とした「もんじゅ」と比較すると、
「常陽」は高速中性子照射炉として照射試験目的に応じた柔軟な運転が可能であり、
照射試験に関する幅広い許認可を有している。さらに、オンラインの照射試験装置
も使用した高品質な照射データも取得できる。「もんじゅ」が高速中性子照射場と
して確立された後も、広範な仕様の新しい燃料・材料の先行照射試験、限界照射試
験及びオンラインでの照射試験により、燃料ピン及び材料試験片レベルでの基礎的
な照射挙動等を「常陽」で把握した上で、集合体規模の照射試験を「もんじゅ」に
て実施して性能を実証することが FBR の実用化をより効率的に推進するために重
要であると考える。「常陽」で取得する限界照射試験等も含めた高品質な照射デー
タは、実証炉・実用炉用の設計基準等を整備する上で有用なデータであり、「常陽」
と「もんじゅ」の照射データを組み合わせることで、設計基準等の信頼性が向上し、
適切な設計裕度の設定により FBR の安全性の確保とともに経済性向上に資するこ
とができる(図 2.4-1 参照)。

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- 26 -
図 2.4-1 高速中性子照射場としての「常陽」と「もんじゅ」の役割分担

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- 27 -
2.5 「常陽」再起動後の利用ニーズ
2.5.1 FaCT プロジェクト・FBR 実用化に向けた燃料・材料開発
FBR 開発において、燃料・材料開発は 2.3 に示したように最重要課題の一つ
である。FBR 燃料・材料開発計画において、「常陽」には(1)FaCT プロジェクト・
実証炉計画における照射ニーズ、(2)実用炉に向けた照射ニーズがある。
(1)FaCT プロジェクト・実証炉計画における照射ニーズ
FaCT プロジェクトでの酸化物燃料の炉心概念のねらいを図 2.5.1-1 に示す。
FaCT プロジェクト・実証炉計画においては、これらの革新技術の適用可否につ
いて判断する必要がある。国内でこの判断に資するための照射データ等を取得で
きる施設は「常陽」が唯一であり、「常陽」再起動後の最優先課題である。具体
的な照射ニーズを図 2.5.1-2 に示す。FaCT プロジェクトや実証炉計画では、経
済性向上のための高燃焼度概念成立性評価・設計用データ拡充、FBR 要素技術
の高度化や環境負荷低減のためのマイナーアクチニド含有燃料開発等に係る照
射試験が要求されている。
前述のように、「常陽」の再起動時期は 2012 年度が目標とされており、再起動
後、順次、これらの照射試験を開始し、FaCT プロジェクトや実証炉計画に貢献
することが肝要であると考える。なお、「もんじゅ」については、2.4 に示したよ
うに、当面は発電プラントとしての信頼性の実証に優先的に取り組む計画であり、
また、照射試験に供するためには、炉心の高性能化や機能の整備等が必要である
ことから、「もんじゅ」において FaCT プロジェクトで要求されている照射試験
を所期の計画どおり実施することは難しいことを確認した。
(2)実用炉に向けた照射ニーズ
FBR は軽水炉と比較して運転実績が少なく、2015 年までにプラント像及び
研究開発計画を示すことを目標としている FaCT プロジェクト以降にあっても、
さらなる安全性・経済性の向上を目指した研究開発が必要である。特に、FBR
実用炉の導入がエネルギー・環境・経済の観点で国民の利益として還元されるた
めには、図 2.5.1-3 に示すように、さらなる経済性向上を図るための燃料設計手
法の合理化・裕度評価や燃料製造公差の緩和等のための照射試験が求められると
ともに、燃料製造技術・再処理技術と連動した核拡散抵抗性対応方策に係る検
証・実証も重要となる。
上記の目的を達成するためには、多種多様な照射データを取得する必要があ
り、これに対応できる国内照射施設を使用して研究開発を実施することが、期
間・予算等の観点で効率的であると考える。

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図 2.5.1-1 FaCT プロジェクトにおける炉心・燃料技術開発に関する要求課題
図 2.5.1-2 FaCT プロジェクトにおける照射ニーズ

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図 2.5.1-3 実用炉に向けた照射ニーズ

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2.5.2 FBR 開発を支える基礎基盤技術開発
FBR の実用化においては、燃料・材料開発は最重要課題の一つであるが、こ
れのみならず様々な技術開発課題があり、照射ニーズ以外にも高速実験炉として、
ナトリウム冷却型 FBR の設計・建設・運転に係る技術的経験の蓄積に加えて、
FBR 開発を支える基礎基盤研究(図 2.5.2-1 参照)を実施していくことも「常陽」
に課せられた重要な使命の一つである。
「常陽」は研究目的に応じて小回りの利く運転が可能であり、特殊な照射試
験の他、革新的 FBR 技術を実証する場として、事故時のプラント挙動を模擬し
た試験を実施し、FBR 炉心の更なる安全性向上に寄与するデータを提供すると
ともに、自己作動型炉停止機構等の新技術の実証試験を行うことができると考え
る。また、レーザや光ファイバ等を用いた先進的・革新的プラント計測技術開発
の実施と実証の場として用い、FBR の安全性・信頼性のさらなる向上を目指す
ことが可能である。さらには、実験炉の特長を活かして、炉心特性データ、マイ
ナーアクチニドサンプルの照射による核特性データ、ナトリウム冷却系の純度デ
ータ、炉内構造物の放射化量等の様々な実機プラントデータを採取し、これによ
り FBR 核設計法の標準化や炉心の高性能化に向けての設計研究、核変換研究、
不純物等の挙動解析、遮へい解析、ナトリウム機器の健全性評価等の多岐にわた
る FBR 開発を支える基礎基盤研究に供することができる。

