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腫瘍学分野~ビクニン治療について~

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 ビクニン治療について


ビクニン(Bikunin, UTI [Urinary Trypsin Inhibitor]):臨床応用可能な癌転移抑制物質

1.   はじめに

ビクニンは尿由来のトリプシンインヒビターとして生理活性を有する糖蛋白質であり、従来よりurinary trypsin inhibitor (UTI)といわれてきた物質と同一である。ヒト羊水や尿中に存在するフリービクニンにはプロテアーゼ抑制活性以外の生物作用があることや、ビクニンを短鎖とするインター-α-トリプシンインヒビター(ITI)ファミリーの長鎖にも新規の生物活性が発見され、この分野における研究が加速度的に発展してきた。今回は「ビクニン(Bikunin, UTI):臨床応用可能な癌転移抑制物質」と題してビクニンに焦点をあわせて最新の知見をまとめてみた。なお、ビクニンの由来はBis Kunitz Inhibitorの頭文字をとってBikuninと命名されたものである。

2.   インター-α-トリプシンインヒビター(ITI)ファミリー

ITIファミリー分子は血清中のトリプシンインヒビター活性を有するプロテアーゼインヒビターである(図1)。ITIはビクニンに2本の長鎖(約80 kDa)が結合しており、プレ-α-トリプシンインヒビター(PαI)はビクニンに1本の長鎖が結合している。ITIでもPαIでも、また、ビクニン単独でもトリプシンインヒビター活性を有するため、このプロテアーゼインヒビター活性はビクニンに存在することがわかる。ビクニンは、コアタンパク質の10番目のセリン残基にO-グリコシド結合したコンドロイチン4-硫酸鎖が結合している1)(図2)

ITIファミリー分子は肝臓で合成され、循環血中に分泌される。その濃度は0.5 mg/mlに達する。肝細胞内ではほとんどすべてがITIファミリー(ITIとPαI)として合成され、フリーのビクニンとして分泌されることは少ない。すなわち、血中の主役はITIファミリーである。一方、尿中やヒト羊水中にはフリーのビクニンが多くを占める。ビクニンは、尿中へ排泄されたITIファミリー分子の代謝物と考えられるが、最近の研究により尿路結石患者の尿中ビクニンは健常人に比べて高値を示す2,3)ため、炎症反応により腎臓の尿細管で積極的にビクニンを合成している可能性もある。

1) ITIとヒアルロン酸(HA)との結合

血中濃度が高いにもかかわらずITIファミリー分子のインヒビター活性は非常に弱いため、ITIの本来の生理活性がプロテアーゼインヒビターであるとは考えにくい4)。最近、ITIファミリー分子の長鎖がヒアルロン酸(HA)に特異的に結合することが知られるようになった。HAはβ1,4-グルクロン酸-β1,3-N-アセチルグルコサミンの2糖の繰り返しからなる直鎖状のグリコサミノグリカンである。この長鎖とHAからなる複合体は癌細胞、顆粒膜細胞5)、線維芽細胞などの培養液中や、血清中にも存在する。HA単独では細胞外マトリックスへの保持作用は弱いため、長鎖がHAへ結合することにより細胞外マトリックスの安定化に寄与するものと考えられる6)HAは結合タンパク質やプロテオグリカンと相互作用を持ち、細胞外マトリックスの主成分としてHAが機能を果たすためにはITIファミリー分子と結合して細胞外マトリックスとしてネットワークを形成する必要があることが分かってきた。癌の細胞外マトリックスや排卵時期の顆粒膜細胞の卵丘膨張7)長鎖とHAからなる複合体により形成されている。

2) 排卵との関連

上述したように、ITIファミリー分子は培養線維芽細胞や中皮細胞の細胞外マトリックス中に分泌したHAを細胞外マトリックス内に引き留めるのに必要である。同様に卵巣から排卵するためにもITIとHAは必要である。それはin vitroで膨張が誘導された卵丘細胞膜においてHAリッチマトリックスが形成されるために必須の物質である7)。ちょうど排卵の時期には血管透過性が亢進して血中のITIが卵胞内へ積極的に流入してくる。顆粒膜細胞から産生されたHAとITIが細胞膜上で共有結合することによりHAリッチマトリックスが形成されるのである。

