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インフォームド・コンセント(informed consent)


◆総論
□「十分な説明に基づく同意、十分な報告に基づく同意、説明と同意などと訳される。診療目的・内容などを、患者が理解できる言葉で知らせ、十分かつ分かりやすく説明し、説明内容を患者が理解したことを確認したうえで、患者の承諾を得てから治療にあたることである。患者に説明する内容は、具体的には、診断に基づいた患者の病状、治療内容・方法、検査の目的・意味、治療の問題点・危険性、治療の効果や治癒する確率、その治療以外の選択肢と予想される結果、経費などである。
 この概念は、医師と患者が同等の立場に立ち、患者の生・・397 命・身体に関する判断は患者自身が行うべきという、治療を受ける患者を中心とした発想であり、わが国でも、1990年(平成2)年に日本医師会生命倫理懇談会が、医療現場へのインフォームド・コンセントの積極的な導入を提言し、また94年には、全国約2500の病院で構成されている日本病院会が、インフォームド・コンセントについての5項目の指針を定め病院内に提示することにし、1995(平成7)年には当時の厚生省設置の「インフォームド・コンセントに関する検討委員会」が「文書で説明し、文書でインフォームド・コンセントを取り付けることが望ましい」との報告書をまとめている」(大久保[2005:397-398])

□「患者の生命・身体についての価値判断の最終決定権は患者にあるという患者中・・18 心の考え方に基づいて、患者の知る権利と医師の説明義務の履行を前提とした医師と患者間の十分な同意のこと。同意に基づいた平等な人間関係が望ましいという前提に立って、医師は、(1)診断に基づいた病名や病状、(2)治療に必要な検査の目的と内容、(3)いくつかの治療方法についてそれぞれの長所短所、(4)それぞれの治療法についての予後への影響と生命の危険性、(5)あらゆる治療方法を拒否した場合の結果を患者に理解できる言葉で伝える。また、単に伝えるだけではなく、(6)患者が理解したことを確認しなければならない等、これまでの医師中心の考え方から大幅に転換している。なお、説明を受ける権利の放棄も自己決定権に含まれるであろうし、医師の後見的な職権として、意識消失や幼少患者・精神障害者・自殺意図者等に対しては患者の意志に反する医療も認められている」(笠原[2013:19])

□「患者ないし研究対象になる者(被験者)が、治療ないし研究に関する説明を医師から受け、説明内容を理解した上で、その治療ないし研究対象になることに同意すること」(土屋[2006:58])

□「インフォームド・コンセントとは医療者が患者に代替案も含めた十分な説明を行ない、患者の納得の上で治療を行うというものであ・・60 る。「informed consent」の訳語としては、「納得同意」、「十分な情報を与えられた上での合意」、「説明と同意」などのものがある。インフォームド・コンセントを適切に行うことで、患者の自己決定権を尊重することができる」(小松[1999:60-61])

◆ビーチャムとチルドレスによるインフォームド・コンセントの基準
□「ビーチャム Tom L. Beauchamp とチルドレス James F. Childress によるとそれは、患者ないし研究対象になる者が、(1)理解力と決定力をもち、(2)他者の支配を受けず自発的に決定できる状況において、医師から(3)十分な情報を開示され、(4)提案された治療ないし研究の対象になるよう勧められて、(5)それらの内容を理解した上で、(6)その治療ないし研究の対象になることに決め、(7)そのことに同意を与える、という7つの要素からなる。その根底には「本人の同意なしに人の身体や精神に介入するのは暴行にほかならない」という考え方がある」(土屋[2006a:58])

◆インフォームド・コンセントの理念
□「インフォームド・コンセントの基礎には、「自律的な被験者・患者の意思を尊重せよ」という自律尊重原則がある。特に医療の場合には、「患者に利益をもたらせ」という善行原則、「患者に危害が及ぶのを避けよ」という無危害原則もインフォームド・コンセントを支持する。善行原則がインフォームド・コンセントを支持するのは、その実施が患者の治療意欲を高め、結果として、治療の有効性を高めるからである。無危害原則がインフォームド・コンセントを支持するのは、その実施が不適切な治療を防ぐ効果があるからである」(前田[2008:32])