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図 2.5.2-1(1/2) FBR 基礎基盤研究への貢献
(核特性評価技術の開発)
図 2.5.2-1(2/2) FBR 基礎基盤研究への貢献
(燃料破損時のプラント運転手法最適化)

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- 32 -
2.5.3 FBR 開発を支える人材の育成
FBR 開発を推進するにあたり、将来の研究・開発及び利用を支える人材・技
術者を養成し、確保することは重要な課題である。これまでに、「常陽」では 1000
名以上の技術者・研究者が運転・保守・照射試験等に従事した他、実践的研修プ
ログラム等により、約 200 名の実習生を受け入れている(図 2.5.3-1 参照)。
実験炉である「常陽」は、先端的・基盤的な技術を実機プラントに適用・実証
してきたノウハウを含め、現場力を向上させ、工学規模での経験工学を蓄積でき
る場として最適な施設であると考える。今後も創造性を発揮して技術革新を担う
人材を育成する場、若手・外国人研究者等多様な人材が活躍できる環境を有する
場として「常陽」は必要不可欠である。「もんじゅ」は発電炉の運転・保修等に
関する電気事業者やメーカの人材育成、「常陽」は基礎基盤技術開発に関する大
学やメーカの人材育成をターゲットとすることで、技術力向上、技術伝承を効率
的に促進できると考える。

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- 33 -
図 2.5.3-1 技術者養成・人材育成への貢献

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- 34 -
2.5.4 FBR 開発に係る国際協力における「常陽」の必要性
近年の科学技術の研究開発では、各国が協力することにより開発を効率的に進
めており、FBR 開発においても第4世代原子力システムの研究開発に関する国
際フォーラム(GIF)、国際原子力パートナーシップ(GNEP)等の協力体制が
構築されている。FBR 開発における世界からの「常陽」への期待を図 2.5.4-1 に
示す。また、国際協力への「常陽」の貢献に係る一例として、包括的アクチニド
サイクルの国際実証(GACID)計画を図 2.5.4-2 に示す。
「常陽」は FBR 開発における数少ない研究施設であり、FBR 利用技術に係る
原子力先進国として世界の FBR 開発をリードするために必要な施設であると考
える。高速中性子照射炉を有効に活用して継続的に研究成果を発信することは、
我が国が FBR 開発の根幹技術である燃料・材料開発の中核的研究拠点となるこ
とを可能とする。また、開発リスク・コストを低減した上で、技術者が現場での
課題や問題に取り組むことにより創造性を発揮し、多くの経験を蓄積する場を確
保することにより、優秀な技術者の育成を促進するとともに、世界標準となる技
術を我が国が中心となって生み出すことを可能とする。

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図 2.5.4-1 FBR 開発に関する世界からの「常陽」への期待
図 2.5.4-2 包括的アクチニドサイクルの国際実証

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- 36 -
2.5.5 外部照射ニーズへの貢献
「常陽」の主な役割は FBR 開発であるが、反射体領域の中性子や炉心上部を
有効利用する等、「常陽」の高いポテンシャルを積極的に展開することで、FBR
開発だけでなく、原子力産業・一般産業にも貢献することが可能である。これま
でも、「常陽」は核融合炉材料開発や材料の照射損傷研究等のための照射試験に
も利用され、約 40,000 試料(約 120 件の研究テーマ)に及ぶ大学等の受託照射
が実施されてきたが、原子力機構が日本原子力学会の核燃料部会、材料部会の部
会委員並びに原子力開発に携わる研究者に加え、宇宙開発、医療関係者、約 830
名を対象として実施したアンケート(回答者:182 名)では、軽水炉、核融合炉
分野等において、「常陽」の高い中性子束の利用ニーズがあることが確認されて
いる(図 2.5.5-1 参照)。
これらの利用ニーズへの対応として、「常陽」では照射機能の拡大と多様化方
策が検討されている。このうち、原子炉運転の自動化、低中速中性子照射場、照
射温度範囲の拡大については、既に原子炉設置変更許可が取得されている。また、
「常陽」を再起動するためには、炉心上部機構の交換が必要であることから、こ
れを契機として図2.5.5-2に示すように中性子ビーム孔等を設置することでUCS
に照射機能を付加することが検討されている。
大学等における材料の照射挙動メカニズム等に関する研究開発の観点では、中
性子のエネルギーや照射量及び照射温度が精度良く評価された重照射条件下で、
再現性・外挿性がある照射データを取得することが重要である。「常陽」は、高
精度な照射条件評価技術とともに、照射温度を測定・制御可能なオンラインの照
射試験装置を有していることから、材料研究開発に利用可能な照射施設として極
めて重要であると考える。
今後、上記施設・設備等の整備により、照射条件及び照射材料の範囲の拡大、
照射時間の短縮が図られ、利用者の裾野を広げることが可能となる。「常陽」の
多目的利用化の促進は、今後、原子力産業以外の研究・技術開発の活性化にも貢
献できると考える。ただし、多目的利用については、人的資源、体制、付加的な
設備の運営等を十分考慮した上で、利用者に照射場や必要なサービスを提供する
ことを目指すことが望ましい。

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- 37 -
図 2.5.5-1 外部からの「常陽」の利用ニーズに関する具体例
図 2.5.5-2 UCS の高機能化