一方、ビクニンノックアウトマウスを作成すると雌は排卵障害を起こして不妊症になる。これはビクニンをノックアウトすることにより長鎖は存在するもののITI分子が形成されず、結果としてHAリッチマトリックスが形成されないことによる。したがって、肝細胞内ではビクニンの存在がITIファミリー分子の律速物質になっていると考えられる。ビクニンが直接排卵に影響するわけではなさそうである8)。しかし、ビクニンノックアウトマウスの卵巣をcDNAマイクロアレイにより比較検討すると、ビクニンノックアウトすることにより数々の遺伝子発現が変化することも確認してある(未発表データ)。

排卵現象を生化学的に表現すると以下のようになる。HAリッチマトリックスの形成はヒトを含む哺乳動物の排卵と受精が成功するため必須である。卵母細胞は、密着した卵丘細胞(cumulus cells)により囲まれ、コンパクトな丘細胞―卵母細胞複合体(COC)を形成している。血清ゴナドトロピンサージにより血清中のITIが血液―卵胞バリアーを通過し卵胞へ透過してくる。その後、丘細胞によるHAの合成と広範な細胞外マトリックスへの活発な組み込み(COC expansion)が起こり、卵胞壁からCOCが剥離する。この膨張したCOCは卵胞壁の破裂により排卵し、輸卵管へ移送されるが、顆粒膜細胞は卵巣に留まり、黄体細胞へ分化する。したがって、排卵するためにはCOC expansionが必須の条件である9,10,11)

3.             ビクニン

1) ビクニンの生理活性

それではビクニン自身の生理活性は何であろうか?ビクニンはトリプシン、プラスミン、好中球エラスターゼに対するプロテアーゼインヒビターであることは既知の事実である。前述したように、ビクニンはヒト羊水や尿中に豊富に存在している。羊水のビクニンは胎児尿由来であると考えられる。稀な先天奇形ではあるが、先天的に胎児腎臓が欠損したポッター症候群という疾患がある。胎児腎臓がないため、羊水の産生が充分得られず、胎児は妊娠中期に早産してしまう。先ほどの排卵現象と同様に陣痛発来および早産は生理的および病的炎症反応によって起こる。したがって、ビクニンにはこれらの過剰な炎症反応を抑制する作用があることが推定される。事実、切迫早産(まさに早産しやすい状態を言う)妊婦に経膣的にビクニンを投与することにより早産を回避することができるようになった。これは現在、ビクニン膣坐薬として臨床応用されている。つまりポッター症候群では羊水中にビクニンが存在しないため生理的・病的炎症反応を抑制できず、陣痛が発来していまい早産に至ってしまうというわけである。

 さらに、我々の長年の研究により羊水・尿中のビクニンが癌細胞の浸潤・転移を抑制する能力のあることを見出している。図3にボイデンチャンバーを用いたin vitroにおける癌浸潤を評価する系で観察するとビクニン添加したときに癌細胞の浸潤が抑制されるのがわかる。次に、ビクニン分子のどの部位が癌浸潤抑制活性を持つのか検討した。以下の4分子ITI、ビクニン、脱糖鎖ビクニン(コンドロイチン4-硫酸除去ビクニン)およびHI-8(プロテアーゼインヒビター活性を有するC末端のクニッツドメイン)の活性を比較した(図4)。トリプシン抑制活性に代表されるプロテアーゼインヒビター活性抑制は4分子すべてにおいて同様に認められた。一方、in vitro浸潤抑制能はビクニンにのみ認められ、他の3分子にはその活性は非常に弱い。したがって、癌浸潤抑制活性はプロテアーゼインヒビター活性抑制作用とは異なることが示された。