◆インフォームド・コンセントの問題点
□「第1に、医者と患者の関係が実質的に対等になりにくい。医療に関して医者は専門家であり、患者は素人である。その上、患者は事態の深刻さに冷静さを失い、また、病状によっては判断能力をまったく欠いていることさえある。医者にとっては患者はまず保護の対象である。だから、医者は患者に対してパターナリスティックな態度をとりがちであるし、患者は医者に依存的になりがちである。
第2に、第1の点と関連するが、癌の告知に見られるように、医者の任務は単に情報を正確に伝えればすむというわけでなく、患者に悪影響を及ぼさないように細心の注意を払うことが必要である。
第3に、医者が患者に示すべきだとされる情報には、その医者自身にとって不利な情報、例えば、他の医者による方が手術の成功率が高いというような情報さえも含まれる。これは医者に過重な責任を押しつけることになるが、逆に医者が一面的な情報を伝えることにより、患者を誘導してある決定をさせるという可能性もある」(加茂[1998:107])

◆インフォームド・アセント
□「未成年者など同意能力が十分ではないと判断される者であっても、わかりやすい説明を行い、可能な限り、その賛意を確認する必要がある。こうした過程を「インフォームド・アセント infromed assent」と呼ぶ」(武藤[2012:84])

◆人体実験(human experimentation)
□「広義には、人を対象とする研究全般をいう。ここでいう「人」とは生身の人間だけでなく「個人を特定できるヒト由来の材料及び個人を特定できるデータ」を含む(ヘルシンキ宣言)。狭義には、人を対象とする研究のうち、その目的に沿った操作を計画的に行う「前向き」の研究(実験)をいう。また日常語としては、人を対象とする研究のうち、とくに非人道的なものをさして、非難する意味合いをこめて用いられることが多い。
 人間について知るためには、人間を実験台や観察対象にしなければならない。ゆえに医学や行動科学などの人間科学には人体実験が不可欠である。しかも医学は単なる客観科学ではなく、人を治し癒すための技術知の体系であるだけに、「人間を治し癒すためには、人間を実験台にしなければならない」という倫理的ディレンマを抱え持つ。
 人を対象とする研究は、研究対象になる人(被験者)に利益がもたらされる可能性がある場合(治療的研究)と、その可能性がない場合(非治療的研究)に分けられる。非治療的研究では、その成果の恩恵を受けるのは他の患者や人類一般であり、被験者は他者のための実験台になることになる。一方、治療的研究では、治療的利益が誇大に強調され、被験者の期待をあおって参加させることがしばしば問題になる」(土屋[2006b:467])


▼インフォームド・コンセントの基準
□1947年:ニュルンベルグ国際軍事裁判の判決文「ニュルンベルグ綱領」
 ◇→http://www.med.kyushu-u.ac.jp/recnet_fukuoka/houki-rinri/nuremberg.html
□1948年:世界医師会「ジュネーブ宣言」採択
 ◇→http://www.med.or.jp/wma/geneva.html
□1949年:世界医師会「医の国際倫理綱領」採択
 ◇→http://www.med.or.jp/wma/ethics.html
□1964年:世界医師会「ヘルシンキ宣言 ヒトを対象とする医学研究の倫理原則」採択
 ◇→http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/gijiroku/04090601/010.pdf
 ◇→http://www.med.kyushu-u.ac.jp/recnet_fukuoka/houki-rinri/helsinki.html
□1972年:タスキギー事件顕在化
□1973年:アメリカ病院協会「患者の権利章典に関する宣言」
□1974年:アメリカ国家研究規制法(National Research Act)連邦議会を通過、人体実験を行う場合、IRB(Institutional Review Board)に計画書を提出し、ガイドラインと照らし合わせた上で許可を得ること
□1975年:世界医師会「ヘルシンキ宣言 〔改訂〕」
□1979年:「ベルモント・レポート 研究対象者保護のための倫理原則および指針」
 ◇→http://med.kyushu-u.ac.jp/recnet_fukuoka/houki-rinri/pdf/belmont.pdf
□1981年:世界医師会「患者の権利に関するリスボン宣言」採択
 ◇→http://www.med.or.jp/wma/lisbon.html
□1982年:『医療と生物医学的、行動科学的研究における倫理問題研究のための大統領委員会報』

□「[…]医学領域での現代の倫理問題は、遡ればナチズムによる身体への侵襲への反省から、同意なしにおこなわれる侵襲的人体実験の第1条でうたわれたニュルンベルク綱領(1947)を始めとする。その趣旨はジュネーブ宣言(1948)へと継承される。ヘルシンキ宣言では「ヒトにおける実験」が医学の進歩に不可欠であることを踏まえ、さらにその改訂(1975)では、生命科学の進展を踏まえ、「医学的 medical」を「生物医学的 biomedical」と言いかえ、実験に当たっては、独立の審査委員会が実験計画書への倫理的配慮の記載、宣言の趣旨に反する論文拒否を求めるものとなった。1982年には『アメリカ大統領委員会生命倫理総括レポート』が公表され、被験者の同意の必須なこと、同意を取り消す自由があること、それを踏まえたインフォームド・コンセント(informed consent)を被験者から得ることが推奨された。インフォームド・コンセントとは、内容を知らされた上での研究または治療について・・407 の同意を意味する」(清水[2014:407-408])