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- 38 -
結 言
本委員会において、「常陽」の役割と今後の必要性を検討し、この結果を踏まえ
て、「常陽」再起動の妥当性及び必要性を明確にするとともに、再起動後の「常陽」
の利用等に対して提言した。
「常陽」は MARICO-2 試料部と回転プラグの干渉による燃料交換機能の一部阻
害及び UCS 下面の整流板等の損傷により、UCS の復旧等が必要となるため、再起
動時期の目標は 2012 年度となるが、その後、照射試験を開始することによって、
FaCT プロジェクトや実証炉計画に貢献することが可能である。また、FaCT プロ
ジェクト以降の FBR 開発においても、質・量ともに充実した照射データを取得し、
FBR の更なる安全性・経済性等の向上を図るためには、国内に高速中性子照射炉を
保持することが必要であることから、UCS 交換を含む「常陽」再起動に向けた復旧方
策を実施し、できるだけ早期に「常陽」を再起動することが妥当であることを確認した。
なお、UCS 交換作業の実施にあたっては、技術的成立性・安全対策について、今
後、原子力機構において議論・精査するとともに、今回のトラブルの原因・教訓、
再発防止対策を十分検討し、原子力機構内で適切に情報を共有することを要望した。
「常陽」は高速中性子照射炉として、照射利用のための幅広い許可を有し、試験
目的に合わせた柔軟な原子炉の運転や照射試験が可能であることから、多種多様な
燃料・材料の照射試験に資することができる。このため、「常陽」では新しい燃料・
材料開発の先行的な照射試験、限界照射試験、オンラインでの照射試験を実施し、
「もんじゅ」は実証炉、実用炉を目指した技術実証を主眼においた集合体レベルの
照射試験に供する等の役割分担をすることで、FBR 実用炉開発に必要な安全性・経
済性等の更なる向上に係る照射データを取得することが可能となる。また、実験炉
としての特長を活かして、新技術の実証、先進的・革新的プラント計測技術開発等
の多岐にわたる FBR 開発を支える基礎基盤研究に供することもできる。
さらに、照射後試験施設が隣接し、世界的にも数少ない高速中性子照射炉である
「常陽」は、国際的協力体制の中で我が国が FBR 開発を主導的に進めていくため
にも貴重な施設であり、「常陽」が有する高速中性子照射炉としての高いポテンシ
ャルを有効に利用して外部照射ニーズにも展開することが期待される。
以上の議論を踏まえ、今後も「常陽」は FBR 実用化に向けた燃料・材料開発、
新技術実証のための試験の実施、FBR 開発を支える人材育成等の役割を有する必要
不可欠な施設であり、「常陽」を復旧せず再起動させない場合には、我が国の FBR
開発や国際貢献及び人材育成に多大な影響を与えることから、できるだけ早期に
「常陽」を再起動させるべきとの結論を得た。

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なお、UCS 復旧作業等の実施にあたっては、安全確保を優先することは言を俟
たないが、本作業を単なる復旧に終わらせることなく、炉内観察・保守補修に関す
る技術的知見を蓄積すると共に、再起動後には世界をリードする FBR 技術開発を
進めていくことを期待する。

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添付-1
「常陽」利用検討委員会の構成
(敬称略:50 音順 所属は 2008 年 12 月 24 日時点)
幹事
:大洗研究開発センター高速実験炉部長
鈴木 惣十
次世代原子力システム研究開発部門副部門長
佐賀山 豊
高速増殖炉研究開発センターもんじゅ開発部次長
高山 宏一
事務局 :大洗研究開発センター高速実験炉部保全技術開発課
氏 名
1
(委員)
井川 陽次郎
読売新聞東京本社 論説委員
2
(委員長)
岡 芳明
東京大学大学院 工学系研究科 原子力専攻 教授
3
(委員)
河北 孝司
三菱 FBR システムズ㈱ 取締役
4
(委員)
久保田 健一
㈳日本電機工業会 原子燃料サイクル専門委員会副委員長
㈱東芝 電力システム社 原子力事業部 技監
5
(委員)
四竃 樹男
東北大学 金属材料研究所 原子力材料物性学研究部門 教授
6
(委員)
竹田 敏一
大阪大学大学院 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 教授
7
(委員)
巽 良隆
日本原子力発電㈱ 取締役 研究開発室担任
8
(委員)
東嶋 和子
ジャーナリスト
9
(委員)
二ノ方 壽
東京工業大学大学院 理工学研究科 原子核工学専攻 教授
10
(委員)
山名 元
京都大学 原子炉実験所 原子力基礎工学研究部門
量子リサイクル工学分野 教授
11
(委員)
吉田 信之
電気事業連合会 原子力開発対策委員会 高速増殖炉委員会 副委員長
中部電力㈱ 発電本部 原子力部 サイクル企画グループ長 (部長)
12
(社内委員)
永田 敬
(独)日本原子力研究開発機構 次世代原子力システム研究開発部門 部門長
13
(社内委員)
廣井 博
(独)日本原子力研究開発機構 大洗研究開発センター 所長
14
(社内委員)
近藤 悟
(独)日本原子力研究開発機構 経営企画部長

