セント・オブ・ウーマン / 夢の香り
2006/06/02
[ ヒューマン ドラマ映画 ] 医療 病気 障害
【 ストーリー・あらすじ 】
全寮制名門高校の生徒チャーリーが、休暇中のアルバイトで全盲の元陸軍中佐フランク(アル・パチーノ)の世話をすることに。しかし、頑固なフランクとの出会いは最悪なもの。フランクの言動に戸惑いながらも、心やさしいチャーリーは行動を共にすることになるが…。
歳の差を越えた2人の男に友情が芽生えてくるプロセスは、生きることの意味や素晴らしさを感じさせてくれる。また、アカデミー賞主演男優賞を獲得したアル・パチーノのごく自然な演技にも注目。女性のつけている香水を嗅ぎ分ける能力に長けているフランクだが、そこで美女をゲットしてタンゴを踊るシーンはスマートでなかなかの見もの。中年男の愛らしさも垣間見ることができる。
【 出演 】
アル・パチーノ, クリス・オドネル, ジェームズ・レブホーン, ガブリエル・アンウォー, フィリップ・シーモア・ホフマン
【 監督 】
マーティン・ブレスト
【 アカデミー賞 】
主演男優賞受賞:アル・パチーノ
【 感想 】
この映画「セント・オブ・ウーマン / 夢の香り」をみなさんは観たことありますか?アル・パチーノ主演で贈るヒューマンドラマです。アル・パチーノが盲目の元軍人を演じているのですが、ほんとに素晴らしい演技をしていますので、そのあたりも楽しんでもらえると思います。
友達を守るか?自分の将来か?
名門とされる高校のベアード校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)は、ある日校長先生がある生徒からイタズラをされてペンキまみれになってしまいます。その犯人である生徒を目撃したチャーリーとジョージは、校長に呼び出され、犯人を教えるように迫ってくるのです。
ほんとに校長はイヤな感じですよねぇ。犯人を教えるように説得するのは正しいと思います。いけないことをした生徒に注意もしくは罰を与えることは、その生徒の将来を考えれば良いことですもんねっ。ただ家計の苦しいチャーリーに対して脅しのような選択をさせるのは卑怯だなぁと思いました。
犯人を教えなければ退学、教えれば大学進学のための奨学金を与える。この選択に答えを出せないまま、チャーリーは休暇に実家へ帰るための資金を稼ぐためにアルバイトを始めます。
盲目の元軍人 フランク(アル・パチーノ)
チャーリーはアルバイトで盲目の元軍人フランクの世話をすることになるのですが、このフランクがまた難しい性格といいますか、かなりの頑固者でプライドが高く偏屈な男なんですよねぇ。初対面から怒鳴られ説教されと、チャーリーにとってこの先とっても不安なアルバイトが始まります。
そんな盲目の元軍人フランクをアル・パチーノが演じています。アカデミー賞で主演男優賞を受賞しただけあって、ほんとに見事な演技を魅せてくれています。時々彼の目を観察していたのですが、ほんとに目が見えないんじゃないかと思えるぐらいの演技でした。ほんとに見事です。
破天荒な旅行
かなり接し方が難しいフランクの世話だけでも大変だと思うのですが、そんなフランクがいきなり旅行に出かけると言い出すのですから困ったものです。強引にフランクを連れて行きニューヨークへと向かいます。
一体どれだけお金を持っているんだろうと思ってしまうほどの超豪華旅行で、高級ホテルに高級レストラン、そして移動はリムジン、しかもチャーリーの分も払っているのですからすごいですよねぇ。ちょっと羨ましくも思いました。
あと目が見えないというのはすごいハンデだと思いますが、フランクは目以外の感覚で色々とわかってしまうんですねっ。元軍人というのもあるのだと思いますが、匂いはもちろんですがチャーリーの声の調子などで、彼の感情や考えがわかってしまうところは凄かったです。
そして良かったのが、二人の関係性です。最初はどうなってしまうんだろうと思っていましたが、おそらくフランクはチャーリーが誠実な男だと理解し認めたのでしょうねっ。そしてチャーリーは彼の年輪といいますか、人生の経験値などを感じ、尊敬へと繋がったのだと思います。二人の絆が少しですが、深まっていたのが良かったです。
タンゴのシーン
きっと香水の良い香りがしたのでしょうねっ。女性が大好きなフランクはその香水をつけた女性の元に行き、言葉巧みに女性をダンス(タンゴ)に誘います。彼の男性と女性に対する態度はガラリと変わりますねっ。とっても優しく紳士的になり魅力的な男性に一気に変身します。
フランクがタンゴに誘った女優さんはとても綺麗な方ですねっ。ガブリエル・アンウォーという女優さんらしいのですが、覚えていないだけなのか他の作品で見た記憶がないですねぇ。彼女が出演する他の作品も観てみたいと思いました。
それにしてもタンゴのシーンはいいですねぇ。目が見えないフランクですがとってもダンスが上手で、しかもすごく楽しそうでした。そして音楽もステキでしたねっ。個人的に好きなシーンです。
あと、最近知ったのですがフィギィアスケートの浅田真央ちゃんがこのタンゴで流れる曲を使ったことがあるみたいです。この曲を使うことを、浅田真央ちゃんが自分で決めたかどうかはわかりませんが、ちょっと嬉しかったです。
フェラーリでドライブ
あまり運転に自信のないチャーリーですが、フェラーリをレンタルしてドライブに出かけます。助手席で車のエンジン音やギアチェンジをする音を聞きながら、チャーリーにアドバイスするフランクはすごいなぁと思いました。