▼文献
●加茂直樹、1998「インフォームド・コンセント」廣松・子安・三島・宮本・佐々木・野家・末木編[1998:107]
●小松楠緒子、1999「インフォームド・コンセント」庄司・木下・武川・藤村編[1999:60-61]
●大久保皓生、2005「インフォームド・コンセント」阿部・今村・岩崎・大久保・澤井・辻山・山本・寄本[2005:397-398]
●土屋貴志、2006「インフォームド・コンセント」大庭・井上・加藤・川本・神崎・塩野谷・成田編集委員[2006:58]
●土屋貴志、2006「人体実験」大庭・井上・加藤・川本・神崎・塩野谷・成田編集委員[2006:467]
●前田正一、2008「インフォームド・コンセント」加藤編集代表[2008:32-33]
●武藤香織、2012「インフォームド・コンセント」大澤・吉見・鷲田編集委員・見田編集顧問[2012:84]
●笠原幸子、2013「インフォームド・コンセント」山縣・柏女編集委員代表[2013:18-19]

■廣松渉・子安宣邦・三島憲一・宮本久雄・佐々木力・野家啓一・末木文美士編、1998『岩波 哲学・思想事典』岩波書店.
■庄司洋子・木下康仁・武川正吾・藤村正之編、1999『福祉社会事典』弘文堂.
■阿部齊・今村都南雄・岩崎恭典・大久保皓生・澤井勝・辻山幸宣・山本英治・寄本勝美、2005『地方自治の現代用語 〈第二次改訂版〉』学陽書房.
■大庭健・井上達夫・加藤尚武・川本隆史・神崎繁・塩野谷祐一・成田和信編集委員、2006『現代倫理学事典』弘文堂.
■加藤尚武編集代表、2008『応用倫理学辞典』丸善.
■大澤真幸・吉見俊哉・鷲田清一編集委員・見田宗介編集顧問、2012『現代社会学事典』弘文堂.
■山縣文治・柏女霊峰編集委員代表、2013『社会福祉用語辞典 〔第9版〕』ミネルヴァ書房.

▼参考文献
●米田昌平、1989「研究の自由と研究の規制――ガイドライン=委員会体制とは何か」(伊藤俊太郎・村上陽一郎共編、1989『講座 科学史2 社会から読む科学史』培風館:270-289.)
●前田正一、2005「インフォームド・コンセント」(赤林朗編、2005『入門・医療倫理 I』勁草書房:141‐158.)
●水野俊誠、2005「インフォームド・コンセント2」(赤林朗編、2005『入門・医療倫理 I』勁草書房:159‐169.)
■Grisso, Th., Appelbaum, P. S. 1998. Assessing competence to consent to treatment, Oxford UP.=北村總子・北村俊則訳、2000『治療に同意する能力を測定する』日本評論社.
●板井孝壱郎、2003「医療情報の電子化と情報倫理――来るべき「生命情報社会」に備えて」(水谷雅彦・越智貢・土屋俊編著、2003『ライブラリ電子社会システム5 情報倫理の構築』新世社:201-242.)
●橘木俊詔・長谷部恭男・今田高俊・益永茂樹、2007「共同討論 リスク論からリスク学へ」(橘木俊詔・長谷部恭男・今田高俊・益永茂樹責任編集、2007『リスク学入門1 リスク学とは何か』岩波書店:1-53.)
●児玉聡、2012「インフォームド・コンセントとその背景」(直江清隆・越智貢編、2012『高校倫理からの哲学1 生きるとは』岩波書店:167-170.)
●黒崎剛・金澤秀嗣、2014「患者の権利と「インフォームド・コンセント」」(黒崎剛・野村俊明編著、2104『生命倫理の教科書――何が問題なのか』ミネルヴァ書房:11-40.)
■清水正之、2014『日本思想全史』ちくま新書(1099).