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添付-2
審議の経過
第 1 回 「常陽」利用検討委員会(議事概要:別添-1 参照)
1. 日時:平成 20 年 12 月 24 日(水)13:30∼16:20
2. 場所:原子力機構東京事務所第 1 会議室
3. 議題:
(1) 「常陽」利用検討委員会の設置について
(2) 炉内干渉物の対策状況と今後の計画について
(3) 「常陽」の主な成果と今後の利用計画・ニーズについて
(4) 「常陽」の利用に関する委員からの報告
(5) その他
第 2 回 「常陽」利用検討委員会(議事概要:別添-2 参照)
1. 日時:平成 21 年 2 月 25 日(水)13:30∼16:30
2. 場所:原子力機構大洗研究開発センター交流棟会議室
3. 議題:
(1) 第 1 回「常陽」利用検討委員会におけるコメントへの回答
(2) 「常陽」の利用に関する委員からの報告
(3) 「常陽」利用検討委員会報告書に関する検討
(4) その他(現場調査等)
第 3 回 「常陽」利用検討委員会(議事概要:別添-3 参照)
1. 日時:平成 21 年 3 月 17 日(火)14:00∼16:30
2. 場所:原子力機構東京事務所第 2 会議室
3. 議題:
(1) 「常陽」利用検討委員会報告書に関する検討
(2) その他

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「常陽」利用検討委員会(第 1 回) 議事概要
日時:平成 20 年 12 月 24 日(水)13:30∼16:20
場所:原子力機構東京事務所第 1 会議室
出席者:岡委員長、井川委員、河北委員、竹田委員、巽委員、東嶋委員、吉田委員、
尾崎委員代理(久保田委員)、永田委員、廣井委員
原子力機構:中島理事、鈴木幹事、佐賀山幹事、此村幹事代理(高山幹事)
配付資料:
資料 1-1 「常陽」利用検討委員会の設置について
資料 1-2 炉内干渉物の対策状況と今後の計画について
資料 1-3 「常陽」がこれまで果たしてきた役割と主な成果について
資料 1-4 「常陽」の役割と今後の利用計画・ニーズについて
資料 1-5 「常陽」再起動に向けて
資料 1-6 「常陽」再起動への期待
議事内容:
1. 挨拶
本委員会の開催にあたって、中島理事及び岡委員長より挨拶があった。
2.「常陽」利用検討委員会の設置について
事務局より、資料 1-1 に基づき、「常陽」利用検討委員会の設置趣旨等について
説明があった。
3.炉内干渉物対策の実施状況と今後の計画について
事務局より、資料 1-2 に基づき、炉内干渉物対策の実施状況と今後の計画につ
いて説明があった。以下に主なコメントを示す。
・対策の妥当性を判断するためには、トラブルの発生原因及び再発防止に係る情
報が必要である。
・一般の方々の関心が高い安全性について、資料に「本作業により、放射性物質
の放散等、外部に安全上のリスクがないこと」といった記載を追加する等の配
慮が必要である。
・「常陽」をできるだけ早く運転再開することは必須であるが、その前提として
(1)費用対効果、(2)時間、(3)交換・補修による技術的な成果や発展性があるか
が問われるはずであり、よく吟味してほしい。

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4.「常陽」の主な成果と今後の利用計画・ニーズについて
鈴木幹事より、資料 1-3、1-4 に基づき、「常陽」の主な成果と今後の利用計画・
ニーズについて説明があった。以下に主なコメントを示す。
・実験炉である特長を利用して、「早く」「信頼性の高い」「実機の」設計基礎・
基盤データを提供し続けることが重要である。「常陽」は、「しっかりした基礎
データ」、「工学規模での経験工学」、「それらを設計に展開できるエンジニアリ
ング」を達成できる「研究成果の生産性の高い」プラントであり、その長所を
伸ばすような取り組みが必要であると考える。
・独立行政法人にあっては経営感覚が問われる。今後、多目的利用を図るのであ
れば、利用料により運転費を賄えるのか等、どのような収支になるのかについ
ても検討すべきである。
(原子力機構)「常陽」については、FBR 開発がメインストリームであり、多
目的利用はあくまでも余力を活用して行うものであると認識している。
・日本には、FBR 国産化の目的があり、「常陽」や「もんじゅ」が建設された。
単に経済性を議論するだけでなく、FBR 開発において、「常陽」を喪失した場
合の影響を検討すること。
・「常陽」の利用は、現状、約 9 割が照射利用との話があったが、単に、照射だ
けであれば、海外炉を利用するほうが安価かもしれないが、過去の経験より、
海外データには、品質確保やデータ追加依頼に多くの困難を伴うデメリットが
ある。また、技術者を養成し、技術力を向上することも重要な「常陽」の役割
であると考えている。
・「常陽」を使うことができなくなった場合の影響評価として、海外炉を使った
場合や「もんじゅ」を使った場合に、FBR 開発、基礎基盤、その他に対してど
のようなメリット・デメリットがあるのか示すこと。
・「常陽」MK-I、II、III 炉心において、所期の目的を達成できたのか否か等に
ついて示すこと。
(原子力機構)MK-I 炉心の目的は、増殖性能の確認、Na 技術の実証、MK-II
炉心の目的は、照射炉として「常陽」を活用することであり、それぞれ所期
の目的を達成した。MK-III 炉心の目的は、MK-II 炉心と同じであるが、まだ
数サイクル運転したのみであり、成果がでるのはこれからである。これらを
整理し、提示する。
5.「常陽」の利用に関する委員からの報告
竹田委員より、資料 1-5 に基づき、「常陽」に対する大学からの期待等について
報告があった。また、尾崎委員代理より、資料 1-6 に基づき、「常陽」に対するメ
ーカからの期待等について報告があった。

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- 44 -
6.その他
次回委員会は平成 21 年 2 月 25 日(水)を候補とし、大洗研究開発センターに
て現地調査とともに開催する予定とした。第 3 回委員会については、3 月 17 日(火)
を候補とした。最終的な日程・タイムスケジュールについては、別途事務局で調
整し、連絡する。
以 上