その後に目が見えないにも関わらずフランクが運転するのですが、これは怖かったですねぇ。スピード違反してしまうぐらいアクセルを踏み込み、チャーリーの合図だけで道を曲がるシーンでは、旅の始めに「最後に自殺する」とチャーリーに冗談っぽく言っていましたが、その言葉が脳裏に浮かびました。
自殺
朝目覚めると昨日まであんなに陽気だったフランクの様子がおかしい・・・。そう感じたチャーリーの不安は的中。旅の始めでフランクが言っていた通り、自殺をしようとするんですねぇ。銃を持つフランクをチャーリーは必死に説得し止めさせようとします。
今回の旅での豪遊ぶりはまさに最後の贅沢だったというわけですねっ。ずっと会っていなかった兄に会いに行った理由もわかりました。目の視力を失ったことにより、その後の人生もまた暗闇のようになっていったのだと思います。
自信やプライドなどに溢れているように見えたフランクですが、おそらく軍人だった頃の「過去の栄光」のみが彼を支えていたのかもしれません。やっぱり1人だけで頑張ろうとしても無理なこともあるんですねっ。ただ、今はチャーリーがフランクの支えになっているのは間違いないと思いました。
チャーリーの必死の説得の結果、「死ぬ勇気がなくなった。明日また考えよう。」と言ってフランクが自殺を思い止まってくれたのは嬉しかったです。
懲戒委員会
いろいろ大変なことだらけの長旅から帰ってきたチャーリーですが、まだ彼には問題が残っています。それが懲戒委員会による取調べです。犯人を言えば大学進学への奨学金が与えられる、ただ犯人を言わなければ退学、言い換えれば、自分の将来を取るか友達を売るかという、すごく難しい二者択一に迫られるのです。
チャーリーと同じく懲戒委員会に掛けられるのが、同級生のジョージです。そのジョージを演じているのが若かりし頃のフィリップ・シーモア・ホフマン。出演シーンこそ少ないですが、好きな俳優さんでしたので嬉しかったです。
当サイトで開催しているアンケート企画の第24回アンケート「演技が上手い映画俳優は誰ですか?」で、私はフィリップ・シーモア・ホフマンに投票させていただきましたが、この頃から演技が上手いなぁと思いました。
フランクの演説
ジョージは父親の助言もあってか、友達を売ってしまいます。もちろんジョージは間違ったことをしたわけでなく、悪いことをしたのであれば友達であれ罪を与えなければいけません。友達を売る勇気も称えるべきだと思います。
ただチャーリーは「知りません」と言って友達を守ります。これまた素晴らしいことだと思います。退学か進学が懸かっているにも関わらず、自分よりも友達を守ると下した決断は賞賛に値すると思いました。その結果、友達を売ったジョージには処分なし、そしてチャーリーには退学処分が下るのです。
もうこれには納得がいきませんでした。そして私以上に納得いってないのがフランクです。この判決を聞いたフランクは怒りに溢れ、声を荒らげて罵倒します。
「このクソ裁判は一体何だ!」
「告げ口をして自分の身を守れ。でないと火あぶりだぞ。ケツに火がつくとある者は逃げだし、ある者は踏み留まる。彼は踏み留まり、ジョージは親父の懐に隠れた。なのに君らはジョージを褒め、チャーリーを罰するのか!」
「私の隣の若者だけが汚れのない魂を持ち続けている。ここにいる誰かは彼を買収しようと甘い話を持ちかけてきた。だが、彼は売らなかった。」
<省略>「バリーにジミーにトレント、聞いているか!?貴様らにも言う!くたばれ!」
「根が腐ってて何が育つのか。この学校の根は腐ってる。」
「私にはチャーリーの沈黙の正誤は判断できない。だが彼は決して自分の得の為に友達を売る人間ではない!」
そして演説の最後の方でいった言葉も良かったです。
「それが人間のもつ高潔さだ。それが勇気だ!指導者が持つべき資質はそれだ。」
「私も何度か人生の岐路に立った。どっちの道が正しい道か判断できた。だが、その道を行かなかった。困難な道だからだ。」
「チャーリーも岐路に直面した。そして彼は正しい道を選んだ。真の人間を形成する信念の道だ。」
「彼の旅を続けさせてやろう。彼の未来は君ら委員の手中にある。価値ある未来だ。保証する。潰さずに守ってやってくれ。愛情を持って。いつかそれを誇れる日が来る。」
このフランクの演説は見事でした。正しいことは何かを知っている人の発言だったと思いますし、チャーリーという人物をわかっているからこその言葉だったと思います。フランクの演説に会場全員が拍手を送っていたことからも、みんなが共感していたと感じ嬉しかったです。
その結果、チャーリーは無罪と言われ、フランクが「フーバー!(FUBAR)」と叫び、そして会場に溢れる拍手と喝采。もうこの瞬間は何度見ても感動してしまいます。観ていて「やったぁ~!」って思っちゃいますもんねっ。
帰路
演説後にフランクは女性と良い感じになっていましたが、すごく嬉しかったです。フランクにとって女性は生きる源みたいなところがあるので、おそらくもう自殺なんて考えないでしょうねっ。
そしてフランクとチャーリーの別れの時、今後も二人の付き合いが続いていくような感じが良かったです。年の離れた二人ですが、親友のような絆ができたと思います。
最後フランクが家の中に入っていき、子供たちを仲良く話すところはステキでしたねっ。チャーリーと旅したことにより、フランクの中で何かが変わったのを感じました。すごく綺麗なラストだったと思います。