 それぞれの分子を125Iで標識して癌細胞に添加するとビクニンが最もよく結合し、次に脱糖鎖ビクニンが弱く結合した。しかし、ITIやHI-8には癌細胞への結合能は認められなかった。ビクニン親和性カラムを作成しこれに結合する物質を癌細胞から抽出したところ、分子量40 kDaと45 kDaの2つの物質が得られた。このうち40 kDaの物質はHAに結合しているリンク蛋白質(Link Protein; Crtl1)とアミノ酸が一致した。リンク蛋白質にはビクニンのN末端のクニッツドメインが特異的に結合した(図2)。また、45 kDaの物質のアミノ酸配列および分子構造は未同定であるが、この物質にはビクニン分子のうちコンドロイチン4-硫酸が特異的に結合することが判明している(図2のビクニン受容体)。したがって、癌細胞には分子量40 kDaと45 kDaのビクニン結合蛋白質およびビクニン受容体が存在し、ビクニンはコンドロイチン4-硫酸とN末端のクニッツドメインを介して癌細胞表面に結合することが想定される(図5)12,13,14,15)。つまり、癌細胞表面でビクニン―ビクニン受容体―LPの3量体がけ異性されることになる。この3量体はさらにLPがHAに結合することによりビクニン受容体がCD44に近づきやすくなり、ビクニン受容体―CD44複合体が形成されることになる。この結果、growth factors等の刺激に対してCD44のダイマー形成が阻止されるため、CD44を介するシグナル伝達が止まることになる。しかし、この実験は細胞外マトリックスを豊富に産生する軟骨由来の癌細胞を用いた実験であり、普遍性については今後検討する必要がある。最近、我々はヒト卵巣癌細胞において、これと同じ現象でビクニンがtransforming growth factor-beta (TGF-b) receptorのカップリング阻止を起こすことを見出した。現在までにビクニンによりダイマー形成が抑制されてシグナル伝達が阻止されるのはCD44とTGF-beta receptorだけである。
 ビクニンが癌細胞に結合するとどのような現象が観察されるかというと、まず、細胞内カルシウム流入が止まり、おそらくその結果として、MAP kinase (MEK, ERK)のリン酸化が抑制され(図6)、細胞の種類によってはPI3Kの活性化も抑制され、Aktのリン酸化が抑制された。ビクニンはMAP kinaseやAktのリン酸化を直接阻害しないため、これらのカスケードの上流を抑制してシグナル伝達を阻止していることが推定された16,17,18,19,20,21,22)。そこで、ビクニンを添加した癌細胞とビクニン遺伝子を導入した癌細胞を用いてこれらの癌細胞にどのような変化が起こっているのかcDNAマイクロアレイを用いて検討した23)。その結果、予想以上の多くの遺伝子(30~40個)が変化していることが判明した。代表的な候補遺伝子としてウロキナーゼ・ウロキナーゼ受容体・マトリプターゼ・PAPP-A (pregnancy-associated plasma protein-A)・PI3K p85.などがビクニンの下流に存在していた。これらはいずれも過去に癌細胞の浸潤・転移に関連した遺伝子群であった。現在、これらの遺伝子のアンチセンスを導入しビクニン作用を模倣することができるかどうか確認しているところである24)。ビクニン添加によるウロキナーゼmRNAおよび蛋白質の産生抑制効果を図7に示した。ビクニン1 mMによりその作用が発揮されるのがわかる。

 以上をまとめると、ビクニンの生理活性として、①プロテアーゼインヒビターとしての作用、②CD44やTGF-beta receptorのダイマー形成阻止によるシグナル伝達抑制、③カルシウム流入抑制によるMAPK, PI3Kの活性化抑制、④ビクニン関連遺伝子の発現抑制、があり、いずれも癌転移にとっては抑制的に作用するとこが推定されている。

2)    ビクニンによる癌転移抑制:動物モデル

ビクニンがマウスを用いた癌転移をin vivo実験系で抑制することができるかどうか検討した。まず、マウス肺癌細胞であるルイス肺癌細胞3LLを皮下に移植し4週間後に犠牲死させる動物モデルを用いた。この系では2週間後には肺への微小転移をすでに起こすことが分かっている25,26,27,28,29,30,31,32,33)。皮下に3LLを移植すると同時に7日間、0.5 mg/日のビクニンをマウス腹腔内に投与すると有意に肺転移を抑制された。しかし、皮下に3LLを移植し7日間放置してからその後7日間、0.5 mgのビクニンをマウス腹腔内に投与しても肺転移は抑制されなかった。したがって、ビクニンは癌を移植すると同時に早期に使用しないと肺転移を制御することができなかった。そこで、早期癌モデルとして皮下に3LLを移植して7日目に手術により皮下移植巣を完全に切除した系を作成した。手術のみでもほとんど肺転移は抑制されたが、ビクニンを併用することにより有意に肺転移は抑制された。同時に抗癌剤であるエトポシドを使用するとほとんどすべてのマウスは肺転移を認めず治癒した。次に進行癌モデルとして皮下に3LLを移植して14日目に手術により皮下移植巣を完全に切除した実験モデルを作成した。手術のみではほとんど肺転移は抑制されなかったが、ビクニンを併用することにより有意に肺転移は抑制された。同時に抗癌剤であるエトポシドを使用すると肺転移数は極端に少なくなり生存するマウスも認めた。しかし、ビクニン自身には抗腫瘍活性、即ち腫瘍を縮小させる作用は認められなかった。