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「常陽」利用検討委員会(第 2 回) 議事概要
日時:平成 21 年 2 月 25 日(水)13:30∼16:30
場所:原子力機構・大洗 交流棟会議室
出席者:岡委員長、河北委員、久保田委員、四竃委員、竹田委員、巽委員、
二ノ方委員、吉田委員、永田委員、廣井委員、中村委員代理(近藤委員)
原子力機構:中島理事、鈴木幹事、佐賀山幹事、此村幹事代理(高山幹事)
配付資料:
資料 2-1 第 1 回「常陽」利用検討委員会におけるコメントへの回答
資料 2-2 高速実験炉「常陽」に対するコメント
資料 2-3 原子炉照射の考え方と「常陽」の役割
資料 2-4 「常陽」利用検討委員会検討報告書(目次案)
議事内容:
1.第 1 回「常陽」利用検討委員会におけるコメントへの回答
鈴木幹事より、資料 2-1 に基づき、第 1 回「常陽」利用検討委員会におけるコ
メントへの回答について説明し、了解された。以下に主なコメントを示す。
・人材育成や技術伝承については「もんじゅ」との役割分担があり、発電炉であ
る「もんじゅ」は電気事業者の人材育成、「常陽」は、大学やメーカの基礎基盤
技術開発に関する人材育成がターゲットとなると思われる。
・今後の「常陽」の利用ニーズにおいて、「プラント安全性向上」とあるが、そ
の内容について詳細に記載したほうがよい。
2.「常陽」の利用に関する委員からの報告
巽委員より、資料 2-2 に基づき、「常陽」に対するコメントについて報告があっ
た。また、四竃委員より、資料 2-3 に基づき、原子炉照射の考え方と「常陽」の役
割について報告があった。
3.「常陽」利用検討委員会報告書に関する検討
事務局より、資料 2-4 に基づき、「常陽」利用検討委員会検討報告書(目次案)
について説明した。構成についてコメントがあり、事務局で対応することとした。
4.現場確認
「常陽」において、MARICO-2 試料部模型、MARICO-2 保持部モックアップ・

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モックアップ試験等を視察した。
5.その他
次回委員会は平成 21 年 3 月 17 日(火)を候補とし、東京事務所で開催する予定
とした。最終的な日程・タイムスケジュールについては、別途事務局で調整し、連
絡する。
以 上

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「常陽」利用検討委員会(第 3 回) 議事概要
日時:平成 21 年 3 月 17 日(火)14:00∼16:30
場所:原子力機構・東京事務所第 2 会議室
出席者:岡委員長、河北委員、久保田委員、四竃委員、竹田委員、巽委員、
二ノ方委員、山名委員、吉田委員、永田委員、廣井委員、
中村委員代理(近藤委員)
原子力機構:鈴木幹事、佐賀山幹事、田辺幹事代理(高山幹事)
配付資料:
資料 3-1 (独)日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」の役割と今
後の必要性に関する検討報告書(案)
議事内容:
1.「常陽」利用検討委員会報告書の検討
事務局より、資料 3-1 に基づき、(独)日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常
陽」の役割と今後の必要性に関する検討報告書(案)について説明があった。一
部表現の見直し等についてコメントがあり、事務局で修正後、委員に再確認いた
だき報告書として取りまとめることで了解された。
2.その他
「常陽」利用検討委員会については、今回をもって終了することとなった。
以 上

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添付-3
原子力政策大綱等の一部抜粋
原子力政策大綱(2005 年 原子力委員会)
第 4 章 原子力研究開発の推進
4-1 原子力研究開発の進め方
原子力発電を基幹電源として維持していくことには大きな公益があるが、こ
れを可能にするためには、核燃料サイクルを含めた既存技術の安全性、信頼性、
経済性、供給安定性、環境適合性等を絶えず改良・改善していくとともに、次
世代の供給を担うことのできる競争力のある革新技術の研究開発を実施して
いく必要がある。(中略)原子力技術は国際場裡においてはどの国を起源とす
る技術かが厳格に追求され、自国産の技術でないと国際展開等に不都合を生じ
ることも少なくないために、他の分野に比べ、我が国の独自技術を保有するこ
とを目指した研究開発を推進する重要性が高い。
4-1-3 革新的な技術システムを実用化候補まで発展させる研究開発
原子力利用や広範な科学技術分野に革新をもたらす可能性が大きい革新技
術システムを、実用化の候補にまで発展させるための研究開発については、国
及び研究開発機関が、産業界とロードマップ等を共有し、大学や産業界の協
力・協働を得つつ、主体的に取り組むべきである。この場合、段階的な計画と
して取り組み、段階を進める際には国が成果と計画の評価を行い、実施すべき
研究開発を重点化して進めることが肝要である。さらに、産業界が実用化の対
象として選択できる環境を整えるために、研究開発政策と産業政策を担当する
関係行政機関が政策連携を進めることも重要である。
この段階にある取組の最大のものは高速増殖炉サイクル技術の研究開発で
ある。高速増殖炉サイクル技術は、長期的なエネルギー安定供給や放射性廃棄
物の潜在的有害度の低減に貢献できる可能性を有することから、これまでの経
験からの教訓を十分に踏まえつつ、その実用化に向けた研究開発を、日本原子
力研究開発機構を中核として着実に推進するべきである。具体的には、研究開
発の場の中核と位置付けられる「もんじゅ」の運転を早期に再開し、10 年程
度以内を目途に「発電プラントとしての信頼性の実証」と「運転経験を通じた
ナトリウム取扱技術の確立」という所期の目的を達成することに優先して取り
組むべきである。その後、「もんじゅ」はその発生する高速中性子を研究開発
に提供できることを踏まえ、燃料製造及び再処理技術開発活動と連携して、高
速増殖炉の実用化に向けた研究開発等の場として活用・利用することが期待さ
れる。その具体的な活動の内容については、その段階までの運転実績や「実用

