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              式   辞                   

はじめに【誇りと感謝】

 弥生も半ば、白梅が薫り、柳も芽吹き始めたこの佳き日、埼玉県立坂戸高等学校第四十八回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、本校職員にとりましても大きな喜びであります。

 ただ今、三百五十三名の卒業生に卒業証書を授与いたしました。

 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、本校の「三つの学校文化」をとおして、心も体も大きく成長されました。本日は、その仕上げとして、高校生活の三年間、毎日皆さんを支えてくださった保護者の皆様方へ「感謝」の気持ちをしっかり言葉にして伝えてほしいと思います。 

1 東日本大震災からの学び【「惨禍を忘れず、備える」】

 さて、令和の時代がはじまりこの約三十年間に、日本は平成七年の阪神淡路大震災と平成二十三年の東日本大震災の二つの巨大地震の被害を経験しました。特に東日本大震災のとき、皆さんはまだ小学生でした。幼な心にも当時の不安な記憶が残っていることでしょう。その後、皆さんが、勉学に、学校行事に、部活動に励み、子供から大人へと立派に成長を遂げたこの年月は、まさに日本社会の復興の道のりそのものであります。

 しかし、今なお被災地域のハード面の復興は進みつつも、人口減少の課題など被災地域の再生はまだまだ道半ばです。大切なことは、私たちが「惨禍を忘れず、備える」ことです。震災の記憶を過去のこととして風化させるのではなく、私たちにも首都圏直下型地震などの危機が目の前にあるからこそ、備えと覚悟を新たにし、命を大切にしていかなければならないと思います。 

2 坂戸高校での三年間【校歌・振り返り】

 次に、皆さんが本校で過ごした三年間を振り返りますと、本校の「目指す学校像」に掲げる『文武に秀で、地域に愛され、国際感覚豊かな人材』として、着実に成長・発展する日々でした。

 皆さんが入学された平成三十年度は、校歌一番の歌詞『ひとすじにわれらは学ぶ』というように、高校生として、「学び」の基礎・基本を固める年でした。新入生オリエンテーションから始まって、日々の授業や様々な進路行事をとおして、自らの進路意識を高めていきました。

 翌令和元年度は、校歌二番の歌詞『高らかにわれらは歌う』というように、青春を「謳歌する」年でした。特に、沖縄修学旅行は、平和学習、南城市でのマリン体験学習、民宿泊等により、沖縄の歴史と文化を学び、地元の方々との交流を深め、一生の思い出に残る「濃密な時」として記憶されていることでしょう。

 そして、令和二年度は、校歌三番の歌詞『たくましくわれらは生きる』というように、皆さんの「生き様」を示す年でした。皆さんは最上級生として、本校の中心となって活躍されました。特に、部活動でも、科学部、ギター部、美術部が全国大会に出場するなど、素晴らしい成果を示してくれました。そして、これらの土台の上に、「未来への栄光(ひかり)」である進路希望を実現しました。

 このように、豊かな経験に裏付けられた知性・気力・体力・協調性は、これからの変化の激しい、先行き不透明な社会を生き抜くために、大変重要な資質です。坂戸高等学校卒業生であることを大きな「自信」として、それぞれの進路先においても、大いに活躍することを期待しています。

3 贈る言葉【志(「あらゆることに本気でぶつかる」)】

 その皆さんは、それぞれの進路という一つの「志」を実現しました。再チャレンジする人も自らの「志」を貫き、実現へのプロセスを歩んでいることに他なりません。

 そんな皆さんに、本校卒業生で、人気声優として活躍されている「梶裕貴(かじゆうき)」さんが、高校時代を振り返えられ言葉で、後輩の皆さんへのエールとなる一節を紹介し、餞(はなむけ)としたいと思います。梶さんは本校在学中、演劇部に所属していました。その中で、同じ志をもつ仲間との出会いから声優養成所で演技を学び、ライバルと切磋琢磨し、何度もオーディションで悔しい思いを経験しながら、プロとしての力を高めてこられました。梶さんは次のようにおっしゃっています。

 「振り返ってみれば、学生時代に過ごした時間は本当にいとおしいものばかりです。当たり前の日常生活、なんでもない学校生活。通り過ぎてしまうと二度とは戻れないもの。どんな些細に思えたことも、今となってはすべてが宝物です。(中略)教室のざわめき、体育館に鳴り響くバスケットシューズの音、廊下のひんやりとした空気感、雨上がりの通学路のしっとりした湿度や匂い。何でもないような記憶が、意識的あるいは無意識的に声に混ざり、聞く人の共通体験を呼び起こす演技につながっていく-。そんな経験の引き出しの数こそが武器になってくると思います。(中略)……とはいえ。かくいう僕だって、当時は日々の出来事に対し、いちいち「将来に役立てるために」なんて思いながら過ごしていたわけではありません。なにが自分の財産になるかなんて、その真っただ中にいる本人には、やっぱりわからないものですから。だからこそ、常に目の前のことに全力で。今はまだ、先のことなんかわからなくても大丈夫!「こんなことくだらないな」「どうせ無理だな」と思う前に、まずは本気を出してみてください。あらゆることに本気でぶつかっていかなければ、夢中になれることなんて見つかりません。全力でぶつかりきったその先には、きっと未来の自分はいるはずです。」と。

 皆さんも新たな進路先において、梶さんのように「あらゆることに本気でぶつかる」ことにより、「未来の自分」と出会ってほしいと思います。

      (出典 梶裕貴著「いつかすべてが君の力になる」、2018510日、河出書房新社) 

おわりに

 本校は本年度、創立五十周年を迎えました。今から四十八年前の昭和四十八年三月に、第一回卒業生六学級二百五十九名を送り出して以来、一万八千四名の卒業生を数える卒業生台帳に、皆さんの名が連なることを「誇り」にしてください。

 結びに、本校の教育活動に対し、多大なる御理解・御支援を賜りました地域の皆様、PTA・後援会、同窓会の皆様へ心から感謝申し上げますとともに、卒業生の皆さんの限りない発展を祈念し、式辞といたします。 

令和三年三月十二日 

埼玉県立坂戸高等学校長 井上正明