りを含めて業務フローに表わし、個々の業務フローを集
約して全体像を作成する(業務モデリング(現状))。全
体像の中を仮想的に歩く(ウォークスルーする)ことで、
お客様や取引先を含めた業務の関わりを理解し、無理、
無駄、ムラといった全体を鳥瞰することにより見えてく
る業際間の問題、全体の課題を読み取る(同 I1)。これ
らはすべてお客様との協働作業で行なう。
②将来像の策定(図 4 第 3、第 4 ステップ)
現状業務の問題点と課題、現状業務の流れと全体像を関
係者で共有した上で、将来像を策定するステップである。
第 3 ステップでは、①現状把握の集中討議メンバーで、
企業、部門、業務のあるべき姿について集中討議し、方
向性、将来像を検討する。
第 4 ステップでは、現状把握の過程で明らかにした業務
を「機能」要素(計画、商品・サービス、購買、経理等
の業務機能、ならびに組織、人材、制度、マネジメント
等の業務実施に必要な付帯機能)に分解し、最適配置し
た将来像を描く。将来像をウォークスルーし、将来像を
実現するための業務のあり方、流れを確認する。また、
このステップでお客様に何を提供すべきかという目的
価値を明確化する(同 K2)。
③IT化構想の策定(図 4 第 5、第 6 ステップ)
将来像実現に向けた IT 活用を検討し、IT 化のコンセプ
トを定め、要件定義を行い、IT 化の実施計画を作成する
ステップである。
第 5 ステップでは、IT 化を行なうに当っての基本的な考
え方、たとえば、全体の整合性をどう取るか、全体最適
とは何か、等を検討し、方向性を確認し、IT 化のコンセ
プトを打出す。
第 6 ステップでは、システムの機能価値と併せて、組織、
制度、設備・環境等の機能価値についても定義し、IT
化の要件定義を行い、IT 化の実施計画を策定する。その
上で、これら 6 ステップの成果を IT 化構想としてまと
める。
これらの作業を行なった上で、IT 化を実現するステップ
に移行する(IT 化実現を含め、KIKI モデル I2 に相当)。
なお、各ステップ終了後、経営者を交えた報告会を行い、
確認を取りながら次ステップに進める。この報告会は、非
公式のオーソライズの場ともなり、順次全社の理解を得な
がらプロジェクトを推進して行くことができる。
<3.3>実施体制
サービス場は、現状のしがらみにとらわれず、客観性を
持って検討することが重要である。そのため、サービス場
の検討は、利害関係のない第 3 者が主導することで、バラ
ンスの取れたサービス場の設計が可能となる。
筆者らは、「設計事務所」という概念を企業の IT 化プロ
ジェクト参画時に適用してきたが、その役割は、IT 化構想
策定段階においては、お客様の目的価値をより客観的な視
点から顕在化させ、利害関係者の合意形成を図り、IT 化実
現段階においては、発注側と受注側の橋渡し役としてコミ
ュニケーションの仲介をすると共に、IT 化システムの語り
部として、運用段階に至るまでブレない方向性の維持とシ
ステムのライフサイクルマネジメント役を担うというもの
である(設計事務所とは、建設業界から借りてきた言葉で
あるが、施主の立場から建築物を設計し、施工まで責任を
持つことから、その概念を参考にしている)。
サービス場の考え方を適用したビジネス価値創造につい
ても、同様の考え方で設計事務所の活用が可能であり、現
在進行中の企業における将来像構想策定に適用しており、
所期の目的が達成できるものと考えている。次章にて、当
該企業における将来像策定事例を紹介する。