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化戦略調査研究」の成果を評価しつつ計画されるべきである。これらの活動に
は国際協力を活用することが重要であるから、「もんじゅ」及びその周辺施設
を国際的な研究開発協力の拠点として整備し、国内外に開かれた研究開発を実
施し、その成果を国内外に発信していくべきである。
また、日本原子力研究開発機構は、「もんじゅ」等の成果も踏まえ、高速増
殖炉サイクルの適切な実用化像とそこに至るまでの研究開発計画を 2015 年頃
に提示することを目的に、電気事業者とともに、電力中央研究所、製造事業者、
大学等の協力を得つつ「実用化戦略調査研究」を実施している。その途中段階
での取りまとめであるフェーズⅡの成果は 2005 年度末に取りまとめられ、国
がその成果を評価して方針を提示することとしており、その後もその方針に沿
って研究開発を的確に進めるべきである。その際、第四世代原子力システムに
関する国際フォーラムにおけるこの分野の成果を取り入れることも重要であ
る。
日本原子力研究開発機構は、「常陽」を始めとする国内外の研究開発施設を
活用し、海外の優れた研究者の参加を求めて、高速増殖炉サイクル技術の裾野
の広い研究開発も行うものとする。電力中央研究所、大学、製造事業者等にお
いても、これらに連携して研究開発を実施することを期待する。
国は、これらの進捗状況等を適宜評価して、柔軟性のある戦略的な研究開発
の方針を国民に提示していくべきである。特に、「実用化戦略調査研究」の取
りまとめを受け、高速増殖炉サイクルの適切な実用化像と 2050 年頃からの商
業ベースでの導入に至るまでの段階的な研究開発計画について 2015 年頃から
国としての検討を行うことを念頭に、実用化戦略調査研究フェーズⅡの成果を
速やかに評価して、その後の研究開発の方針を提示するものとする。なお、実
用化に向けた次の段階の取組に位置付けられるべき実証炉については、これら
の研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画
の決定を行うことが適切である。
高速増殖炉サイクルの研究開発方針(2006 年 文部科学省)
我が国では、1956 年に原子力委員会が策定した「原子力の研究、開発及び利
用に関する長期計画」において、「最終的に国産を目標とする動力炉は、原子燃
料資源の有効利用ひいてはエネルギーコストの低下への期待という見地から、
増殖動力炉とする」とされているように、当初より高速増殖炉の国産開発を目
標とし、1960 年代初頭より高速増殖炉の調査研究が開始され、1960 年代後半
から本格的に研究開発が行われてきた。

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動力炉開発の基本方針(1966 年 原子力委員会)
高速増殖炉の開発にあたっては、基礎的技術の蓄積に努めるとともに、国際
協力をも行なって、自主的開発の効率的推進をはかることが必要である。その
実施にあたっては、臨界実験装置等による基礎的研究ならびに実験炉および原
型炉の開発を推進するものとする。なお、実験炉は、将来、照射試験炉として
も利用する。
総合科学技術会議(2008 年 11 月):
基本政策推進専門調査会 分野別推進総合 PT エネルギー分野 PT
高速実験炉「常陽」: 高速増殖炉の実用化に不可欠な高速中性子の照射場
として、高速増殖炉用燃料・材料の高燃焼度化など、
経済性向上等に係る革新技術の実証を進める。