 2番目の実験として、ヒト卵巣癌細胞HRAをヌードマウスに腹腔内投与すると9~10日目に癌性腹膜炎を併発して死亡する動物実験モデルを用いた。HRAはビクニン遺伝子を持っていないのでこの癌細胞にビクニン遺伝子を導入することにより癌細胞の性格がどのように変化するのか検討した19)。コントロールベクターを導入したHRAとビクニン遺伝子を導入したHRA細胞を同様に腹腔内に投与すると、コントロールマウスは9~10日目に癌性腹膜炎を併発して死亡したが、ビクニン遺伝子を導入したHRA細胞を移植したマウスは4~5日遅れて癌性腹膜炎を併発した。移植後9日目に比較すると、ビクニン遺伝子を導入した場合には血性腹水が認められず、腹膜播種もほとんどみられなかった。横隔膜下への癌転移部の組織をみるとビクニン遺伝子を導入した細胞には横隔膜の筋層への浸潤が観察されなかった(図8)。いずれのマウスにおいてもビクニン投与による副作用は観察されなかった。横隔膜下への卵巣癌播種をH&E染色した結果を図9に示す。ビクニン遺伝子導入癌細胞の浸潤はコントロールと比較して非常に軽微であった。

3)     ビクニンによる癌転移抑制:卵巣癌患者

以上の実験的結果を踏まえて、ヒト卵巣癌患者において通常治療時にビクニンを使用した群と未使用群における生存期間への影響を検討した(図10)。対象は主にIII期の上皮性卵巣癌患者で治療は卵巣癌根治手術後にCAP (Cyclophosphamide, adriamycin, cisplatin)療法かTJ (Paclitaxel, carboplatin)療法を6コース行なった。ビクニン併用群はビクニン30~90万単位を抗癌剤と共に連続7日間点滴静注したところ、ビクニン使用群で有意にoverall survivalが延長した。今後はより悪性度の高い膵癌、肺癌、大腸癌等についても臨床治験を行なって生きたいと考えている。

4)   ビクニンの位置づけ:他の癌転移抑制物質との比較

既存の抗悪性腫瘍薬の作用機序は,基本的にいずれも腫瘍細胞に対して直接殺癌細胞効果(cytotoxic effect)として働くものである。しかし,サリドマイド(thalidomide)が,その催奇形性の原因追及から全く新しい概念のもとに腫瘍に対する抗腫瘍効果が浮かび上がってきた.この新しい考え方の特徴は薬効標的を癌細胞にするのでなく血管新生(angiogenesis)を阻害することにある.すなわち,血管内皮細胞に対する細胞分裂抑制作用(cytostatic effect)により血管新生が抑制され,痛細胞増殖に必要な酸素や栄養供給を遮断し,癌細胞の発達を防ぎ,また転移を抑制するものである.したがって,殺細胞効果を有しないため抗癌剤特有の種々の重篤な副作用も持ち合わせず,また耐性も生じないため理想的な薬物と期待されている.血管新生の調節は,プロテアーゼ活性,血管内皮の活性,線維芽細胞の活性,免疫応答やCXCケモカイン謝節などが複雑に絡んでいる。以下、詳細はインターネット34) を参照していただきい。

一例を上げると,プロテアーゼ活性調節は線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor, bFGF)として,新生を促進するmatrix metalloproteinase (MMP)やそれを抑制するtissue inhibitor of MMP (TlMP)があり,腫瘍細胞では正のMMPが増える.その他,新生促進因子としてはvascular endothelial growth factor (VEGF),thymidine phosphory1ase (TP),urokinase-type plasminogen activator (uPA),アンジオポイエチン,インターロイキン-8,エリスロポイエチンなどがあり,負の調節因子としては,アンジオスタチン(angiostatin),エンドスタチン(endostatin),TGF-β,maspin,インターロイキン-1,-12,-10などがある.