▼参考文献引用
●橘木俊詔・長谷部恭男・今田高俊・益永茂樹、2007「共同討論 リスク論からリスク学へ」(橘木俊詔・長谷部恭男・今田高俊・益永茂樹責任編集、2007『リスク学入門1 リスク学とは何か』岩波書店:1-53.)
□「[…]対価計算のできる「良性のリスク」はリターンが見込・・18 めるから企業は保険の対象とするので何とかなりますが、保険の対象にならない「悪性のリスク」をどうするかが社会保障や社会福祉の問題なのです、このこととの関連で、責任の蒸発が起きてしまうリスクがけっこうあることに注意が必要です。
 たとえば、インフォームド・コンセントがそう、インフォームド・コンセントとは医療措置に関して、医者が患者に十分な説明をおこない、その上で患者が納得して治療法を選択することです。こうすれば、医者は然るべき治療を一方的に患者に押しつけたのではなく、患者の意思と選択により合意のうえでおこなったことになるわけです。しかしながら、通常、患者には望ましい治療法を自身で選択するだけの専門的知識と判断能力がありません。ですから、実質的には、医学について素人である患者がいくら熟慮したからとしても適切な治療法を自己決定することなど到底不可能で、その決断について「自己責任」を受け入れることなどできないはずです、インフォームド・コンセントは、十分な説明をしたうえでの合意という有意義な視点を与えてくれますが、リスク責任を医者から蒸発させてしまうための手にも使われかねないのです」(橘木俊詔・長谷部恭男・今田高俊・益永茂樹[2007:19]今田)

●米田昌平、1989「研究の自由と研究の規制――ガイドライン=委員会体制とは何か」(伊藤俊太郎・村上陽一郎共編、1989『講座 科学史2 社会から読む科学史』培風館:270-289.)
□「現代的な意味の人体実験の規制はニュルンベルク裁判に始まる。ニュルンベルク裁判といわれるものは実は13法廷開かれた。主戦争裁判の他に、アメリカは単独で12の副法廷を開いた。そのなかで被告23人中20人が医師であったためメディカル・ケースと呼ばれた裁判があり、ナチス・ドイツが行った人体実験はここで集中的に審議された。そしてその判決文のなかで、アメリカの判事団は、医学研究のある段階では人体実験が必要になることを認め、これを道徳的・理性的に行うための9項目の基本要件を示した。これが後にニュルンベルク・コードと呼ばれるようになるものである。その骨子は、被験者は、事前に研究目的と方法、危険と苦痛を十分に説明され、威圧的要素がな・・272 い状況下で、個人の自発的承諾によってのみ行われ、被験者は実験中に自由にこれを中断しうる、というものである。このコードは、1964年の第7回世界医師会総会で採択されたヘルシンキ宣言の基本となり、宣言では拡充した表現に改められた。ここでとくに丁寧な表現に改められているのが、被験者に対するインフォームド・コンセント(十分な情報を与えられたうえでの承諾)の考え方である」(米田[1989:272-274])

●児玉聡、2012「インフォームド・コンセントとその背景」直江・越智編[2012:167-170]
□「米国ではタスキギー梅毒研究やその他の非倫理的な研究の報道がきっかけとなり、1973年に医学研究や行動科学研究の倫理を検討するための国家委員会が設置された。この委員会が1978年に公表した最終的な報告書が、有名な「ベルモント・レポート」だ★。この報告書では、(1)人格の尊重、(2)善行、(3)正義の三つの倫理原則が明示された。人格の尊重とは、研究参加者を研究のための単なる道具として扱ってはならず、その自律性を尊重しなければならない、ということだ。また、善行とは、研究参加者に対するリスク(危険)を最小化するとともに、研究によるベネフィット(利益)を最大化するということだ。最後に、正義とは、研究参加者の選択にあたっては、公平な基準を用いて行わなければな・・168 らないということだ。
 人格の尊重の原則の背景には、人間を手段としてのみ扱うこと、つまり人間をモノ扱いすることは人間の尊厳に反するというカントの考え方がある。カントは「あなたの人格や他のあらゆる人の人格のうちにある人間性を、いつも同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為しなさい」と言う。カントによれば、物件(モノ)は単に価格しか持たないが、人間(人格)は尊厳を持つ。言いかえると、前者は売ったり買ったりできる相対的価値しか持たないが、後者は値段を付けられない絶対的価値を持つ。なぜなら人間は、他の存在者と違って、「自分で定めた目的に従って行動できる」という理性に由来する優れた特徴を持っているからだ。
 このようなカントの思想を背景に、ベルモント・レポートは、この「人格の尊重」という原則にもとづいてインフォームド・コンセントの考え方を支持した」(児玉[2012:168-169])
★ HPなどでは1979年のレポートが示されている。