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付録 「常陽」利用検討委員会 発表資料

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第 1 回「常陽」利用検討委員会 発表資料

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第 2 回「常陽」利用検討委員会 発表資料

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参考資料 「常陽」の概要

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高速実験炉「常陽」は、我が国の自主技術で設計・建設そして運転が行われ、ナ
トリウム冷却型 FBR の基本性能の確認や運転保守経験の蓄積、新技術の実証など
実験炉としての役割のみならず、高速中性子照射炉として数々の照射試験を実施し、
「もんじゅ」を始めとする後続炉の開発に貢献してきた。「常陽」の概要を以下に
示す。
1. 設備概要
「常陽」のプラント概念図(図 1 参照)に示すように、ナトリウムと直接触れる炉
心や冷却設備、燃料の洗浄設備などの軽水炉と大きく異なるナトリウム冷却型炉特
有の設備が数多くある。
原子炉本体(図 2 参照)は、燃料、制御棒よりなる炉心とそれを取り囲む反射体
(またはブランケット)、炉心を支える炉心支持板、炉心上部構造等で構成され、
これらは薄肉大口径の原子炉容器に納められている。原子炉容器の上部には回転プ
ラグが置かれ、これに設けられた燃料交換孔を通じて冷却材ナトリウムの自由液面
を覆うアルゴンガスのバウンダリを保持した状態で燃料交換が行われる。また、回
転プラグ上部には制御棒駆動機構も設置され、炉心に挿入された制御棒を上下動さ
せて原子炉を運転する。
「常陽」の炉心で発生した熱は、中間熱交換器を介して 1 次冷却系から 2 次冷却
系に伝えられ、最終的に空気冷却器により大気に放散される。「常陽」の主冷却系
は 2 ループで構成され、ナトリウムポンプ停止時の自然循環冷却能力を高めるため、
ヒートシンクとなる空気冷却器をヒートソースである炉心および中間熱交換器よ
り高所に配置している。ナトリウム機器・配管の腐食防止の観点から、ナトリウム
の純度維持が極めて重要であり、ナトリウム冷却系にコールドトラップを設けて不
純物を連続的に除去している。
2. マイルストーン
第 1 の目的である FBR に関する技術的経験の取得のため、1970 年 2 月に原子炉
設置許可を受け、1977 年 4 月 24 日に増殖炉心(MK-Ⅰ炉心)で初臨界を達成した。
その後、1979 年 7 月に 75MWt を達成して 1981 年末までに計 6 サイクルの定格運
転を行い、プルトニウムの増殖性を確認するなどナトリウム冷却型 FBR に関する
種々の貴重なデータと運転保守経験を蓄積した。
その後、第 2 の目的である燃料材料の照射試験を遂行するため、1982 年 1 月か
ら約 10 ヶ月かけ照射専用炉心(MK-Ⅱ炉心)に交換するとともに、約 180 体の径
方向ブランケットをステンレス鋼反射体に置き換えた。1982 年 11 月 22 日に MK-
Ⅱ炉心の初臨界を達成し、2000 年 6 月までに計 35 サイクルの 100MWt 運転を行
い、照射試験を中心とする FBR 技術開発に供されてきた。この間の核燃料サイク
ル開発の象徴的な成果として、MK-Ⅰ燃料から取り出したプルトニウムを再び「常
陽」に装荷して核燃料サイクルの環をつなぐことに成功したことが挙げられる。

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2000 年 6 月の第 35 サイクル運転を最後に 18 年間にわたる MK-Ⅱ炉心での運転
を終了した。そして、それまでの運転で蓄積した技術的経験と研究開発成果を基に
「常陽」MK-Ⅲ計画を開始した(図 3、4 参照)。
3. 「常陽」のさらなる高度化(MK-Ⅲ計画)
MK-Ⅱ炉心の本格的な照射試験を開始した当時の我が国の FBR 開発の状況は、
実証炉の設計・建設や実用化炉の仕様選定に向けて、コスト低減化や安全性向上等
に関する課題が検討されていた。このうち、高燃焼度燃料の実証試験は、MK-Ⅱ炉
心では 10 年を超える照射期間を要し、「常陽」の中性子束増大と稼働率向上が望ま
れていた。また、革新的技術の開発には、実機プラントでの開発実証が必要であり、
「常陽」を活用した実証試験が検討されていた。
これらの要望を背景に、「常陽」を照射炉として世界最高の高速中性子束が得ら
れるよう炉心およびプラントを改造し、革新的な新技術の実証試験を行う「常陽」
MK-Ⅲ炉心での本格運転を 2003 年より開始した。照射能力を一層向上させるため
に炉心およびプラントを改造する MK-Ⅲ計画は、既存の原子炉の出力を 1.4 倍とし
た野心的な計画であり、燃料被覆管に改良オーステナイト鋼(PNC1520)、主中間
熱交換器に 316FR 鋼といった新材料を採用する等、MK-Ⅲそのものが開発成果の
実証の場となっている。
MK-Ⅲ炉心では、「もんじゅ」運転開始後の「常陽」の機能分担を視野に入れ、
照射炉として性能向上を図るとともに、実証炉等で期待されるプラント概念や新技
術の実機での実証と実用化の場に活用し、FBR 開発の中核として「常陽」のさらな
る利活用を図ることを目的としており、今後、FaCT プロジェクト等に必要な照射
データ等を提供するため、多種・多様な照射ニーズに応えていく計画である。また、
世界でも数少ない高速中性子照射炉として、国際協力の下に 21 世紀の FBR 技術開
発の一翼を担う重要な役割が期待されている。

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図 1 「常陽」プラント概念図
図 2 原子炉本体概念図

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図 3 「常陽」炉心高度化のあゆみ
図 4 「常陽」主要炉心特性

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用語解説
316FR(高速炉構造用 SUS316):
高速増殖炉用構造材料として、低炭素窒素添加により、従来の SUS316 に比
べて高温強度特性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼。
GWd/t(giga-watt-day-per-ton):
燃焼度の単位。MOX 燃料の単位重量当たりに発生した熱エネルギーの総量。
炉心に装荷された核燃料が原子炉から取り出されるまでに中性子との反応によ
り消費された割合を示す。
MA(Minor Actinide、マイナーアクチニド):
周期律表において原子番号 89 のアクチニウムから 103 のローレンシウムに至
る 15 の元素を総称してアクチノイド元素といい、このうちアクチニウムを除い
たものをアクチニド元素という。使用済燃料中でウラン、プルトニウムに比べ存
在量の少ないネプツニウム(Np)アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)
をマイナーアクチニドと称する。
MARICO-2(Material Testing Rig with Temperature Control、マリコ2号機):
照射試料である被覆管等の材料を、一定温度で照射する実験設備。今回炉内干
渉物となっているのは計測線付実験装置(温度制御型材料照射装置)の 2 号機で、
MARICO-2(マリコ 2 号機)と称している。本装置は全長が約 11m あり、試料
部、保持部、駆動部から構成されている。試料部は照射試料が装填され、炉心に
挿入される部分である。保持部は炉心上部機構内にあり、試料部を保持するため
の爪や、照射試験終了後に試料部を切り離すためのカッター機構がある。駆動部
は試料部を上下に移動させるためのものである。
ODS 鋼(Oxide Dispersion Strengthened フェライト鋼、酸化物分散強化型フェ
ライト鋼):
フェライト鋼の高温強度を改善するために、微細な安定酸化物粒子をフェライ
ト鋼の中に分散させた材料。高燃焼度燃料被覆管として開発中である。
PNC-FMS:
原子力機構が開発した炉心材料用フェライト鋼。オーステナイト鋼に比べて耐
スエリング性が格段に優れたフェライト系材料の特性を活かしつつ、高温強度の
改善を図った材料である。主としてラッパ管に適用する。
TRU(Transuranium、超ウラン元素)
原子番号がウラン(原子番号 92)より大きい元素。ネプツニウム、プルトニ
ウム、アメリシウム、キュリウム等の人工の放射線元素。
UCS(Upper Core Structure、炉心上部機構):
高速炉の原子炉容器の回転プラグから炉心上部に吊り下げられ、遮へい部、胴、
整流板、熱電対支持物等で構成される。燃料集合体出口での冷却材温度検出、制