現在、治験進行中の血管新生抑制薬は18種類ほどある.MMPを阻害するものは,Marimastat (British Biotech社,米国,非小細胞肺癌,小細胞肺癌,乳癌,前立腺癌,食道癌に対してPhase III),AG3340(Agouron社,米国,非小細胞肺・癌,ホルモン抵抗性前立腺癌に対しPhase III,神経芽細胞腫に対しPhase II),COL-3 (Collagenex社,米国,各種固形癌に対しPhase I),Neovastat (Aeterna社,カナダ,非小細胞肺癌などに対しPhase III),BMS-275291 (Bristo1-Myers社,米国,Phase I)があり,内皮細胞を直接抑制するものとしては,TNP-470 (TAP Phafmaceuticals社,米国,成人の固形進行癌に対しPhase II,リンパ腫ならびに急性白血病に対しPhase I: fumagillin類似合成物質で内皮細胞成長抑制作用を有する),サリドマイド(Celgene社,米国,カポジ肉腫や各種癌,特に骨髄腫に対しPhase II,非小細胞肺癌ならびに非転移前立腺癌に対しPhase III: 作用機序不明),squalamine (Magainin Pharmaceuticals社,米国,小細胞肺癌,卵巣癌に対しPhase I,各種進行癌に対しPhase I:ツノザメ肝臓からの抽出物でNa-H交換NHE3を抑制),combretastatin A-4 Prodrug(Oxigene社,米国,固形癌に対しPhase II,エンドスタチン ; Entre Med社,固形癌に対しPhase II),血管新生活性因子を抑制するものは,SU5416 (Sugen社,米国,カポジ肉腫,神経膠腫,各種進行癌に対しPhase II,von-Hippe1Lindau病に対しPhase II,転移結腸直腸癌に対しPhase III: :VEGF受容体シグナリングの抑制),SU6668 (Stgen社,米国,各種進行癌に対しPhase I: VEGF,FGFならびにPDGF受容体シグナリングの抑制),インターフェロンα(PhaseII/III: bFGFならびにVEGF産生抑制),anti-VEGFantibody (National Cancer lnstitute,米国,耐性固形癌に対しPhase I,転移腎細胞癌に対しPhase lI),内皮細胞特異的integrinを抑制するものは,EMD121974 (Merk KCgaA社,ドイツ,進行あるいは転移癌に対しPhase I:内皮細胞表面に発現するintegrinの抑制薬),その他の作用機構あるいは機序不明のものは,CAI(National Cancer lnstitute,米国,固形癌のコンビネーション治療に対しPhase I,卵巣癌ならびに進行腎細胞癌に対しPhase II: Ca2+流入抑制),インターロイキン-12 (Cenetics Institute,米国,カポジ肉腫に対しPhase I/II,IM862 (Cytran社,米国,卵巣癌に対しPhase I,カポジ肉腫に対しPhase III: 機序不明)などである.

ビクニンは細胞外マトリックスを破壊する酵素を阻害するだけではなく、癌細胞が浸潤・転移するために必要なシグナル伝達を遮断する薬剤であり、全く新しい概念の薬剤として位置づけられる。

4.   今後の計画

ビクニンの効果増強を目指した改変体の作成およびビクニン作用を模倣した内服可能な低分子物質の作成を行い患者のコンプライアンスを高め、癌転移抑制剤の改良を行なうことにより長期投与可能な薬剤の設計・試作を行っていきたい。近い将来,癌と共存しながらQOLを高める新しい機序の薬物が登場するかもしれない。

文献

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図表

図1 ITIファミリー及びビクニンの構造

右下がビクニンの立体構造である。

図2 ビクニンの構造と機能

図3 ビクニンによる癌細胞浸潤抑制

図4 ビクニン関連蛋白質の癌浸潤抑制作用

HI-8C末端のKunitz domainに相当する。

図5 ビクニン受容体とリンク蛋白を介したビクニンの結合

①がヒアルロン酸(HA)に結合したLink protein (LP)であり、Kunitz-domain Iに結合する。また、②はビクニン受容体でコンドロイチン4硫酸と特異的に結合する。ビクニンが①と②の両者に結合すると②を介したシグナル伝達がウロキナーゼ産生を抑制し、癌浸潤・転移を抑制する。

図6 ビクニンによるMAP kinase のリン酸化抑制

図7 ビクニンによるウロキナーゼmRNA 産生抑制

ビクニン1 mMによりcalphostin CH-7と遜色ないウロキナーゼmRNA 産生抑制作用がある。

図8 ビクニン遺伝子導入実験:横隔膜下転移

図9 ビクニン遺伝子導入実験:横隔膜下転移(H&E染色)

ビクニン遺伝子導入細胞は横隔膜の筋肉の中に浸潤できない。

図10 ビクニン併用進行卵巣癌成績

ビクニン投与群に予後改善が確認できた。

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