●板井孝壱郎、2003「医療情報の電子化と情報倫理――来るべき「生命情報社会」に備えて」水谷・越智・土屋編著[2003:201-242]
□「アドボカシー(advocacy)という概念は、法的な文脈においては「自らの権利を自分で主張できない場合、当人に代わってその権利を擁護すること」と定義されることが多い。しかし、自己情報コントロール権という観点から、このアドボカシー概念を考察する際には、単に患者のコントロール権を、当人に成り代わって擁護する、というようにのみ解釈するのは適切であるとは言い難い。こうした「権利擁護モデル」にのみ立脚した解釈では、アドボカシー概念において最も重要であるとも言える「自律性能力の育成的サポート」という観点が抜け落ちてしまう。インフォームド・コンセントが話題になるとき、それは患者の自律性に基づく自己決定の権利であると強調されることが多い。しかしこの論調には、患者を「完成した自律的主体」であると前提し、自己決定を「押し付ける」ような行き過ぎた自律至上主義(autonomism あるいは autonomy-centered justification)に陥ってしまう傾向が潜んでいる。生命倫理における自律尊重原理(the principle of respect for autonomy)とは、決して患者に自己決定・自己責任を押し付ける概念ではない。
 ここで定義する「自律性の能力に基づく自己情報コントロール権」とは、自分の価値観やニーズに応じて、自律的な意思決定ができるように、誰しも・・217 が有している基本的な自律性の能力を発揮できるように患者をサポートすること、こうした「自律性能力の育成(competence development supported by providing with information)」を目指すアドボカシー概念と、分かち難く結びついた概念である。こうしたアドボカシーにしっかり支えられた自己情報コントロール権としてプライバシーの権利を捉え直し、そこから「医療情報の活用」ということを考えないならば、患者(情報提供者)は「完成した自律的主体」であることを前提に、自己決定・自己責任を押し付けられ、その結果、十分な判断を下す客観的な条件も主体的な力量も不十分なままに下した「自己決定」に基づき、「情報活用に同意(あるいは不同意)した」とみなされてしまうことになる」(坂井[2003:217-218])

●前田正一、2005「インフォームド・コンセント」赤林朗編[2005:141‐158]
□「インフォームド・コンセントとは Information(情報・説明)に基づく Concent(同意・承諾)である。人に対して何らかの行為を行う際にには、その行為についてあらかじめ説明し、相手からその実施について同意を得ていなければならないことを意味する。インフォームド・コンセントは医療に限らずその他の領域においても重視されるが、医療の領域においては医療行為が人の身体に対する侵襲行為であるだけにいっそう重視される。
 このインフォームド・コンセントの基礎には、「自律的な患者の意思を尊重せよ」という自律尊重原則がある。また、インフォームド・コンセントは、「患者に利益をもたらせ」という善行原則、および「患者に危害が及ぶのを避けよ」という「無危害原則」によっても支持される」(前田[2005:142])

●水野俊誠、2005「インフォームド・コンセント2」赤林朗編[2005:159‐169]
□「インフォームド・コンセントを行うには、患者が同意能力を備えていることが必要である。しかし、現在までのところ、この同意能力を実際に判定する基準は、確立されていない。その基準について考えるために、英語圏の医療倫理学で議論されている判断能力(competence)の基準が参考になる。P.アペルバウムらによれば、(1)治療上の意向や選択を表明する能力、(2)開示された情報を理解する能力、(3)理解した情報が当人の状況にあてはまることを認識する能力、(4)治療についての情報と当人の意向に基づいて論理的に思考する能力を、十分に備えていなければならないとされる★」(水野[2005:161])
 ★ Grisso, Th., Appelbaum, PS., 1998. Assessing competence to consent to treatment, Oxford UP.=北村總子・北村俊則訳、2000『治療に同意する能力を測定する』日本評論社.


▼関連リンク
◇インフォームド・コンセント|「治験」ホームページ|厚生労働省→http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/3.html
◇告知・インフォームドコンセント|看護倫理|日本看護協会→https://www.nurse.or.jp/rinri/basis/kokuchi/index.html
◇インフォームド・コンセント|生存学→http://www.arsvi.com/d/ic.htm
◇福岡臨床研究倫理審査委員会ネットワーク→http://med.kyushu-u.ac.jp/recnet_fukuoka/index.html
◇日本医師会→http://www.med.or.jp
◇World Medical Association→http://www.wma.net/en/10home/index.html

▼関連
◇患者の権利/患者の権利章典
◆20100110, 1010, 20110430, 20130223, 0224, 0226, 0623*, 0802, 1105, 20140218, 0414, 1207, 1213, 20150622

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