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御棒の所定位置への支持などの機能を持つ。
X 線 CT:
複数方向の透過 X 線データを計算機で処理することにより、断層画像を得る
コンピュータ断層撮影方法。非破壊検査として、主に集合体内部状況調査に用い
られる。
回転プラグ:
回転プラグは原子炉容器の蓋の役割を果たしているもので、「常陽」では、独
立に回転する大回転プラグと小回転プラグが約 500mm 偏心して設置されている。
大小それぞれの回転プラグの回転角度を組み合わせることにより、炉心及び炉内
ラックの任意の位置に燃料交換機を移動させる仕組みとなっている。
カバーガス:
冷却材ナトリウムの酸化等を防ぐために、原子炉容器や主冷却系機器内のナト
リウム液面上部の空間に満たされた気体であり、化学的に不活性なガスであるア
ルゴンガスが使用されている。
簡素化ペレット燃料:
経済性向上に向け、酸化物燃料粉末を取り扱うプロセスの合理化により、製造
工程を簡素化して製作した酸化物燃料。
高速増殖炉サイクル:
高速増殖炉とその関連する核燃料サイクル(燃料製造、再処理)をいう。原子
炉の中でできたプルトニウムは一度原子炉の外に取り出され、核分裂生成物など
を分離した後、新しい燃料に加工される。
再臨界回避:
仮想的な炉心損傷時に、溶融した炉心燃料の集中等により再臨界が発生するこ
とがないよう、初期に溶融燃料が炉心外に流出するような対策を講じること。
酸化物燃料(MOX 燃料):
ウラン酸化物とプルトニウム酸化物を混合して作った燃料。
自己作動型炉停止機構(Self Actuated Shutdown System、SASS):
炉内の異常な温度上昇時に、自動的に制御棒を切り離す受動的安全装置。高温
になると磁性を失う温度感知合金を制御棒の頂部に設置し、これを電磁石により
保持する構造を有する。
主中間熱交換器:
1 次冷却系と 2 次冷却系の間に設置される熱交換器。
整流板:
燃料集合体等の出口冷却材温度を、できるだけ外乱なしに測定するために設け
られた、ナトリウムの流れを整えるためのステンレス鋼製の板。炉心上部機構の
下端に格子状に設置されている。

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線出力密度:
燃料要素の単位長さ当たりの出力。単位は W/cm、kW/m 等が用いられる。
増殖比:
原子炉の運転に伴いウラン 235 やプルトニウム 239 などの核分裂生成物質が
核分裂などで減少する割合に対して、ウラン 238、プルトニウム 240 などが中性
子を吸収して核分裂性物質(プルトニウム 239、241 など)を生成する割合の比
率をいう。その比が 1.0 を超える場合を増殖比、1.0 以下の場合を転換比と呼ぶ。
第 4 世代原子力システム:
米国エネルギー省(DOE)が 2030 年頃の実用化を目指して提唱した次世代の
原子炉の一般的な概念。国際的な枠組みで推進するため、米国、日本、英国、韓
国、南アフリカ、仏国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、スイスの 10 カ国と
1 機関(EU)が 2001 年 7 月に第 4 世代原子力システム国際フォーラム
(Generation IV International Forum : GIF)を結成し、現在までに 6 つの原子
炉概念に絞って研究開発を進めていく計画である。
ハンドリングヘッド:
計測線付実験装置の試料部の上端にある外径φ78 mm×内径φ73 mm×長さ
195 mm の円筒形状の部品で、試料部の移送等を行う際には、この部分をつかむ。
ホールドダウン軸:
燃料交換機で炉内から燃料を引抜く際に、周囲の燃料が一緒に抜けないよう、
抑えるための円管。ホールドダウン軸には、常時原子炉容器内に設置され、現在
は案内管として使用している旧ホールドダウン軸と、これに代わって燃料交換機
側に設置され、原子炉運転中は燃料交換機と共に取り外される、新ホールドダウ
ン軸がある。
ラッパ管:
集合体の強度を保持するための六角形の外套管。高速炉の燃料集合体では、炉
心内の燃料の体積割合を高めるため、燃料要素の配列を三角格子としており、ピ
ン束の外形は六角形となる。
炉内ラック:
燃料集合体等の原子炉内での一時的な貯蔵・冷却や、材料の照射試験等を行う
設備。炉心と同心の円周上に配置され、燃料集合体等を入れるポットを収納でき
る構造となっている。